第十三話 それは自ら作り自らに課すもの(That is made yourself and you set yourself.)
静まり返る室内。最初に動いたのはレスタスだった。
「どうした?うまく操れないか。同じとは限らないが参考程度にコツを…」
「いや、なんか掴んだ感覚はあった。ちゃんと棒にも通ってたはずだ」
「発動具だ。…掴んだ、か。確かにそういう感覚のものはいる。」
「だが力法具は起動していない。確かに操れるが起動できなかった。ということは、足りていない。……無能か」
発せられた言葉に太郎は室内の温度が下がった気がした。主にベレンの周りが。
レスタスの眉根がより、もとよりきつい目線がさらにきつくなる。
「ならば、この講義は無駄なことだな。無能は何をしても無能だ。帰らせてもらおう。」
なるほど、ベレンがレスタスを呼ぶのを渋った理由を太郎は理解した。
無能。力法という技術を根本的に使えない者。それだけで、友人の頼みをいきなり断る理由くらいにはなるらしい。
ドアをくぐるレスタスに、怒鳴るベレンの声を頭の隅で聞きながら、太郎はあの路地裏の者たちのことを思い出していた。
その夜。自室で太郎は考える。
太郎に熱は使えなかった。それは二日目にわかっていたこと。しかし今日、確かな手ごたえを感じたのも事実。
レスタスは「足りていない」といった。しかし、太郎は勇者だ。感覚がある以上、それが常人の枠に収まる程度であるはずがない。
つまり、それは力があってもできなかった、ということ。
ならば、その仕組みを暴けばいい。
確信する。それは太郎がやるべきことだと。言うなれば、これは太郎に課せられた試練だ。
「やったろうじゃねぇの…!」
そのまま太郎は夜通し力法についての考察を続けたのだった。
*
ちゅんちゅんと、律儀な鳥が太郎に朝を告げる。
(…ぐぬぅ…ねむいぞ)
結局、あの晩では結論は出なかった。唯一それっぽく考察できたことといえば、力法師=力を使う誰かは熱そのものではなく、何かのプロセスを踏んでさらにそれを変換し利用しているのでなないか、というものだけだ。
さわりしか教えてもらっていない以上、それ以上は推測に推測を重ねるものでしかなかった。
せめて力法具の方の仕組みくらい教えていけばいいのに…。
頭に浮かんだレスタスに当たりながら、いつものようにリビングへと向かう太郎だった。