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第十六話 何がどう転ぶかはわからない (Is everything good for something?)

「たろー!今日はなんかサシイレないのかよ!」


 場所は職人街裏の『裏路地』。本来なら行くことはなかったであろう、もしくは|もう少し早く来るはずだった《・・・・・・・・・・・・・》其処に太郎は来ていた。


「毎回持ってきたらおれの金がなくなるだろーが」


 見ると太郎の周りには数人のみすぼらしい身なりをした子供が集まっていた。

 最近の太郎にとってはいつものことである。先ほどのセリフからもわかる通り、ほぼほぼ毎日来ている。


 来るたびに差し入れと称して食べ物やら必需品やらをばらまいていたらなつかれてしまったのだ。いや、ある程度それを狙ってはいたのだが、見事にちびっこばかりが釣れてしまった。

 大人もものほしそうな目線を向けてくることがあるが、さすがにちびっこの群れをかき分けるのはたばかられたらしい。


 そんな様子を見ると太郎が来るまではどうしていたのか気になってしまい聞いたことがあるが、彼らは彼らで稼ぎ口がないわけではないようだ。

 女なら風俗の真似事、男なら肉体労働の日雇いモドキと、買われ飼われて食いつないできている。

 比較的力のない子供老人はそんな彼らのおこぼれか、太郎のような酔狂な人間が時折来てはいるのだろう。慣れてみれば彼らには警戒はあってもそこまで切羽詰まったような雰囲気は感じられなかった。


 ただ、人間扱いされないだけで。


「さてお前ら。おべんきょーの時間だぞー」

「「「ええー!」」」

「やだぁー!」「たろーに教わってもわかんねーよー!」「へたくそー」

 どこの世界でも子供にとって勉強は不評であるらしい。地球では発展途上国においては歓迎されていた気がした太郎だったが、はてさて。



 太郎が教えるのは力法ではない。地球の数学や理科などだ。太郎自身理解しきれていないものを教えるわけにもいかないだろう。ここが地球と同じ法則が働いているとは限らないのであまり細かいところは教えないが、太郎は数学ならある程度教えても大丈夫だと判断した。これから太郎がやることによって、必要になる場面もあるかもしれない。


 あれから、あの夜から太郎は今の力法を変えようと奮闘していた。

 何かがあるはずだ。何か、『無能』を『無能』でなくする方法が。

 でなければ太郎がここに召喚されるわけもない。何かを変えるために、太郎は召喚されたのだから。


 その一環として子供たちには勉強の対価として実験に協力してもらっている。強制的に勉強させておいて対価をとるなど悪辣極まりないが、何もやらないよりましである。

 実験といってもなんとなくのゲーム知識だのなんだので中二っぽい呪文を唱えさせてみたり、みんなで何やらむにゃむにゃと念じてみたりとはたから見ればお遊戯でもやっているのかといった具合だが、異世界だ、なにがとっかかりになるかわかったものではない。

 むしろ羞恥心があまりわかないだけ集まったのが子供ばかりでよかったのかもしれなかった。


「あー!?てめー逃げんな!!」

「やーなこった!バーカバーカ!」

 きゃはははと笑うちびっこどもに太郎は錨の吐息を吐き出した。


「小春はここまで手はかからなかったぞ……?」

 あれはむしろ勉強は得意な部類だったが。

 自分で始めたわりに後悔するのも早い太郎であった。

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