事案0 闇夜の仕事
分かりにくい方法で投稿して、すみません。
これは導入編だと思っていただきたいです。
都内 某区 時刻は22時を回っていた。
路地裏で2人組が怪しげな会話をしていた。
「いいか・・・・・?ニ毛世、あのコンビニを襲うぞ?」
「ああ・・・・・・刺方分かってる。」
どうやらコンビニ強盗をするつもりらしい。
刺方と呼ばれた男の方は、何かを上にあげた。
それは月明かりに照らされて、銀色に光った。
刺方は目を細めて、じっとそれを見つめた。
―――さかのぼること2週間前
ニ毛世と刺方は金欠に悩まされていた。
バイトをしても満足に得られない。それに最近は“ATM”からも引き出せなくなった。
「ああ!くそ!・・・・・・どうすりゃいいんだ!」
ニ毛世が頭をかきむしって、嘆いている。
その横で刺方はうつむいて何かを考えているようだ。
「おい、刺方。何さっきから黙ってんだよ。」
刺方はすぐには返事をしなかった。が、少しして
「・・・・・・なぁ・・・ニ毛世」
「あ?・・・・・・んだよ急に?」
刺方の口角は少し上がっていた。
「悪事に手を染めてみるか?」
刺方の提案はこうだった。
彼の家の近くには、防犯の設備が整っていないと噂されているコンビニがある。防犯カメラも1、2台しかないんだとか。
要はそこを襲うというだけだ。
「どうだ?」
刺方は家の周囲の地図を見せながら、ニ毛世に提案した。
それに対して、ニ毛世は
「うーん・・・・・・ちょっとそれはぁ・・・・・・なぁ・・・・・・」
どうやら乗り気ではないようだ。
「んだよ?やっぱり警察に捕まるのが怖いってか?」
「いや・・・・・・たとえ店が防犯設備悪かったにしても、店員の方は大丈夫なの?その・・・・・・強かったりしない?」
ニ毛世は店員のことで心配しているらしい。
そういえば・・・・・・こいつは小4のとき、万引きしようとして、店員に取り押さえられたことがあった。
その店員がバリ強くて、大泣きしたと聞いたが―――
だが今回はそんなことにはならないだろう。
「大丈夫!このコンビニの店員は50過ぎのおじさんと、ひょろい学生の2人だけだから」
「それなら大丈夫だな。よし、そうと決まれば、作戦立てますかぁ!」
そうして、コンビニ強盗計画が始動したのである。
▲ ▲ ▲ ◆ ▲ ▲ ▲
そして、作戦実行の日。
2人は真っ黒な服装で店内に入る。
「いらっしゃいませぇ・・・・・・」
店員の学生のやる気のない「いらっしゃいませ」が聞こえた。彼は特に2人に目を付けることもなく、レジでうつむいている。だが、しきりに惣菜のコーナーをちらちらと見ている。
――――なんだか、あいつみたいだな。
2人の脳裏に1人の人物が浮かび上がる。
まぁ、今はそんなことはどうでもいい。
2人は一応店内を見回すことにした。
惣菜のコーナーに、灰色の髪の女がいた。
・・・・・・まぁ、放っておいても大丈夫だろう。
そう思い2人はレジに向かった。
刺方は何かを店員に向ける。それは―――ナイフだ。
「レジの金を出せ!・・・・・・応じなければ、どうなるか・・・・・・・分かるよな?」
店員は悲鳴を呑み込んだ様子でこくこくと速くうなずいた。目には涙を浮かべている。
刺方がレジにおいた袋に店員は金を詰め込む。
―――刺方の肩を誰かがたたいた。
刺方はそちらを振りかえる。さっきの女だ。
「あ!?んだよてめぇ!」
すると
「うっ!?」
ドタッ
腹に痛みを感じ、その場に倒れた。自分の腹を確認するも、傷一つなかった。刺方の視界が薄れていった。
刺方が倒れたことに気づいたニ毛世は、ナイフを手に持ち、女に向ける。
店員は金を詰める手を止め、呆然としている。
「おい!何やってんだ!殺されてぇのか!?」
ドガッ 「うっ!・・・・・・あがっ・・・・・・」
腹に殴られた感覚がした。痛みで立っていられない。
ドタッ
ニ毛世も同じようにその場に倒れた。
店員はゆっくりと顔を上げ、女を見つめる。
黒いひし形の耳飾りをつけている。
2人組の強盗が入る少し前からいたのだが、2人は気にかけていなかった。
2人を殴って気絶させたのは彼女だ。
女と店員の目が合う。
少し経って、外から警察のサイレンが聞こえてきた。その人は、真顔からふっと表情を和らげた。
「これでもう大丈夫ですよ。彼らは警察に連行されることとなりますから」
その人は入口に向かって歩き出した。
▲ ▲ ▲ ◆ ▲ ▲ ▲
2人は逮捕され、翌日の朝刊にその記事が載った。
それを1人の学生が読んでいた。
コンコン…
ノックが聞こえた。どうやら予定どおり、来たようだ。
「どうぞ。入ってください」
ガチャ
入ってきたのは、コンビニにいた、あの女だった。
「どうです?厚海さん。これで彼らはもう、あなたの前には現れませんよ。―――数年は」
厚海と呼ばれた彼は、ふぅとため息をついた。
「本当にありがとうございます......あの2人には悩まされていたんですよ。ぼくから金をむしりとっていくし、『返して』って言ってもとぼけるし・・・・・・おまけにぼくのことを裏で“ATM”って呼びやがった・・・・・・あー!ほんっと、いなくなってくれて清々した!」
今までためていたものを吐き出せて、スッキリした。
それに対して、女こと―――駄目オーガスト
は「良かったですね」とニコニコ笑っていた。
4日前、あの2人の計画を知り、『エスピトラ』という会社に依頼したのは正解だった。おかげで、誰も怪我をしなかったし、被害を受けなかった。そのうえ、厄介払いもできた。
妖怪の便利屋だなんて、信じていなかったけれど・・・・・・これはすごい!
厚海はオーガストの方を向き、深く礼をする。
「ほんっとうに、今回はありがとうございました・・・・・・!オグさん!」
『オグ』とはオーガストの愛称だ。
オーガストが長いようならそう呼んでもいい、と彼女から言われていた。
「いえいえ。お礼を言われる筋合いはありませんよ。これが仕事なので。・・・・・・ところで、報酬、いただけます?」
厚海は封筒を差し出した。オグはそれを受け取り、中身を確認する。すぐに終え、
「では今回の報酬2000円、たしかに受け取りました。またのご利用、お待ちしております」
オグは一礼をして部屋から出ていった。
▲ ▲ ▲ ◆ ▲ ▲ ▲
オグは事務所兼自宅に戻って、報酬を会社所有の金庫に入れた。
自分の部屋でパソコンを開く。
もう新しい依頼が来ているようだ。
カチッ
クリックして新たな依頼を確認した。
誤字・脱字や気になるところがあったら、教えていただきたいです。