第四話 我異なる世界の住人なり。(I am people from different world.)
やるなぁ……、天然でこの返しをしてくるとは……。
妙な感動を覚えた太郎だったが、態度には出さないように努め、話をつづけた。
「いいや、貝じゃねぇよ、おれが言ってるのは。異世界だから、えーっと、違う世界?って意味だ」
「違う、世界?国じゃなくて?」
「おう」
「……ばっかじゃないの、そんなの信じるわけないでしょ。人が生きられるのは神のご加護のあるこの地上だけよ。大方、流民のはぐれか何かで、そうやってあたしをだます気に違いないわ」
勝手に結論づけて警戒しだすベレンにため息をつきたくなった太郎だが、まぁ確かに現状この場でそれを証明することはできない。
日本のほうが技術は上なんだろうが、衣服の作りにはそれほど違いは見られないとこから、そこまで違いがあるわけでもないのだろう、若干、デザインが古臭いというか、ファンタジーがかっていることをのぞけば、古着屋にでも売っていそうだ。もしくはコスプレ店か。
そのうちチートでも発覚すれば信じるだろうといったん思考をやめて、太郎はにらむベレンに提案した。
「じゃあそれでもいいからさ、俺行くとこ無いみたいなんだが、どうすればいいと思う?」
「留置所にでも案内してあげましょうか?」
「そこをなんとかさ」
ジト目のベレンに頼み倒す太郎。もしかしたらよそ者には厳しいお国柄なのかもしれないな、と冷静な頭で考えた。
「……まぁいいわ、とりあえずあたしの父さんに会ってみれば?亜人でもなさそうだから町には入れないこともないし」
「よっしゃ!」
亜人という素敵な単語も聞こえてきた。太郎に町への期待がつのる。
さっそくとばかりにきょろきょろしだす太郎に道を教えながら、二人は町へと歩いて行った。
ベレンは召喚者ではなかった。もし召喚者なら対面したときに違う反応をしただろう。
いったい誰が太郎ををここに呼んだのだろうか。無意識の中で聞こえたあの声は誰のものだったのだろうか。首をかしげてもいまいち思い当たらなかった。
まぁ、何はともあれ、今は町だ。歩きながら、太郎は異世界の高い空を仰ぎ見た。
短いのでもう一話投稿いたします。