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いつか来るその時に、届け私の想いよ

作者: 鈴音

私の命は短いのかな。それとも長いのかな。

私は知らない。そしてきっとあなたも知らない。

それでいい。それがいい。そうであって欲しい。


未来なんて見えない方がいい。

無色透明で無味無臭で面白味のない知らなくてよいと思えるものであればいい。

だって、見えたら考えてしまうでしょう?

いつか来る終わりを、別れを、それを思って泣くあなたを私は見るのでしょう?


そんなの一度で充分。あなたを泣かせるのなんて一度で充分。

その塩辛くて甘い、心の溶ける私だけの為の熱い雫を受け止めるのは、

たった一度で充分。一度きりで、充分なの。


笑うあなたが好き。私を呼ぶその声が好き。

明るく笑って呼ばれる私の名前は一等綺麗に輝くの。

だから、私はあなたに呼ばれる私の名前が何よりも大好きなの。


知ってるかな?知ってるよね。知らない訳ないか。

だってあなたに呼ばれるのが嬉しくて、態度で示してるもの。

ほら、私ってばちょっとわかりやすいからね。

でもそんな私があなたは大好きでしょう?知ってるよ。


だから私はあなたの声を聞き逃さない。

ピンと耳をそばだてて、ちゃんと聞いてるの。

いつどこで呼ばれてもちゃんと聞けるように。

すぐに飛んで行けるように。


そりゃたまには応えないこともありますよ。

だって眠い時に呼ばれても私は眠いんだもの。眠っちゃうでしょう。

あなただって私が呼んでも起きない時、あるでしょう?

忘れたなんて言わせないんだから。私は忘れたりなんてしませんとも。

大好きなあなたとのことですもの。えぇ、忘れませんとも。


私の記憶はいつもあなたとのものでキラキラしてるのよ。

あなたもそうでしょう?私のこと大好きだものね。わかってるんだから。

たくさん遊んだね。悪いことも、したかしらね。まあ偶にだけどね。

だって、私もあの頃は若かったんだもの。悪戯くらいするでしょう。

え?年を取ってからも悪戯したって?

そんなこと、あるかもだけど、いいのよ。そんな前のことは。


ああ、眠たくなってきちゃった。もうすぐお迎えかな。

なぁに?まだ眠らないよ。もう少しだけね。

だから、もう少し私の名前を呼んでいて、いいでしょう?


ねえ、目を閉じた暗闇の向こうには何があるのかな。

あなたと一緒に浴びたお日様の光はあるかな。

あなたと一緒に吹かれた風はあるかな。

あなたと一緒に触れた土はあるかな。

甘い匂い、美味しいご飯、お気に入りのおもちゃ、他にもたくさん。


でも知ってるよ。私はそれを置いていくの。

記憶の中にしか持って行けないそれを置いていくの。

大切な、何よりも大切なあなたと、それを置いて逝くのよ。


これは、仕方のないこと。どうにもできないこと。

私は私の速度でしか進めないし、進んだ時間を戻れない。

あなたはあなたの速度でしか進めないし、その速度を上げてはいけない。

だから、これでいいの。これが正解。こうなっていいの。こうあるべきなのよ。


これはいつか来る未来の形。予想とは違った?それとも当たったかな。

私は、どうだったかな。よく、わからないや。


でも、でもね、一つだけ言えることがあるよ。

たった一つだけは、過去の私も未来の私も変わらないものがあるって。

ん?予想が付くって?そうね、だってあなた私のこと大好きだものね。

だったら、言わなくてもいい?

なんて言ったらあなた、今よりも情けない顔になるから言っておくね。


ねえ、ねえ、私の為だけに泣いてくれる私のご主人様。

私、あなたのこと、だーい好きよ!

ずっと、ずぅーーっと、大好きよ!

愛犬を看取り、見送ったあなたへ。

どうしても出て来ちゃったのでここに記します。

届け!私からのメッセージ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても綺麗な詩です。 作者さんの気持ちを押し付けたものではなく、亡くなった誰かの愛犬目線で描かれているのが素敵だと思いました。 私までもらい泣き…… 心のこもった詩は人の心を動かしますね。…
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