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ウェデングドレスをこの手で10


 カイルはベアトリーチェたんに対しての執着心の度合いは『他の者に取られたくない』。好感度爆上げの鍵。


 実はカイルこの歳まで『恋』と言うモノを知らない色々とつのらせた人でもある。


 コレは私も分かる。こんな殺伐とした裏の世界では不必要なモノだと私も思うし、恋などする暇も意味もない。


 そんな事してるなら推し活に打ち込む。暗部の全員が全員そんな考え方とは言わないけど、大体は一緒なのかな?


 概要だけ説明して、恋愛小説を好きに同志達に書かせた時に、揃いも揃ってほぼほぼ心理描写が混沌としてた。

 擬態出来てる者ももちろんいるし、普通に書けてる人はいたけど…人によってはたまにボタンを掛け違えた様に少しズレてる所もあったな。


 確認作業と書き直し訂正が面倒になると予測出来たので、そちらは何人か作家を発掘して早急に外部委託でしたよ。よかった早めに気がついて。


 大人向けなのとか、冒険小説は得意なんだけどね。バトル時の描写がリアルでウケは良かった。リアル過ぎるのがたまにキズ。


 元々恋愛小説は暗部の中では教本として扱われてる。一般人の心理を理解するのに大活躍だとか。今回ばら撒かれた本達も、用途は違うけどある意味では暗部に大人気です。




 恋を知らなかったカイルの思考回路や所業はまさに常人では理解に苦しむだろうが、端的に言うと条件反射で体から篭絡してしまえと言うのが、骨身に染みてしまっている。



 詳しくは知らないが、多分ソレでカイルに落ちない人が今までいなかったんだろう。

 具体的には情報収集する過程でそう言う手段を使うのは、暗部ではよくある事だ。


 カイルの中では一般人は恋愛したら、身体をつなげるモノだと思ってる節が否めない。こちらから言わせて貰うと、かなり残念な考え方だと思う。カイル推しはそんなところも好きらしいけど。


 ゲームでカイルが「本日のお茶はーー」とか話してる最中に、アトリーチェたんに対して脳内で悪戯を考えてる時は早く逃げるんだベアトリーチェたぁあぁぁぁんって何度叫んだか。

 イージーモードは心の声だけじゃ無くて、本当に危険な時とかはカイルの脳内ムービーが流れるんだけど……カイル推しはソレに釣られて何度逃げ遅れてバッドエンドを迎えた事か。掲示板に『ムービー見切って死亡。本望です』って度々書いてあったね。


 恋愛小説を読んで、果たしてどう思ってどう感じたかを機会があったら聞いてみたいね。


 まぁ、あの色香を前にしてプラトニックラブを貫きましょう!なんて言う聖女がいなかったんだろう。


 カイルから進んで普通に告白して、お付き合いを始めてとかした事ないと思う。あるとしたらソレは任務だ。恋愛では無い。


 

 ゲームだと、カイルの好感度パラメーターはコチラから見えているが、カイルから見るとベアトリーチェお嬢様にそんな物は存在しない。


 現実世界でソレは当たり前だけど、カイルはとても不安に思ってしまう。

 目に見える身体と言う物で繋ぎ止めようと必死になるのは、生まれや生い立ちに人生経験からしたら仕方ないかなと……始めて同じような立場に立ってみたら、少しは気持ちが分かった。


 私はまだ前世と言う物が存在したから、『普通の恋愛』が何となく分かるけど。



 当たり前の様に「愛してる」と嘘を囁いて来たカイル。言葉の羅列だけでは、カイルは理解出来ない。嬉しくは思うが。

 好意は向けられてると分かっていても、どの程度なのか計りかねてるんだろう。


 ベアトリーチェたんはカイルに対して最初から好感度100%振り切ってるけどね。4歳から好きだから年季が違うよカイル。


 6歳でカイルとの結婚を決意してるくらいだから。でも、カイル信じきれないんだろう。いつもの様な女性達と勝手が違うから。



 恋を知ってしまったカイル。ベアトリーチェたんを大事にしたいと言うのもあるが、手に入れてしまいたいと思う葛藤が拮抗。

 ゲームの好感度は80%が恋心だとしたら、残りの20%は『理性』である。


 その理性を残しつつ、結婚するのがゲームクリアの鍵となっていたが現実はもう100%振り切って120%。


 パーセンテージは目には見えないし、これはゲームではなく現実だが、酷似してる世界なのは変わりは無い。何よりキャラは勿論、似たようなセリフを何度も聞いた。



 ソレを踏まえて好感度81〜99%からは理性が仕事しなくて、反射的にベアトリーチェたんに手を出しそうになる。


100%になると何になるかと言うと、狂ったカイル自身に殺される。病んで狂ったヤンデレカイルはエグい。本気度が違う。


 大体無自覚に煽りすぎたり、他人にちょっかい出されて嫉妬故のとか。

 後は選択肢をミスって『嫌い』と言ったら即刻目の前から居なくなる。


 お前人生で『嫌い』って言われた事ないのかよと思うくらいの哀愁漂うお顔で、目の前から居なくなるとか。


 そんなカイル、好感度120%になると何が起きるのかと言うと、ベアトリーチェたんが大事になりすぎて手が出せなくなるんじゃないかと言う噂だ。


 何せ好感度が一定数上がると襲いかかってくる様な猛獣である。

 攻め姿勢のカイルが身を引くと言う逃げの選択を取るので、一周回って弱体化したんじゃないかと言う説が濃厚になった。



 小説版だと、ベアトリーチェたんが引き止めて「年齢なんて気にしない。好きだから結婚したいんだよ」的な事を言ってた気がする。

 言葉では無く、結婚は書類と言う目に見えて愛を確認出来て法的に縛れるものですからね。


 カイルは暗部。まさか自由に恋愛結婚するとか言う考えが無かった。そもそも、貴族社会でも少数だな多分。

 普通の令嬢は親に言われた結婚相手と婚約期間を経て親睦を深めて結婚に至るからね。

 


 ベアトリーチェたんのプロポーズに対してカイルは旅立つ流れだ。置き手紙だけ残して。


 ベアトリーチェたんの為に憂いを無くしに行く的な事言ってたが、カッコつけてるだけで、頭冷やしに行っただけじゃ無いかと私は勝手に解釈したけどね。



 ヘタレ化したのか確認する為に、私は確認作業と反撃の狼煙をあげようと思います!





 カイルにパンチを仕向けたら避けない。罠も張って無いのに自分ですっ転んでる気すらする。


 最早フルボッコにも出来そうだが、逆に心配になる。ねぇ、ちゃんと言い返して?


 思ったより酷くて、怖くなってやめておいた。カイルがヘタレなら、私はビビりです。

 ついでにベアトリーチェたんはカイルの事大好きだぞと匂わせて、からの「そこはご本人にお尋ね下さい」。


 カイルは戦略的撤退を選択して部屋を出て行った。




「もはやアレはカイルじゃ無い気すらして来た?いつもの自信は?キャラ崩壊か???バグか???」



 おっといけない。ベアトリーチェたんの部屋から出ないと、同志達が心配するので出よう。

 屍回収しといて下さいとか言っておいたからね。


 部屋を出て………まさか私、生きれると思わなかったから…これから先どうしよう?


 生存の可能性は薄いとみてとって、色々と引き継ぎやら何やら済ませてしまったよ。丸々手が空いてさて何しよう?




 とりあえずベアトリーチェたんだな。




 ベアトリーチェたんはまだ宰相のところで言い合いしてた。

 ソファに腰掛けてお茶まで飲んじゃってるよ。喋りすぎて喉乾いたんだな。


 ちょっと反抗期気味なんですよね。

 だがしかし、ツンとしたベアトリーチェたんもかわゆいので問題ない。寧ろご褒美ですジュルリ。宰相しか被害は被ってないし。


 




「最近前にも増して家に帰って来ないお父様にとやかく言われたくないわ」



「……それは……」



「それに、私やお兄様の結婚相手は宰相家が自由に決められない筈でしょ?」



「まぁ、そうなんだが…希望くらい言ってもいいだろう!私はアレを認めない!!だって暗部なんだぞ?不用意に触れては行けないものだ。コチラから興味本位に近づかなければ悪さは何もされない」





 宰相の中では、暗部は無害な妖怪か何かだと思われてたのか。庇護者が暗部をどう捉えてるのかの…貴重なサンプルである。


 王族は暗部を『守護者』と公言してるけどね。ポジティブだと思います。



「お父様はオイタをしてお仕置きされたんでしょっ!私、お友達に聞いたんだから!」



 おっと〜。カイル妹よ。余計な事教えたな。コレは不味い流れかも?








「あちらが先にこの家を捨てたんだ。………私に希望を持たせる行いをさせたのは、この宰相家を庇護者だとのたまっていたアレらの責任でもある。私は感謝しているがな。お陰で今のベアトリーチェがあるんだ」




 暗部の反対を押し切り振り切り、新興貴族上がりの何も知らないベアトリーチェママンを強引に娶ってしまった。


 頭の良い方だったので、薄々この国の裏側に何か居るとは知ってたみたいだが。更に宰相家に足を踏み入れて、暗部の存在を知ったベアトリーチェママンは後悔した。


 自分の所為で何も知らない実家が消されるし、宰相家も暗部から見限られ他の貴族からも一斉に距離を置かれて。



「それ、自分もやらかしたから私も同じ事するなって事でしょう?酷くない!自分の事は棚に上げて、私は好きな人と結婚しちゃ駄目だって言うの!!!」



「そうだ。国家転覆を目論んだ新興貴族の娘とは訳が違う。カイルの嫁になると言う事はその国の裏側の汚いところをその目で見なければ行けないんだぞ?ベアトリーチェにソレが耐えられるとは思えない。我々とは倫理観が違いすぎる……とても夫婦として並んで更には一緒に暮らすなんて土代無理な話しだ。お前に人が殺せるのかベアトリーチェ?人が死ぬと分かっていて、見て見ぬふりは出来るのか?この際ハッキリ言おう。きっと聞いてるであろう者達にも」




 至る所に居る暗部が、ちょっと驚きを示した気がした。


 庇護者から話しかけられるなんて事したこと無いんだろう。私の様に使用人としてお側に居る者とは訳が違う。



「私は妻さえ手に入れば他がどうなろうとどうでも良かった。国などどうなろうとな。また見限るなり、私の首を息子とすげ替えるなりいつでも好きにすればいい。妻を私の手の届く位置に近寄らせた事を感謝すると同時に、お前達を未来永劫許しはしないだろう。こんな選択を私に取らせて………無論、1番の責任者は私だが、妻が死んだのはお前達の所為でもある。愛する者を手に入れる喜びと同時に、亡くす絶望と苦痛を植え付けてくれてありがとうよ。私は自室に行く。誰も近づくな…近づいたらこの眼を抉り出すからな」




 バタンとしまった執務室の扉を背にして、私はベアトリーチェたんに声をかけようとして………やめた。代わりにハンカチを手渡す。




「……お母様が死んだのは………貴方達の所為なの?」



「違いますお嬢様」



 ポロポロと涙を流すベアトリーチェたん。あぁ…泣いてても可愛いんだけど、胸が苦しい。悲しませてごめんなさい。推しを悲しませるなんて、所業をしでかして申し訳なさでいっぱいになる。




「信じてたのに……信じてたのに……」



「違います…お嬢様」



「何が違うのよ?言い訳なんて聞きたくーー」



「死んでないんですお母様」



「え?本当に?」



「はい」



「本当に本当?」




「私が保護してるので、間違いありません」




 ベアトリーチェたんは何を思ったのか、私に向かって駆け出してタックルして来た。


 からの泣き笑顔で「ありがとう」をいただきました。レアだ。抱きつかれて泣いてる上に笑顔なんてコンボ…ぐはっ!!?




 供給過多で瀕死です。同志達よ、私がこのまま死んだら骨くらいは拾って下さいね。




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