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「向こうの家の画策の兼ね合いからちょっとお馬鹿さんに育てると言ったが、そもそもカイル君の『馬鹿』の基準がパパはよく分からないんだけど? マナーやダンスとかは別に完璧でいいんだけど、5ヶ国語堪能でさらに高度な教育施して騎士もビックリの体術とサバイバル術や料理に裁縫、家事に上げたらキリがないな。うん」



「いや、半分もしないで習得したら全てやめさせたが? 不十分だろう。次の婚約相手も分からなかったし、本当は軽く地方訛りも含めて20言語くらい教えてドコに国外追放や修道院送りにされてもいいようにしたかったけど……何その哀れみの目?」



「カイル君、そんな頭の良い子に育てたら次の貰い手もいないよ。こんな奥さん手に負えないって。中途半端で、下手したら嫁いだ家が領地改革されてパワーバランス崩れちゃうよ」





 この国は暗部の活躍のおかげで派閥争いなんて可愛いもので、みんな線を引いたみたいに均衡が保たれている。

 側から見たらイガミあってるよに見せかけはいるが、実はみんな仲良しこよし。と、までは言わないが「そちらも大変ですな」って言える位には関係を築いている。


 他国などがドコかの派閥にちょっかい出して来たら、真っ先に暗部に知らされて、不穏分子を炙り出されて排除されるからな。替えはいくらでもいる。




 特出した家はベアトリーチェお嬢様がいる宰相家と、敵対派閥とされる金庫番を担う財務の家に、騎士団長を代々輩出する家位だ。


 そこらの家は矢面に立たされてる王家と一緒で、国民からの人気も高い。

 暗部が力を入れてご子息ご息女を育成するのに力を入れてる家々でもある。



 パフォーマンスでたまに家督争い的なものもあるが、敗れた方の行き着く先は、暗部の手厚いアフターケアもあるので摩擦もないに等しい。


 逆に家督を継ぐより人生が楽だと上層部では人気らしい。そんなにしょっちゅうは起こさないので、当たったらラッキー位の扱いだな。



 女性だと、他国に嫁ぐとかも有りだが大体は途中で呼び戻される。みんな選民意識が高いから、余生はこの国で平和に静かに暮らしたいとか。


 中立国なんで、よっぽどの事されないとこちらから戦争なんて起こさない。大体は防衛戦やたまに威力を落としたい国を叩くために援軍派遣だな。


 中立国でこの大陸ではもっとも歴史が古い国として、周辺諸国からはひともく置かれているのが我が国の立ち位置だ。




「貴族が駄目なら豪商にでも貰い手はあるだろう? それの何がいけないんだ」



「大問題だよ。貴族に嫁がないなら、カイル君あの子に着いて行っちゃうだろう?」



「勿論。ベアトリーチェお嬢様が心配だからな。ダメって言われても影ながらサポートするからな」



「それが出来ないから、あちらの家もカイル君に合わせて軌道修正したんだよ。もう、君とくっ付けてしまった方が問題解決がスムーズに済むようになってしまったから、早く動きなさい」



 え、何で豪商に嫁ぐのが駄目なんだ? もしかしなくても俺のせいかそうですか。



「俺が貴族社会から出るのを許さないって事か……。好きにさせて欲しいんだが」



「パパもカイル君を野放しにするのは怖いからね。よっぽど酷い事しなければ、敵にはならないと思うけど。実行したら、あちらの家はカイル君が死ぬまでは安眠出来ずに怯えながら暮らす事になる」



 下手したら、俺が死んだ後にベアトリーチェお嬢様殺されけど、そんな事はさせないと俺が躍起になるのを恐れているらしい。無駄な心配だが、張本人の俺は何も言えない。



 多分、片鱗でも見せたら対策のために独立機関でも立ち上げて、ベアトリーチェお嬢様本人と子孫を守護する者を育成するくらいの事はやってのけるだろうな。


 オヤジにそう説明すると「だろうね。カイル君ならきっと朝飯前だろうね」と投げやりな感じで遠い目で言われた。



「カイル君ならあの子を真っ当にそれらしく奥様として舵取り出来るし、何よりも君がそれでこの国で大人しくしてくれれば安泰だよ。暗部の総力上げて殺されたくなければ、頼むからこれから先は大人しく平和に過ごして欲しいな。パパからの一生のお願いだよ。こんなところで内部抗争とか洒落にならないからね。刺し違えてきっと大打撃で国潰れちゃうから」



「場合によってはそれもアリかも……」



「コラコラ息子よ。物騒な事言わないで。そんなんだから裏で『魔王』とか言われちゃうんだよ。他の家と表の調整はパパが話をしとくから程々に頼むよ」



「ベアトリーチェお嬢様はこんな俺に嫁いで幸せだろうか?」



 残念な子を見るような目で見られたが、オヤジの方が今は残念な見た目だからな。


 監視なのか、一戦交える気でいるのか知らないが、天井裏や隠し通路のいたるところに潜む奴らは、きっとオヤジを見て同じ目をしていると思うぞ。



「そこは本人と話し合いなよ。パパは全力で応援してるけど、いい歳した息子の嫁が孫みたいな年齢差でも気にしないよ。ロリコン気味なのは否めないけど……このナイフ毒なしだよね?」



「多少痺れるくらい」



「パパに対して扱いが酷くない?」




 手に持っていたナイフを投げてオヤジの頬が薄皮1枚傷ついたが、どちらかと言うと隠し通路に隠れている奴に投げた。

 オヤジの発言で気配が乱れたからな。実際の現場だったら殺されても文句は言えない。



 ナイフを抜き取ってから壁をダンッと叩くとそいつは退場したらしい。

 他の奴も気を引き締めたのか、気配が前よりは気薄になったな。




「カイル君の嫁なら客観的に見たら幸せだよ。だって隣にいる限り世界一安全だと思うもん。逃げたら多分世界一危険だから、そこはママとパパがそれとなくお嫁さんにアドバイスしとくから大丈夫大丈夫」



「それは助かる。オフクロそう言えば今ドコだ?」



「隣国に出張中だよ。ちょっと最近きな臭いからね。カイル君、当たって砕けたら粉々になった骨は拾ってあげるから、勢いも大事だよ。そんな不安そうな顔しないで。なるようになるさ。王太子殿下の婚約申し込みは揉み消さない方向だけど、あの子が学園卒業する頃にはフリーになるよう手配はしとくから、それまでは好きに過ごしてよ。カイル君の方の根回しよろしくね」



「はぁ〜……本当に大丈夫かな? 外堀埋めていざ駄目ってなったら俺暴れるかも」



「そうならないようにしとくから。あ、頼むからやり過ぎないでね? フリじゃないから。あの子の教育と同じ結果にしないで。気をつけるんだよ」



「わかった。とりあえず2年は忙しいから、ベアトリーチェお嬢様の学園卒業までには戻って来る。じゃ、しばらく俺も留守にするな」



 俺の発言に対してオヤジは引き攣った笑みを浮かべた。




「待て待て待てカイル君。2ヶ月の間違いでしょ? 2年も留守にするってどこまで行くつも……カイルく〜ん。戻ってこ〜〜〜ぃ」




 オヤジの静止の声は聞こえたが、そのまま窓から飛び降りて宰相家の屋敷に戻った。



 あのベアトリーチェお嬢様を嫁にするんだ。半端な事は出来ない。これから忙しくなるぞ。




 頭の中でこれからの計画を練り直しながら荷物を纏めて、旦那様に手紙を握らせ……俺は長い旅に出た。





 それと、ベアトリーチェお嬢様には手紙を残したが、本当に俺の事が好きだとかは怖くてまだ聞けていない。


 結婚を迫られたのが実は白い結婚前提で「男女のようには愛せないに決まってるでしょ」とか言われたら、焚き付けた奴らを抹殺する位じゃ済ませそうにないからな。



 こんな歳まで自覚出来なかったベアトリーチェお嬢様に対する執着の深さに嫌気が差しながら、俺は好きに我が道を行くと心に誓った。



 先ずはきな臭い隣国からだな。恐らく生前で1番デカい仕事になるぞ。気を引き締めて行こう。






 募らせた想いを成就するため、斜め上な方向でカイル的には程々にした結果。実は周りには『やり過ぎ』の烙印を押されるのは、2年後の事。



 ちなみに、やり過ぎた原因はカイルパパが途中で諫めるのに匙を投げて、カイルママも参加して息子に全面的に協力した結果である。



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