携帯電話ショップの姉ちゃん店員が可愛かった件
「あの~、ガラケーからスマホに換えたいのですが」
「いらっしゃいませ。受付番号をお取りください」
俺は、若い兄ちゃん店員から番号札を受け取る。
「お掛けになって、お待ちください」
「はい」
初めてのスマホだ。俺は緊張する。取り敢えず、窓際のテーブル席に座り、景色を見ながら時間を潰す。
「お待たせしました、お客様」
「あ、はい」
正直、可愛い姉ちゃん店員だ。栗色のセミロングにパッチリとしたオメメ。マスクをしていて顔下半分はうかがい知れないが、小顔で下手なアイドルより、ずっと可愛い。前回、ガラケーの電池パック交換に来た時に対応してくれた姉ちゃん店員の通常の3倍は可愛い。この子が担当者で良かった。
「ご希望の機種等はありますか?」
『貴女です! もう、ドンピシャ!』
おっと、いかんいかん。心の声が漏れてしまうところだった。気を取り直して質問に答えよう。
「ギャラクシーとアイフォン以外で安いヤツ」
「えーと…………そうなりますと、エクスペリアかアローズですね。旧式なら本体代が無料ですよ」
『それなら、俺と付き合ってください!』
いかんいかん。また、心の声が漏れるところだった。
姉ちゃん店員はスマホの説明をしてくれる。俺は、ずっと資料に目を通す。名前はなんて言うんだろ? ネームプレートがセミロングのヘアで見えないな。改めて聞くのも、なんか恥ずかしい。
取り敢えず、スマホの通信料はガラケーより高くなる。
「SNS等のデータ引き続きは大丈夫ですか?」
「あっ! 忘れるところだった」
姉ちゃん店員のナイスフォローに俺は感謝し、SNSのパスワードを再設定する。
俺は機種を決め、契約を結び、いよいよガラケーのデータをスマホに移行だ。その前にショップの固定電話でスマホにかけ、通話出来るか確認をする。
そして、データ移行だ。俺は未送信メールを大切にしている。小説本文のバックアップとして、ガラケーの未送信メールに書き溜めていた。正直、電話帳より大切だ。何しろ、5000文字×34個×6ページの膨大な量だからだ。最悪、microSDに保存して…………しかし、microSDの互換性がなかった。ネットで見たよ? 容量の少ないmicroSDは互換性があるって! ネットのフェイク情報に騙されてしまった。
「それでは、お客様。もう、スマホはお使いになれますよ」
『俺と付き合ってください!…………はっ!』
姉ちゃんの左手薬指にキラリと光る物が…………。終わった~。結婚してたのね。
「お幸せに」
「ありがとうございます。新婚なんですよ」
こうして、俺の冬は続くのであった。