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ゾンビには物の価値が解らないようだ。

12,

 ゾンビ使いとして育てる孤児を決める。

 それが今の課題だ。


 リリアナに命じて能力の選別を行って選ばれた候補は陰気な少女だった。

 能力値55点と言う最低点を獲得したレアリティN(ノーマル)平均の80点を下回る成績だ。

 名前はスーと言う、何時も俯き目の下は何故か隈ができている。

「彼女は、目の前で盗賊に両親を殺されています。

それで言葉を失い何時も怯えて何もしない子です」

「よし、君はこれから生きるために頑張ってもらう」

 スーは座り丸くなる。

「その盗賊を覚えているか?

捕まって処刑されているならどんな姿になっているか見せてやろう」

「……」

 スーは俺を少し見るが怯えてすぐに俯いた。

 こんな状態で仕事がこなせるように成るのだろうか?

 このままだと役立たずで捨てられる。

 彼女が生きる気力ないなら、そのまま野垂れ死ぬだろう。

「リリアナ、何か良い方法はないのか?」

「恐怖を感じるのは解らないからでしょう。

安全だと理解できれば安心して心を開くと思います」

「ゾンビは死体を動かす力だ。

もし死んでも話しを聞くことが出来る」

 スーは怯えていたが、リリアナが背を撫で触れていると落ち着いたらしく顔をあげる。

「生き返るの?」

 ぼそぼそとした声だったが、そう聞こえたのだ。

「いや死んだままだ。

ゾンビはいずれ朽ち果てるが記憶を持っている」

「……」

 スーは俯く。


「これは重症かも知れませんね。

心の傷は見えない分、癒やすのが難しいです」

「何も言わなくていい。

俺のやることを見て解ったら頷けばいい、解らなかったら手を上げるんだ」

 スーは俯いたまま立ち上がりうなずく。

「顔をあげて姿勢を良くするんだ」

 スーは顔を合わせないようにそっぽを向いている。

 無理に強制しても仕方ない。

 以前のような失敗はしたくない。

 とりあえず頭を撫でることにした。

「恥ずかしいのか?」

 スーは首を横に振る。


 スーと、以前呼びかけに応じた3人を加え4人が候補と言うことになっている。

 スーが本命だが、心の傷があまりにも深すぎて役に立たなかった事を考え複数を候補としたのだ。

 S(スーパー)レア基準は100点を超える事だ。

 3人の点数は120、102、113とギリギリSレアに到達している孤児達の中では割と優秀である。

 特にリリアナが言った名前を覚えるだけの記憶力を持っているということで高く評価がついたのだ。

 贔屓(ひいき)が有ったように思える。

 とは言え3人の方が優れた能力が有ることは間違いない。



 候補者を集めゾンビの管理を始める。

 移動の途中で最年少の少年は立ち止まると座り動かなくなった。

「もう歩けないです」

 石を投げるのが得意でも体力は無いのだろう。

「休憩したら、もう帰っていい」

 ミケーレなら、こういう時は期待を持たせるな。

 なら言うべきことは一つだ。

「体力が付いたら又挑戦するといい」

 失敗をしたことを責め立ててればあのメイドのように絶望して失敗を繰り返し転落していくだろう。

 

 ゾンビが待機する小屋に入る。

 一列に並んだゾンビが呆然と見つめてくる。

 不気味な緑の顔をした人相の悪いおっさん顔のゾンビだ。

 腐敗し一部が崩れたものがいる。


 少女はそれを見ただけで口を抑えて外に出る。

 そして、吐いたのだ。

 それにつられるように少年も吐く。

「大丈夫か?」

 少女は顔を横にふる。

 顔色も青く唇が震えていた。

「君はもう良い、怖い思いをさせてしまったな。

落ち着いたら帰ると良い」

 少女は頷く。


 残ったかけっこの得意な少年は明らかに嫌そうでゾンビにできるだけ離れる。

「ゾンビの手入れはまず、この目印の付いているのから行う」

「見るだけでいいのですか?」

「体が膨れ上がっているだろう。

来るように命令して外に出す。

腕に布が巻いてあるものは来てくれ」

 俺の命令にゾンビは従いぞろぞろと外に出る。

 

 元いた世界なら、こんな子供に危険な仕事をさせたら問題と成っていただろうな。

 勉強という名の強制労働だ。

「この針でガスを抜く、この膨らんでいる所をゆくっりと刺すんだ」

 少年は嫌がり体を離し手をのばすが針が届かない。

 作業は進まず。


 スーは言われた通りにゾンビの処置を行っていく。

 真剣に丁重な手さばきで行う。

 意外と器用なんだな。

 リリアナの評価が、かなり低い値だったのは恐らく(うずくま)って何もしなかったから、総じて能力が低く見られたのだろう。

「いい感じだ」

 仕事を終えるとスーの頭を撫でる。

「最後まで頑張ったからな。

明日も来てくれよ」

 

 スーは毎日、俺の元に来るようになった。

 以前よりも顔色がよくなり元気になったようだ。

「あ、あの……」

「何だ?」

「えっと……なんでも……ない」

 聞き取りづらい小さい声で話すので半分近くは俺の想像で補填された言葉だ。


 少年はゾンビが嫌になったらしく来ない。

 スーが居なければ絶望していただろう。

「他の子も勧誘たいな」

「引き継げるのは彼女だけです」

「どういう事だ?」

「3人の孤児達が貴方の仕事に付いて話したようで、

嫌なことだと思いこんでいるようです」

「元々、孤立していたスーには影響がないのが救いだな」

「辛いことを押し付ける時は、楽しそうにやるのが一番です」

「なるほど参考する」

 リリアナの目にはゾンビの管理を俺が楽しそうにやっているように見えないのだろう。

 何時も真剣に生きるためにやって来たことだ。

 楽しいとは考えたこともなかったな。

「笑顔を作ることを勧めます」

 リリアナやメイドは微笑む事が多い。

 スーに笑みを作って見せると、スーは凍りついたように動かない。

「ああっ……いや、ちょっとな……。

まあ楽しくやろうぜ」

 スーは頷く。


 ゾンビの管理を引き継ぐのは簡単に終わった。

 スーは一週間ほどで大体の仕事を覚え出来るように成ったのだ。

 失敗や経験を積み重ね。

 色んなアドバイスを受け入れてきた結果なのだろう。

 スーの頭を撫でる。

 スーは照れながらも微笑む。


 そして数日が過ぎた頃だ。

 一緒にゾンビの整備を行おうと移動している時にスーは俺の後ろに隠れた。

「どうしたんだ?」

 目指していたのは街外れにある鉱山だ。

 道中の道は魔物が出るために兵士を護衛としてつける必要があった。

 兵士が駐留する小屋の近くだ。

 周辺を兵士が見回り彷徨いているだけで他に誰も居ない。

 山賊に襲われた時の恐怖が残っているのだろう。

 多くの大人が居るのは怖く感じるのだろうか?

「大丈夫た、俺が守ってやるからな。

俺の手を握れ」

 手を差し出すとスーは両手で掴む。

 こんな臆病で大丈夫なのだろうか。

 

 一人でゾンビの整備を行っていく必要がある。

 強く突き放す方が良いのだろうか?

 今はスーの心が折れて駄目に成らないように守るしか無い。

 俺が居なく成ってから心が折れたなら、それは彼女の責任だろう。

「良いかい、小屋にはスケルトンが保管してある。

戦力として置いてあるが兵士は使わない。

自分の力を示し存在意義を認めさせるために自分の力で解決しようとするからだ」

 スーは頷く。

「俺たちは弱い。

だから守ってもらうために使うんだ」

 

 俺は兵士とは顔見知りで声を掛けると、スケルトンを用意してくれた。

「相変わらず不気味だ。

夜中にガタガタ音を立てる」

 スケルトンは命令するまで動くことはない。

 それは兵士の誰かが震えて、その振動が音になって現れたのだろう。

 臆病なくせに強がっているのだろう。

 そう思うと強そうな兵士も可愛く思えるものだ。

「済まない、ガタガタ鳴るのはスケルトンの宿命だ。

それを解決できたなら偉大な賢者にだって成れる」

「そうか、早く連れて行ってくれ」

 話している間、スーは震えていた。

 

 スケルトン数体を連れて山に向かう。

 スーの怯えは収まっていた。

「そうだスケルトンに命令を出してみようか。

お前、先行して調べてこい」

 驚異となるのは魔物だが、盗賊も稀に待ち伏せていることも有る。

 待ち伏せを受けないためにも調べさせている。

「スーも命令して見ると良い」

 スーは小声で何かを言う。

 小さい声だと、スケルトンは反応しない。

 臆病で声を出せない事は致命的だった。

 命令を出せないとゾンビやスケルトンは作業をしてくれないのだ。

「困ったな、何か解決策はないか?」

 リリアナは少し考えて言う。

「兵士は笛などの楽器を使って作戦を伝達しています」

「初めて知った。

声で伝えるんじゃないのか?」

「戦の合図は法螺貝で行いますし、

鐘を鳴らせば襲撃の合図です」

「なる程な、笛なら複数の音が出せるから、

それによって指示を変えれば良いのか」

 今は笛を持っていない。

 備品としてミケーレに頼んでおこう。


 リリアナは石を拾い石同士を叩く。

 音が響く。

「回数で命令を変更するという考えではどうでしょう?」

「良い案だ。

一回なら周りを守れ、二回なら付いてこい」

 一回鳴らし合図を送るとスケルトンは周りを囲むように守りに入る。

 スーも真似して指示を出す。

 二回鳴らす。

 スーの後をスケルトンが付いてくるように成った。


 いま大切なのは襲われた時に身を守るということだけだ。

 一回鳴らせばそれが出来るのだ。

 基本的にスケルトンは自分での判断は苦手とする。

 守れと言う指示が無ければ、魔物が側にいても攻撃しないのだ。

「これで大丈夫だな。

魔物が居たら石を一回鳴らせば守ってくれる。

見つけたら鳴らすんだ」

 スーは頷く。

 

 鉱山で取れるのは主に鉄鉱石だが、宝石類も稀に取れるらしい。

 商人達が鉱山にやって来て目利きを行っている光景が目に入る。

 宝石は魔法に関係する為に貴族は高値で取引を行っている。

「今日はやけに人が多いな」

 鉱山で働くハゲ頭のおっさんが声を掛けてくる。

「ゾンビ使いのあんちゃんかい。

宝石の大鉱脈が見つかってな、今はゾンビ達に急いで掘ってもらっている所だ」

「規定の時間に小屋に入れてくれないと困る。

予定が詰まっているんだ。

遅れた分はどう責任を取るんだ?」

 嘘でこの後の予定はない。

 交渉をする時に正直に、余裕が有るなんて言ったらギリギリまで待たされる事になる。

 彼らは基本的に俺の都合を考慮せずに自分の都合で物事を押し付けてくるのだ。

 だからそれを見習い真似をしているだけだ。

「すまねぇが、今が稼ぎ時なんだ。

このチャンスを逃したくはない」

「俺の作業が遅れた分、解っているよな?」

「ああ解っている」

 おっさんは袋を取ってくる。

 机の上に中身をばら撒く。

「好きなものを5個持っていって良い」

「待て、それは少ない。

そうだな10個は欲しいな」

 おっさんは一瞬顔色が強張ったが直ぐに笑みを浮かべた。

「ああ、解った。

10個持っていきな」

 

 おっさんは俺が悪魔憑きで、宝石の鑑定能力がない事を知っている。

 この中に有る宝石で価値の有るものは僅かなのだろう。

「リリアナ、鑑定できるか?」

「いいえ、加工前の原石からどれが良いのかは判別できません」

 外にいる他の商人に鑑定させるか?

 そうすれば報酬は減ってしまう。

 悩んでいるとスーが足を引っ張る。

 何時もは死んだような目をしているがこの時は輝いている。

 親は盗賊に襲われたんだったな。

 宝石関係の商人だったのだろうか。

「選びたいのか?」

 スーは頷く。

 リリアナは首を横に振り言う。

 これはやめたほうが良いと言う時の合図だ。

「彼女の親は農民です。

宝石に関する知識は皆無です」

「俺も、リリアナも知識はないだろう。

それは誰が選んでも同じということだ」

「はい、その通りです」

「じゃあ任せよう」

 スーが選び始めてもおっさんの顔色は変わらない。

 5個選んだ所でおっさんは笑み零し口元が笑っていた。


 スーは全て粗悪品を選んだのだろう。

 形も大きくバラツキがある。

 何を基準に選んでいるのかもわからない。

 リリアナは何を選んでいるのか気づいた様子で、候補に幾つか分け始めた。

 よく見ると赤い宝石を選んでいるようだ。

 魔法の儀式に使うのは赤いものだけだ。

 それは魔気を貯めるのに向いているらしい。

「加工はしてくれないのか?」

「加工は職人に依頼することだな。

俺は掘るのが専門だ」


 スーは農民のはずなのに、魔法の知識が有るのか?

 単なる偶然なのだろうか。

 リリアナが嘘を付くことはないとすれば、情報源が嘘を付いている可能性がある。

 何故だ?

 盗賊に殺されたと聞いて俺は、商人の娘だと勝手に思っていた。

 だから宝石が判別出来るのだと。

 

「リリアナ、調べてほしいことが有る。

スーの事をもっと詳しく知りたい」

「はい」

 

 スーの選別が終わるとおっさんは笑みを浮かべていた。

「いや良い目利きだったよ。

お嬢ちゃん」

 本当に価値の有るものは、値が吊り上がらないように価値がないように扱っているのだろう。

「おっさんなら、どれを選ぶんだ?」

「もう交渉には応じない」

「これは興味が有るから聞くだけだ。

まだゾンビが戻ってこないし待っている間の暇つぶしだ」

「そうだな、俺ならこれとこれだ」

 大きく透明度の高い透き通ったものを選んでいる。

「色は付いていないほうが良いのか?」

「ああ、透明な程価値は高い、どんなものに合うし輝きが一番綺麗だからだ」

 芸術品としての価値を彼らは求めているのだ。

「スーは赤いのが好きみたいだ。

これはどれぐらいの価値なんだ?」

「銅貨1枚程度だ」


 リリアナは耳打ち教えてくれた。

「魔法具に使われる宝石は金貨1枚で取引されています。

未加工とは言えあまりにも安すぎます」

 金貨は元の世界基準だと10万ぐらいの価値がある。

 銅貨は1円ぐらいと思って良いだろう。

 つまり一つ売れれば10万倍になるという事だ。

「スーが喜んでいる。

ご褒美として沢山与えたい、一袋ぐらい売ってくれないか?」

「良いぜ、銅貨100枚だ」

 おっさんは特に赤いものを選んで持ってきてくれた。

 袋には138個入っている。

「100個より多いが良いのか?」

「そいつはサービスだ。

有り余って捨てるほどあるからな」

 

 これで富を得れば状況が変わるだろう。

 人を使うには権力や富が必要だ。

 それが手に入るのだ。

 リリアナは耳打ちする。

「その様な物を買って何に使うのですか?」

「加工して売る」

「職人の加工にはお金が掛かります」

 しまった。

 殆ど生活するだけで苦しくて金はない。

「どうやって加工するのか調べてくれないか?」

「それは出来ません。

私は街の中を自由に行動できないからです」

 状況を変える光が見えたかと思うと、また見失う。

 このまま時だけが過ぎていけば、ミケーレは誰かの手に渡るだろう。

 そうなる前になんとしても手に入れたい。


 だが手札が増えたのは大きい。

 一見無価値に見えても、見方を変えると価値がある物もあるのだ。

 スーは逸材なのかも知れない。

 朽ち果ててしまうリリアナよりも大切にしたい所だ。



 



 

ご愛読、有難う御座います。

明日の更新で一度、ストップします。


じっくり考えて物語を作りたいと思っています。

どうして連載が出来たのかと申しますと、半分を前もって全部書いておいて、

半分書き足す事で毎日更新が出来ていました。


余り先まで書いてしまうと、補正が出来なくなると思って、

途中まで書いていました。


その方が作品のクオリティが上がるんじゃないか?という試みです。

毎日書いていると、それだけで時間を取られて何も出来なく成ってしまいます。

それではアイデアも枯渇してしまいます。

余裕を持って出来るようにしたわけです。




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