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「お茶セット一式くださーい。後サンドイッチと、ベアトリーチェお嬢様のお好きな苺ジャムのクッキーも」



 勝手知ったる厨房に到着。前は毎日のように来ていたが、ここの人員は変わらないな。2年経ってるはずなのに、ついこの間の出来事みたいだ。



「カイルさん久しぶりだなー! この時間からサンドイッチって夕飯食べて行かないのか?」



「帰るつもりだったけど、まさか用意してたかな?」



「一応どっちでも大丈夫なようにしといたが……。いらないならローストビーフのサンドイッチにしとくよ。スープも出来てるから飲むかい?」



 折角だからいただこうかなって言ったら結構な量のサンドイッチを作ってくれた。

 スープは山盛り。おかわりが欲しければ取りに来てくれと言われる始末。そう、何を隠そう俺はよく食べるんだよ。燃費悪い感じで食べても身にならない。


 羨ましいと言う人もいるだろうが、お陰で身長もあまり伸びなかった。ベアトリーチェお嬢様と並ぶと少し高いくらいで、ヒールを履かれたらほとんど目線が変わらない。


 ベアトリーチェお嬢様は女性にしては高身長でいらっしゃるしな。



 台車を押しながらサロンに入室。しばらくしたらベアトリーチェお嬢様と侍女長が入って来た。



「こんなに食べるのカイル?」




「あー……料理長が夕飯用意してくれてたみたいです。帰ると伝えたらサンドイッチをしこたま作ってくれました。お嬢様、食べる分を先にお取り下さい。残りは食べますから」



「クッキーと一緒に3つ4つ取って頂戴」



「畏まりました」



 心なしかベアトリーチェお嬢様が大人しい気がする。何だかソワソワしていて、俺と目を合わせてくれないな。



「ベアトリーチェお嬢様、侍女長に何か言われましたか?」



 目は口ほどに物を言う。チラッと侍女長を見てるが、さっきと逆の立場だな。俺が抜け物にされて2人でアイコンタクトを取ってる感じだ。嫉妬はしないが、苦笑いは出る。




「答えたくないなら大丈夫ですよ」




「カ、カイルの取り扱いについて改めて習っただけよ。それでも、どうしても譲れない事もあるの。頼むから、なるべくは色々言葉にして欲しいわ。特に私の事どう思ってるとか……」



「……はぁ。なるほどなるほど? 努力はしますが、元々ベアトリーチェお嬢様の手本となるために注意してら喋って参りましたので、全部いっぺんに言うのは勘弁して下さい。本来なら口が悪くてガサツな部類なので、言葉が乱れたらすみません」



 果てさて困った。と思ったら、サッとメモが回って来た。ベアトリーチェお嬢様にバレないように見ると「とりあえず止めるまで」と書いてあったんで……え? 本当にいいの?いや、多分駄目だな。少し手加減しよう。



「それでも構わないわ。改めて聞くけど、カイルは私の事どう思ってるの?」




「……お慕いしてますし、嫁にするならベアトリーチェお嬢様じゃないと嫌だなと思っておりました。自覚したのは求婚を迫られた2年前ですが」



「そう……なの。でも、こんなハイスペックなカイルが私を好きなんて言われても未だに信じられないわ。……実は家族愛の延長とか言わないわよね? 白い結婚とかだと私泣くわよ?」




「あー、ん〜……。ベアトリーチェお嬢様の平和のために国取りを4つばかりして来ましたが、愛が足りなかったですね。自重しろと言われたんで控えめにしましたが、やはり最低でも大陸制覇くらいしとくべきでした。申し訳ありません。家族愛の延長はコチラが聞きたいくらいです。こんなオッサンに欲情してくれるのか心配で……ゴホン。失礼」



『一旦ストップ』のお手紙が届いたので、咳で誤魔化してからサンドイッチを口に放り込む。ローストビーフサンド美味しいな。肉なんで結構もぐもぐしてても怪しまれないし、時間稼ぎには丁度いいと思います。


 間が出来たらベアトリーチェお嬢様が喋ってくれるだろう。



「待って、近隣国が騒がしかったのってカイルのせいだったの?」



 おや? 今回の事は誰も何も話してないのか。

 それは不安な思いをさせてしまったかもとちょっと反省。



「元は下級貴族の三男なんで、独立したら平民ですよ。家格が低すぎるどこかなくなる予定でしたので、ベアトリーチェお嬢様に不自由ない暮らしと身分を手に入れるために頑張って参りましたが……。しかし、やはり中級程度じゃダメですよね。玉座に座った方がよかっただろうか?」



 5年くらいしたら上級貴族に仲間入り出来るようにしたいところだが、最初から上級貴族にしてもらえばよかったか……それともベアトリーチェお嬢様に選んでもらった方がよいかな。



「えっと、カイルの愛は充分通じた大丈夫デス。王族は大丈夫かなぁ……ほら! 私お転婆だし、ニコニコしながら式典でジッと座って待ってるとか、今更大勢に囲まれて暮らすとかちょっと無理かな。王妃はあんまり向いてないと思うの」



「そうですか? 気が変わったらおっしゃって下さい。今なら選び放題ですから」



「おぅふ……。それにホラ……カ、カイルが王様になったなら、妃をいっぱい充てがわれて私がお嫁さんとしてカイルを独り占め出来ないでしょっ!?」





 ダァァァァンッ





「すみません、ハエがいたので始末しました」



「ははは。ありがとう侍女長。おかげでサンドイッチ無駄にしなくて済みそうだよ」




「え? ……カイル袖口が」




「お構いなく。そろそろ新調しようと思ってましたから。クロスも新しい物をお贈りします」




 縫い付けられたシャツからナイフを外して、刺した犯人の侍女長に返す。危ない、止められなければベアトリーチェお嬢様に手を出すところだった。サンドイッチ食いっぱぐれなくてよかった。


 気を引き締めないとこの無自覚に煽って来るベアトリーチェお嬢様に太刀打ち出来ない。



「ベアトリーチェお嬢様、こう言うお話は婚約後に致しませんか? ちょっと身が持たないと言いますか……あ、はい。黙ります」




「婚約? すっ飛ばして結婚しましょうよ?」




「いえ、婚約式のドレスに身を包んで婚約指輪をつけたベアトリーチェお嬢様を見たいんです。よい宝石を見つけて来たので出来れば身に付けて欲しくて。後1週間お待ち下さい。職人に不眠不休で作らせてますから」



「それにしてもこだわり過ぎじゃない? もしかして、王太子殿下……今は元ね。元王太子殿下みたいに婚約破棄したいの?」



「……いえ、違うんですが、誤解です。何て言えばいいか」



 結婚は早くしたいけど、婚約式もしたいと言うのをどう上手く説明しようか悩んでいたら『止めるから言え』と侍女長からGOサインが出てしまった。

 どちらかと言うと恥ずかしいから言いたくないんだよな。


 口元を手で覆って、ちょっとベアトリーチェお嬢様から視線を外しながらとりあえず言うだけ言ってみる。当たって砕けたらオヤジが骨を綺麗に拾ってくれるだろう。



「……結婚式のドレスはそちらでご用意するでしょう?」



「ん?、うん、そうね。もう着れるし、最終調整もバッチリよ。いつでも式を挙げられるわ!」



 準備万端だな。いや、今すぐ結婚も魅力的だが。



「婚約式のドレスや装飾品って男側が用意してもいいものですよね? 1回くらい俺の趣味で選んだ物でこれでもかと着飾った姿を見せて欲しい…………ワガママな男ですいませんね」



「カ、カイルがそんな事思ってくれてたなんて! 私嬉しくて…………ちょっとクッキー食べたい気分デス。もぐもぐ」




 止めるってベアトリーチェお嬢様側だったのか。多分あちらも侍女長の指示のメモやらカンペやらがあるんだろうな。



 とりあえず婚約式の俺チョイスドレスは気持ち悪くは思われてないようだ。下手すると趣味が悪いとか、用意したのに婚約自体断られて無駄にドレスなど準備したとか悲惨な案件に成りかねないので、男側からしたら結構勇気がいる発言。


 婚約式のドレスを内緒で作って、後で婚約者に勝手に作ったことを怒られたと言うのはよく聞く話だな。



「そんな理由なら婚約も大賛成よ♪ もちろん、カイルの誕生月に合わせてドレスは赤色にしてくれたわよね?」




 その発言を聞いて俺はピシリと固まった。


 そっと盗み見たメモには『ほどほど希望』と書かれていた。元々準備してあったメモみたいだな。




 ベアトリーチェお嬢様の誕生月に合わせて、生地はピンク色のドレスの予定にしちゃったな。さて、どうしよう。



 クタクタに煮込まれた野菜スープを無駄に咀嚼そしゃくしながら、俺は『ほどほど希望』と言う無理難題に立ち向かった。




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