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第3話「はじめての冒険:洞窟探検・完」

「町に戻ってくると、なんだか達成感がありますね」


ガヤガヤと、ギルドのある大通りに戻って来た私達。

その頃にはもう日は落ちてしまっていましたが、大通りの人の量はあまり変わらず、

蛍光灯とはまた違う、暖かい明かりの下を、ファンタジーな格好の人々が往来していて、まるで繁華街のような様相を呈しています。


人の多いところに戻ってくると今の格好がまた気になってきますが、今の私にはそれよりも優先度の高いイベントが待っているのでした。


「とりあえず、まずはギルドの総合受付に行くわ」

「どうして?」

「探索して拾ってきた物をどうするのか、確認しないといけないもの」

「まぁ…鑑定店とか僕ら知りませんからね」


それは、洞窟で手に入れたお宝の数々の鑑定。

一部、もしかしたら遺留品かも?というものもありますが、だったらだったで、それをどうするべきかも知らないので、それについても聞く必要があります。




--------------------



ギルドの前は、昼と変わらぬ、いやむしろ昼以上に賑わっています。

そして、お酒やたばこのような臭いも…


「完全に飲み屋街の空気感ね…」

「この世界の夜ってこんな感じなんでしょうかね…」

「住宅街の方は静かでしたし、この世界の冒険者は、こんな感じなのかもしれません」


右を見ても左を見ても、沢山の人が居ます。

ですが、ギルドの前には、以前見つけた踊り子のお姉さんは居ませんでした。

別にあの人にそこまで思い入れがある訳ではありませんが…


そんなお酒臭い空間に入っていくのはちょっと気が引けますが、一応は国営の施設らしいので、怪しい人にはちゃんとした対処はしてくれる…と信じています。


「中の空気感も相変わらずね」

「うー…美味しそうなお肉の香りが漂ってくる…ねぇねぇ、ここで晩飯食べちゃわない?」


夏輝さんが言う通り、日の落ちたギルドはまさにディナータイムと言った感じで、併設された食事処がえらく賑わっています。

ギルドのカウンター付近に居ると、ウエイトレスの人がひっきりなしに料理やお皿を運んでいきます。

そんな空間に立ち入ってしまったのですから、こう、皆お食事ムードになってしまった訳です。


「今いくら持ってるんでしたっけ?」

「えーっと…だいたい8000円位でしょうか?」

「メニューは…オルケス鶏の香草蒸し…1300…ゴルト…?まぁ、行けなくは無い金額ね」

「ここの相場も、私たちの世界とあんまり変わらなそうですね」


私たちの世界でも、それなりのファミレスで肉料理を食べようとすれば、1000円前後が相場です。

つまり、今私たちが持ってる、8000…なんでしたっけ?


「ここではお金の単位は"ゴルト"って言うらしいわね」


…8000ゴルトは、大体8000円程度と考えておいて良いのでしょう。

そう考えると、4人で予算8000円というのは、少々心もとない気がしてきます。

そもそもこの8000ゴルトも、拾い物ではありますけれど…


「食べるにしても、一度元の世界に帰って、夕飯はいらない、って親に連絡してからですね」

「あー、確かにしといたほうが良さげだね!帰ってから夜ごはんあっても困るもんね」

「確かにその辺り、やっておいた方が良さそうですね!」

「私は一人暮らしだから、その辺は自由よ」


あくまでこちら世界は冒険用の世界。生活のメインは私たちの元の世界です。


「何にしても、まずはギルドで話を聞いてからですね」


そう言いながらポケットの中にある錆びたネックレスを取り出しながら総合受付カウンターへと向かいます。

カウンターに居るのは、前に出会ったのと同じ人でした。


「こちらオルケスギルド、総合受付です」

「えっと、ちょっと聞きたいことがあるんですけれど…」

「何でしょう?」

「今日、西アウフタクト洞穴に行ってきたんですけど、そこで手に入れた物を鑑定したり、売ったり出来るところはありますか?」


遠回りしても仕方ないし、なんだかボロを出しそうだったので、単刀直入に切り込みます。


「…それは、洞窟にある天然資源という意味ですか?」

「え、えっと…」


そう言えば、洞窟に行ったのに鉱石の採掘とかはしてなかったなぁ…

と思いましたが、まぁ、ツルハシは持って行かなかったので仕方ないでしょう。

実際、石3つと棒2本でツルハシが作れる訳でもありませんし?


「その…洞窟で拾った装備品…とかですね」

「あぁ…なるほど」


洞窟で手に入れた装備品、それが何を意味するのか、知ってか知らずか、

受付の人は表情を一切変えずに続けます。


「それでしたら、ギルドの隣に、商会がありますので、そちらでどうぞ」

「あ、えっと…わかりました」


アッサリと答えが聞き出せたというか、さもそれは元々は誰の物でも無かったかのような…


あまりカウンターを占領し続けるのも悪いので、とりあえずその場はカウンターを後にします。


「横に何かあるらしいね」

「これ…本当に売っちゃっても良いんですかね…」


洞窟で拾った踊り子の服を取り出して眺めます。

誰かの物だったかとか言う前に、純粋に綺麗で高そうな布地です。


「ま、ああ言われた以上、大丈夫なんじゃない?」

「そ、そうですよね」

「とりあえず、売るかどうかは別として、行ってみましょう?…主に僕が重いので…」


背中にとにかくいろんなものを背負っている白金君が可哀そうなので、駄弁りもそこそこに向かう事にしました。






そうして私たちは、総合受付の人に言われた商会とやらに赴くわけですが、

まぁ、その辺は言わなくても良いですよね。隣ですし。


ギルドの隣には、レンガと木で作られた、1階建ての奥に長い建物が建っています。

入口も非常に広く、

建物というよりも、商店街の入り口ように見えます。


「ここが商会…」

「どっちかって言うと市場だよね、これ」

「まぁでも、鑑定とかやってくれそうな場所はありそうね」


商会にぞろぞろと入っていく一行。

左右を見渡すと、やはり商店街の様に、小さめの小屋のようなスペースが立ち並び、その店の前にずらりと武器や道具が並べられています。

逆に、私達はファンタジーな格好をしているので、妙な視線を向けてくる人は居ません。


「あそこは魔法武器店かしら?」

「確かに、本とか杖が並んでますね」


「あれ…何の店ですかね?」

「えー?…ポーション?」


商会は、各お店ごとに陳列されているものが違っていて、そう言うのも含めて本当に商店街のようです。

そこで私たちは、とりあえず、近接武器を扱う店に行ってみる事にしました。

白金君が背負っている、重くて金色の武器を見てもらう為に。


「多分ここが武器屋ですね」

「ですね」


商会に入って少し歩いたところに、見るからに武器屋という店があります。

所狭しと、剣や斧、槍などがまるで雨の日の傘立てのように立てかけられています。


「おう、新米の冒険者か?」


その店から、私達が話しかける前に、店員さんが出てきました。

声色は大分フランクそうな声でしたが、格好は歴戦の戦士のような風貌で、がっしりとした体格に、古傷ののようなものがいくつか見られます。


「え、えぇまぁ」


その"圧"に、若干気圧されながら答えます。

こんな迫力のある人、今までの人生で一度も見た事ありません。


「ほうほう、で、何の用事で来たのかな?」

「えっとですね…ちょっと見て欲しい武器があってですね…」


言ってる事と口調は優しいですが、どうしてもそのビジュアルに気圧されて、たどたどしくなってしまいます。

それでも白金君にサインを送って、背中の黄金の剣を見てもらう事にしました。


「これ、外の洞窟で見つけたんですけど…」

「…ほう?」


剣を見た店員さんは、懐から革製っぽい手袋をはめてから、その剣の柄を片手でひょいと持ち上げました。

見た目に違わず筋力も相当なものの様です。


「私達、あんまり武器とか冒険に詳しくないので、これってどういうものなのかな…って」

「なるほど?まぁ、ここに見せてきたのは正解だな」


そう言いながらも、視線はすべて剣に向いていて、こちらを気にする様子はありません。

まぁ、鑑定してもらうのが主目的なので、どちらかと言えばそれが正解ですが。


「ふーん…状態は言う程悪くないな、これ、本当に洞窟にあったのか?」

「ええ、宝箱の中だけどね」

「そういう事か…」


状態とかをキッチリと見ているのは、なんだかとても鑑定っぽくて、少しワクワクもします。

本当に虫眼鏡みたいなものを使って、細かい部分を見たりするんですね。こういうのって。


そのまま鑑定が終わるのを見ていたら、店員さんが、スッとその剣を、店の前にある開いたテーブルに載せてこちらの方を見てきました。


「さて、一通りの鑑定が終わったぞ」

「本当ですか?」

「ああ、これは間違いなく、黄鉄石の剣だな」

「おう…なんです…?」


聞きなれない言葉に、思わず聞き返してしまいます。


「"おうてっせき"、まぁ、鉄とも石ともつかないような金色の鉱石だな」

「なるほど…?ってことは、これは金じゃないんですね」

「そりゃぁなぁ!このサイズの金なんて見た事ねぇな!」


ガハハハ!と豪快に笑う店員さんの前で、

ほんの少しだけ肩を落とす私達一行。

…と同時に、やっぱりこの世界でも金って貴重なんだなぁ、と思ったりしていました。


「とは言え、黄鉄石も武器としては中々価値のある代物だ。これもまぁまぁ良いもんではあるぞ?」

「そ、そうなんですか!?」

「あぁ、金属としてはかなり魔力を溜め込めるからな、魔法を併用する冒険者には人気の素材だな」

「へ、へぇ…」

「その分加工も少し難しくて、強度を出すにも工夫が必要だが、これはその辺も中々出来てる。総合的にも、良い剣だと思うぜ!」


テーブルに置かれた剣は、屋台の証明の光を反射して金色に光っていますが、

洞窟に居た時には気が付いていなかった、小さな凸凹が、光の反射を揺らがしています。


「そうだな…状態から見ても、大体30000ゴルト位が相場かな」

「さっ、三万…!?」


思ったよりな大金に、なんとも俗っぽい声を上げる私。


「まぁ、新品と同価格、とはいかないからな。これくらいで勘弁してくれ」

「あ、いえ、価格的には問題無いですが…」


さっきまでの所持金が8000程度と考えると、相当な高値です。

と思って他の武器の値札を見て見ると、立派な金属製の斧が15000ゴルトと書いてあります。

各所に傷が付いているのでおそらく中古品なのだと思いますが、だとすると売値で30000は中々破格なのでは無いしょうか?


「で、どうよ?これはこっちで預かっちゃってもいいのかい?」


「白金君はどうします?この剣」


この剣を使うかどうかは白金君にかかっています。

この剣は魔法にも適性があるようですが、私達女子には重くて使えません。


「僕は売っちゃっても良いと思いますよ?ぶっちゃけ僕にも重いので」

「じゃあ、皆、これは売っちゃっても良いって感じですかね?」

「私は良いよ!」

「私もよ」


皆一同、頷いて肯定しているので、このままこの剣は売ってしまいます。


「というわけなので、よろしくお願いいたします」

「了解!」


店員さんは一度店の奥に消えると、皮の袋をもって戻ってきました。

そして、袋の中から、金色に眩く輝く、大きな平べったい金属を3枚取り出します。


「さてと、これで30000ゴルトだ」


手渡されたそれは、私が今まで手に入れた硬貨よりもずっしりと重く、表面にはしっかりと、10000と彫られています。

要するに、これがこの世界の10000円…ゴルトなのでしょう。


「これで取引成立だ。あとはそうだな…逆に武器が欲しくなったら見てくと良いぜ、掘り出し物とかあるかもな!」

「あっ、ありがとうございました!」


とりあえず、貰ったお金は、洞窟で拾った皮袋に入れておき、その店を後にします。


「純金じゃありませんでしたけど、なんだかんだ良いお金になりましたね」

「金属の武器にしては安いと思ったけど、他の武器を見てるとそもそも武器の相場が安めの様ね」

「まぁ、だいぶありふれてそうですしね」


商会の中をぞろぞろと歩きながら駄弁ります。

時折すれ違う人も気にせず。ショッピングモールを歩くような気分ですね。


「次は何を見て貰おうかな!?」

「あと残ってるのは、宝箱から見つけた、ネックレス、踊り子の服、魔方陣付きの宝石、首輪、あとはー…」

「ゴブリンから手に入れた矢とか剣とかかしら」

「ネックレスとか服はともかく、ゴブリンの剣とかって、何処で見てもらうんですかね…」


「えっと…」


自治体の面倒くさいゴミ捨てみたいな状態になっている私達。

本当に、何処で見てもらうんでしょう?



「じゃあ、とりあえず分かるものから見ていきましょうか」

「そうですね。まずはネックレスからにしましょうか。もしかしたらこの宝石も見てくれるかもしれませんからね」


そうして私たちは、今回の成果を清算する為に、他の店に向かう事にしました。




「基本的に錆が多くて、宝石の部分しか買い取れないけど、いいよね?」


こちらは女性の店員さんでした。

貴金属を扱う商店は、さっきの武器屋と違い、丁寧でオシャレな雰囲気が伝わって来ますし、店員さんの衣服も、気品を感じます。


「はい。それでお願いします」


ただ、結局持ってきたネックレスは錆が激しく、見てくれるのは中心に嵌められた宝石だけの様です。

これに関しては最初から覚悟していたので仕方ありません。


「これくらいならー…うん、7000ゴルト位かな」

「因みに、その理由は…?」

「そうだね、宝石そのものはまぁまぁ価値があるんだけど、ちょっと表面に傷があるから、売るには少し削りなおさないと行けなさそうなんだよね。だから、売る時には1サイズ小さい宝石として売る事になるから、まぁ、その分かな」


「なるほど…後ですね、もう一つ見て貰いたいものがあるんですが」


そう言いながら、中に魔方陣が刻まれた宝石を見せてみました。

それを見た店員さんは、


「ん?あー、これは確かに宝石だけど、どっちかって言うと魔道具的な意味が強そうだね」

「つまり…?」

「私の方じゃ見られないかなー」

「そ、そうですか…」


なんとなく気恥ずかしくなって、いそいそと宝石を仕舞います。

なんというか、担当のカウンターを間違えるとか、たまにやってしまうやらかしです。

まさかこっちで経験する事になるとは…


というわけで、ここではネックレス…の宝石部分を7000ゴルトで買い取ってもらうに留まりました。

そうして、次は踊り子の服を見てもらう為、防具屋に向かおうとしたその時、


「そういや紅葉、その服着てみるって言ってなかった?」

「そ、そうでしたっけ…?」


倉井さんがふと余計な事を思い出します。


「ええ、確かに言ってたハズよ」

「うん、私も聞いた」


夏輝さんも便乗してきました。


「た、確かに言いましたけど…!?」


この衣装、今私が着てる奴より過激だから、正直あの場では適当に言っておいて、忘れて貰えたらなぁ…思ってましたが、そう上手くはいかないようです…


「洞窟の戦利品だし、ステータスが上がるかもしれないわよ?」

「そっ、それはそうですけど…?」

「じゃあ、とりあえずこの服は保留という事で!」

「いや、その…」


倉井さんと夏輝さんが結託なんてされたら、私には到底勝ち目はありません。

こうなってしまった以上、今すぐに売るという選択肢はもう無いので、衣装はリュックにしまい込む事になりました。

今着る事にならなかっただけでも良しとしましょう。あわよくばそのまま忘れてくれたら…


「って事はあの首輪もステータス上がったりするのかなぁ?」

「あれはなんか、下手に付けたら外せなくなりそうですし、やめときましょう?」


明後日には普通に学校があるのですからね。

それに、上がるというか、逆に下がりそうな気もしますし…

とりあえず気を取り直して、他の戦利品の確認に戻ります。


「じゃあ、後残ってるのは…」

「ゴブリンの剣ね」

「どこで見てもらうんですかこんなもの…」


夏輝さんのリュックに詰め込まれた、大量の小さな剣を見て、途方に暮れる私達。

人間に使えない小さな剣なんて、何かに使えるんでしょうか?

鉄くずとして再利用できるなら、それでもいいのですが…

なんて思っていたら、


「あ、もしかしたら、あそこで見てくれるかもよ」


と夏輝さんがどこかを指さしています。

その先にあるのは、


「ちょっと怪しくないですか…?」

「でも、敵からの略奪品なら、確かに一番それっぽい気はするわね…」


まるで、裏路地のような暗さと雑多さのある、暗い木造の屋台がそこには立っていました。

その奥には、年老いた老人が1人、何も言わず立っています。

カウンターには、動物の皮や牙のようなものや、怪しい草のようなものが見えます。

確かに、敵のアイテムを扱っている店、という気はします。


「い、行ってみます…?」

「まぁ、ここにある以上、公認の店なんだとは思いますよ…?」


そうして私たちは、意を決して怪しい店に行ってみる事にしました。


「あのー…」

「ん?ここは異生物品の取り扱い店じゃが」

「異…生物品…?」

「ゴブリンや獣どもの素材やらを取り扱ってる店じゃな」


老人は、小さいけど、何故か聞き取りやすい、不思議な感じで話しています。


「やっぱりここで良かったみたいですね!」

「らしいわね」

「じゃあ、早速見てもらいましょうか」


私達も、小声会議をしてから、その老人にゴブリンの剣を見せてみました。


「これは…ゴブリン族の剣か。しかしこんなに沢山の本数を…お前ら、ねぐらにでも突っ込んだか…?」

「あ、あははは…」


それに関しては乾いた笑いしかできません。

なかなかの大冒険でしたが、この反応を見るに、多分無謀だったんでしょう。


「剣自体は何かに使えるというわけでは無いが、鉄材としての再利用は出来る」


老人は、ゴブリンの剣を大雑把に積んでいます。

やっぱり、これそのものにはあまり価値は無いようです。


「…これ全部で2000ゴルト、といった感じじゃな」

「…そうですか」


リュックいっぱいに詰め込んでも、それくらいにしかならないというのは、正直コスパ悪いですね。

まぁ、あれ一回で持ちきれないほどは手に入りましたし、さほどレアでも無いのでしょう。


「あ、そうだ!」


突然白金君が声を上げて、リュックを漁りだしました。


「そうそう、これもあったんでした!」


そう言いながら取り出したのは、ペットボトルの中に詰まった、スライムの液体でした。

いやまぁ…確かに採取してましたけども…?

それを見た老人は、


「ほぉ?それはアウフスライムの体液じゃな?」

「あ、そんな名前でしたっけ?」

「あぁ、ここアウフタクト周辺に住んでるスライムじゃからな、体液は美肌効果があって、ここの名産品にもなっとるぞ」

「へぇ…」


今なんと?


「まぁ、これくらいの量なら、1000ゴルト程度かの」

「それじゃぁ、」


「ちょっと待った!!!」


夏輝さんの掛け声と共に、女子3人で円陣を組んで会議を始めます。


「あれ、美容効果があるらしいですよ!」

「けど、スライムだよスライム!あのスライム!」

「美容効果って、本当なのかしら…」

「確かに…この町の女の人、皆お肌綺麗だなーって思ってたの!」

「さっきの宝石屋の人も美人でしたね」

「とはいえ、それが私達にもいい影響があるかは分からないわよ…?」

「うーん、私はスライム浴びちゃったけど、悪い影響は出てないかも」

「じゃあ、やっぱり…?」

「試す価値は…」

「「「あるかも」」」



「あのー、結局これは売っちゃっても良いんですか?」

「ストップ!今回はそれは保留でお願いします!」

「え、あ、はい」


白金君がスライムを売るのを阻止した後、そのペットボトルを回収し、倉井さんに渡します。

私の懐には入らないので…


「…すいません、今回は剣だけで…」

「若いうちは色々と試してみるのもまぁ、いいじゃろうよ」


そうして、一通りの物品を売り、そこそこのお金を手にした私達。


「じゃあ、そろそろ夜ご飯食べに行こっか!!」

「そうですね!」

「案外稼げましたし、ちょっといいメニュー食べちゃってもいいんじゃないですか?」

「それはどうかしらね?次の冒険の準備もしなきゃいけないし、もっといい装備が買えるかもしれないわよ?」

「た、確かに…」

「まぁでも、食事そのものは奮発していきましょう、折角の初陣だものね」

「ですね!」


なんだかんだ、商会で時間がかかって、お腹が減ってしまった一行。

空腹感を満たす為、私達は隣のギルドへと、足を進めたのでした。


大冒険を、美味しい食事で締める。

それが、この特殊冒険部の醍醐味となるのかもしれませんね。


「あ、あの服着るって約束は忘れて無いからね」

「もう良くないですか…?」

「だめよ、大事な装備更新のチャンスなのよ?」

「でもですね?あの装備って」

「戦力が足りなくて死ぬよりはマシでしょう?」

「ぐっ…!」


そして、RPGでよくある、性能は良いが見た目が中々な装備をどうするのかという葛藤を感じるのも、

この特殊冒険部の特徴なのかもしれません。

夏輝「そういえばさ、洞窟で大量のゴブリンに襲われた時、あの時一旦帰っちゃえばよかったよね」

一行「あっ……」

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