ウェデングドレスをこの手で1
侍女長視点。
ハロー、私は暗部B。名前は気にしないで将来は気軽に侍女長って呼んで☆
もう早速カミングアウトするけど、実は私は転生者なんだ。
ここが『馬鹿な子ほど可愛いとは言うが…ここまで馬鹿だと困るんだよ俺が』と言う恋愛シュミレーションゲームと言う名の脱出ゲームさながらの生き残り難易度が極めて低い世界に転生したと知った。たった今。
何で気がついたのかと言うと、鬼畜ダークヒーローのカイルと遭遇したからだ。
「へー…君が跡取り娘なんだ」
「あ、はいそうです。カイルさんは家を継ぐんですか?」
「今のところはね。連絡ミスでドッキングしちゃったみたいだけど後は俺が処理しとくから帰っていいよ。そっちでどうしても必要な物とかある?」
「この書類3枚…あ、帳簿はそちらでどうぞ。早急に欲しいのはこれだけです」
「ああ、これか。後でこちらの家に回してくれれば大丈夫」
「分かりました。では撤収します」
血塗れのナイフ持った手でバイバイされてたので、私も血濡れた暗器を回収しつつバイバイしてから速やかにその場を後にした。
ぎゃぁぁあぁぁぁあぁぁぁっっっ!!!
って叫ばなくて良かった。多分この世界で受けた超過酷な英才教育の賜物だと思う。どんな教育かは察して?
赤ちゃんの時から前世の記憶薄ら有るな〜って思ってたけど、魔法とか無い世界だからゲームや物語系転生じゃないなって油断してたのがいけなかったね。
とりあえず碌な世界じゃないと思ってたけど、殺伐としてるのは私の周りだけで案外平和な国だなと思ったのが間違いだったね。
だって通称『俺馬鹿』の世界は固有名詞とかほぼ出て来ないんだもん。キャラの名前がまず2名しかない。国の名前すら出て来ない。今の今まで気づけなかった要因でもある。
この『俺馬鹿』の主人公は氷の様なアイスブルーの瞳を持つ宰相家に生まれた、本人はママン譲りの翡翠の瞳を持つ超美幼女のベアトリーチェ。家名の表記すら無い。
今は現実なんで知ってるけど頭こんがらがるといけないから詳細は省く。
恋愛シュミレーションゲームと宣ってる割には攻略対象者が2人しかいない。それがカイルだ。
一応王太子もいるけど、結局はカイル攻略しないと解放されないので名前も無いし影が薄いので、ファンの間ではヒロインのベアトリーチェ人気がダントツで高い。
かくいう私もベアトリーチェたん推しだ。ゴリ推しだ。
カイル推しももちろんいたけど、王太子推しには私は直接お目にかかった事はないし、書き込みの隅っこに存在してた記憶があるね。『顔は良い』って書いてあった。絵師が神だから。
斬新すぎるゲームシステムで、一時期「これを恋愛シュミレーションゲームの枠組みにした運営が謎」って話題になったね。
ホラーゲームって言っても過言ではないと思う。サスペンスでも可。
まず、開始15分で死ぬ恋愛シュミレーションゲームってかなりハードな内容だと思う。チュートリアル入れて15分だからね。
オープニング動画すらたどり着けないファンが続出して発売当初に攻略掲示板が大炎上したある意味話題作だよ。絵師が神なんだよ。皆んなそりゃ荒れ狂うよね。
オープニング動画に辿り着いてやり切った感が出て、もうコレで終わりで良いのでは?と、思った人はきっと私だけじゃ無い筈。
石につまづいて死ぬとかベアトリーチェ最初ヤメテって思うんだけど、プレイ時間が長くなるにつれて愛着が湧いて、更には中盤に差し掛かると絶対生かしてコイツは俺がこの手で幸せにしてやる!みたいな感じになるんだよね。ジャンル育成ゲームでも可。
マジでスチルのベアトリーチェたん可愛いから。私も何度心臓にズキューンとされて悶えた事か。
そして、プレイ時間が進むにつれて攻略対象である筈のカイルを抹殺したい衝動に駆られるよく分からないゲームでもあった。
カイル推しの人は「カイル耐えて」って止める感じの応援の仕方らしい。
私はベアトリーチェたん逃げてって何度も叫んだよね。もしくは推しの代わりにカイル死んで欲しいと思った。
やっとクリアだと思って初夜途中で画面が徐々に暗くなってベアトリーチェたんが死亡したとか文字が浮かび上がった時はコントローラーを投げて壊した。
そう、コレ実は18禁指定のゲームなんだ。スプラッタとかの意味もあるけど、エロもかなりある。
だってカイルの設定が『歩くエロス』なんだもん。お色気担当も真っ青なヤバい奴である。
まず、常時色気を振り撒いて存在してる人物って時点でちょっと良く分からない。魔法も無いのに強力な魅了が固有スキルか?って思った。
今日遭遇した時もお色気ムンムンだったけど私は騙されないかね。アレの中身はかなり残念だ。
ベアトリーチェの生存難易度が最初エゲツない仕様で、後日に運営さんが『イージーモード』とのたまった追加アップデート(途中から有料)を販売したが、また掲示板が炎上したよね。火消しがスムーズだったのは見越してたんだと思う。
普通は最初にイージーモードがある筈なのに何で後出し?と、思ったらカイルの心の声を収録したものだった。アレでカイルのコアファンが増えて更に沼が深くなった。
小説化されて、更に人気の割に深夜帯でもアニメ化は出来ないくらいの仕様で、最終的に映画3部作になって。
運営さんの偉い方が魅力が半減するから普通のアニメ化はしないと珍しい事したらしい。
お金と時間をかけて万人受けはしなくても、クオリティの高い作品を作りたかったとか。起用した絵師の信者だと自らその偉い方は言っていた。
映画自体は美幼児期、美幼少期、美少女期と細切れにされていたが声優陣が豪華絢爛で初日にちゃんと見に行ったよ全て。
私は珍しい事した偉い人を崇めたよね。素敵な作品をありがとう。
確かにあの内容をアニメ化したら、シーンの区切りによってはアニメ丸々一本分、画面ずっと半分黒く塗りつぶしたり、イメージ映像流してお楽しみ下さいのかなり無茶な作りになったと予想。
現実逃避はヤメテそろそろしっかりと頭でコレからの事を考えよう。
宰相家を調べた結果はまだベアトリーチェたんは産まれたばかりだ。こっそり見には行ったよ。推しが赤ちゃんで動いてて悶絶して死ぬかと思った。
いや、こんな所で私が死んでる場合じゃ無い!ウェデングドレスを着せて、ちゃんと初夜を乗り切るまでは私絶対死ねない!あの子は私が幸せにしてみせるから。ベアトリーチェ推しの同志達よ私に力を!
まずはノートに死亡フラグを大まかに書き出した。
幼児期、幼少期に死ぬのは大体は子ども特有の事故や怪我からの物だ。後はベアトリーチェママンの実家の人が掻っ攫うとかだね。一部カイルが宰相家を見限ってとかもある。
事故と怪我は私の前世の記憶で何とかなると思う。
ベビーベッドから転落は無しだな。ベッド柵とか自作出来るか?オモチャの誤飲とか…水系は駄目だね。庭の噴水は撤去か水を流すのやめよう。噴水だけで確か3回…5回溺れた記憶が。
アレルギーは無いけど、飲み物で大火傷してとかあったな。感染症は怖い。
お兄ちゃんと木登りして落っこちたとかベタなのとか、ソファから落ちて頭打ったとかあるけど……四六時中私が見るのは無理だな。
特にベアトリーチェママンが死ぬ前のカイルの休日はベアトリーチェたんが恋心を自覚する大事な場面だ。アレをスルーするとカイルの好感度が足りなくてその後の攻略が実質難しくなる。
親密度後の好感度稼ぎを一手でも間違えたらthe endはちょっと避けたい。
好感度上げ過ぎても死ぬけどね。色欲魔の体力お化けカイルに食われたら瞬殺だから。
それは王太子との婚約打診まで無いけど……ベアトリーチェたんが迫り過ぎてカイルと距離を置かれるフラグも折らないといけないからな。
ふー…………やり直し出来ないって難しいな?
コレはあれかな?もしかしてカイルの方もどうにかしないとベアトリーチェたんに素敵なウェデングドレスを着せれないのでは?




