9、精霊との契約
今回は少し短めです。
精霊使い→精霊術師に変更いたしました。
「ふぁぁっ」
時間はあっという間に過ぎ、今日は第二王子の来る日。
午前4時。欠伸を噛み殺し、私はいつもの日課を行う。
ちなみにこの世界は日本と同じで、1日24時間、1年が365日だ。
「いちにっ、さんしっ」
1周が1キロある屋敷の周りを3周ランニングする。
始めた頃はキツかったものの、今はもう慣れてしまった。
3周目、最後の1周は、無属性魔法であり、身体強化魔法のブーストを使った本気のランニングをする。
「あー、疲れる」
慣れてもやっぱり疲れるものは疲れる。
次にやるのは剣術の訓練。
木剣の素振りを1000回終えると、身体は言うことを聞かなくなる。
自分の体重を支えきれなくなり、そのまま芝生に倒れこんだ。
「ふう……」
『君、凄いね』
仰向けになりボーッと空を見上げていた時、聞こえてきた中性的な声。
「ん?セシル……じゃない……よね?」
『僕は君のメイドじゃないよ。僕は精霊。水の精霊王だよ』
「せいれい?」
んー、たしかこの世界には、精霊もいたはず……。
『ねぇ。君、面白いね。僕と契約して精霊術師にならない?』
綺麗な声を響かせて姿を現したのは、二足歩行で、手のひらサイズの黒い猫。スカイブルーの瞳を輝かせ、宙に浮かんでいる。
「せいれいじゅつし……?」
『精霊と契約した、精霊を扱う者のことだよ。ねぇねぇ、僕と契約しない?』
契約っ!ファンタジー万歳っ!
「契約っ……どうすれば?」
『名前を付ければ、契約は成立するよー』
「シアン……。シアンがいい」
『おーけーおーけー。これで契約は完了〜。契約石を渡すから、肌身離さず持っててね』
そう言って、私の手のひらにスカイブルーの石の付いた指輪を乗せたシアン。
『この石に魔力を流せば、僕を召喚できるよ。困ったことがあったら、僕を呼んでね』
にこりと笑い、青い粒子になってシアンは四散した。
「えと、シアン?大丈夫?」
『だいじょーぶー。僕は水の精霊だよー。水蒸気と同化してるだけだから』
姿は見えないけれど、何処からか聞こえて来たシアンの声は、風に乗って消えていった。
「……なんだったの?」
広い庭に、1人取り残された私が呆然と座り込んでいると、
「アイリス様〜、朝食のお時間です」
屋敷の中からセシルの声がした。
「今行くー」
軽く返事をして、私は屋敷に走った。




