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81.聞いてはいけない学内事情

 

 

 はぁ?ピンハネって………。要は横領ってことか!?

 うぇ、うちのガッコウでそんな生臭い話を聞こうとは。


「どうしてフーちゃん3号さん(・・)はそんな事が分かるんですか?」


 ホンゴウさんがその事を不思議に思って、フーちゃん3号に聞いている。ん?何故にさん付け?


『デガス。学内にあるサーバーにワーシは常駐サスペンドしてるデガスが。データを見ているうちにおかしなお金の流れを見つけたデガス』


 そう言ってフーちゃん3号は幾つかのウィンドウを出して昨年度の出納帳と貸借対照表と損益計算書を表示させて、おかしな部分を赤丸でチェックしてくれる。

 そしてチェックされたもの(消耗品の類)を追跡していくと、ある企業へと収束していく。そして現物は一切納品されていないという話。


 まぁこの手の話には納品した分だけキックバックやら、別の形でリベートが手渡されたりするみたいだけど、これだけあからさまにやられてるのも、かなり酷い様だ。

 けど、年1回は会計監査があるはずだ。それに引っ掛からないのはおかしいんじゃないだろうか。

 僕の疑問を晴らすように、フーちゃん3号がさらに詳しく説明してくれる。


『帳簿上に使途不明のお金はないデガス。なので数字の上ではおかしな点は見受けられないので、問題なく見過ごされてるのデガス』


 収入と支出が合ってれば、特に気にならないって事か。

 でもそれって変じゃないだろうか。

 こんな事を続けていれば、何処かで破綻しようものだと僕なんかは思うんだけど。


「それって無理があるんじゃない?こうして3号ちゃんがちょっと調べただけで出て来るんだから、内部告発あたりで発覚しそうなもんだけど………」


 僕がその事を疑問に思いフーちゃん3号に問い掛ける。


『そのあたりは事務局長か他の誰かが用意周到に納品の際は企業の社員と個別に取引してるデガス。知る人間が少なければ少ない程リスクは減るデガス』


 いつの間にかフーちゃん3号の喋り方が流暢になっている。

 あれ?この子すごくね!?たどたどしかった言葉使いがいつの間にやら普通に話している。デガスは相変わらずだけど。

 いかん、僕の中で話が脱線してしまっている。

 ってかあんまり聞きたくない類の話だから無意識に逸らしているのかも………。

 などという自己分析は置いといて、僕自身はあんまり関わり合いになりたくないので、本来の話に戻せばいい―――ー無理だった。

 せんせーと皆が何やら義憤にかられて怒っている。


「なんっだとぉ―――っ!そんな蓄財すんなら3Dプリンタもっと増やせやっっ!!」

「あたし達、消耗品自腹切ってんですよっ!きっっしょ―――ーっ!」

「くうぅぅっ!これが大人の世界って奴なのかっ!!きたねぇっっ」

「なんか食べるもん無いですか?あっクッキー発見♡」

「私、奨学生だから事務方敵に回したくないです。何も見ざる聞かざると言うことで教授お願いします」


 いや、何かマイペースだった。

 そもそもうちに学校で横領こんなことが出来るのかといえば、その形態が半民半官のシステムをとっているからだろう。

 国からの予算が半分と、企業体からの資金提供バックアップを半分を受けて運営されている。

 それがあるお陰で、青田刈りなどという学生を確保することが出来てる訳である。

 そして国とのバランスというスタンスを取るため、概ね2つの企業組体が出資しているとのこと。

 まぁ、全部フーちゃん3号からの受け売りだけどね。


 企業組体といえば、この前行ったパーティーの時の人達だったのかな。たしか<コミッション>と<ソサエティー>だっけか。

 よもや他者を害する為、いや、あれは姉が目的だったのか?目的がどうあれ手段が手段なので、法に反することを行い、あまつさえ賭けにしてる時点でアウトだと思う。

 ララのおかげで少しは痛い目にあってるといいなとは思うが、どうやらこっちでもその<コミッション>が幅を利かせてるみたいだ。

 

 うちのガッコウには12名の理事が在籍しており、うち2名は国からの出向で残り10名が企業組体からの参画らしい。

 表面上は和やかな様だけど、裏では派閥争いみたいなのが激しいとか。あんまりそういうの聞きたくないなぁ、ほんとに。

  そして件のピンハネをしてるのがその<コミッション>の企業体とそこから派遣された事務局長らしい。

 

 前の事務局長は堅実な人で人望も厚かったが定年退職した為、現在の事務局長が鳴り物入りでやって来たとか、どこかの銀行支店長(嫌な思い出がよぎる)の経歴を持つとかで、精力的な人とのこと。

 ただ、人に対して差別というか区別をする人みたいだ。

 1部のゼミや教授には優遇して、そうでないところには申請をしても無理とか出来ないとか、あからさまな態度を取ってるらしい。


 これはせんせーの話だけど………。大丈夫か?うちのガッコウ。

 ただ、その事務局長それなりに優秀なので、ガッコウの運営に支障をきたして無いので多少は目を瞑っているみたいだけど、今回のはかなり拙いんじゃなかろうか。


『必要不可欠なものに対しては、きちんと対応してるデガス。けど、それ以外のものに関しては本人の意識下に於いて、必要ないと思われるものに関しては予算が下りないデガス』


 ん?もしかして3Dプリンタもそのせいで数が足りないのか?僕には関係ないな〜と思っていたら、そんな所に影響があったとは………。


『特に機械工学部は酷いデガス。他の学部に比べて7割ぐらいしか予算が通ってないデガス』


 フーちゃん3号が肩を竦め“Oh!NO!!”ポーズを取る。

 それは………。かなり酷いな。


「何で誰も文句言わないんですか?これっておかしいですよね?こんな所で差別するなんて同じ授業料おかね払ってるんですから不公平です」


 ホンゴウさんが口唇と尖らせてプンプン怒ってる。でもまぁ、うちの学部金食い虫だからなぁ。


『予算金額的には他の学部とそれ程差がないので、あまりそこの所は省みられないデガス。必要な機材は機能の低い低価格の物を購入して、上の人間を納得させてるデガス。ちゃんと購入してるデガスと』

 

 数が少ない上に性能が良くないんじゃ、時間が掛かって順番待ちが増えるって訳だ。………自費で作るしかないかな、デモ機。


「となると意図的にこちらの予算を削って、その分を消耗品購入の名目でピンハネしてるって事か?」

『概ねそれで正解デガス。特にソサエティーよりのうちのゼミは目の仇にされてるデガス』


 何故ソサエティー寄りとされてるかというと、契約を結んでるゼミ生の全てがソサエティー系の企業だからだそうで、なんでかコミッション系の企業はいなかった。

 5人に聞いてみると、みんなが皆、なんか偉そうで態度がでかくて嫌だったと声を揃えて言ってきた。


「若造は黙ってこちらに従ってればいいんだって言われました。」

「そんな事を言えるのもあなたが若いからね。若いだけっていいわねって言いやがりましたあの人(ばばぁ)

「くだらん研究だが、まぁ使ってやるよって偉そうに……あ、偉いのか。でも、なんか嫌でした」

「人の身体嘗め回す様に見て笑ってました。あいつ等嫌いです」


 ボロクソである。けど聞けば聞く程、青田刈りする気が無い感じがするのは僕だけなのだろうか。


『もともとコミッションは商社系の企業が大半を占めるので、製造系の人間は軽視されがちデガス。ですからそちら側(コミッション)の人間である事務局長なので、予算申請をしてもおそらく通さないデガス』


 そんな風にピンハネとうちのゼミに対する感情を重ねて、予算が通らないことを説明するフーちゃん3号。やれやれだ。


「はぁ~。じゃ、HMVRD(これ)で作業は出来ないって事かぁ……。つぅ~まらな~~い~~~っ」


 せんせーがブーたれて、ホンゴウさんのHMVRDをポコポコ叩く、慌ててホンゴウさんがそれを制止する。


「やめて下さいよ~~っ!精密機械なんですからっ!!」

「おっ、悪い悪い」


 ホンゴウさんがせんせーからHMVRDを取り返し胸にぎゅっと抱き締める。

 せんせーは悪びれもせず手を振り振り謝っている。

 あれ?もしかして。


「みんなってHMVRD(これ)持ってるの?」


 ホンゴウさんが抱えてるHMVRDを指差して4人に聞いて見る。


「もちろん」

「持ってます」

「はい」

「2台持ってるです」


 へぇ~、けっこーみんな持ってるんだなHMVRDこれ。なら案外………出来るんじゃないか?


「他のゼミ生も持ってるのかな?」

 

 僕の問いかけにせんせーも気付いたようで、納得と感心の表情を見せてくる。


「半分くらいはいるんじゃないですかね。カテキョやってる奴もいるし、ま、大抵はゲームやってるんですけど………あっ」


 ゼミ生達も僕が言いたいことが分かった様だ。


「自前のHMVRDで作業をやろうって訳だな」

 

 ゼミ生が言おうとした事を先んじてセンセーがそう言った。


「うぐぅ」「言われたっ」

「何やってるんだか………。でも、それいいですね。HMVRDにリンク繋いでホストで管理って……サーバーの方がいいのか。エミュレーターで材質ソフトと作業場作れれば結構いいのが出来そうですね」

 

 サカエくんが2人に突っ込んだ後、具体的な事について提案してくる。僕は顎を擦りながら感心する。やるなぁ。

 

『ホストサーバーとセキュリティーはワーシの方で担当するデガス。作業場や工作機械のソフトは外部から購入した方が安上がりデガス』


 フーちゃん3号がそう言って現在市販されてるそれ等のVRソフトをホロウィンドウに表示してくる。へぇ~、けっこーあるんだ。


「お薦めってあるの?」

 

 大きい画面になったホロウィンドウに表示されてるVRソフト類を眺めながらフーちゃん3号に聞いてみる。


『これとこれがお薦めデガス。こっちは容量が大きい分質感と規模ともにリアルに近くなってるデガス。HMVRDはこれがお薦めデガス』


 画面の中でフーちゃん3号がちょこちょこ動き回りながら説明してくれる。きゅん。あ、また胸が。


「ほんじゃ、これを5台と、このソフトを………これは機械の台数分いるのか?」

『デガス』


 せんせーが金額を気にすることなく次々とソフトとHMVRDハードを購入していく。大丈夫なんだろうか。

 僕が汗ジトになりなりながらその様子を見ていると、ララが連絡をしてくる。今度はなんだろう。


“センセーが購入した分を予算申請してブン取るなのです”


「えっ!そんな事出来るのっ!?」


 思わず口に出してしまったが、誰もこちらに注意を払っていなくて少しだけ安堵してから、小声でララに聞いてみる。


「どうやって?」

“<ソサエティー>側の理事に横領このじょうほうをリークして譲歩させるなのです”


 なるほど、下手に公にすると、ガッコウのイメージダウンに繋がるし、事務作業も滞りかねない。ならある程度の要求をして場をやり過ごすのもありかもしれない。後で恨まれそうだけど。


「何か仕返しがありそうでちょっと怖いかな〜と思ったりして」

“その点は学部名義でリークするので、ララ達が告発者だとは分からないようにするのです”


 相変わらずララは優秀だな。事務局長がどんな人かは知らないが御愁傷様だ。

 

 数日後、購入した機器を使った作業が始まった。みんなが安楽椅子に横になってる姿は変な感じだが、VR作業場(なか)では皆はっちゃけながら作業をしていた。もちろん僕もそのお零れに預かっている。

 その後どういう経緯があったのか分からないけど、フーちゃん3号のすすめで購入した分の予算を申請すると、あっさり承認されせんせーは自腹を切らずに済んで少しだけ残念?そうな顔をしていた。何でだ?

 

 他に3Dプリンタが数台納入されて順番待ちが解消されたのは嬉しかった。ありがとうララ。

 ただ少しだけ気になったのは、眦を上げゼミ室にやってきた事務局長(女の人!)が僕の姿を見て顔を青褪めさせて帰って行ったことだ。はて?

 

 

 

(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

ブクマありがとうございます


ま、間に合ったハァC=(△ー;)

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