ウェデングドレスをこの手で5
「婿が逃げる?この私からか?」
「はい。このまま何も手を打たなければ、娘さんの現在いらっしゃるお国に雲隠れなさると思います。隣国の不穏な動きは餌です」
「何でそう思う?」
怖い怖い怖いけどちょーかっこいいこの猛禽類。お目目がギラギラ輝いてて、凄く雄みが増して危険な感じだけど…危機管理能力麻痺して来たな私。
いや、でもカイルママンはレアキャラであんまり登場して無いにもにも関わらず、性別男にして攻略対象にして乙女ゲーム(ちゃんとしたやつ)作ってくれって一部のファンが嘆いてたな。それくらい人気高いキャラだ。
外伝好きの人は、何でこれが普通に攻略出来ない!バグでもおこして、何かの手違いで嫁になれって無意味に4周目のセーブデータを周回する人が攻略掲示板にいたね。いっぱい。
見た目は女の人なんだけど、男装の麗人も出来るねきっと。性格も人気かな。ヤンデレはやっぱり創作物で人気だよね。そして、この金色の目が凛々しくて凄いカッコいい。トリップしてる場合じゃない。ちゃんとしよう。
「娘さんに東方の島国を見て来いと指示を出したのはお婿さんではないですか?」
「確かにそうだな。で?」
「多分、近々娘さんの様子見て来るって建前で裏で暗躍して来ると思いますよ。そのまま動きやすくアチラを整えたら、娘さんを後宮に追いやって消えてしまう。最終的に根回しが済んだらアチラの皇帝になって玉座に座るでしょう」
「それでは、流石の私も手出しが出来ないが…お嬢さんはあの人が本当に玉座に座れると思うか?」
「きっと座れますよ。公表して無いとは言え、先々皇帝の隠し子。血筋は申し分ないですし、何より国の裏側なんてお婿さんにはお庭みたいなものでしょうから」
そう、皇族の血を引くカイルパパンを攫って来ちゃったんだよね。見た目がどんぴしゃで好みってだけで。それをやり遂げるカイルママン凄いですよね。他の人は真似出来ないよ。
外伝の1周目は必ずハーレムルートだ。誰のハーレムってある意味カイルパパンのね。皇帝は全ての姫を娶るが、悲しい事にカイル妹以外はカイルパパンに骨抜きにされた女達である。
カイル妹も後宮内でカイルパパンの策略にハマって身動き取れず、そのまま皇妃にされてしまう。
2周目以降から徐々に選択肢が増えて、皇帝VSカイルパパンの嫁取り合戦。
恋敵がカイルパパンな時点で既に高難度だよね。皇帝不憫でならない。
しかし、好感度も何も関係なしに必ずカイル妹は皇妃の座に着く。カイルパパンがそう仕向けるから。
その呪縛から解放されるのは4周目の最強の切り札。カイルママンの登場だ。
皇帝がカイルママンにお手紙をもらって、直接登場からの結託。
カイルパパンを途中から強制退場させて、攻略を推し進める形になる。
その過程で皇帝が「実は先の未来が見える」と、カイルママンにカミングアウトして協力体制を取るのが流れだね。実は人生と言う名のゲーム周回でやり直してるんだけど。
4周目で直接カイルママンに妃選定始まる前にこんな感じの手紙出してくれれば、最初からカイルパパンを東方の国に向かわせなかったのにと愚痴を溢して、それを元に5周目が生かされる。
5周目の最初の画面で『手紙を出しますか?YES NO』選択がでる。
手紙を出すと、5周目は最初からカイルパパン不在で手紙を出さないと途中何故か選択肢が削られて、カイルママンにも直接会えない。実質3周目の周回になる。
最初の画面で手紙出した5周目はボーナスステージの如く、スルスル攻略が進むよね。カイルパパンがいないだけでこんなに楽なのかと。
しかし、姫達の実家の国の兼ね合いから妃を娶るのは1人〜4人までしか攻略出来ない。
究極はカイル妹を妃に迎えるのは他を諦めなきゃならないんだ。もしくは他4人を妃に。これが実質の皇帝ハーレムになる。
何でカイル妹を妃に迎えるなら他を全て諦めなきゃいけないのかと言うと、外伝のゲーム仕様が戦争戦略ゲームも組み込まれているからだ。
そう、カイルパパンが裏で暗躍して根回ししなかったカイル妹を攻略するのは我が国を裏で牛耳ってる暗部を敵に回す事になる。戦争だ。
中立国の我が国に戦争仕掛けるって事は他の国が良い顔をしないので、他の姫は撤収。自国の姫ポジの人すら身を引くからかなりの反感を買ったのは言うまでもない。
しかも、課金アイテムの1回こっきりの使い捨て戦闘機を使用しないとうちの国に勝つのに相当苦戦を強いられるのが、運営さんの意地悪さを感じる。
作中で戦闘機については触れてないけどね。ご都合主義。
気な臭い隣国と同盟を結んで東方の国が攻めて来るのがデフォルメです。そんな事はさせない!
「しかし、やはり信じられないな…あの人が私からまだ逃げようとしてるのがちょっと納得行かないが」
ふふふ…何か似たようなセリフ外伝の4周目で聞いたな。皇帝のお手紙じゃないけど、私も少し言葉を削ってお話ししよう。
「『娘さんにお父さんの母方のご実家調べてもらって下さい。私の話しが真実だと分かるでしょう。具体的には裏帳簿と隣国とやり取りしてるお手紙とか』」
「一応確認はしてみよう」
開始1年前だけど、何かしら出てくるかな?隣国が何かきな臭いのは情報だけは掴んでるしカイルパパンがちょっと行って来るとかセリフを出したら多分信じてくれると思う。
カイルママンが動いてくれるなら、我が国に戦争仕掛けて来るとか回避出来そう。流石に我が国が危ないとなったら困るんで、ウチからもちょっと人員を借りて少し探って貰おうかな。
オーバーテクノロジーの戦闘機は出て来ないだろうけど、何の準備も無しに戦争仕掛けれたら困るし。
私が避けた謎茶を全て飲み干して、持参した羊羹も全て平らげてからカイルママンは良い笑顔で、今日はこのくらいでと言って本日はお別れした。
よかったー…カイルパパンにもう一回会わずに済んで。
身構えててもあの指で触られたらおっかないからね。
多分、手篭めにはされなくても些細なお願いくらい聞いてしまうと思う。
後日カイルママンから『未然に防げた』と言う朗報が届いて、胸を安堵させた。
しかし、オイタをしそうな隣国はそのまま少しばかり泳がせる方向で様子見らしい。どうやら、他の我が国周辺もそれに触発されて動きが活発化してる様だ。
うん、あれかな?もしかして、何かフラグが立った気がする。
『俺馬鹿』で暗部の動きとか把握出来なかったけど、カイルが何か小さい手柄を立ててからベアトリーチェたんを嫁にしてたから、もしかしたら国同士で色々あったのかも知れない。
『カイル皇帝ルート』。それはやり過ぎだけど、近い形には出来るかも。
既にベアトリーチェたんは天才に育ちつつあるし、暗部達や王族に根回しや釘を刺せば行けるか?いや、行けるじゃない。ヤル。
ベアトリーチェたんにウェデングドレス着てヴァージンロードを歩いてもらうんだからね!過労死してる場合じゃない。死ぬなら全て終わった後に死ぬのよ私!
意気込みと同時に、カイルママンから『お礼』と称して強力な助っ人が送られて来た。
「はぁい。よろしくね♪」
女版カイル。外伝お色気担当のカイル妹まさかの参戦。
もう、何もこわくない。




