1、転生しました。
「あ……れ?」
目を覚ますと、私は真っ白な世界にいた。
左右上下全て白。どこまで続いているのかも分からない。
そもそも、私はどうして此処にいるんだろう。
確か私は、ラノベを読みながら歩いていて……、トラックに、跳ねられて……。
それで、私は、
「死ん……だ?」
覚えてる、あの浮遊感。あの、身体から体温が消えていく恐ろしさ。
「う……そ……」
「んー、残念ながら、嘘じゃ無いんだよねー」
白い世界に響く、鈴のなるような声。無機質なこの世界に余りにも不似合いな、可愛らしい声。
視線を飛ばすと、そこにいたのは10歳くらいの女の子だった。
「はじめまして。女神です」
ニコリと、笑顔を見せる女の子。
……可哀想に。この子、この歳で厨二病だ。
「おい、私は厨二病じゃ無いぞ。女神だ女神」
「へー、そーなんですかー」
「絶対信じて無いでしょ」
プンスカ怒る女神様(笑)
うん、可愛いです。
「とりあいず、貴女、モチヅキアカリはお亡くなりになりました」
「……」
「辛い……ですよね?」
「あぁぁぁぁーーーーっっ、あのゲームまだ全クリしてないのにぃっ」
「……何なのこの人?」
ポカンとする女神様。何でだろう?
……とにかく、私が徹夜でやってたあのゲーム、あれを全クリできなかったのが最大の未練だ。
『LOVE&LOVE』と言う題名の乙女ゲーム。舞台は剣と魔法の世界。平民上がりの男爵令嬢であるカレンが、悪役令嬢に邪魔されながらも、最後には攻略対象と幸せになると言うストーリーだった。
まだ、全員を攻略出来てないのに。
「あぁ〜〜〜っ全クリしたかったぁ〜」
「あの、えっと、モチヅキさん?」
「あぁぁぁ〜〜〜っ」
「も、モチヅキさ〜ん」
「あぁぁぁぁ〜〜〜〜っっ!」
「あぁぁぁっっっ!もうこの人嫌だぁぁ」
女神様は、泣きそうな顔で此方をキッと睨み吐き捨てる。
「もういいですっ、そんなにゲームが好きならゲームの世界に転生させてあげますっ」
「え?」
転生?そんなラノベみたいなこと、私が体験出来るんですか?
「是非っ、是非お願いします」
「もう本当にこの人嫌だぁぁ…………」
長い長い溜息をつき、顔を上げる女神様。
「じゃあ、モチヅキさんを転生させます」
「はいっ!」
「はぁ……。貴女の新たな人生に幸あれ」
瞬間、私を中心に青白い光を放つ魔法陣が現れる。
徐々に光が強くなり……
……私は意識を手放した。
だから、
「ごめんなさい、モチヅキさん。私の手違いで、貴女は死んでしまいました」
最後の女神様の言葉を、聞き取ることはできなかった。
「だから、貴女に能力を差し上げます。ーーーーーの、能力を」