5、魔法の才能2
色々あって、転生してから7ヶ月がたった。
「せしるー」
「はい、どうされました?アイリス様」
私は、喋ることも、歩くことも出来るようになった。
少し成長が早過ぎるような気もするけど、まあ、大丈夫だと思う。
「せしるー、まほうのおはなししてー」
「魔法について……ですか。良いですよ」
にこりと、セシルは笑みを浮かべた。
私が知る人間は、セシルと、銀髪のネコミミさんだけだ。
ネコミミの女の人は、あれ以来、一度も会えていないけど。
最近私は、セシルから様々な情報を取り入れている。
「魔法を使うには、二つの条件があります。一つ目は、十分な魔力を持っていること。魔力というのは、人間などが、生まれ持つ力なんです。獣人は魔力を持たないので、魔法を使えないはずなんですが」
なんでアイリス様は、使えちゃうんですかねー。
そう言って、苦笑するセシル。
んー、本当になんでだろう。
「二つ目の条件は、詠唱をすること。詠唱省略も可能ですが、魔法の威力は低下します。極限まで省略したとしても、魔法の名は唱えなければ発動しないはずなんですが」
なんでアイリス様は、無詠唱が出来るんですかぁ
ごめんなさい、私にもわかりません。
「詠唱は、体内の魔力を呼び覚まし、発動させる為のキーワード。無詠唱なんて、直接魔力に干渉出来るような、化け物にしか出来ないんですよっ!」
なんでアイリス様は出来ちゃうんですかっ!
あぁぁぁっ、ごめんなさいぃっ!
「そして、魔法には属性というものがあるんです」
セシルによると、魔法の属性は、火、水、風、雷、光、闇……そしてどれにも当てはまらない無属性の7種類あるらしい。
「それと、魔力を持つ者には、適正属性というものがあります」
適正がある魔法は、魔力の消費が少なくなったりするらしい。
「てきせいぞくせー」
「んー、アイリス様の適正属性は、何なのでしょうか。……しらべてみますか」
ポツリとつぶやいたセシルは部屋を出て行き、しばらくすると、水晶玉を持って戻ってきた。
「アイリス様、この水晶に手を当ててください」
「んあー?」
「この水晶は、適正属性を調べることができるんです」
どうやら、手を当てた人の適正属性の色に光るらしい。
火属性なら赤、水属性なら青……というように。
「わかったー」
差し出された水晶玉に手をかざす。
瞬間、部屋全体が眩い光に包まれた。
「…………何……これ」
セシルの顔が険しい。
んー、もしかして、私は適正属性がなかったりするのだろうか。
「…………」
「どしたのー?せしるー」
「七色……。光が、七色……。それに、こんなに強い光」
「せしるー」
「奥様に、奥様に報告しないと……」
どうやら、私の言葉は聞こえていないらしい。
そんなにヤバかったのかな?
「アイリス様、アイリス様は、全属性適正が……あります」
全属性適正……?
「大変な、ことです。国に……世界に目を付けられるほどの、物凄い才能です」
何だか、空気が重くなってきた……。
「セシルっ? 凄い光だったけど、どうしたのかしら?」
バンッと大きな音を立てて、扉が開けられる。入って来たのは、銀髪のネコミミさんだった。
「奥様っ……あの、アイリス様の、えっと」
奥様……。やはり、この人が私のお母さんなんだ。
「落ち着きなさい、セシル」
「っ……はい」
「それで、どうしたのかしら」
「アイリス様の適正属性検査をしたのですが、……結果が……」
「どうだったの?」
「全属性、適正がありました」
「へぇ……。獣人なのに、魔法が使える上に全属性適正がある……か。物凄いわね」
「全属性に適正があるなんて、聞いたことがありません」
「とりあえず、これは、此処だけの秘密にしましょう」
「はい、了解致しました」
……なんか、大変なことになってる?
「あと、アイリスには明日から、魔力コントロールの練習をしてもらうわ」
「明日から……ですか?」
「まだ1歳にもなっていないし、早いような気もするけど……セシル、お願いできるかしら」
「もちろんです、奥様」
「アイリス」
ネコミミさんは此方に振り返ると、にっこり微笑んだ。
「私が貴女の母親よ。フェリス=フランドールというの」
「ふぇりすー」
「ふふ。では、私は仕事に戻るわ。セシル、この子をよろしくね」
「はい、奥様」
そう言うと、フェリスさんは出て行った。
……私には、前世の記憶がある。
もちろん、私が幼稚園児の頃に亡くなった前世の母親のことも覚えている。
だから、フェリスさんを母親と呼ぶのは少しだけ、気が引けた。




