表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

第1話「まだ見ぬ世界へレッツGO!」

主要メンバー

紅葉黑音(あかばくろね)

赤色。特殊放送部部長。大人しめで慎重派、心配性。ファンタジーの知識はゲーム寄り。


白金春人(しろかねはると)

青色。今回の4人では唯一の男子で後輩。男子の浪漫は相応に好き。


倉井雪絵(くらいゆきえ)

紫色。紅葉の幼馴染。竹を割ったような性格で、自身の決断に忠実。


夏輝海(なつきうみ)

橙色。コスプレ好きで楽しい事が一番。運動は出来るけど勉強は苦手。

筆者:紅葉黑音


挿絵(By みてみん)


「今日はみんなで異世界に行くよ!」

放課後、外から微かに部活動の声が聞こえる部室の中、

部員の1人、夏輝海さんが高らかに宣言します。

それを私は横から見ています。


「いや…え?」

「異世界…?」


他の部員のリアクションはと言えば、まさに困惑、と言った感じ。

無理もありませんね。普通は突然異世界に行くと言われても…って感じのハズです。

でも、事実なので、それを皆に説明しましょう。


「いやですね・・・放送機器を弄ってたら偶然異世界と繋がって…」

「どうせだったら行ってみようよ!ってね!」


そう、私たち特殊放送部は、異世界転移をする力を手に入れてしまった訳です。



一般的な異世界転移と言えば、

ある日突然何らかの力に巻き込まれ、元々住んでいた世界とか異なる世界に飛ばされてしまい、

元の世界に戻ろうと四苦八苦したり、元の世界の知識を生かしてその世界で生きていくこと、だったと思います。


ですが、私たちのそれは一味違いました。

部室のPCにある配信開始ボタンを押す事で異世界に飛び、

手持ちのスマホで配信停止ボタンを押す事で元の世界に帰る。


言ってしまえば、ログイン・ログアウト感覚でできる、

超お手軽異世界転移と言うわけです。

スマホを持ってない状態で転移したらどうなるのか、ですか?

それは怖くて試していませんし、充電が切れたらどうするのかも試していません。


でも、こんな面白いものは他にないと、今度は部員を集めて転移してみることにしたのでした。



「じゃあ、早速やってみますよ?」


PCは既に準備が整えられています。

転移した後の体勢は転移前の体勢のままなので、中腰のままマウスを握ります。

椅子に座ってると転移後に空気イスになって転んじゃいますからね。


カーソルを配信開始のボタンに合わせて…配信、開始!!


マウスをクリックした途端、立ち眩みのような絶妙な感覚と共に、

視界がぼやけて、暗転していきます。


そしてそれがハッキリしてくる頃には…



「「「「……………」」」」


もうそこはさっきまでの静かな那朗高校の部室ではなく、

…なんて言ったらいいのでしょう?


挿絵(By みてみん)


とにかく、ただただ広い平原が広がっているのでした。

ちょっと小高い丘辺りでしょうか?

見渡す限りの草原と、森と、山と、空、

ゲームやテレビでしか見られなかった景色がそこにはあります。


足元を見ると、何の草か分からない短い草が生えています。

…元の世界の庭に生えてる物とはちょっと違うかもしれません。


「…本当に転移したわね」

「うわー!凄い!」

「本当に異世界なんですかね…?」


皆その場から周囲を見渡して、三者三様のリアクション。

異世界に行くなんて普通の人には絶対できない体験です。


心地の良い風に吹かれながらそんな感動に浸っていたら、夏輝さんが何かを見つけたようで、

私の方をバシバシ叩いてきています。


「あ、あそこに町っぽいのがあるよ?行ってみようよ!!」


そんな事を言いながら夏輝さんは真っ直ぐ何処かへ走り出して行ってしまいました。


「あ!ちょっと待ちなさい!!」


倉井さんの制止も意味ありません。

既に丘を駆け下りて行ってしまったのか、姿はもうありませんが、

走っていった方を見ると、確かに町らしきものが見えます。

屋根とか、壁とか、畑とか、そんな感じものが。


白金君や倉井さんとアイコンタクトを交わして、私たちも夏輝さんが向かったほうへと向かいます。

どうせ、何処かに向かうなら町でしょうし。


…と思ったとたん、


「うわぁーっ!」


下から夏輝さんの叫び声が聞こえます。


「先輩の叫び声が!」


間違いなく非常事態みたいな声に、白金君も驚きの声を上げます。


「い、行ってみましょう!」


帰ろうと思えば、各々自由に帰れるハズなのですが、とりあえず様子を見に行ってみる事にしました。




「夏輝さん!どうしました!」


草原+下り坂という悪条件、慎重に坂を下りていくと、夏輝さんの姿を確認する事ができました。

そこに待ち受けていたのは…


「見て!モンスター!」


そこにいたのは、

青いブニブニした、二本の突起のある40センチ位の身体に、真っ直ぐこちらを見つめている一つ目。

…どこかで見たことあるような、無いような生物が二匹。


これを生物と言っていいのかは分かりませんけど、ひとりでに動いてますし、多分…生物なのでしょう…


「ほんとに異世界なのね…」


倉井さんが溜息を吐きながらその…スライム状の生物を見つめています。

ただの平原ならヨーロッパとかにもありそうなものですが、この奇怪な生物は多分の元の世界のどこを探しても見つからないでしょう。

そう言う意味では、この変な生物こそがここが異世界の証と言えるかもしれません。


とはいえ…


「ど、どうしましょうか…」


「異世界に行くって言ってたのにノープランなの?」


倉井さんのツッコミも当然、異世界に行くとか言っておきながら、

そこで起きる事は何にも考えていませんでした。


「まぁ、逃げるか追い払うかですよね」


確かにそうですけど…


「女子が三人もいるのに戦えるんでしょうか…?」


ここにるのは、私紅葉と、白金君、夏輝さん、倉井さんの4人。

4人中3人が女子な上、武道とかやっている人は居ません。

私以外は運動神経はそこそこレベルらしいですが…


目の前のこれが強いのかどうかも分からない状態で、武器も無い私たちが戦えるかというと、

やっぱり不安が残ります。

と思っていたら、


「そのためにコレを持ってきたわ。これがあれば私も戦えるわよ」


と、身の丈ほどもある大きな刀を取り出してきました。



そ、その刀は…

…これも説明しておかないといけませんね…

特殊放送部は昔、YouTuberっぽいことをしてみようって事で、鉄を打って太刀を作ったことがあったんでした。

今考えるととことん意味わかりません。


「それ、倉井さんが振るうんですね」


取り出した、というには大きすぎるので、今までずっと持ってたのを見逃していたのでしょう。

倉井さんの身長程のそれは、普通の竹刀の様に持つことは出来ず、ほぼ地面に引きずる形で持っています。

ともあれ、これでも振り回せば戦う事は出来るのでしょう。


「魔法とか使えれば私も戦えるんだけどねー」


夏輝さんに同感です。

魔法も武器も身体能力も無い私は、ただ応援する事しかできません。


なんてやり取りをしていたら、

目の前に居たスライムが、急に体を縮めたと思ったら、まるでバネが伸びるように、勢いよく倉井さんの方へ飛んでいきました。


太刀を持っていて、とっさに避けられなかった倉井さんは、その体当たりをモロに喰らってしまいます。


「うっ」

「だ、大丈夫ですか!?」

「ええ、バスケでパスを受け損ねた位のダメージよ」


呻く倉井さんに声を掛けますが、どうやら無事の様です。

着ていた制服にちょっぴり青い液体が付着していますが、本人が気にしてないので見なかったことにしましょう。


「襲ってくるってことは、反撃しないとマズそうですね…!」


この生物に敵意があるという事を理解した白金君が、とりあえずこれらを追い払うために駆け出して、


倉井さんを襲った方とは別のスライムを思いっきり蹴り抜きました。

まるでサッカーボールの様に吹っ飛んで、ゴロゴロと草原を転がるスライム。

その勢いが止まった後、体勢を起こしたそのスライムは、やや弱っているようです。


「攻撃は効いてそうね。じゃあそっちは任せたわよ」


そう言いながら太刀を握りしめた倉井さんは、全身の筋肉と遠心力を使ってその太刀を高く振り上げ、

「やぁっ!」

掛け声と共に、思いっきり振り下ろしました。

ド素人が作った太刀と言えど、断面が鋭利な金属の塊であることは変わりません。

勢いと重量の乗ったその一撃は、スライムの二本の突起のド真ん中。

スライムを縦に真っ二つにするほどの破壊力を発揮しました。


挿絵(By みてみん)


「うわ…一撃…」

「まぁ、ユキちゃんと同じ位の刀だしね」


夏輝さんと二人で唖然としているしかできませんでした。

スライムは形を保てなくなったのか、ドロドロと溶けだしていき、

真っ二つになったままの目玉だけが残されていきます。

…ちょっとグロテスクです…


「う"っ」

っ!!


そんなスライムの死に様に気をとられていたら、右脇腹に鈍い衝撃を受けます。

突然の衝撃に、体勢を維持できず、そのままよろめいて転んでしまいました。

下は土と草なのでダメージを吸収してくれましたが、脇腹の鈍い痛みは残ったままです。


どうやら、さっき白金君が蹴り飛ばした方のスライムの攻撃を受けてしまったようです。


「紅葉っ!」

「だ、大丈夫です!」


地面に刺さった太刀を引き抜こうとしながら心配してくる倉井さんに、無事のサインを送りながら立ち上がります。


「私は大丈夫なので、みんな頑張ってください!」


起き上がったところで、戦えない私は皆を応援するしか無い訳ですが。

でも、その応援に合わせるように、白金君がもう一回、スライムに蹴りを食らわせました!


「クソぉ!」


またも同じように吹っ飛んでいくスライム。

当たりどころが良かったのか、力尽きたのか、地面に転がったスライムは起き上がる事は無く、

そのまま地面に溶けだしていきます。

きっと倒したのでしょう。


「た…倒した…?」


動かなくなったスライムたちを前に、本当に倒せたのかどうか不安になる私たち。

夏輝さんが、真っ二つになったスライムの元にしゃがみこんで、動かないそれを触っています。


「うわっ!気持ち悪っ!」


手に付着した青いべとべとした液体を、必死に振り落としてますね…

あまり触らない方が良さそうです。



「ともあれ、何とか普通に倒せましたね」


汗を拭う白金君。


「倉井さん、強いですね…」

「武器持ってればこんなものよ。仮にも鉄の棒よ?」


実際に戦った二人も、何とも無いようです。

既に脇腹の痛みもすっかり引いています。

でも念のため、あとで診ておいた方が良さそうですね。青痣とかになってるかもしれませんし。



「さ、敵も倒したし町に行ってみよー!!」


さっきまでスライムを弄りまわしていた夏輝さんが、もうそれから興味を失ってしまったのか、

見えてた町に向かおうとしています。


夏輝さんが歩き出した先を見れば、若干ではありますが、少し町に近づいているみたいです。


「そうね、ここに居たらまた襲われるかもしれないものね」


鞘が無いので、抜身のままの太刀を抱えた倉井さんも、町に行くのに賛成の様です。


「そ、そうですね。とりあえず休める場所に行きましょうか…」


それに関しては私も賛成です。

あんなものが出てくると分かった以上、安全な場所に行くのは先決でしょう。

元の世界に帰るとしても、安全な場所に行ってからの方が良さそうです。


そんなこんなで初めての異世界転移と、戦闘を経験した私たちは、その足で近場の町へと向かうのでした。

今回のストーリーは、既にYouTube上で公開されており、その際に

「部員4人がこの世界で取得する職業」のアンケートが行われています。

よって次回は、4人が職業を得るまでのストーリーが投稿されます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ