58.みたびプロロアの森へ
ブクマありがとうございます(T△T)ゞ
プロロアの森へ行く前に、冒険者ギルドの作業部屋でポーションを作ることにする。薬草の採集場で薬草とかをかなり採取したので、森での戦闘のことを考えて出来るだけ作っておこうと考えたのだ。
まぁその前にウリスケが屋台へ突進していったのでいくつか料理を食べてから向かうことに。ウリスケは全然ブレないな。
冒険者ギルドへと入ると、こちらもマルオー村と同様にPCが数人テーブル陣取り一定の方向を眺めている。その口元はだらしなく緩んでる。
そういや前にここで話をした人が何か言ってた様な覚えがある。
たしか受付嬢さんのファンクラブがどうとかこうとか。って事はここにいるPC達はファンクラブの人達という事か。なんかスゴイ事になってるな。
楽しみ方は人それぞれだしなと思い直し、僕たちは2階へと上がっていく。
作業部屋へと入るとさすがにこっちには誰も人がいなかった。
『マスター独り占めなのです』
『グーッ』
ララはバビューンと部屋の中を飛び回り、ウリスケはテーブルによじ登って大の字で寝転がる。みながフリーダム過ぎる。まぁ可愛いからいっか。
【調薬】をメインスキルに移して、HPポーションを作り始める。
あいも変わらずグリグリゴリゴリとコントローラーを操作してポーションを作っていく。
30個を作り終えたところで【調薬】スキルのレベルが上がる。
ピロコリン
[【調薬】スキル が レベル5 に なりました]
うん、レベル5になった。やっぱメインに入れてると経験値の上がり方もいいのだろう。でも今回は何も覚えなかったみたいだ。少し残念だが序盤なのだからこんなもんなんだろう。
きりもいいのでポーション作りはこれまでにして、道具屋で必要なものを揃える事にしよう。
それにしても……うーん。
『どうしたのです?マスター』
「うん、ほら。戦闘と生産でスキルをいちいちメインとサブで入れ替えるのが少し面倒かなって思ってさ。
僕の言葉にララはああ、と納得顔をしながら説明してくれる。
『それならスキルセレクタを使えばパッチリなのです』
「スキルセレクタ?何なのそれ」
『まずは論より証拠なのです。メニューを出してコンフィグを選んでなのです』
ララに言われた通りにメニューを開いてコンフィグを選ぶと、ズララと設定変更用のメニューが出てくる。
「おおっ」
少しばかり感心していると、ララが続けて説明してくる。
『そこにあるスキルセレクトを選んでなのです』
ふんふん、画面をスクロールさせて、スキルセレクタを選ぶと別の画面が表示される。
そこには今まで取得したスキルが上に並べて表示され、その下にスキルメニュー画面がいくつも出てくる。上からABCD……と続いている。
Aのところには今僕が設定しているスキル構成になっている。Bから下はスキルは何も表示されていなく空欄のままだ。
『上にあるスキルから選んでメインとサブに振り分けて設定するのです』
なる程、生産と戦闘用に分けて設定しておけばいちいち入れ替える手間も省けるって訳だ。
さっそくスキルセレクトにスキルを設定していく。
よし、出来た。全部で4つを埋めて設定終了を選んでメニューを戻す。試しに再度メニューを開いてやってみる。
『メニューからスキルを選んで、あとはR1を押して選んでなのです』
言われた通りスキルを選ぶとAの設定のスキルが表示される。そしてR1を押していくとB、C、Dと切り替わっていく。うん、大丈夫みたいだな。
「うん、オッケ―だ。ありがとうララ」
『いえ、もっと早くに説明すれば良かったのです。ごめんなさいですマスター』
「いや、僕が気を付けて聞いてみれば良かったんだろうからお互い様だよ」
お互い謝り合ってこの事は幕引きとする。
スキルは戦闘用に切り替えて、作業部屋から1階へと下りて、冒険者ギルドの掲示板へと向かう。
ズラズラとある依頼書を見てみるが、採取系はあるものの討伐系の依頼は見る限りあまりない。
あってもランク上のものなので請けることが出来ないものばかりだった。
「ん―仕方ないな。クエストは諦めるとするか」
『なのです』
『グーッ』
こうして冒険者ギルドを後にして、道具屋へ行き必要そうなものを買ってプロロアの森に行くため西門へと向かう。
その途中南西エリアを見て、そういやここもこの前通ったきりだったなぁと想いだす。
バロンさんの店を探すだけでろくに見回らなかったから、ヒマがあったら裏路地探索をするのも悪くないかも知らない。
そうして西門を抜けてさらに街道を西へと進む。向こうが東街道ならこっちは西街道ってことになるのかな。
「ララ、こっちは西街道でいいのかな?」
『そうなのです。プロロアの森を抜けてさらに進むと、東側と同じ円門があるのです。そこを過ぎるとルウージ村があるのです』
ふんふん、そこから先に人族の街とか他の種族の街があるってわけか。
行こうと思えばいけるけど、今はまだいいかな。
「そういや、人族の街って東と西にあるけど、どっちに行けばいいってあるの?」
『このエリアのボスを倒した時に、女神様が指示してくれるのです。でもたまに天邪鬼な人がいるので関係ないかもなのです』
ふーん、好き好きってことか。パーティー組んでいるPCの方に行くのが多いのだろうな。
単発でやって来るモンスターを倒しながらプロロアの森へと到着する。
やはり装備を良い物に変えると戦いがだいぶ楽になる。たとえ1でもパラメーターが上がるとまるで違うと実感させられる。
西街道をしばらく進んでから南へ進路を変える。
マップの踏破率を上げるためにも、まだ行ってないところを目指すことにする。
森の中は街道に近いせいか木々もまばらで、生い茂る葉の合間から日の光がモザイク模様のようにきらめいている。
麦畑もそうだったけど、相も変わらず綺麗な景色だ。
『キラキラなのです』
ララがヤマトの肩に乗って楽しそうな声を上げる。
今日は何故か普段と違って飛び回ったりせず、頭や肩に乗っかっている。何かあったのか。ん―何となくグランドクエストがらみかも知れない。特に問題はないので何も聞かずそのまま行くことにする。
「えーと、森のモンスターはビッグスパローとワイルビーだったっけ?」
ララにおさらいも兼ねて聞いてみる。
『あとそれにウリスケさんと同じスピアボーアとホーンラビットが出て来るのです』
『グッ?』
森の中は障害物が多く遮っているせいか。索敵範囲が他と違ってそれ程広くない。僕が索敵使ってなくてレベルが上がってないのもあるか。
なので、モンスターの接近に気付くのが遅れることがままあって初撃で大ダメージを食らうことが多いらしい。
『マスター、前方からモンスターが3体来るのです!』
ララに教えてもらったスキルセレクトで楽にスキルを切り替えられるので、レベル上げも兼ねて常時発動状態にして戦っている。
文字通り3つの赤印がこちらに向かってやってくる。
僕はメニューを開きアイテムから投網玉を1コ手に取り目の前の上空へ投げ込む。アーツを起動させてしばし待つ。
この投網玉は道具屋で見つけた飛行型のモンスターに効果のあるアイテムということで置いてあったものだ。
ただ投げ入れたところに網が広がりモンスターの妨害するだけというものなので、大きな効果があるわけではなく値段もひとつ300GINとお安くない為、道具屋の片隅に売れ残っていたものだ。
ものは使いようと思い10個ほど買ってみたのだ。さて上手い事行くかな。
くす玉が割れるように投網玉がパカリと2つに割れると、中から細い糸で編まれたような網が2m四方へと広がっていく。
うまくタイミングがあったようで、そこにやって来たビッグスパローが広がった網へ3体とも捕らえられて墜落してく。
『ヂュンッ!』『ヂヂュンッ!』『ヂューッ!』
『“スラッシュ”』
『ウィンドカッタ』
『グ――――ッ!』
落ちたところへ僕がロックオンしたイミットアーツをララが風魔法、そしてウリスケが体当たりをそれぞれにおみまいする。
これらの攻撃でHPの半分を減らしてから、近付いて斧で攻撃すると、1体は光の粒子になって掻き消え他の2体もララとウリスケであっさり倒してしまう。
『うまくいったのですマスター!』
「うん、上手いことハマったな」
『グッグ―――ッ』
こうして投網玉を使って、たまにスカしながらビッグスパローとワイルビーを倒していき、森の中をジグザグと未踏破部分を埋めているとそれは起こった。
森の中を進んでいると、ガサガサと手前の茂みが揺れたかと思うと1人のPCが倒れこむように現れた。
「えっ!?」
『っ!』
『グゥ?』
僕達がビックリしていると右の方向からモンスターがやってくる反応が現れる。突然どうしてだ?
PCを見てみると倒れたまま動かない。HPのゲージが半分程になっている。僕はすぐさまメニューを開きHPポーションを選んでPCへと使う。
「ララ!ウリスケ頼む」
『了解なのです!』
『グッグ!』
2人がモンスターへ飛ぶように向かって行った。向かった先を見てみるとホーンラビット3体が穴があいた地面で転んで、ウリスケに蹂躙されていた。
とりあえずもうひとつHPポーションを使ってPCを回復させる。それでやっと7割ほど。相当レベルが高いPCなのだろう。
『うっ………あ、』
倒れていたPCが声を上げている。どうやら気がついたみたいだ。僕はそのPCを見ながら声をかける。
「大丈夫ですか?」
僕の声に周囲をキョロキョロ見回してからこちらを見る。そして徐ろに立ち上がリ頭を下げて礼を言ってくる。
『ありがとうございます。助かりました』
「何があったんですか?この森ってあなたのレベルなら問題ないんじゃないかと思うんですけど」
『いやー、ちょっと油断して攻撃を貰って慌てちゃってね。お陰で助かったよ』
バストアップ画面の彼は見た目10代後半で茶髪のざんばら頭に細目の人族の少年といったところか。
人懐こそうなフランクな口調で僕へと話してくる。
上半身を全部覆ったマントのせいでどんな装備をしているかは分からないが、腰にレイピアという刺突剣を佩いている。剣士プレイをしている人なのかな。
そこへウリスケがストトトと僕の方へとやってくる。
それを見たPCが剣の柄に手をやるが、僕はそれを遮るように話しかける。
「あ、その子は僕の従魔でウリスケって言います。僕はヤマトって言います。よろしくお願いします」
警戒を解くように息を吐き剣から手を離すと、彼も名前を名乗ってくる。
『失礼しました。私はカラミティーといいます』
カラミティーと名乗った彼は手を差し出そうとするが、その前にシーンアクトを使ってお辞儀をしておく。
それよりララはどこに行っちゃったんだろうか。少しばかり心配をして周囲を見ていると、カラミティーさんが唐突に提案をしてくる。
『もしよろしかったらしばらくの間パーティーを組みませんか?お礼もしたいですし』
カラミティーさん自身レベルが高いのでここで経験地稼ぎを手伝ってくれるとのこと。
ララとウリスケがいるので戦力的には必要無いのだけれど、他のPCとゲームをプレイするのもMMOの醍醐味らしいから、さてどうしようか?
『グゥッ?』
(ー「-)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます




