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第十七話 乗り越える勇気は地道な努力の証(Did in the results of the efforts.)

 少し早めの秋の日。太郎は朝早くから木刀もとい、木剣の素振りをしていた。

 季節が変わってしまった。ここにきて変わらない日常を過ごす太郎にとって、それは焦りを生むに十分な理由だった。

いてもたってもいられず、考えた末ギンタークとベレンに頼み、戦闘の稽古をしてもらうことになったのだった。


 ぶぉん ぶぉん

 木剣が風を切る。


 力法についての勉強、研究はしている。最近だとベレンを説得したのか、クリエナも勉強会へ参加し始めた。が、太郎同様一向に使えるようにはなっていない。あきらめの気持ちが顔を出すが、それは勇者である以上、一度言い出したことを放り投げるのは、そもそもレスタスたちに協力してもらっている以上、できなかった。


 ぶぉん ぶぉん

 素振りならだいぶ様になってきた。早く真剣を持ってみたいものだ。今思えば、焦って思考があらぬ方向へ行っていた気がする。


 ぶおん

 混戦する思考を断ち切るように、太郎は一度、強く木剣を振りかぶった。


 朝練(素振り)が終わり、朝食の時間。いつものようにベレンと食べる。

しかし、今日はいつもとは違うところがあった。


「……。」


 ベレンの様子がおかしい。明らかに何かを思い詰めている表情だ。

「どうした?具合でも悪いのか?」


 とりあえず具合を聞いてみる。


「……。」

「…ぉ~い?ベレンさーん?」


 返事がない、ただのry


「…なによ」


 死体から返事があった。いや、死んではいないが。


「いや、なんか思い詰めてんなーとおもってな?」

「別に何もないわよ」

「うっそつけ。顔に書いてあるぞ」


 なんともわかりやすい限りである。


「…わかりやすくて悪かったわね」

「おおう」


 どうやら太郎も顔に書いてあったらしい。


「はぁ……。忘れたの?もう秋になる。つまり、二回目の儀式が、もうすぐ行われるわ」


 言われて太郎も思い当たった。

 力法具発動の儀式。この町で人間と認められるための大切な手段。

 太郎が最初にたどり着いた花畑で行われ、そこで力法具が起動できなければ名実ともに人間失格となる。


 時期は確か春と秋……。


「あー…」

「わかった?」


「それってもしかしておれも行くのか?」

「ええ、もちろん。もうあなたがここに住んでることは父さんの常連を中心に知りわたってるもの」


 太郎も行かなければならないらしい。こうやって話している間にも時間は過ぎていく。


「わざわざクリエナたちが笑われに行かなきゃいけないと思うと、いやになるわ」

「そりゃ、そうだ」

 

 おどけるような口調のベレンだが、声色には重く暗い色がみてとれた。

 太郎の心にも静かな焦りが宿る。

 できればその前に一歩でも前進しておかなければ。


 この日の勉強会の会場はベレンの家だった。特に理由はないが、要は気分転換という奴だろう。

仕事の終わったクリエナも参加し、話題は先の儀式についてだ。


「儀式は秋はじめの新月の夜行われる。これは儀式の過程をわかりやすくするため、そしてある種の演出だ。今回は今から七日後に行われることになっているそうだな」

「レスタは行かねぇの?」


 レスタスの人ごとのような物言いに、つい質問する。


「ん?いや僕は17だが一回目でクリアしているから、」

「「同い年じゃなかったの?!」か!?」


 ベレンと太郎が同時に声を上げる。


「…お前達は僕をどんなふうに思っているんだ!」

「いじめっ子」

「いじられっ子」

「どっちだそれは!と言うかもういじめてないだろう!?」

「そうかしら?」


 ベレンはジト目だ。

 ワンテンポ遅れ、クリエナが発言した。


「え、えっと...」

「か、可愛いなって思います!」

「「……はぃ????」」


 それはいじめがかわいいものだということか、気にしていないというアピールか。

疑問符が周囲に飛び回る。レスタスと『かわいい』が結びつくそのセンスはどういうことなのだろうか。レスタスがものすごい勢いで微妙な顔をしているのが目に入った。


 よくハモったなと頭の隅に浮かんだが、とりあえず太郎が話を元に戻す。


「うん、まあ当日はレスタスも強制連行ってことで」

「異論なし」

「いいかな、レスタス君」


「まったく……、まぁいい。…とりあえず、教えられることはほとんど残っていないだろう。その先は分野に分かれ、専門的な内容になる。」


 それからも、日が暮れるまで勉強に励む一同だった。


おまけ


「同い年かと思ってたわ…」

「レス太さんじゅうななさい」

「…いま発音がおかしくなかったか?」

「気のせい気のせい」

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