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ウェデングドレスをこの手で6



 カイル妹のスペックは非常に高い。

 伊達に女版カイルと言われるだけの事はあるが、いかんせんこの国の暗部達は揃いも揃って怠け者である。例に漏れずカイル妹も。


 出来るけどやらない。それには理由がある。


 皆んな見目麗しい『推し』を陰ながらか見るのに忙しいからだ。推しと言わないで『庇護者』って皆んな言ってるけど扱いが余り変わらない気がする。


 現実で推しを陰ながらか見守るので、無害なストーカーに近い。個人情報保護法とか無いと、推し活もここまで来るのかと思うと恐怖だけど…私もどっぷりその一員なんで何もつっこめない。



 派閥みたいなのを大まかに言うと…。


 1番人気はやはり王族。ウチの実家が全面的に推してる。もはや信仰に近い。


 2番手宰相家はカイルの家が全面的に推してる。


 3、4番手は拮抗して財務の家と騎士団長輩出してる家。

 大体は筋肉好きは騎士家系に流れるけど、それでもやはり一番手不動の人気は王家。


 王家自らの全面協力で最高の交配で出来上がってる王族は、暗部の働きと平和の名の下によって出来上がった、正に至高の傑作達である。


 王家は約束された平和を暗部は全ての憂いを無くす代わりに汚れ仕事すら請け負う役目を。ある意味win-winの関係性である。王家その様に考える様に育てられてる感がある。闇が深い。


 私はベアトリーチェたん一筋だけど、皆んな大体複数居るからね。


 暗部の2大一族はカイルの実家とウチだが、カイルママンがカイルパパンを囲い込んでからは推し活が衰えてしまった様だ。


 推しは陰ながら見るのと支えるものであって、手に入れてはいけない。他の暗部の反感を買うから。


 他国だからいいかと攫って来てしまったカイルママンは敵も作ったが、我が身をていしてこの国にカイルパパンの血を良くぞ入れたと称賛する声も上がった。


 しかし、推し活が減った宰相家があんな事態になってしまったのは誠に遺憾である。


 目を離してごめんなさいと、謝罪の意味も込めて次代予定だったハイスペックカイルを送り込んで救済措置を儲けたのもあるが、あのアイスブルーの瞳を持つ血を絶やさすのは惜しいかも?と、言う事で宰相とご子息が生かされてる経緯である。



 では、ベアトリーチェたんは?



 ここで、新たな推しになり得る宝石の原石を猛プッシュしたいと思う。手始めにカイル妹に。



「はぁ〜…きゃわわ。ベアトリーチェちゃんマジ天使」



「そうなんですよ。ウチの子本当可愛いし天才なんです。見たら絶対みんな庇護対象者になるのに、損してるよ他の人達」



「そうね。同志♪あぁんっ!今の見た!?はにかみ笑顔最高ね」




 掴みは上場と言うか、ひと目見てベアトリーチェたんの虜になった。私の推しを認めてくれて、更には良さまで理解してくれてありがとう。

 色気を振り撒きながらカイル妹は協力体制を築く事を心から受け入れてくれ…同志とまで呼んでもらって本当に有難い限りである。


 やはり、宰相家の血筋にカイルの実家の血筋は遺伝的に推すことを組み込まれてるのかも知れない。まさに本能。




 暗部は本能的に綺麗なモノを追い求めるサガ。そこを逆手に取って計画を押し進めて行きたいと思う。



 そう、裏から出て来ないカイルをも表に押し出して大々的に影ながら見守るのを容認させる為だ。


 暗部で生きる者は推しになり得ない。同僚だから暗黙のルールで単なる仕事上の仲間や同志としてしか接しては行けない。


 しかし、カイルがベアトリーチェたん共々表のキラキラした方に行ってくれれば、合法的?違うな。暗黙の了解でジメジメした方で影ながら眺め崇め奉る事が出来る。



 至高の王家にベアトリーチェたんを入れるとカイルはついて来ない。と脅せば、隠れているカイル推しは黙っていないだろう。


 新たな推しとなり得るベアトリーチェたんとカイルのセットで支持率を獲得すれば、暗部の全面協力ももはや夢ではない。




 計画書と言う名のプロデュース案をばら撒き、私は忙しい日々を送った。


 ベアトリーチェたんと王太子婚約は見せかけだけだと太い釘を刺し、カイルが血迷うと行けないので根回しが済んでる他国に旅に出る様に仕向ける算段をたてている。


 もちろんベアトリーチェたんの死亡フラグをへし折りながら、カイルの舵取りに……忙しいけど、いつの間にか同志と言う名の手足が増えている。


 そして、カイル妹の推し愛が凄いと思ったら「うふふ。カイルとベアトリーチェちゃんが結婚したら叔母ポジションで近くで眺められる2度美味しい。うふふ…ウフフフ」欲望に忠実過ぎる。流石我が同志。


 他の同志達がハンカチを噛み締めながら羨ましいと嘆き悲しみを表したが、隠れカイル妹推しは、叔母ポジションのカイル妹をベアトリーチェたんを見ると見せかけて影ながら眺められると期待に胸を躍らせた。


 



 しかし、それでも問題が発生はするよね。



 ベアトリーチェたん本人だ。





「はぁ〜……」



「お嬢様、またため息ですか?」


(同じ空間にいさせていただいてありがとうございます。その吐いた息を私の肺に入れさせて頂いてありがとうございます)



「カイルが最近冷たいの…はぁ〜……」



「きっと疲れてるんですよ。最近忙しいみたいですから……そうだ。厨房に行ってカイル用のケーキを持って行ってもらっても良いですか?直ぐに戻って来て下さい。休憩の邪魔はしちゃ駄目ですよ」



「わかった!行って来るわ」



「階段は気をつけて下さいね」


(最高の笑顔だと!?供給ありがとうございます!)



 今日も安定の可愛さ!でも、まずいなぁ。思ったよりもベアトリーチェたんがカイルを好き過ぎてちょっと押せ押せな感じになってる。健気で可愛いハァハァと同志達は言うが、このままだとまずい。



 宰相家存続とベアトリーチェたんの面倒くささを天秤にかけて、この家を去ってしまうかもしれない。

 あのベアトリーチェたんを面倒だと思うカイルマジで許したくないけど、我慢だ私。


 宰相家存続は私でも出来るが、そうなって来るとフリーになったベアトリーチェたんを巡って王家が暴走したら手に負えない。


 カイルと違ってモブの私ではどうやったって他の暗部を敵に回してどうこうとか出来ないなぁ。くっ…チートがないのが辛い。


 ここまで来て計画がパァになったら隠れカイル推しにも見限られてしまう。

 強力な味方のカイル妹のスペックは高いけど……内部紛争は避けたい。

 と、言うかカイルが敵に回ったらと考えただけで寒気が。ガクブル。



 ベアトリーチェたんとカイルの架け橋に私がならねばこの先に明るい未来はない。



 それと、計画には早いが仕込んだ物を世に出してしまおう。



 私とカイル妹に同志達が書いた小説たち。



『魔法の世界』。王道ファンタジーの創作物から始まり。


『異世界転移』の冒険、恋愛物語。


 最終的に『異世界転生悪役令嬢』の断罪、ざまぁをコンセプトにしたベアトリーチェたん悪役令嬢計画の始動である。


 本当の王家をディスるの怖いから、ファンタジー要素を盛り込んだ「これはあくまでもフィクションです」をコンセプトにした作品達である。


 推し活に励む暗部怖いからね。段階的に流行らせて、最後に1番人気の作家に悪役令嬢物を先陣切って書かせよう。



 執筆活動で儲けたお金は、暗部の活動資金に全て変換します。

 たまに情報操作で暗部が書物を流すけど、ここまで大々的にやった事はないので何処まで受け入れられるか謎。



 とりあえずは、カイルが出かけてる日にカイル妹を召喚。

 ベアトリーチェたんのお友達として、カイルとの接し方を学んで欲しい。










「兄は恋愛の駆け引きとかした事ないから、憧れがあるのよ」



「え?」



「だって兄は突っ立ってるだけで女が寄って来るでしょ?」



「は…はぁ。そうなんですね…えっとお姉さまはどんな恋愛をなさって来たんですか?」



「そうねぇ…私もあまり恋愛の駆け引き的な事はあまりないんだけど……。とりあえずは、一度距離を置いてみて向こうが寄って来るのを待ってみるのはどうかしら?」



「分かりました……」



 どさくさに紛れて『お姉さま』呼びを強要してるの羨ましいんですけどカイル妹。


 そうだよねぇ…カイルの取り扱いは分かるけど、カイル妹も恋愛する前に相手が降参するだろうな。



「今は自分磨きに勤しんだ方がいいわ。ベアトリーチェちゃん可愛いけど、カイルの隣に立つにはもう少し乳を……コホン。プロポーションを整えて行きましょう。まだ間に合うわ。バストアップ体操とかお肌のお手入れにーーー」



 途中でベアトリーチェたんの背後から『お上品に』と言うカンペを出して軌道修正。



 カイルの色香を少し抑えめにしたんで、ベアトリーチェたんは思ったよりも純粋な感じにお育ちになられてる。

 ゲームより攫われる頻度は少なくなったけど、それが今は裏目に出たな。カイル妹と過ごす内に魅力のパラメーターも上がると思う。




 カイルの親密度は上がりすぎてる位なんで、ちょっとくらいほっといてもいいだろう。



 カイル妹と秘密のレッスン、更には書物の第一段階王道ファンタジー、第二段階異世界転移の書物で更にコミュニケーションを計りつつたまにお茶などご一緒にと過ごした結果、学園入学前でとんでも無い事態になった。





「ベアトリーチェお嬢様に男性使用人接近禁止命令?」



「勿論カイルさんもですよ。不届き者の数が多いので、当面は極力カイルさんも近づかないで下さい。教育関係は私が引き継ぎますから」



「わかった。他の者にも言っておくよ」





 そう、ベアトリーチェたんがジワジワと魅力パラメーターを恐らく上げた結果、大分前から近寄って来たカイルですら、先日舌舐めずりしてヤバい目で見てたのを目撃してしまったのである。ウチの推し天才過ぎる。色んな意味で戦慄した。


 当初カイルの皮膚を仕舞って、更に意識的に色気を隠して無かったら多分影響されてとんでも無い事態になってたな。あぶなーい。




 コレはアレだな。本当に王家をどうにかしないと、王族に遭遇した時点で終わりかも知れない。釘じゃ駄目だ。縫い付けないと。


 幸い同志もわんさかと増えて、思ったよりも大ヒットした書物の副産物であるお金の力でどうにか出来ると思うんだ。



 計画より大分早いけど、悪役令嬢モノの書物を大量印刷する為に、私は纏めて書いてある原稿を出版する手筈をと整えた。




 結局私が1番人気の著者だ。執筆活動の時間捻出の為に何度失神して寝落ちした事か。

 カイル並みの体力とまでは言わないが、もっとチートスキルが欲しかったです神様。ステータスとかない世界ですけどね。


 自力で頑張ります。推しの為に。



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