好きだった。それだけ。
君のことが好きだった。
君の顔も、君の声も、君の書く文字も。全てが愛おしかった。
僕の名前を呼んでくれたね。
僕に笑いかけてくれたね。
初めて会社で会ったとき、君から声をかけてくれて嬉しかった。
「初めまして」って自己紹介してくれたね。
酷い男に振られた時、真っ先に僕に電話してくれてありがとう。
結婚しよう、と言ったとき、笑顔になってくれた君を見て
嬉しさで死にそうになってしまったよ。
一緒に水族館に行ったね。
ペンギンショーに君は夢中だったけど、僕は君しか見ていなかった。
あんな獣たちより君の方が何倍も見る価値がある。
高級レストランにも行ったね。
君も僕も慣れずに緊張して、そのあと笑いあったね。
味なんてもう覚えてないや。もったいなかったかな。
君の両親に顔を合わせてもらったとき、どれだけ緊張したか。
お義父さんは怖かったけど、君は大切にされているってわかったよ。
でも、ダメなんだ。
「××君って、昔私が好きだった子に似てるね」
あの言葉を聞いたときに目の前が真っ暗になってしまったよ。
君は、気づいてしまった。
似ている。似ているんだよ。だって、似せているんだから。
君が初めて好きになった子、高校時代好きだった先輩、好きだったアイドル、
全てに似せていたからね。
君がいたから、この会社に入ったんだ。
君がいたから、僕は生きてこれたんだ。
君を見つけてから15年間、君を見続けて生きてきた。
でもそれがばれてしまっては、もう駄目だ。
いつ君から別れを切り出されるかわからないからね。
そんな不安を抱えながらなんて、生きていけない。
君の泣き顔も愛おしいね。
「何で」って言いながらも、僕を傷つけようとはしなかった。
好き。好きだった。今でも好きだよ。
動かなくなっても君はなんて美しいんだ。
すぐに君のもとに行くからね。
愛してる。