2、メイドさん
目を開ける。
……知らない天井だ。
「あうあぁうー」
“ここどこー?”と言いたかったのに私の口から出て来たのはそんな言葉。
私、赤ちゃんになってる!私、転生してる!
「あっあー」
手足をバタバタと動かし、喜ぶ私の顔に影がさした。
「ーー、ーーーー」
此方をを覗き込む女の人。
……何か言ったようだけど、未発達な赤ちゃんの耳では聞き取れなかった。
この人、私のお母さんだろうか。
それにしても、物凄い美人だ。ストレートの銀髪に、深い緑色の瞳。そして頭に付いているのが……ネコミミ?
私の見間違いかな。
何度か瞬きをしてから二度見するも、やはりネコミミが付いていた。
目が悪くなったのかな?眼科行った方がいいかな。あ、此処ゲームの世界でした。眼科なんてありませんでした。
「ーー、ーーーーーー?」
ピコピコ動くネコミミ。カチューシャではないよう。
このゲームの世界にはネコミミがあるみたいです。
あの女神様はゲームの世界に転生させると言っていたけれど、何のゲームなのかは言ってくれなかった。
「あうあぁうー」
何のゲームなんだろう。
んー……分からん。
「ーーーーー、ー」
とろけるような笑みを浮かべ、手を伸ばし私を抱き上げた女の人。
「ーーー、ーー、〜〜〜」
子守唄だろうか。
何を言っているのかは分からないけれど、一定のリズムと温かい体温に段々意識が遠のいていく。
……何のゲームなのかは起きてから考えればいいか。
私は眠気に逆らわず、意識を手放した。
ーーーーーーー
「はーいアイリス様、ご飯ですよー」
「あー、」
転生してから数ヶ月が経ち、私は言葉を聞き取れるようになった。
どうやら、私の名前はアイリスと言うらしい。
様と呼ばれているので、もしかしたら令嬢だったりするのかもしれない。
何のゲームに転生したのかは、相変わらず不明なままだけれど。
「アイリス様はよく食べますねー」
哺乳瓶を差し出し、ニコニコ笑う女の人は、メイド服を着ていた。
輝かしい金髪をポニーテールに結び、紫の瞳をした女の人。美人というより、可愛らしいという言葉がぴったりなこの人が、私のお世話係……みたいだ。
毎日この部屋に来て、身の回りの世話を焼いてもらっている。
ちなみに、この人にネコミミは付いていなかった。
最近気づいたことだけれど、あの銀髪のネコミミさんが、やっぱり私のお母さんらしい。
私の頭にも、なんとネコミミがあったのだ!
ファンタジー万歳っ!転生万歳っ!
「?どうされました?アイリス様」
「あー、あーうー」
「むふふ。アイリス様は可愛いですね……アイリス様のお世話をできるセシルは幸せ者ですっ」
明るい笑い声を上げるメイドさん……セシルは、そう言い残すと部屋を出て行った。
今のところ、私はこの部屋から出たことがない。
はやく外の世界を見てみたい。
「あー、あうーー」
私が前世で住んでいた家よりも広いこの部屋に、私の声が響いた。