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第19話/初恋

 申し訳ございません、今回はR指定とまではいかずとも、よいこのみなさんにはおすすめできない文章が含まれます。どうか良識あるおとなのみなさんのみお進みください。

 むかしむかし、お空の上にかわいらしいお姫さまが住んでいらっしゃいました。

 そのお姫さまは王様のこどもで、しょうらいは女王様になるよていでしたから、じいややばあや、それにたくさんの召使たちにだいじにだいじにまもられているのでした。


 そして、お姫さまにはちがう国からくるおとこのこのともだちがおりました。

 おとこのこのおとうさんんとおかあさんも、そのお姫さまのことをとてもかわいがっておいででしたので、おとこのことお姫さまはすぐになかよしになりました。

 お姫さまはおとこのこのくらしている国のようすをききたがり、おとこのこはお姫さまののぞまれるとおり、じぶんのくらしぶりをたくさんたくさんきかせてあげました。


 ある日のこと、いつものようにおとこのこがむちゅうになって話をしていると、お姫さまがいいました。

 「ねぇ、わたしもあなたの国に行ってみたい」と。

 お姫さまがごじぶんの国をでることはたいへんにむずかしいことです。

 しかし、おとこのこはうれしくなっていっしょうけんめいかんがえます。

 お姫さまをじぶんの国につれていって、じぶんのひみつのばしょやたからものをみせてあげることをおもうとうれしくてうれしくてしかたないのです。

 そして、なによりも、お姫さまがいつもみたいとおっしゃっていた「うみ」というものをみせてあげたかったのです。

 おとこのこの国に「うみ」はなかったけれど、いつものってくるりゅうにたのめばきっとつれていってくれるはずです。


 おとこのこはお姫さまをつれてはしりだします。

 たのしそうにわらうおとうさんとおかあさん、それにお姫さまのまわりにいるおとなたちのめをぬすんで。

 そうして、おとこのこはじぶんがのってきたりゅうのところまでやってきて、いいました。

 「ねぇ、ぼくたちをうみにつれていってよ」と。

 ですが、りゅうはねむたそうにおおあくびをするだけでちゃんとおとこのこをみません。

 「おねがいだよ!」

 はやくしないとおとなたちがやってくるかもしれないと思うと、おとこのこはだんだんとあせってきます。

 それなのに、あいかわらずりゅうはすぅすぅとねいきをたてています。

 はらがたったおとこのこはりゅうのおなかをけりました。

 お姫さまはふあんそうにおとこのこをみています。

 「あのなぁ、ぼっちゃん。そのお姫さまはこの国から出ちゃいけないんだ。もちろん、ぼっちゃんだって、父上と母上と一緒でなければ私の背中には乗れないんだよ。残念だけど海が見たかったら父上か母上と一緒の時にするんだな」

 そう言ってりゅうはまたすやすやとねいきをたてはじめました。

 おとこのこがなぐってもけっても、さいごにはじだんだをふんでも、りゅうはなにもいいません。

 お姫さまのきらきらしためがどんよりとくもったころ、ふたりはとうとうおとなたちにみつかってしまいました。

 「ふたりとも心配したぞ勝手にいなくなったりしたらダメじゃないか」

 お姫さまのおとうさんがきて、お姫さまはあっというまにつれていかれてしまいます。

 おとこのこもおかあさんにてをつながれてお姫さまをおいかけることはできません。

 ですが、もしも、おかあさんにてをつながれていなくても、おとこのこはお姫さまをおいかけることはできませんでした。

 どうして?

 それは、なきそうなかおをしたお姫さまがいったことばがあまりにもおとこのこのこころにきずをつけたからです。

 すぐにあやまればお姫さまはゆるしてくれたかもしれません。

 でも、おとこのこはあやまることもできないままにどとお姫さまにあいにいくことはありませんでした。




 「はあ?」

 話を聞き終えたレイは心底呆れた、という身振り手振りをしてがっくりと項垂れた。

 祝勝会の宴の席でため息ばかりついていたマオを心配し、連れだしてみれば、失恋した相手との再会に思い悩んでいるという。それも、取るに足らない、謝ればすむようなことを失恋だと言い張っている意気地なしの戯言。

 心配して損した。口にこそ出さないが、レイの目は素直に語っている。

 「どうしよう……」

 「はーーー。ばっかじゃないの?そんなもの時効に決まってるじゃない。くだらない。とっととそのお姫様に会いに行ってかっさらってきちゃいなさいよ。あなた魔王でしょう?」

 男の口調を装うこともすっかり忘れた彗が半眼で睨む。

 「だって……」

 「ぐだぐだ言ってる暇があったら行動するのよ!さっさと元の姿にもどってもぐりこんじゃいなさいよ。闇にまぎれるのは得意技でしょ」

 うじうじと御託を並べようとするマオの胸倉を掴んで彗の華麗なる一笑が決まる。

 「あの将軍がいなくなりさえすればフロウは楽に勝てるでしょうし。魔王には嫁が来るしで万々歳じゃないの。これで国は安泰よ。ルゴ様が泣いて喜ぶに違いないわ」

 「簡単に言ってくれるな、高笑いしてかっさらっても肝心なのはその後だろう。彼女にも俺にも心があるんだ」

 「その心を動かさない限り彼女を手に入れることはできないのよ。そのためにはまず会いに行くことね。ここでうだうだ言ってたってなにも始まらないわ。向こうから来るなんて思ったら大間違いよ。欲しいものは自ら出向いて手に入れるのが鉄則だわ」

 む……。

 押し黙るマオに彗がキレた。

 テーブルに並んでいた料理のうちのひとつをポケットに忍ばせていたことを思い出し、彼はそれをマオへ差し出す。

 なんだ、それは?問いかけるマオの視線を無視して、その小さくひんやりとした手につるりとした丸いものを握らせる。

 「いいから食え。殻はちゃんと剥いて食え」

 有無を言わせない彗の迫力に負けてマオは渋々ながら従う。何かの鳥の卵であろうそれの殻をうすぼんやりとした灯りのしたで丁寧に剥いて、ひとくち噛み切ろうとした。そのとき。

 すぱん!!

 口の中と外で食品であるはずのものが弾けた。

 「ふごぉッッ!!あつッ!!あつつつつつつつッ……!!何だコレ!!殺す気かッッ!?」

 「普通の卵料理にちょっと手を加えただけだ。殺す気はない安心しろ」

 「安心できるかッ!!熱いわッッ!!」

 顔じゅうにへばりついた卵の残骸を必死に振り払うマオ。

 その華奢な手首を不意に彗が捕らえた。

 マオにしてみれば何が起こったのか、またこれから何が起ころうとしているのかすら考えられない一瞬のうち、彗の舌が頬に触れた。続いて、唇がゆっくりと追いついてくると、彼が吐いた息を耳で感じた。

 すでにマオの体はすっぽりと覆い被さられている。鎧を脱いでいたため、上半身のやわらかな肉はすでに相手の手中に収まっている。

 抵抗しようにも両手は頭の上に拘束されているのでかなわず、蹴ろうにも太ももにかかる彗の体重で思うように動かすことができない。唯一の手段として必死に身を捩るも、なんの解決策にもならないのは明らかだ。

 「んむ……ッ!」

 唇をふさがれて息をすることすらままならない状況でマオは混乱していた。

 一体これは誰なのだろう、と。

 はじめは女の姿をして、ある国の姫だと名乗った。そして、今は男の姿をして男の力で自分を組み敷いている。

 一体なにが本当なのか。

 意識が内面に集中したために、マオの体から力が抜けた。それを抵抗の諦めととらえた彗は急に冷静になってゆっくりと身を起こした。

 「……あんた、さぁ……」

 「……ッ、はぁ……」

 突然体の拘束を解かれたマオは、胎児のようにまるくなって必死に空気を求めた。だが、うまく呼吸を整えることができずに盛大にむせている。

 「あー……ホントに手間のかかる……」

 言いながら背に手を伸ばそうとする彗の手を今度はマオがとらえた。

 跳ね起きて対峙した先にはなんの変化も見られない彗の顔がある。

 「おまえ、なに、する……ッ」

 「うん、これ以上襲われたくなかったら、とっととそのお姫さまのところに行って当たって砕けてこい。まだぐだぐだ言うっていうのなら、今度はひん剥くぞこの野郎」

 にっこーりとほほ笑む男版彗はとてつもなく美しいというのに、マオの背中には悪寒が走った。

 「だからって、こんなこと……」

 「あほか?元の姿に戻ればいくらだって抵抗のしようがあるだろうが。それとも本気で俺に押し倒されたかったわけ?」

 な……。

 反論を試みるも、マオはぱくぱくと口を動かすだけで言葉を紡ぐことができない。そのうちに、彗の底意地の悪そうな顔が間を詰める。

 「どうするんだ?」

 もう一度顔を近づけられ、反射的にのけぞったマオは彗の手の届かない所まで飛び退いて、彼を恐ろしげに見つめたのち、決心したように立ち上がって何事かを口の中で呟く。

 すると、その体はみるみるうちに変化していった。やわらかな曲線は失われ、すっかりごつごつとした男性の体型になって、前髪をかきあげて彗を見るその眼は狩られるものから狩るものへと完全に色を変えていた。

 「……行ってくる」

 低く響くその声ももう先程までのマオのものではなかった。

 「ま、がんばってこいや。骨くらい拾ってやるぜ?」

 「そのときには頼む」

 彗と軽口をたたき合ううち、魔王の姿は辺りの闇に溶けていた。

誰ですか、期待したのは?(笑←殴)

期待させやがってェェェ!との苦情は一切受け付けません。(笑)

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