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オジ様×美少女。


 タイトル回収は『ウェデングドレスをこの手で』の話まで有りません。ご了承下さい。


 あらすじを読んでから作品に目を通していただけると大変ありがたいです。あまり気にしないと言う方は、そのままお読みください。




 俺が手塩に育てたと言っても過言ではない上級貴族が娘のベアトリーチェお嬢様。


 マナーに教育、その日の食事の献立に護身術その他色々。

 ある理由からワザとちょっとだけお馬鹿に育てた。


 すくすく順調にちょっとだけお馬鹿さんで可愛らしくお育ちになり……本当可愛いんだよ。流れるような金髪にクリクリとしたお目目が天使。

 近頃はさらに女性らしさも加わって女神になりつつある。見た目だけは。中身はちょっとだけ残念だが。


 そんなベアトリーチェお嬢様もお年頃になり、そろそろ俺の役目も終わりかな? と、思っていた時期がありました。


 まさか予想外の行動を取るとはこの日まで思わなかったな。



 




「結婚して」



「……は???」



「お父様は私が丸めこ……ゲフンゲフンっ。言い聞かせるから私と結婚しなさいカイル!」



「いや、そう言われましても。あはは、侍女さん方〜。ベアトリーチェお嬢様がご乱心で……コラコラ、よしなさい。離れて下さい。重い」



「レディに向かって重いはないでしょ! ヤダヤダヤダヤダちょっとドコに行くのよカイルっ!? へ、返事をまだ聞いてないわ!?」




 庭先で優雅にお茶をしていたベアトリーチェお嬢様に話があると呼び出されたらコレだ。

 俺はその場から回れ右して屋敷の中に戻ろうとしたら、腰に手を回されて行くなとせがまれる。

 そのままベアトリーチェお嬢様をズルズルと引きずるり進みながら、この先どうしようかなと頭を悩ませ……とりあえず身体は旦那様の執務室に向かっているな。


 今日は王宮に出向かず珍しく屋敷にご在宅なので、きっとベアトリーチェお嬢様のご乱心の理由を何か知っているだろう。

 おおよその予想は出来てはいるが、まさか今日だとは思わなかった。



 旦那さまの執務室に入室許可を求めて、腰にベアトリーチェお嬢様を引っ提げたまま開いたドアを潜る。


 ドアを開けてくれた旦那様の補佐に礼を言ってから「お嬢様の縁談が来ましたか?」と旦那様に確認する。




「ああ。王宮から婚約候補ではなく、正式に王太子殿下の婚約者にならないかと話が回って来た」



「おめでとうございますベアトリーチェお嬢様。未来の王妃ですね。これで肩の荷がおりま──」




「いやよっ!? お父様、私カイルと結婚するから!」




「輿入れはいつのご予定ですか旦那様? 嫁入りの物など侍女長と相談しながら、少しずつでもご用意しませんと」




「学園卒業と同時に結婚だな。すまない。妻に先立たれたばっかりに、嫁入りの準備まで……お前達には苦労をかけるな」



「勿体ないお言葉でございます。準備期間は約2年ですか。かしこまりました」




「え? 私の話聞いて? カイルが聞いてくれないのはいつもの事だけど、お父様まで酷くない???」



 ベアトリーチェお嬢様が通っている学園は3年制で、現在1学年。お誕生日を迎えられたので16歳になられる。王太子殿下は現在18歳の最終学年、年回りも丁度良い。


 元々は王太子殿下の婚約者候補の最終選考に残っていた時点で、王族に嫁ぐのはほぼほぼ確定していたようなものだな。


 候補はベアトリーチェお嬢様ともう1人いらっしゃったが、そちらは第2王子殿下に嫁ぐらしい。婚約の打診が来たが、相当の理由がない限り断る事は出来ない決定事項だな。



「カイルのお嫁さんになるって昔約束したわ!」



「6歳くらいでしたね。ベアトリーチェお嬢様が一方的に宣言しただけに過ぎませんので、約束ではございません」



「お、同じベッドで寝たじゃない!」



「添い寝でございますか? ……4歳の頃に確かオネショをしたとかで、共寝をした記憶はございますが。懐かしいですね」



 笑顔で言い切ると、未だに身体の横にへばり付いていたベアトリーチェお嬢様が真っ赤な顔になって飛び退いた。




「嘘でしょっ! オネショしたからカイルと一緒に寝たの私!?」



 ベアトリーチェお嬢様がギャン泣きして騒ぎに駆けつけたら、その後一緒に寝ると聞かなくて寝付くまでは一緒に横になった記憶がある。


 そうか、詳細は覚えてなかったが俺と一緒に寝た事は何となく記憶にあったのか。迂闊だったな。でも問題ない。



「あはは。大丈夫です。旦那様もご子息もご一緒しましたから」



「お兄様と……お父様まで?」



「……あぁ。ベアトリーチェがカイルから離れなくてな。私の寝室で皆で横になったな」



「素敵な夜でしたね旦那様」



「カイル、頼むからその言い方はヤメロ。ベアトリーチェ、お前もいい加減腹を括りなさい」



「嫌よ! 何であんな王子に嫁がなきゃいけないの!? カイルの方が何百倍もカッコイイじゃない。お父様は娘が可愛くないの?」



 王太子殿下の名誉のために言うが、決して見た目が悪いとかじゃない。むしろ美丈夫で華やかな容姿をされている。ザ・プリンスって感じだ。

 白馬に跨るととても映えるし、正装されて夜会に出ればご婦人方からため息が出るほど、絶大な人気を誇る容姿をされている。


 ベアトリーチェお嬢様と王太子殿下がダンスを踊ると、それはもう見事に美男美女のお似合いなカップルだ。

 結婚もまだなのに今から生まれて来る子どもが待ち遠しいな。きっと天使が生まれると思う。



「ベアトリーチェは世界一可愛い。しかし、王家からの打診は断れないのは事実だ。不敬になるような発言は慎みなさい」



「あんな仮面みたいな笑顔貼り付けた、頭空っぽのお人形さんみたいな男に嫁ぐなんて嫌よ! それなら胡散臭い笑顔だけど、人間味のあるハイスペックなカイルの嫁がいいわお父様!」



「言った側からその発言はないだろうベアトリーチェ!」



 ハイスペックは褒め言葉だけど、胡散臭い笑顔って嫌だな。貶されてる俺?


 そう、王太子殿下は顔はいい。


 しかし、中身は確かに空っぽだ。そう育てられたからな。


 お嬢様も本当はそうなる予定だったが、いかんせんクセが強いんだか、持って生まれた性格なんだかお人形まではほど遠い事になったな。


 なので、路線変更してちょっとお馬鹿さんに育て上げたつもりだったが……。王族との結婚をここまで嫌がるようなら育て方間違ってしまったかも。だがしかし、反省はするが後悔はないに等しい。




 それにしてもおかしいなぁ。あんなに白馬の王子様やキラキラのお姫様の絵本を読み聞かせしたのに、何で理想の王子様と結婚シュチュエーションを蹴って俺にプロポーズ紛いな事を? 謎。




 前々から俺に対して好意を寄せているとは薄々思っていたが。

 茶会や学園入学後に一応デビュタントも終わらせて、最近大人しくしてると思っていたベアトリーチェお嬢様だが、コレは何かありそうだな。諦めたと思っていたんだが勘違いだったらしい。



 可笑しいな。俺はそんな子に育てた覚えはないんだが、ちょっと他のヤツに確認しよう。



 親子喧嘩と言う名の俺のけなし合戦に突入。旦那様とベアトリーチェお嬢様に一応退出の挨拶をしてから執務室を後にしようかな。




「カイルはたまに目が死んでるけど、そこが影があって最高にクールじゃない!」



「趣味が悪いにも程があるぞベアトリーチェ! アレはやめときなさい。頼むからヤメテ」



「じゃぁ、お父様は結婚するなら王太子殿下とカイルとどっちがいいか自分の身になって考えてよ」



「勿論、王太子殿下にきまってるだろ」キリッ



「そんな明後日の方向にカッコつけて言わないで娘の私の目を見て言いなさいよぉっっっ!? 説得力皆無!」



「ベアトリーチェ。しかし、カイルが義理の息子とかになる私の身にもなれ。私も跡取りの息子も可哀想だろう? あんな人間離れした生物。自分のダメさが際立つから一緒に仕事とかしたくない」



「そこはごめんお父様並びに今はこの場にいないけどお兄様。カイルと私が結婚したらお兄様すっ飛ばして即座にお父様が家督を譲る自体になったらごめんなさい。でも、義理の息子が王太子殿下なのも可哀想だわ……ドンマイ」



 王太子殿下も俺もディスられ過ぎじゃないか? と、言うか生物は酷いだろう。ちゃんと同じ人だからな。



 ヒートアップしていく会話に耐えられる気がしなくて、直ぐにその場を後にした。



 パタンと閉まったドアを背に、俺はお嬢様の部屋に向かった。


 淑女の部屋に男が入るのは無粋なんで、ここ数年は足を踏み入れてなかったが抜き打ち検査でもしよう。

 後はベアトリーチェお嬢様の教育関係を一緒に任されてる侍女長に話を聞く事にした。





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