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義姉弟(ぎきょうだい)になるから仲良くしていただけ?

作者: 夏月 海桜

ご都合主義満載のゆるふわ設定


「義姉弟になるから、仲良くしていただけ? なぁんだ、そっか! って納得するわけないでしょ!」


という女の子を書きたかっただけです。(このセリフだけ思い付いた)

 セアラは栗色の髪を靡かせ同じ色の目を輝かせて、好きでは無いが友人くらいにはなれそう、と思っている婚約者の家へ向かっていた。婚約者から聞かされていた会える時刻は13時。訪問する側のマナーとして、少しの遅れは許されても早い到着は違反。向こうの出迎え準備というものがあるから。そんなわけで、13時を数分過ぎてハーマ男爵家を訪ねた。婚約者のネオは来月17歳を迎えるセアラの2歳年上で結婚は再来年を予定している。適齢期では有るものの、セアラには3歳年上の兄・シアンがいて、シアンと婚約者のパレオの結婚式が3ヶ月後に控えているからだ。互いに互いの婚約者を紹介し合い、4人でこれからよろしく、という顔合わせをしたのは2ヶ月前の事だった。だが、セアラもシアンも知らなかった。本当はこの2人が幼馴染みだという事を。2人は黙っていたのである。





***


 シアンとセアラの兄妹(きょうだい)の父親は平民。当然2人も平民だが、所謂富裕層と呼ばれる平民で、貴族とはいえ男爵や子爵よりも余程裕福な暮らしを一家はしている。彼らの父親は商才の有る人物で、人当たりも良い。だが金の亡者とは言わないが金の扱いには厳しくて腹黒い。流行しそうな商品を見抜く目と一見すると優しそうな人当たりの良さと巧みな話し方で相手を乗せて買わせる方法は、その裕福さが証明している。無論、その裕福さに目を付けて擦り寄るのは平民だけでなく貴族も、だが、金貸しでは無いために利益にならない相手には一切金を出さない事で、一部にはケチな男として有名。

 一方で、孤児院の子ども達には定期的に炊き出しや文具などを無料(タダ)で与えている姿は、別の者達からは善人でケチなんて只の噂だろうというように見えているので、兄妹の父親は世間の評価が分かれる男だった。


 無論、兄妹の父親は、善人に見えるように、と炊き出し等をしている部分も有って世間の己に対する印象を操作している所も有るが、本当は、彼自身が孤児院の出身で死に物狂いで、と表現出来る程、孤児院育ちを馬鹿にされたり蔑まれたりしながら働いて、今の地位を築き上げたのである。そして痛感したのが、教育。

 孤児達の多くは文字も読めず簡単な計算も出来ない。兄妹の父親もそれで苦労していた。だからこそ、文具等を無料で与えて教育の機会を作った。大人は自力で何とかしろ、というのが彼の持論だが、子どもには自力で何とかする為の教育を身につけさせるのが目的だった。まぁあわよくば、そのうちの何人かが彼の部下として働けば良いな……という腹積りは有る。まぁ良く言えば先行投資とも言えた。


 そんな兄妹の父親が次に考えたのは、国の内情。

 正直、今や平民の方が力を持って来ているが、国の中枢は王国という事も有り、国王が権力を辛うじて握っている。そして実体はお飾りに近くても国を動かしているのは上位の貴族。公爵・侯爵家といくつかの伯爵家が中心となり。その部下の半分は残りの伯爵・子爵・男爵家だ。騎士爵と準男爵家も有るがどちらも一代限りだし、あまり権力の中枢とは関わりが無い。そして残り半分は平民出身が部下にいる。


 実務面で目覚ましい活躍を遂げているのが平民の方だというのに、その功績は貴族に奪われる。その現状を見て兄妹の父親は考えた。ならば自分も貴族達と繋がりを持とう、と。その考えから先ずは男爵・子爵辺りで兄妹の父親にとって利益が有りそうな家をいくつか候補に上げる。

 とある男爵家は領地で営んでいる果樹園が。

 とある子爵家は領民の半数が職人だから。

 とある男爵家は質の良い小麦が。

 ……そういった形で候補を上げてその中から政略結婚で契約を結ぼうと思っていた矢先に、

 とある男爵家は領地の特産品も何もないが、領地と引き換えに援助を申し出て来た。それがつまり、ハーマ男爵家であり嫡男のネオとの婚約を持ちかけて来たのであった。兄妹の父親は渋っていたのだが。婚約が破談になれば爵位を国王陛下に返上し、商会で下働きでも何でもする、という話だったので受け入れたのである。当然商人で有る以上、その辺の事もきっちり契約書を作成してハーマ男爵の署名ももらっている。ハーマ男爵と兄妹の父親と、貴族の婚約なので王城へも契約書を提出しているので、契約書は3枚存在する。

 尚、これは平民と貴族の政略結婚で有り、国王陛下も認めたもので有った。


 先に決まったのがセアラの婚約だったが、その1ヶ月後には子爵家からやはり援助を申し出られた。男爵家同様、これといった特産品の無い子爵家領地と引き換え……つまり、何か有って婚約が破談になった場合の慰謝料として、此方も領地を差し出して来た。特に旨味も無い領地を2つ貰っても兄妹の父親にとっては鼻紙みたいなものなのだが、婚約するにあたり王城へ契約書を差し出した時に、王城の文官が首を捻った事が切っ掛けで、寧ろ興味が湧いた。


 結論から言えば、シアンとセアラの婚約と引き換えに援助を申し出て来た子爵家と男爵家は隣同士の領地で、もっと言うならば昔から交流が有った。

 兄妹の父親は、セアラとの婚約が成立した事で、男爵家が子爵家に話を持って行き、シアンとの婚約を成立させた、と言ったところ。兄妹の父親にしてみれば、少し掌で転がされた気になったものの、まぁいい、と割り切った。そろそろ、貴族と深い付き合いが欲しい、と思っていたところだったからだ。政略結婚でどちらも上手くいくならば、兄妹を通じて貴族と深い付き合いが出来るし、何か有って婚約がダメになろうと、領地を2つも貰える。その領地で何が出来るか考えるのも面白そうだ。そう割り切ったからこそ、兄妹の父親は何も言わずにこの政略結婚を前提とした婚約を続けていた。


 シアンもセアラも自分の父親が、そういう人間だ、と割り切っている。愛情が無いわけではないとは思うが、子ども達の結婚も損得で考えているのは知っていたので、2人共黙って受け入れた。

 2人共、幼い頃から父親に連れられて商会に出入りをし、商売について勉強をしていたので、恋愛には興味が無かった。友人は居るが、商売に繋がりが有ったり、金を無心して来たりする友人は、速攻で切ったので、数は少ない。友人関係を続けたいのなら、金の貸し借りはするな、とは父親の教えで有る。金が絡まない付き合いが出来る友人こそ、長続きするのだ、と。


 婚約者に対しては最初から金が絡む関係だったので、少なくともセアラには、婚約者のネオに対する男女の愛情は育っていない。尤も婚約してから半年程。交流も毎日など有るわけではないし、月に2.3回会えればいい方だろう。だからようやく知り合いから友人になりつつ有る、というのがセアラの中での認識で。男女の愛情が育つかどうかはこれから、といったところ。





***


 そんな現状で、婚約者から招かれたからハーマ男爵家を訪れたというのに。手土産だって流行りの菓子折りだというのに。一体、自分は何を見せられているのだろう、とセアラは溜め息を吐いた。


 先程。予定された時刻を少し過ぎてハーマ男爵家の執事に「お招きありがとうございます」 と頭を下げた。ハーマ男爵家はお金の無い家だから門番は居ない。だから直接玄関でやり取りをしているわけだが、執事が顔色を変えた。


「あ、え? あの?」


「あら、伺っていませんの? ネオ様から、本日13時に来るように手紙を頂きましたのよ?」


 セアラは手紙を見せれば、執事が喰い入るように手紙に目を通す。


「たしかに、本日、ですな」


「ええ。それで? ネオ様はどちら? 案内を頼めるかしら?」


 執事は「し、少々、少々お待ちくださいませ」 と冷静さを失って声を荒げる。既に何度かハーマ男爵家に来て、この執事と挨拶を交わしていたセアラは、それだけでおかしい事に気付いた。何しろ、今まではきちんと挨拶を交わしていたのに、今日は全く無い。おかしい、と思っても仕方ない。そんな執事の様子に構わず、ハーマ男爵家の応接室へ押し入る。本来、このような無礼は許されないのだが、執事は、ハーマ男爵から、「セアラ嬢の家から金を借りているから機嫌を損ねるな」 と言われていたので、止められない。しかも、そのハーマ男爵は、現在所用で出かけている。

 そこで執事は傍らのメイドに目配せした。メイドは心得たようにネオの自室へセアラが来た事を伝えに行こうとしたが、小さな頃から商会に出入りしていた……つまり目端の利くセアラが、その執事とメイドのやり取りに気づかないわけがない。ハーマ男爵家の内見をしてもらった時に覚えていたネオの自室へさっさと動いて、ノックも無しに扉を開けた。


 正直なところ、セアラはネオが約束を忘れている、とは執事の態度を見て勘付いていた。

 だが、酒に飲まれて寝過ごしている、程度だと思っていた。


 が。

 現状は、ソファーの上でどう見ても恋人同士くらいの密着度合いでキスをしている男女で有る。


 何を見せられているのだろう、と思うしかない。


 浮気をするな、とは言わない。政略結婚で有る。セアラに男女の愛情は無いから。だが、それは、結婚してセアラとの間に子を成してからの話で有り、結婚もしていないのに浮気では契約違反としか言えない。

 しかも、ネオがセアラを呼び出しているのである。


 セアラが来る事を忘れていないで、セアラに見せ付けるように浮気をしているのか、それとも呼び出している事すら忘れて浮気しているのか、そんな事はどうでもいい。


 問題は、契約違反、という事。

 そして、その相手、だろう。


「何をやっているんです?」

 

「えっ」


 セアラが普通に尋ねれば、ネオがセアラを見た。そして、彼女ーーシアンの婚約者で有るパレオも。


「な、えっ、な、何故、此処に?」


 どうやらネオは呼び出した事も忘れていたようで有る。


「ネオ様が呼んだんですけど」


 呆れた声と表情でセアラは言う。ネオはそうだった、と顔色を変えた。


「それで? 何をやっていたのですか?」


 忘れていた事は無視してセアラが再度問いかければ。


「あ、ええと、こ、コミュニケーションよ!」


 と、今、考え付きました! とばかりにパレオが言う。


「そ、そうだ! コミュニケーションだ! 義理の姉と弟になるから、仲良くしていただけだ!」


 ネオは、ウンウン、と頷いて便乗する。


 セアラはおおげさに溜め息を吐いた。ビクリと身体を震わせる2人。未だに密着している2人を冷めた目で見つめたまま、セアラは言った。





「義姉弟になるから、仲良くしているだけ? ああ、そうですか! 成る程、なぁんだ! ……なんて言うとでも思っているんですか?」





 愚かな、と視線で2人に訴える。

 それはつまり、結婚してからも2人は義姉弟として、仲良しを装って浮気をする気満々ではないのか、という事だ。

 セアラの視線だけではそこまでの気持ちを汲めない2人はセアラの視線から逃れるように目を泳がす。


 それから、黒い髪に焦茶の目をしたネオは、ソバカスの有る鼻先を指で引っ掻く。彼が誤魔化したい時に行う動作だ。こうして黙っていれば、セアラだけでなく両親も使用人も何となく引き下がってくれていたので、今回もきっとセアラが引き下がってくれるだろう、と思っての事。

 そして、幼馴染みで有り、今回浮気相手という肩書きも追加されたパレオも、茶色の髪をグシャグシャとかき混ぜて髪より薄い茶色の目を逸らして黙る事で誤魔化そうとしていた。こちらも、両親や使用人からこれでお小言が言われなくなる事を覚えているので、今回もセアラから何も言われないだろう、と思ってで有る。


 しかし、2人共理解していなかった。

 どれだけ家族や使用人から諌められても一時的な反省しかしないから、周りから諦められている、という状況に。

 そしてセアラも今までは諦めていた。


 だが、今回はそのつもりは無い。

 パレオについてはシアンの意見を聞かねばなるまいが、ネオに関してはセアラの裁量で有る。

 婚約の契約はネオとセアラの父親同士で結んだが、明らかな契約違反(きちんと結婚して子を成すまで、互いに愛人は作らない、と契約書に書いてあるのだ)という事で、契約を守らない相手は商人の娘として、速攻で切り捨てる。無論、父親には報告するが、元々何かあればセアラの胸三寸で決めて良い、と父親から言われていた。という事で。


「パレオ様については、お兄さんに話を通してみないと解りませんので、後ほど沙汰を下しますが、ネオ様については私の父から何かあれば私の裁量に任す、と言われておりましたので。婚約は破棄させて頂きます」


「なっ……ま、待て! し、嫉妬で婚約破棄だなんて可愛くないぞ! 嫉妬しています。もうしないで! くらいで良いんだ!」


 焦茶の目が動揺しているのか泳いでいるが、セアラは嘆息するのみ。


「何を勘違いしているのが存じ上げませんが、ネオ様に愛情など有りません。たかが半年で男女の愛情など私には生まれませんでした。世の中には一目惚れなるものが有りますが、私は一目惚れをしておりませんし、この半年程の交流でもネオ様に男女間の愛情は抱いておりません」


「なっ……、では何故、婚約破棄などと……。俺が好きではないのなら、見なかった事にすれば良い!」


 ネオはセアラに好きという感情は無い、と言われ、少しは傷ついたものの、元々幼馴染みで有り、互いに思い合っていたパレオが居るからセアラの気持ちの件は放置する。見なかった事にすれば良い、と啖呵を切ってパレオの前でカッコ良く決めればパレオがウットリとした表情で見ている事が横目で確認出来て、鼻が高くなる。


「あなた、バカなんですか」


 だが、セアラが表情無しですっぱりと言い切った。


「何っ」


 婚約者だからといって、言って良い事と悪い事が有る。


「見逃せないから、婚約破棄なんですよ。良いですか。この婚約はネオ様もパレオ様も、政略的なもの。もっと言えば、私達の父が貴方達の家に金を貸して成立しています。その際の契約書には、愛人を作るなら子どもが産まれてから、と書いて有ります。お兄さんは知りませんが、私はネオ様に愛人が出来ても文句は言わない予定でした。私と結婚し、私との間に子が産まれてから、ですが。つまり、子どもどころか結婚前に愛人・恋人何でもいいですが、相手を作る時点で契約違反なんです。契約違反の場合の裁量は父から私に託されています。故に、婚約破棄です。何か言いたいことは有りますか。言っておきますが、パレオ様は愛人じゃない、最愛の恋人だ、とか、そんな寝惚けた発言はやめて下さいね。建設的では無いので。

この場合の言いたいこと、は、私に貴方達の関係を納得して婚約破棄の撤回が出来るだけの切り札を提示する事です。私や父に利益が有るならば、我が家とハーマ男爵家と王城に有る契約書を書き換えて、貴方達の関係を認めても構いません。納得出来る利益を提示出来ないならば、婚約は破棄。契約違反をしたわけですから、我が家からの援助金の返済。慰謝料は不要ですが、契約違反のため、違約金を支払ってもらう。と言ってもお金がないので、何でもする。という契約書通りにしてもらいます。さぁ、どうします?」


 立板に水が如く、契約内容と、それを書き換えられるだけの好条件の提示を催促し、好条件を提示出来ないならば契約違反として定められた罰を実行する、とセアラは話す。これくらいの事をサッと出来ないと商人としてはやっていけない。商人は機を見る目が無いと生き残っていけないのだから。当然、相手には利益と不利益も最初に提示して契約を結ぶ。不利益を提示しないで契約を結ぶのは、商人として信用されないからだ。

 セアラが父親の商会で商人として生きていく、と決めているわけではないが、その可能性は高い、とセアラ自身は思っている。だからこんな対応も先ず損得をサッと勘定して……切っても損にはならない、と3秒で判断した。この判断を覆す程の利益をネオが提示出来れば、契約書を書き換えるだけである。


 一方、ネオは顔色を青褪めさせていた。


 それはそうだ。婚約破棄になれば、援助金を返さなくてはならない。そんな金が無いからこその、婚約で有る。ネオもそれくらいは理解していた。

 だが、ネオから何か利益の有る提案をすれば、婚約破棄を撤回出来るらしい。だからネオは必死に考えた。


「で、では、領地と引き換え……」


「元々の契約が領地と引き換えですが。それはパレオ様も同じです。他に領地が有るとでも?」


「……無い」


 つまり、領地くらいしか旨味が無い、と言っているようなものだ。婚約破棄は撤回出来ない。ネオは追い詰められた。


「何も提示出来ないようなので婚約破棄という事で。お兄さんとお父さんに決定事項として報告した後、ネオ様のお父様と私のお父さんが契約を破棄する話し合いをする事でしょう。私とネオ様はもう顔を合わせることも有りません。この半年、お世話になりました。それでは」


「ま、待ってくれ! な、何でもする!」


「ですから、契約を破棄した場合、商会の下働きだろうが何でもする、というのが、条件です。先程ご説明しましたでしょう。つまり、政略結婚が上手くいって、領地をもらう。この場合、私とネオ様の子が当主になる事で契約成立。契約が反故になった場合は、何でもすることが最初から契約書には示して有ります。契約書を読まないから、そんな頓珍漢な発言になるんですよ」


 もう吐く溜め息も無い、とばかりにセアラはネオを見切ってネオの自室から出て行った。セアラを止められず、ずっと修羅場に立ち会っていたハーマ男爵家の執事の顔色は真っ青を通り越して土気色になっていたが、セアラの知った事では無い。

 さっさと商会に行って父親と兄に報告するのみだった。





***


 その後について言えば。

 シアンも別にパレオに対して愛情は無かったので、契約違反という事で婚約破棄。王城にも契約書が提出されている以上、契約違反の件は無かった事にならない。というわけで、ネオの家もパレオの家も爵位返上して平民になり、家族全員で商会の下働きとして労働力を提供している。ついでに2つの領地は契約違反の違約金代わりにシアンとセアラの父親に下げ渡され、実際に見た所、土そのものに改良が必要だという事が分かり。肥料を与えて土を改良した結果、特産品として売りに出せる野菜が出来るようになり。

 その野菜を商会では、野菜嫌いの子ども向けにお菓子にアレンジしたりジュースにアレンジしたり……と販売した所、売上が右肩上がりになっていった。


 その販売員はネオとパレオである。この2人、平民となって商会の下働きをしているが、2人の仲を引き裂くのは忍びない、とシアンとセアラが結婚させた。幼馴染みで恋人同士だったのだから、さぞや嬉しいだろうと思ったが、生まれが貧乏とはいえ使用人も僅かに居た貴族家で、当然汗水流して働いた経験の無い2人は、こうなった事を互いの所為だと罵り合っているらしい。

 まぁシアンにもセアラにも関係無い事で有る。但し、仕事の時だけは喧嘩するな、と厳命していた。誰も買いに来ないから、だ。そんなわけで仕事中は引き攣りながらも笑顔の2人は、仕事が終われば罵り合いながら暮らしていった。


 まぁ、世の中、喧嘩する程仲が良い。という言葉も存在する。この2人が、その言葉に当たるのだろう、と適当な事をセアラは考えつつ、父親には次の結婚相手は、きちんと政略結婚の意味を把握出来ている相手にしてくれ、と意見している。

 尚、平民だから、適齢期とはいえ、シアンとセアラは少々遅い方(平民の通常の結婚年齢は女は15〜16。男は18歳頃)なので、本人達よりも実は父親の方が焦っている事は、誰も気付いていない、らしい。シアンとセアラは独身でも良い、と割り切っているので、何も焦っていないが。


 さて。2人が家庭を持つ日が来るのかどうか。それは神のみぞ知るーー。





(了)

お読み頂きまして、ありがとうございました。


今回、名前ですが。ネオ(新しい)に対してパレオ(旧い)は、決まってました。シアンとセアラより先に……。偶には対義語みたいな名前って面白いかも。と付けてみました。

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