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「ベアトリーチェお嬢様、赤色ではなくて淡いピンク色のドレスに致しました。装飾品もそれに合わせております」



「淡い……ピンク」




 もの凄い残念そうなお顔をされているベアトリーチェお嬢様。

 多分お嬢様的には予想していない色だったのか? いや、多分着たくないんだろうな。


 ハッキリとした色合いの、特に赤色を好んでお召しになっていたから、今更このチョイスは嫌なんだろう。




「騙されたと思って一度着てみて下さい。もう、こんな機会でもないと可愛らしいドレスなんて着てくれないでしょう? 結婚したら、俺の誕生月の色の赤しか身に付けさせる気もありませんし」



「んぐっ……ケホッケホッ……」




「大丈夫ですかベアトリーチェお嬢様?」




「えぇ、大丈夫。大丈夫なんだけど……ごめんなさい、ちょっとお花摘みに行って来るわね」




 若干フラフラしながらサロンを出て行くベアトリーチェお嬢様をエスコートしようとしたら断られた。黙ってサンドイッチを消費しよう。



「赤色のドレスしか着せないって……独占欲丸出し発言はやり過ぎです。もう少し紳士的にして下さい」



「ごめん、つい本音が。引かれたかな?」



「お喜びの様ですが、逆にピンク色の物しか身に付けさせないと言われても甘んじて受けて下さい」



「似合うか似合わないかは別として、それはそれでいいな。束縛されてるみたいでゾクゾクする……」



 侍女長に呆れた顔を向けられて、ついでにいつものように「その凶悪な顔を仕舞え」と言われた。はいはい、スマイルスマイル。舌舐めずり封印。



 お嬢様が帰って来たところで、今度は俺がお花摘みと言う名のトイレに行く。

 きっとあちらも何か話してるだろうから、気持ちゆっくり目で。


 厨房に寄ってスープのお代わりと、追加のケーキやフルーツをもらって戻る。


 サンドイッチは粗方食べ尽くしたので、デザートだ。今日は濃厚そうなチョコレートケーキに、焼きたてのシフォンケーキ。


 ベアトリーチェお嬢様はシフォンケーキを一切れだけ食べると言うので、残りは俺のだな。甘い物は別腹だから2ホールくらいなら食えるだろう。



 当たり障りのない話をしながら、シフォンケーキを消費して口直しにスープを飲み干し、濃厚なチョコでコーティングされたチョコレートケーキを食べていると『ゆっくり食え。お行儀良く』とお手紙が来た。

 料理長のチョコレートケーキ久しぶりでがっついてしまったな。反省。


 こんな畏まった席じゃなかったら取り分けないで皿ごと頂きたいくらいなんだがな。



 そうだ。先ほどベアトリーチェお嬢様のお部屋で盗み聞きした話の詳細を知りたい。身体を多少鍛えているのは報告が上がっていたんで知ったはいるが、詳しい内容まではわからない。




「つかぬことを聞きますが、基礎体力メニューの強化ヴァージョンって何ですか? 項目を知りたいんですが?」



「コチラになります」



「ありがとう………………」




 侍女長が手渡してくれた紙を見ながらトレーニングメニューに目を通して行く。さらにペンを手渡された。




「………何このペンは?」




「直した方がいいところは今の内に訂正して下さい」




 お嬢様に視線を向けると、笑顔だがあれは淑女の仮面だな。お顔が若干赤くて可愛らしい。初々しいなぁって言ったら多分セクハラになるだろうから口には出さない。


 それにしてもこんなにトレーニングメニューをこなしてくれていたのか。


 ベアトリーチェお嬢様のプロポーション維持も含めてらしいが、体力面も向上させようと努力は見てとれる。見てとれるが……う〜ん。



「訂正はないが……訂正はないんだが、幾つか追加したいが大丈夫だろうか?」



「構いません。現実を見せてあげて下さい。ここは手加減しないで大丈夫です。後々困るのはお嬢様ですから」



「それじゃ遠慮なく」




「え? 追加???」



 ランニングを段階的に増やして、更に幾つか項目を書き足す。

 ベアトリーチェお嬢様は項目を追加する事に顔色を悪くしている。流石に可哀想だと思って、2割くらい斜線引いて削ったが。



「最低限コレがこなせれば死にはしないと思うんだが……どう思う侍女長?」



「……お嬢様覚悟して下さいとしか申し上げられません」



「死……え? 本当に床入りで死ぬとかあるのっ!?」




 涙目のお嬢様から凶悪になりそうな顔を隠すために自分の顔を両手で覆った。いないないばぁの待機状態。きゃっ☆オジサン恥ずかしい。

 詳細はノーコメントでお願いします。でも、備えるに越したコトはないよね何事にも。




「ベアトリーチェお嬢様の体力が向上する前に俺が暴走したら命の保証が出来かねないので、頼むからいい子にしてて下さい。我慢するって大変なんですよ?」




「ハイ。良い子にしてます」




 色々話しはしたが、侍女長はコレを面と向かって言って欲しかったんだろう。俺を刺激したら大変な事になるぞと。


 最初っから言うと引かれるのは目には見えてるので、タイミングを見計らってといった感じで。


 まだ大人になり切らないベアトリーチェお嬢様に悪影響? が出るといけないので、これまで極力そう言う大人な話しは避けて通って来た。


 特に俺は言葉や仕草は勿論、数年前から男性は緊急時以外接近禁止令が出てたくらいだ。

 マナーを教える時やおままごと遊び以外でお茶や食事をご一緒したのは実は数える程しかない。 


 上級貴族なのに使用人が少ないこの宰相家で、真綿に包まれるように大事に大事に育てたベアトリーチェお嬢様。

 まさか俺と結婚すると思わなかったから、もっと耐性つけとけばと少し後悔。いいか、これから教えて行けば。




「楽しみだなぁー……」




「何が楽しみなの?」




「ははは。勿論婚約式と先の結婚式ですよ。そう言えば、ウエディングドレスのデザイン画が回って来ないんですが内緒ですかね」



「当日まで内緒。でも、カイルの衣装は袖を通して貰いたいから──」




 これからの事について話し合いながら、細かな事や書類関係は宰相と要相談しながら話しを進めて行く方針で、ベアトリーチェお嬢様とお話ししている間に頭の中では結婚式終わった夜の事を脳内で繰り広げていた。ごめんねベアトリーチェお嬢様、こんな破廉恥なオジサンで。


 話の途中でメモ書きが間に合わなくて侍女長に何回か足を踏まれたが、正気に戻してくれてありがとうと心の中でお礼をする。




 俺が育てたと言っても過言ではないベアトリーチェお嬢様。


 俺が育てた……俺好みに育った女神の如く容姿に純真無垢なアンバランスさを秘めたベアトリーチェお嬢様。


 汚してしまうのがもったいないと思いつつ今すぐにでも──。




 ゲシッ




 ハイハイ、我慢我慢。笑顔忘れずに。


 楽しそうにお喋りしてるベアトリーチェお嬢様の話しに耳を傾けながら、たまに相槌を打ってたまに侍女長にメモと足蹴りをくらいながら、束の間の逢瀬を楽しんだ。



 ベアトリーチェお嬢様と早く結婚したいな。

 あんまり後だと、ドレスが入らないって事に成りかねないから。折角準備したのにそれでは余りにも可哀想だから俺の理性仕事して。




 ドカッ




 ありがとう、侍女長と言う名の理性。君の働きは忘れない。






 婚約式は1週間後、結婚式は異例のスピード婚で貴族には珍しく1か月後。


 親族だけが招待された筈の結婚式。新郎がお色直しでピンクのタキシードを着ていてしかも滅茶苦茶似合っていたと話題になり、当分話のネタにされたカイルは苦笑いを浮かべる羽目になった。



 ついでに、結婚式終わった初夜に3日寝室から出て来なくて侍女長が鬼の形相でカイルママを召喚。

 引きずり出して鉄拳制裁をくらったカイルは反省はするが後悔はしていない模様。



 被害を被ったベアトリーチェは「予想が甘かった」と、その後筋トレメニューを自ら追加。



 幸せそうな2人に安堵した王家と暗部だが、ベアトリーチェが妊娠する度に周りの国がなぜか我が国に自然吸収される自体にしばらく戦慄する羽目になった。



 カイルとベアトリーチェの孫が生まれる頃には大陸制覇を成し遂げたとかしなかったとか。

 

 

次回子どもベアトリーチェ視点。

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