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7.外出後の出来事

少しばかり読み難いかと思いますがご勘弁を

 

 

  *


 森の中を3人の男達が何かを探るように歩いている。時たま虚空を見て進む方向を決めているようだ。

 もしプレイヤーが3人を見ていれば、頭の上に黄色のマーカーが表示されているのに気付いたことだろう。


『こっちで間違いないんだろうな?』

『ハイっス!トレーサーはこっちを指してるっス』

『こんな森に何の用があるってんだ?』

『でも、こっちにとっては好都合がじゃないっスか。待ってた甲斐があるってもんス』

『まぁな、でも気を付けろよ。今の俺達じゃビッグスパローでもギリギリ倒せるかどうかだからな』

『了解っス!索敵で確認してっるっス』

『よし!進むぞ。どっちだ?』

『こっちっス』

『……………』


 草を掻き分けながら男たちが進んでいく。


   *



くさをとる くさをとる くさをとる くりかえされるこうどうになんのいみがあるのか よつあしのけものとのたたかいは □ □ にとっていみがあるのか みているだけでかってにうごくからだは きようにけものをよけながらおのをくりだす もっと みていたかった いや □ □ がたたかってみたかった だけど □ □ はみてるだけ くさをとる くさをとる くさをとる くりかえされるこうどうにいみが――――あるのだろうか



  *


 彼ら2人がトレーサーを辿って着いたのは、いわゆるプロロアの森と呼ばれる森の中だった。少ないリソースを奪い合うのがMMORPGと認識している彼らは、なら持ってる奴から奪い取ればいいと考えるようになっていた。

 

βテスト時のパッチ用プログラムを改造したものを入手して、プレイヤーからアイテムを奪って行った。

 アテンダントスピリットを手に入れたプレイヤーに付けたトレーサーを追って森を進むと広大な草原へと辿り着く。


『うひょおー。スッゲーな。これ全部薬草じゃねぇか?』

『隠しエリアとか。レアっスねっ!』

『やっぱ、アテスピいっといいな!戴くぞ!!はやくタグ貼れ!NPCによ』

『了解っス。アイツのステータスを張り換えるっス』

『…………』


 ウィンドウを出してステータス画面から何かを貼り付ける。

 “ヤマト”の頭上のマーカーが緑色から黄色へと変化する。この【アトラディース・ワンダラー】はプレイヤーを殺害することは出来ない。PvPでもHPの1割をきった時点で勝敗が決し、それ以上の追加の攻撃は出来ないシステムになっている。しかし、NPC同士になるとそれが無効化してしまうのだ。

 

 偽のタグ (10分間)を貼られたプレイヤーはNPCとなり、10分のタイムカウントの間、NPC同士では殺害行為が成立し、殺されたプレイヤーは死に戻りも出来ずにアカウントは消滅、キャラクターデータとプレイデータが消去されてしまう。

 所持していたアイテムは、その場にドロップし、その場にいたものが手に入れることが出来ると言う。

 彼らはそうやって、プレイヤーを殺めてレアアイテムを奪っていたのである。

 3人は剣を構えて“ヤマト”に向かって行った。


   *



 くさをとる しまう くさをとる しまう あきることはあきるが これはこれでわるくないなとおもいはじめる やくそうといっても すべてがおなじものでなく さまざまなものがさいしゅされているからだ いまのところ 10しゅるいのやくそうがさいしゅされている だが やはりさいしゅばかりでなく せんとうもやってみたいとおもっていると いままでおなじどうさしかしなかった からだにへんかがおこる 

 □ □ のいしでからだがうごかせる なぜ?さきほどまでは ただうごいているのをみていただけであったのが □ □ のいしでうごかせる そうかんじたとき “やまとさまうしろからてきがやってくるのです”とこえがする うしろをふりかえるとけんをもったおとこたちが にやけたかおをしておそいかかってくる □ □ はみぎてをうしろにまわし おのをにぎる


   *


 姿を隠す素振りも見せずに先頭にいた男が剣を振りかぶり“ヤマト”に襲い掛かる。


『アテスピ貰った―――――っ』


 そこには、人を殺すことに対する忌避感も嫌悪感も存在しなかった。ただ、そこにあるものを壊してアイテムを奪うという考えしかなかった。

 しかし、そのニヤけた顔は、不快に顔を歪める。

 頭を狙った剣先は、斧で完全に受け止められていたのである。


『てめぇ!何動いてんだよ!!』


 一撃目を受け止められても、慌てずに他の2人に命令する。


『フォメ組むぞ!オラァァァ』

『挟みうちっス!』

『!………』


 タグを貼られたプレイヤーは硬直するはずなのに動き、こっちの攻撃を防いだ。そのプレイヤーに対し三方位攻撃のフォーメーションをとる。伊達に中級プレイヤーと名乗っていないということか。しかし、ありえない動きをした“ヤマト”は左に回りこんで男に斧の一撃を繰り出す。

 背中を横薙ぎにされた男は、急速に減っていくHPに慌てだす。さらに、右に回りこんで別の男の背中へと唐竹割を振り下ろす。

 突然の襲撃に思考が追いつかず、呆然としていたリーダーの男が2人がクリティカルヒットを受けて即死寸前なのを見て叫ぶ。


『タグをはずせ!キャラ死にする!!』


 言われた2人は慌ててタグを外そうとメニューを出すところで光の粒子となって掻き消えた。差し替えられたNPCタグはHPの低いものだったからだ。

 この時、逃げるかすぐにポーションなどでHPを回復していれば、まだ助かる可能性があったかもしれないが、リーダーの男の叫び全ては無駄となった。


『てんめぇぇぇ―――――っ!殺す!!』


 この時もこのプレイヤーがタグを外していれば、キャラ全損の目にあわずに済んだはずだが、怒りに任せた行動は剣を振り下ろすことなく終わった。

 彼がこのゲームで見た最後の光景は、己の頭に突き刺さる何かと、表情のないプレイヤーの姿だった。 やがて男は、光の粒子となり消えていった。

 “ヤマト”は斧を拾い、また思い出したように草を採取し始める。

 あまりな光景にララは呆然としていたが、気を取り直し3人がドロップしたアイテムの元へと向かう。


『とりあえずアイテムは回収するのです』


 ちゃっかり者のララであった。




 きっかり3時間後、途中でスーパーによって色々食材を見繕ってきてから姉の家へと戻る。

 なかなか有意義な時間を過ごした。キノシタさんのP○エン○ンへの深い造詣にいたく感心したものだ。帰り際に、ボ○○コンクエストとハイ○○ファンタジーを貸そうかと聞かれたけど辞退した。あんなものを見つかったら姉に粉々に破壊されてしまう。

 

『おかえりなさいませ。キラ様』


 ホームメイドAIが僕を認識してロックを解除してくれる。キッチンに荷物を置いてからリビングに入り、テレビをつける。それに気づいたララがバストアップ画面から僕に言葉を掛ける声がヘッドセットから聞こえる。


『お帰りなさいです。マスター』


 その表情は、ご主人様を待ちわびていた飼い犬のような笑顔をを見せていた。

 いちいちヘッドセットをつけるのも面倒なので、テレビから音が聞こえるように設定しなおし、ララに話し掛ける。


「何もないと思うけど………。どうだった?」

『薬草の採取は問題ありませんでした……けど、PKがやって来ました』


 ララの報告を聞きながら、コントローラーを握りオートプレイを解除する。“ヤマト”は薬草の採取をやめてその場で立ち上がる。


「PK?って何それ」

『プレイヤーキラーの略称なのです。他人のアイテムを奪ったり、プレイヤーを殺すのを楽しんだりする人のことです』

 

 わからん単語が出てきたので聞いてみると、溜め息を吐きながら詳しく聞かせてくれる。何と言うか人間らしいAIだよなララは。


「でもここって、ボーナスエリアって言ってたよな。他にも入れる人っているんだ」

『いえ。おそらく追跡魔法か何かを付けて追ってきたんだと思うのです。マスターがララを助けた様子を見ていた人が何かしようと企んでやって来たんじゃないかと思うのです』


 なにそれ。こわっ。


『ただこのゲームは,プレイヤーを傷つけることが出来ないシステムになっているので、なぜ襲い掛かるような事をしたのか……マーカーが黄色くなった事と関係があるかもなのです』

「でもなんでPKとかから助かってるんだ?ララが助けてくれたのか?」

『いえ、“ヤマト”さまが相手の攻撃を防御して、あっとゆう間に3人を倒してしまったのです』

「え?僕そんな登録してないと思うけど……」

『すごかったのです。右に左に回りこんでバッサバッサなのです』

「………………」

『PKがドロップしたアイテムはとりあえず回収しておきましたので確認して下さいなのです』


 何だかよく分からないが助かったということだけは理解した。

 これは冒険者ギルドで要相談と言ったところか…………。

 とりあえず街まで戻ってそれから考えてみよう。

 僕達は森を抜け街へと戻るのだった。








    


 

 

(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

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