転生しました
「んんっ」
ゆっくりと瞼を持ち上げ、目を開ける。
木々の間から僕に向かって光が差し込んでくる。
「まぶしっ」
そして、だんだんと意識が覚醒していく。
意識が覚醒していくのと同時に今の自分の状況を確認するために身体を起こす。
「身体かるい」
どうやら前より身体が軽くなっているみたいだ。 今なら思いっきり全力疾走できそうだが……面倒くさいそれよりもそんなことをしたら身体が疲れる……それはやらないでおこう。
しかし、身体が軽くなったのは本当だ。
周りを見渡すと近くに……というより、僕の足元に自分の背よりも高い杖が落ちていた。
「何これ?」
待ってみると自分の手によく馴染む。
近くに持ち主がいないか確認するが誰もいない……。
この杖どうしよう……近くに持ち主はいないし、自分の横に落ちていたし……もう、僕のでいいかな?
よく手に馴染むし。
持ち主が現れた時はその時に返せばいいかな?
「よし、僕のにしよう」
さて、他には何かないかと周りをもう一度見渡すと少し離れたところに湖が見えた。
…………が、ここから思ったよりも距離がある。
「…………」
身体が軽くなったとはいえ、歩くの面倒くさいなぁ。 このままもう一度横になって寝ようかな?
まだまだ先は長いし、ゆっくりでもいいよね。
そう思いその場で横たわろうとした瞬間近くの葉がガサガサとゆれた。
「なに?」
ガサガサ揺れる。 しかも、視線も感じる。 それも複数の。
「………………だれだ?」
その言葉と同時に複数の緑の物体が僕の前に飛び出してきた。
「まさか!」
緑の身体をし、耳がとんがっており、汚い布を腰に巻いている。
「ゴブリン!!」
そこにいたのは複数のゴブリンたちだった。
「キキー」
「ギーギー」
「キーキーキー」
やばい……やばい……やばい……。
ゴブリンはどうやら僕に標的を決めている。
どうする……。 逃げるか……? いや、今背をむけたら確実にやられる。
「ギーギー」
どうする……………………………………いや。
「考える方が面倒くさい」
そう呟いた僕はゴブリンに向かって杖を向ける。
「あの管理者は僕に魔法の世界だって言ってたし、それなら僕にも魔法……使えるはずだよね」
僕はゴブリンたちに不敵な笑いをうかべた。
魔法の言葉はわからない。 だけど、なんとなく思い浮かべただけで使える気がする。
「炎」
僕は一言だけ呟いた。
魔法陣が目の前に浮かび上がる。 そして、一気にその魔法陣から燃え盛る炎が飛び出しゴブリンたちを一気に焼き払った。
それはもう、一気に消し炭に…………。
そこまではよかったのだが
「あれ?」
威力がとても強く、周り一体焼き払っていた。
「あーーまぁ、仕方がないよね」
とりあえず、なんとなくこの場にいるのはいけないと感じ、湖の方に向かって歩くことにした。
数分歩くと湖がある場所にたどり着く。
「あー疲れた。 しかも、喉乾いた」
湖の近くにより、水を飲むため顔を近づける。
「あれ?」
そこであることに気づく。
湖の水面には覗きこんだ自分の顔が写っている。 それは当たり前なのだが……。
「なんか……若い?」
そう、若いのだ。 水面に写っているのは15歳ぐらいの青年だ。
ペタぺたと顔を触ると、同じように水面の彼もペタぺたと顔を触る。
「まじか〜」
若返っていたのだ。
転生特典かなにかかもしれない。
まあ、年をとるよりはいいのかもしれない。
だから、身体軽かったのか〜。
もう一度水面を覗き、確認する。
しかし、次に目に入ったのは自分の格好だった。
「どこの厨二病」
そう、今まであまり意識していなかったが自分の格好はフードのついた真っ黒のロングコートをきており、中も黒いシャツに黒いネクタイ黒い手袋……下も黒いズボンに黒いロングブーツ。
全身真っ黒だった。 どこからどう見ても怪しいやつじゃないか。 どこの暗殺者だよ。
「まじか〜」
まあ、格好のことを考えても仕方がない。
もしかしたら、この世界は黒を基調にしているかもしれない。
今度は水を飲むために顔を近づける。
「冷たい」
ある程度飲み終わると湖から少し離れた位置にある大きな木に背をもたれかかりながら座り目をとじる。
そしてさっきのことを思い出す。
ゴブリンとの戦いで出した魔法だ。
あれは威力が強かったなぁ…………周り一体焼けてるし……でも、まー敵は一発で倒せるよなぁ。
だけど、なんで僕すぐに使えたんだろう?
ゲームや漫画とか修行やアイテムもしくは戦いながらできるようになっていくって感じだし………………あー考えるの面倒になってきた……。
その時、あることを思い出した。
「ゲームとか漫画ならあれ見えるはずじゃん!」
なんで使えたとか、他の魔法は使えるのかすぐわかるあれだ!
僕は言った。
「ステータスオープン」
と。
しかし、なにも現れなかった。
「まじか〜」
でなかった。 ステータスが現れなかったのだ。
すごく恥ずかしい……なんだよ、ステータスオープンって……すごく恥ずかしい。
ゲームとか漫画では現れてたじゃん……何でなにも現れないんだよ…………現実だからか……それとも、そんなスキルは持ってないかとか?
あーありえそう……。
「もう、いいや考える方が面倒くさい」
転生特典かなにかだと思ってよう。 うん、そうだ! 転生特典だ。
「ふあああ」
やばい、いろいろ考えたら眠い……でも、ここで寝るの危険そうだなぁ…………あーでも眠い…………少しだけ、少しだけ、目をつぶってそのあと、起きて移動しよう。
そうしよう。
だんだんと意識が遠のいていく。
それと同時に心地よい風が僕の頬を撫でた。
まるで僕のことを歓迎しているかのように。