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第十二話 勇者の試練(The first wall of heroes.)

 お昼過ぎ、ようやく講師がやってきた。部屋にはベレンとクリエナの姿がある。クリエナは今日午後は休みをもらったそうで、一緒に勉強したいんだそうだ。

 講師は若かった。以外に思う太郎だが、ギンタークがベレンの友人だと言っていたことを思い出し、納得した。


「じゃあ紹介するわ、こいつはドリューク・L・レスタス。国立力学学園の生徒で腐れ縁の知り合いよ」


 妙に最後を強調するベレンだが、太郎はかっこいい名前だなぁ、くらいにしか思わなかった。

 豪華な魔法使い風のローブに銀髪碧眼、片眼鏡なんかかけて、いかにも『頭がいいです』といった姿だ。プライドが高そうだと思えば、ベレンと気が合わないことでもあるのかもしれない。


「ああ、レスタスと呼んでくれて構わない、よろしく頼む」

 手短に挨拶すると、教鞭のつもりだろうか棒--発動具を取り出し、太郎とクリエナに向き直った。


「今日はお前たちに力法について教えるようにと頼まれた。が、さすがに今日いっぱいでは不可能だ、これから定期的にここに通うことになるだろう。今日のところはまず『力とはなにか』--基礎中の基礎を学んでもらう。」

「お、おう」


 急に始まった講義に動揺する太郎だが、居住まいをただし、聞く姿勢になる。


「まず『力』とは、すべての生物に宿る熱だ。生物はみな母神によりこれを与えられ、その力によって生きながらえる。生物が死ねば冷たくなるだろう、それは熱が流れ出てしまったからだ。生物はほかの生物を、熱を喰らう。熱はすべての生命の中をめぐり、保っている。」


「これを自在に操るものを力法師、操るためのものを発動具、人の代わりに制御するものを力法具という。」


「人はだれしも熱を持つ。その熱を意図的に放出し、操れる量を『力量』という。熱は命そのものだ。すべて放出してしまえば最悪死に至る。その上で問題なく使える量には限界があるんだよ」


「ほとんどのものが日常生活に問題がない程度の力量を持ち、活用して生活している。…無能のような例外はあれ、それも少数だ。」


 レスタスがクリエナに目線をやると、クリエナはうつむき、隣にいたベレンからは厳しい目線が送られた。

苦い顔で身じろぎしたレスタスは逃げるように太郎に目線を向けると、自分のものとは別な棒と、小さな灯篭を取り出した。


「操る感覚は人それぞれ、理屈がわかったのなら実践するのが一番だ。一度できてしまえばその感覚が消えることはない。この灯篭はうちで作っている最新式だ。少ない力量で起動するように設定されている。やってみろ」


 太郎はレスタスに差し出された発動具を受け取ると、自らの内に集中し始めた。


(熱…ってことは、体温でいいのか?体温を操る…あやつる…アヤツル…)


太郎の認識では体温は物に移ることはあっても、意識的に動かすものではない。棒が金属製なので多少は移るだろうが…


「そう力みすぎるな、初めは誰でも…」


--…。


 周囲の声が遠くなり、表層で何かをつかむ感覚がした。太郎はそれをすぐさま手繰り寄せる。曖昧な風が体を突き抜けるような感覚。そのままそれを発動具へと誘導し、一本に整えられたそれを力法具へと向けた。


そしてほうっと灯篭に小さな明かりが…




…つかなかった。


「あ、あれぇ~…?」

一周回ってマイペースになることってありますよね

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