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ウェデングドレスをこの手で8



 カイルが書いた新人教育用の『暗部のススメ』はかなり直接的な事も書いてある。容赦ない。

 普通に読むと下手なホラー小説より怖い。淡々と書かれてるのが、尚更だ。


 ベアトリーチェたんに見せるか今の今まで悩んだ結果だが……流石私の推し。引かれるどころかちゃんと暗部と言う生き物を受け入れてくれた。


 もはや擦り切れるくらいまで読んで、新しい物を手渡した時には、ごめん次はちゃんと大事に読むと言って、はにかみながら笑顔を向けられた時に悶絶しそうになった。



「侍女長も私の庇護者なの?」



「はい。お嬢様がお生まれになられた時から」

(前世から推してる!)



「そうだったんだ……ありがとう。私を選んでくれて」












 推しからの『ありがとう』。


 暗部の変態的生態を容認してくれて、更には『自分を選んでくれてありがとう』とまで言われた。心が広すぎるにも程がある。


 ベアトリーチェたんに認められた…推しに存在を肯定された気がして歓喜しか無い。


 やはり、私はこの方の為にこの世界に生まれてきたんだ。感無量で直ぐには言葉に出来ない。

 でも、コレだけは貴方に言いたい。声を絞り出して何とか言葉を口にする。




「こちらこそ。生まれてきてくれてありがとうございます。……未来永劫、来世の先まで私はお嬢様にお使えしたいと思っております」



「来世は言い過ぎだよ。でも、嬉しい」



(嬉しい頂きました。供給ありがとうございます!)



「勿体ないお言葉でございます。しかし、カイルさんには暗部の存在を知ったのは今は内緒でお願いします。逃げられると困りますので」



「分かったわ。気をつけるね」



 ここで、庇護者が暗部の存在を知った時の取り決めに入る。


 大体は学園入学時に言われるものだが、ちょっとフライングしたかも。


 学園は貴族だけでは無くて、暗部のピョピョした雛〜バリバリ現役まで紛れ込んでる。言うなれば、次の推しを見つける為の公開場所でもある訳だ。


 学園は寮暮らし。授業中は勿論、普段は見られない様な推しののびのびとした生活風景も眺める事が出来る暗部にとっては最適の場所である。


 しかし、見られる側の『庇護者』に配慮して何処までプライベート空間を覗き見て良いのかは庇護者次第。

 言うなれば、庇護者達は暗部の存在を知ってる者は、暗部獲得の場でもある。


 コレは個人の采配によりやはり異なって来るので、全面的に見られるのを禁止にしたら、全く暗部が寄り付けなくなる。そんな庇護対象者中々いないけど、ない訳ではない。


 因みに王族は全部オープンだ。もう一度言おう。全部だ。24時間365日何処からでも見ていい。自分の目に触れさえしなければ。


 王宮に隠し通路や覗き穴が至る所にあるのはその為である。場所取り大変だって言ってたな兄が。



「現在は私の独断で中庭までとさせていただいております。いかがなさいますか?」



「んー…自室意外なら。あ!後はトイレとお風呂は恥ずかしいからのぞいちゃダメ。後は…」



「それでは、お着替え中もそうさせていただきます後はーーー」



 幾つか取り決めをして、徹底させておきますと声をかけるとベアトリーチェたんは了承された。

 ベアトリーチェたんには内緒で申し訳ないけど、緊急時は容赦なく覗くからね。ごめんね。


 因みに庇護者候補でない者は、もはやいつでも監視される事もあるので、人権とかもないよね。いつでも監視出来ると言う事はいつでも殺セ……ゴホンッ。何でもありません。








 そして、やって参りました学園入学。私は暴挙に出た。ベアトリーチェたん推しよ。そして今はまだベアトリーチェたん推しとなり得ない予備軍達よ。



『悪役令嬢ベアトリーチェ』が見たかったら、全力で敵を排除し、無事にベアトリーチェたんを卒業させるのだふははは。




 野暮ったい改良されてない制服に、更には伊達のビン底眼鏡。おみ足は黒タイツを装着し、髪型はおさげスタイルで学園に送り出した。勿論私も侍女としてついて行くけど。





「話しが違うよ妹よ!?た…楽しみにしてたのに!!!悪役令嬢モノを書かせたら右に出る者はいないと言われる先生がプロデュースであの魔王カイルの妹監修で更には素材が宰相家血筋のベアトリーチェ様だよっ!!!」



「私の大事な大事なベアトリーチェ様を『素材』とか言わないで王家じゃあるまいし」




 バシンッビシンッ



「ひぃいぃぃぃっ!!ごめんなさいごめんなさい!鞭はヤメテ本当っ!!?」



「いいですか、兄。そして隠れてる人達よ」



 私が壁に向かって語りかけたら、ちょっと気配がビクッとした。




「不満もあるでしょう、しかし、我慢して我慢して我慢した先にご褒美が待っている。正に今は我慢の時です。飢餓状態からの卒業式パーティでの渾身の力作。正に乾き切った大地に恵みの雨がごとくお披露目された悪役令嬢はさぞ甘美な事でしょう」




 兄がゴクリと喉を鳴らした。よし、もう一息。




「しかも、アレは期間限定の仮の姿。庇護者は着飾らせて輝かしいお姿がデフォルメ。カイルと結婚したらあのお姿は2度と拝めないんですよ。今を楽しみなさい。学園限定のあのお姿を。休日はご実家の宰相家に足をお運び頂きドレスをお召しになる。仮初の姿と休日で『ギャップ』を楽しむのも良い。それとも学園限定のあのお姿に美しいさ探しをしてもよろしい。分厚い眼鏡からのぞくチラッと見えた翡翠の目。隠しきれない気品漂うその仕草。どうですか?楽しそうでワクワクするでしょう?」



「間違ってました…俺が間違ってました。あえてあのお姿分かりました。耐えます。今は耐えてみせます!!」



「わかって貰えた様で良かった。では解散!」




 兄共々いなくなって気配にホッとして……言い訳が通用して良かった。本当に良かった。



 ベアトリーチェたんの魅力はもはや凶器になりつつある。あれで悪役令嬢とかやらせたら、何も知らない一般の悪い虫が寄って来てしまうと危惧しての事である。


 カイルじゃないけど、隠さないと本当に危ない。


 嫁ぎ先も決定してると言っては過言で無いし、学園で学ぶ事も少ない……ベアトリーチェたんにはお友達との学園ライフを楽しんで貰いたいな。




 そう『お友達』。女教師になってもらったカイル妹(色気全開)に目を向けてもらってベアトリーチェたんは目立たず騒がずひっそりと平和に過ごしていただく算段である。



 隠れてたカイル妹推しよ。期間限定女教師ヴァージョン楽しんでね。




 そして、学園入学。更に2学年に上がる間際。ここが正念場。命運を分ける王太子とベアトリーチェたんとの『婚約打診』の幕開けである。




 そう、カイルの親密度パラメーターが好感度パラメーターになり替わり……庇護者だと思っていたベアトリーチェお嬢様をカイルが恋愛対象として自覚する、大事な場面である。




 恋心を自覚したカイルは中々に手強い。身を引き締めて行こう。



 夜に対しての魔王降臨が早まったら、目も当てられないからね。ガクブル。


 ベアトリーチェたんと数多の同志達と共にその決戦の日に向けて準備をススメて行く事にした。




 そして、私は……不確かな未来を切り開く為に、私自身の命を賭ける事にした。失敗しなら私が死亡するが、もうベアトリーチェたんには数多の暗部が味方についている。


 もし私が死んだら、屍はベアトリーチェたんのお目に触れぬ様に頼みましたよ同志達よ。




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