9.ギョ-ザを作ってログアウト
初日終わりました。ブクマありがとうございます。
15分程で姉宅に戻り、キッチンに買ってきたものを置きスープの具合を味見して火の調節をする。
いや、あのス-パーなかなかの品揃えだった。細かい所まで気が付く店員さん、近所にあったら御贔屓さんになってしまう“スーパーはろごも”侮りがたし。
「何か問題はなかったか?アルデ」
『特に何の異常も御座いませんでした。キラさま』
「ん、ご苦労さん」
『おそれいります』
買ってきたギョーザの皮、豚挽き肉、白菜の漬物、シーフードミックス等々を調理台に置いて、さっそくギョーザ作りを始めることにする。
収納扉を開けて、必要なキッチン道具を探して取り出す。
料理をしないはずの姉が何故こんなに道具を揃えているのか。謎である。
まず、フードプロセッサーを取り出し、シーフードミックスを凍ったままザララと入れてスイッチオン。ウィーンガガガと音を立てながら、細かく刻んでいく。粗めに刻んだところで一旦止めて、水とラーメンスープ《淡い貴婦人みそ味》をでろりんと投入、撹拌モードで味を馴染ませて海鮮ダネの完成。
タネをボウルに移して、フードプロセッサを軽く洗って、大きめに切った白菜の漬物を入れてスイッチオン。
今度は細かく刻んでから豚挽き肉を投入、そしてラーメンスープ《濃厚たる紳士しょうゆ味》をタラララと流し入れて、また撹拌モードで肉と漬物を混ぜ合わせる。ふむ、これで2種類のタネの出来上がり。
あとはタネを皮に包んで焼けばギョーザの完成になる。
ちまちま皮を包んでいると、さっき迄やっていたポーション作りを思い出す。そういやどうなったかなと考えるものの、こっちが終わってからでいいかと思い作業を続ける。
そして、肉25個、海鮮25個のギョーザが包み終わる。ま、なんちゃってだけどね。
それぞれ3個づつを残してタッパーに納めて冷凍庫へとしまう。味見は必要ですし。
手を洗って、姉にメールを送っておく。
「ギョーザ、つくった、あとで、たべてね、っと」
よし、終了。味見味見。
フライパンを取り出し、ギョーザをしいて点火。温まるまでに水溶き小麦粉を用意、温まってきたら水溶き小麦粉を周りに流し込みフタをしてしばし待つ。ちりちりと音がして、水分が無くなってきたのを見計らって、フタをとってゴマ油をトルリーと周りに流し入れる。そのまま強火でちょっと焼いて、焼ギョーザのいっちょ上がりだ。
ゴマ油の匂いとギョーザの香りが堪らない。皿に移して、小皿にしょーゆとラー油を入れて箸と一緒にリビングヘと持っていく。
ありゃ、テレビつけっぱだった。テレビにはクローズアップ画面になったポーション作成作業が映っている。ギョーザを食べてる間、とりあえずその作業を見ていることにする。
まずは、海鮮ギョーザの方から食べてみる。タレにチョイと少しつけてパクリと一口。齧るとカリッという食感の次にミソとイカ、エビ、アサリの旨味がほっぺを刺激し、ジュワーと口の中に広がっていく。んーうまい。
つぎは肉ギョーザの方を食べる。表面は同じカリカリで豚挽き肉の旨味とと白菜の漬物の酸味がこの上なくハーモニーを奏でている。うん、僕はやっぱり肉ギョーザのほうが好みかな。ほっぺがキューっとなる。
ギョーザをぱくつきながら画面を見てると、作業自体は淡々と行われている。
よし、じゃ再開してみますか。
オートアクションプレイを解除して、作業を止める。作業画面から通常画面に戻る。
食べ終わった食器を洗って、カゴに立て掛ける。
味を見てスープが煮えたのを確認して火を止める。スープも完成だ。んまい。
リビングに戻り、ヘッドセットを首にかけてマイクだけを使えるようにして、コントローラーを掴む。
メニューを開いて、ポーションがいくつ出来たのか確認する。おーっ、30個近く出来てる。これなら多少戦闘で無茶をしても問題は無いだろう。ステータスを見てみると、調薬のレベルが2つ上がってLv3になっている。解毒ポ-ションが作れるようになっている。道具屋で1000Gもしたものがこんな簡単に作れるようになるとは………。
材料は何かと見てみると、アイテム欄がバラバラで収拾がつかない。いろいろいじりながら調べていると、ソートが出来るみたいなので、すかさず実行。キレイに整理されて見やすくなっている。
薬草は10種類近くあって、解毒ポーションも作れるみたいだ。更にズラズラ見ていると、手に入れた覚えのないアイテム達が見に入る。
あー、あれか?PKとやらドロップしたアイテムってヤツ。ララが回収してくれたって言ってたけどどうやったのかしらん。謎だ。
『あ、マスター。お帰りなさいです』
画面がララのバストアップ画面に切り替わる。うん、スルースルー。
「うん、ララ。ご苦労様。何もなかった?」
『“ヤマト”さまがプレイヤーに絡まれそうになったのです』
「え?大丈夫だったの?」
『はい!ララがパパーっと追い返したのです』
パパーっとてのがどんなだかよく分からないが、まぁ何事もなく済んだのは良しとしよう。スルースルー。
『それから、あの人達の目的が分かりましたです』
「あの人達って誰?」
『マスターを街なかで追い掛けてた人達やPKの人達です』
「やたらとレベルが高そうだったもんな。装備も良さげだったし」
PKは知らんけど、僕のような旅人のふくなんてお粗末なカッコの人はいなかったと思う。
『はい。彼等がこの街に来ていたのは、最近行われた大型アップデートの際、各街で購入できるポーションと所持できる数量に制限が加えられたからなのです』
「それって、苦情がきそうで不味くないの?」
『はい。運営にかなりの数の苦情が寄せられたのですが、プレイヤー間の取引に制限はないとの事で回答がなされたのです』
「あんま納得しそうにない回答だね。!!――――もしかして調薬ってあんま取得する人いないのか?」
『そうなのです。今までは街でいくつでも制限なく購入できたので意味がないとされてたのです。結構な数の人達が調薬スキルを取得したみたいなのです』
「はは〜ん。それ以外の人間は、各街で購入できる数と取得の制限だから、他の街に行けばいいと考えた訳だ」
『そーなのです。さすがなのですマスター』
「ふふー。褒めたって何も出ないぞ」
『すごいのです』
ほんとに普通に人と会話してる気がする。すごいのはララの方だ。まぁ、楽しいからなんの問題もない。
「じゃ、俺達は目立たないようにこっそり動くことにしよう。ポーションさえ手に入れば、他の街に行くだろうし」
『ほとぼりが冷めるまでコッソリなのです』
拳をグッと握って、ふんすと息を荒らげるララ。まぁのんびりとだね。と、壁掛時計を見やるともう11時を過ぎてしまっている。姉の家に泊まるわけにも行かないので、アパートに帰ることにする。
「ララ、取りあえず今日はここまでだな」
『………はいなのですマスター。お待ちしてるのです』
少しだけ残念そうな顔をのぞかせたが、ニパリと笑顔を見せて答えてくれる。おりこうさんだ。
「じゃ、おやすみララ」
『おやすみなさいです。マスター』
メニューを開き、ログアウトを探す。あれ?セーブとかいいのか?
「ララ。記録とかってとらなくていいのかな?」
『はい。プレイヤーデータはログアウトの時に自動的に記録されるので大丈夫なのです』
「そっか、分かった。ありがとう」
うむ、最後になんか締まらなかった。お恥ずかしい。
「じゃ、今度こそおやすみララ」
『マスター、おやすみなさいです』
ログアウトしてテレビを消す。
マンションを出て、自転車にまたがり夜空を見上げる。
「いやぁー、今日はいろんな事があったな~」
よし、明日も頑張ろう。そんな風に考えながらアパートに向かってペダルを漕ぎ出す。
自転車は夜の街をキコキコ音を立て走り始める。
(-「-)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます