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ウェデングドレスをこの手で9



「結婚して」



「は???」



 ベアトリーチェたんの恥ずかしながらのプロポーズいただきましたぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁっ!!!?



 素晴らしい。素晴らしく可愛い!!



 カイルは塩対応してるが、私には分かる。


 アレは色々頭の中で考えてる。伊達に付き合いは長くないからね。笑顔でも手にとる様に何を考えてるか分かるよ。




 そして、ベアトリーチェたんを引き摺りながらも宰相に事実確認に。


 私は影ながらその様子を見守る。今は親密度ひっくり返して好感度はそんな爆上がりしてないので、かなりドライな感じだ。


 しかし、ちょっとは嫌なんだろう。王太子に可愛い可愛いベアトリーチェお嬢様を隣に立たせる事が。



 話しを聞いてるカイルを誘い込む為に、私はベアトリーチェたんの自室に急いで足を踏み入れた。




「入るよ」



「どうぞ」



 流石カイル。来るのが早いよ。私は全速力のつもりだったけど、僅か数秒の差で部屋に滑り込んで来た。


 そして、徐に本棚を漁り始める。模様替えして、これ見よがしに目立つ所に設置したからね。


「ははは。何だこれは……おい、話しが違うだろう侍女長」




「お嬢様の趣味に口出しするのはよろしくないかと。ちなみに最近はコチラを愛読していらっしゃいますね」




「『イケてるオジ様の落とし方』って…何処の出版社だ?うわー……………なるほど。ギリギリ全年齢向けだが駄目だろこんなの読ませちゃ?貴族じゃなくて平民に出回ってるヤツだ。あぁー……さりげないボディタッチとかもはやベアトリーチェお嬢様が抱き着いて来るのはコレのせいだったか。子ども返りかと思ってたぞ」



 出版社の記載は一応してるが、世界に3冊しか無い。残りは予備と保管用しかないからね。

 私が用意したと言うか書いたモノだし、世に出す予定はありません。


 ソレの中身をパラパラと読んで、また読み返している……読み返してるだと?


 大体1回読んだら頭に入るあのカイルが読み返してる?もしかして、気に入ったのかな???

 



「俺って分類的に『イケてるオジ様』なのか?」



 見た目はね。見た目だけはそう思うよ。

 しかし、ゲームの世界だからなのかはたまたカイルパパンの血なのか知らないが、実年齢よりカイルは若くは見える。


 他の人もゲーム仕様なのか現実よりは若干見た目が若いと思う。肌の張りも良いしシワとか少ない。



「『取り扱い注意の危険物』の方が私はしっくり来ますが、お嬢様はその様に思ってらっしゃいますね」



 おっと。思わず本音が暴露してしまったが、ベアトリーチェたんに『イケオジ』だと思われて少し気分をよくした様だ。

 しかも、ダイレクトに『落とし方』なんて書いてあるから、好意を寄せられてるかも?と、少しばかりは疑問に思ってくれた筈。



「へー……………。で、何でこんな本をベアトリーチェお嬢様に勧めたんだよ?」




「巷で流行ってるらしいですよ。お友達にオススメされたとおっしゃってました」



 嘘は何も言って無い。

『おじ様×美少女』も需要はあるし、私と同志達がばら撒いたソレ系の本の売り上げを見たら流行ってると言っても過言ではない。


 今カイルが持ってるその本では無いだけで。



「『お友達』ねぇ……。巷では流行ってないだろ。今は悪役令嬢とか婚約破棄とかのがあるだろう?あぁ、一応読んではいるのか。こう言うのお好きなんだな……ふむふむ。後で貸していただこうかな。コレは読んだこと無いな」



 あ、ソレ新作なんですよ。まだ印刷したてホヤホヤで一般には出回って無い。


 しかし、カイルがここまで自主的に恋愛小説を読破してると思わなかった。


 一時期「若い子の考えが分からん」みたいなコト言ってたので、気軽に恋愛小説でも読めば?みたいな事言った記憶はある。


 実際今手に取った新作以外は背表紙だけ確認して見向きもしてないし。


 と、思ったらめざとく『暗部のススメ』を見つけてしまった。そうですよね。製本も雑な感じのその本は流石に目立ったか。









「………何がしたいのお前?」




 カイルに直接こんな面と向かって殺気を向けられた事はない。ハッキリ言おう。チビりそう。


 ダークな英才教育のおかげで、何でも無い様に装いは出来てるが。流石に暗部最強は怖いです。


 王太子との婚約破棄後の行き先は貴方様ですよ。もう、外堀どころか城まで立ててる最中です。

 ベアトリーチェたんとの新居に抜かりは無い。


 さて、腹を括ろう。流石に嘘でも……私の推しのあったかも知れないバッドなエンドのシナリオを口にするのは勇気がいる。


 ベアトリーチェたん本人不在で好感度を遠隔で上げると言う正に離れ業。


 好感度的な物は爆上がり間違いなしだが、多分私コレを口にしたら死ぬ。



「お嬢様はあらぬ罪で断罪された後に娼館送りにーーー」




「へぇ………お前達俺に殺されたかったんだ?流石に房中術は仕込んで無いけど侍女長がこれから手ほどきするとか言わないよな?」




 ぎゃあぁあぁぁぁあぁっ!!?



 あ、死んでない。死んでないけど怖い怖い怖いヤバい死にそう。殺気に押し潰されそうで空気が吸えない!?



 しかも、何か良からぬ事考えてないその目は?ブツブツ独り言呟き始めてるし…。



「ーーーーどうやらウチの実家も1枚噛んでるな。よし、オヤジから潰すか。大丈夫、2年も猶予があれば軌道修正出来るだろう。オヤジに穏便にご退出してもらって、侍女長の実家は計画に携わった上の方を根絶やしにでもして吸収合併してしまえば行けそうだな。………とりあえず、あちらの当主を水責めして吐かせるか」




 あぁ!!矛先が別に行ってる不味い不味いウチの当主の父を殺されたら王様が暴走してしまうかも知れないやめてーーーっっっ!?





 踵を返したカイルの腕をガシッと掴む。もう縋り付く勢いだ。踏ん張ってると笑顔を向けられた。


 父は殺さないで下さいカイルさん!




「あ、ごめん。声に出てたかな?水攻めなんて生温い事しないで特別に拷問にしようかな。最終的に海に沈めればいいかなと思うけど……食卓に並べて欲しくなければその手を離してくれる?」




 ……あれ?カイルの心の中での私の立ち位置って、もしかしてそんなに悪くないのかな?


 即座に殺して来ないし、吸収合併して上を殺すと言う位なら目の前の次代の私を今ここで殺した方が手間が省けるのに。



 そして何よりよく考えたら言動がゲームと違う。もしかして、もしかして本当にーーー。




「どうしてそこでご自分がお嬢様を掻っ攫うとか思い浮かばないんですか?」



「あのねぇ…もう直ぐ四十のオッサンがこれから未来ある若者を手篭めにするなんて外聞悪いだろう?ベアトリーチェお嬢様の名誉が傷付くし何より可哀想過ぎて………え、何でそこで満面の笑みなの?」



 私はこのセリフを聞いた事はない。



 聞いた事はない。ゲームはフルボイスだったから。


 でも、似たような言葉を読んだ事はある。



 オマケ小説10ページ分の中に出て来た。


 言われた相手はベアトリーチェお嬢様本人だったけど。



 ふふふふふふふふ。あはははは!!そうよ、その言葉を聞きたかったの。ありがとう神様。

 まさか、生きたまま『カイル皇帝ルート』を私に授けて下さって。


『カイル皇帝ルート』別名『ヘタレカイル』がずっと欲しかったんです私。


 前世並びに今世のベアトリーチェたん推し庇護者を代表して、神に感謝を捧げます。


 これで憂いは無くなった。もう私は無双状態。こんなヘタレたカイルなど私の敵では無い。



 さぁ、カイル。覚悟しなさい




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