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47.マルオー村を見て回る

Pt&プクマありがとうございます(T△T)ゞ

 

 

 次の機会と思っていたが翌日の午後にまたログインしている。

 論文が少しばかり煮詰まったので、デモムービーと実機の製作に取りかかろうかと思ったのだが、3Dプリンターの順番が詰まっていたせいで利用できなかったためだ。となると後はどうしようもないので気分転換も兼ねて一旦諦めて学校を出て、姉宅でゲームを始めたわけである。


『お帰りなさいなのです。マスター』

『グッグッ!』


 ララとウリスケが嬉しそうに声を上げやってくる。

 ログインした場所はマルオー村の中心にある噴水のある広場だった。

 東街道がマルオー村の真ん中を貫く形で通りそのまま東へと続いている。その村の中央部の街道のそばに10m位の噴水といくつかのベンチが置かれていた。

 

 噴水の中央には精巧に作られた人魚マーメイドのオブジェが甕を掲げている。するとそこから水がしゅわわとシャワーの様に宙を舞い水面へときらめきながら降り注いでいく。周囲には灯り玉か魔法の光があちこちに浮かび村を明るく照らしている。

 

 東街道を境界に南に噴水広場、北側に何やらでっかい門の様なものが置かれている。高さは5m位、円門程ではないけど(あっちは10m位あった)見た目はフランスにある凱旋門みたいだ。

 見ていると門の中が水色に光り輝くと中から鎧姿の男の人が出て来た。あれ、フルプレートアーマーっていうんだっけか。そのまま東街道を西へと向かい去っていった。


「ララ、あれって何なの?」


 凱旋門の事をララに聞いてみる。想像はつくけど。


『あれは転移ゲートなのですマスター』

「転移ゲート……」


 やっぱりそういうものがあるんだな。


『1度行ったことがある街にゲートを通ると一瞬で行くことが出来るのです』


 ん?あれ、そう言えばプロロアの街にはあんなものなかった気がするんだけど何でだ?


「ララ、プロロアの街には転移ゲートってないよね何で?」

『んー、そういう仕様としか言えないのです。それにレベルの高いPCの皆さんはあまりプロロアの街に行ったりはしないので転移ゲートが置いてないかもなのです』


 まぁ、最初の街なんかにはポーションの事なんかが無い限り特に用もないし行ったりしないか。ふんふん。

 話してる間にも何人かが出て来て西へ向かっている。今はプロロアの街に用がある人がいるみたいだ。

 それはともかく、せっかく新しい村に来たのだからあちこち見て回ることにしよう。といってもそれ程大きな村ではない感じだ。


「とりあえず村を見てまわるか。どこか行ってみたいところある?」


 特に無いとは思うが、とりあえず聞いてみる。


『はいなのです!スキルショップに行きたいのです!!』


 しゅびっと右手を上げて大きな声を上げるララ。ウリスケも何か言おうとしてから右前足を上げていたがララに1歩及ばず。まぁ多分屋台か食い物屋だと思うけど。


 そんな訳でスキルショップへ向かうことにする。このマルオー村は円門1と次の街の中継地点という位置づけなので、それ程規模は大きくない。よって店の数もそれぞれ武器防具屋、道具屋、スキルショップ、宿屋そして冒険者ギルドがひとつあるだけだ。

 東街道の南側、僕等がいるこっち側にスキルショップと道具屋。反対の北側に武器防具屋と宿屋と冒険者ギルドが転移ゲートと噴水広場の先(東側)に建っている。


『マスター、こっちなのです』


 ララがビューと僕達を先導して先へと飛んでいく。道具屋を過ぎてスキルショップの前で停止して僕等を待つ。

 ドアの上方に付けられたスキルショップの看板を見て、この手の看板は共通なのかプロロアの街と同じ物だ。ピクトグラムってやつか。建物は窓がなく彫刻がなされた分厚そうな木製ドアが付いてるだけだ。

 僕達はドアを開け中へと入る。


『いらっしゃいませぇ〜』


 中に入ると若い女性の声で迎えられる。店員さんだろう。声のする方へと身体を向けると、そこにはカウンターの向こう側に20歳前の女性がニコニコしながら立っていた。


『スキルショップマルオーへようこそ。ゆっくりしてってねぇ〜』


 のんびりとした口調でそう言ってくる。10畳程の店内には所狭しとリアルのカードショップを彷彿させるようにスキルカードが並べられている。

 いろいろ有り過ぎて僕などは目移りしてしまう。けれどララは一直線にカウンター脇に飛び、ひとつのスキルを凝視している。


『こんにちは、ご新規さんねぇ〜。私はここの店主のウーって言います。よろしくねぇ』

「あっ、どうもよろしく。ヤマトと言います。この子がララで、こっちの子はウリスケです」

『よろしくなのです』

『グッグゥ!』


 紫色の波打つ長髪から覗く垂れ目の小顔は綺麗というより可愛い感じだ。右目脇のホクロが印象的だ。背はそれほど高くはなくヤマトより頭ひとつ低いくらいだ。

 ウーさんをぼんやり見てるとララがバストアップ(大画面)で話しかけてきた。


『マスターこれが欲しいのです!!』

「え?どれ?」

『これなのです!』


 びしっと指さしたのは【調理】スキルだった。

 あーそういやリアルの食事の時とか凝視してたよな。食べるというよりは作る方に興味があったのかな。スキルスロットも増えたことだしひとつふたつ位は買ってもいいかな。


「他に何かある?あとひとつ位は買ってもいいよ」

『いえ、【調理】スキルだけでいいのです!』


 フンスと鼻息荒く拳を振り上げるララ。えらい気合いが入ってる。


「すいません。【調理】スキルをください」


 カウンターに向かい店主のウーさんにお願いする。


『はぁい、ありがとうございますぅ』


 ウィンドウが表示され、いくつものスキルが表示されるその中から【調理】スキルを選んで決定。5000GINを支払う。


『またのお越しをお待ちしてますぅ』


 ……結局買ってしまった。ゲームの中でも料理をする事になるとは。


『次は道具屋さんへ行くのです!』


 まだララのターンみたいだ。ウリスケが肩を竦めるように立ち上がって前足を上げる。“ふっ、しゃーねぇーなー”って感じだ。

 ウリスケには悪いがララに付き従って今度は道具屋さんへと向かう。スキルショップと似た様な作りの建物と木製ドアで看板だけが違う道具屋に入ると、カランコロンとドアベルが鳴る。


『らしゃ―い。マルオー道具屋へようこそ』


 あれ?さっきと似た様な女性の声、とカウンターを見るとウーさんがやっぱりニコニコと立っていた。

 さっきまでスキルショップにいたのに隣の建物と繋がっているんだろうか。


「あのー、ウーさんは道具屋さんもやってるんですか?」

『あ、スキルショップに行ったんですね。あたしはウーじゃないですよ。マルオー道具屋の店主でイーって言います。よろしくね』


 そっくりさんというか双子かなんかなのかな。姿や顔立ちはそっくりだけどよく見ると目元にホクロが無く、口元の左側にホクロがついてるウーさんとは別人のようだ。たぶん姉妹なんだろうな。

 ララがイーさんのところまで飛んでいくと開口一番、


『簡易調理セットを下さいなのです』


 なるほどスキルだけ持っててもダメなのか。あ、でも調薬は何の道具も持ってなくても出来たよな。


『マスター。このマルオー村の冒険者ギルドには作業場がないので生産活動は出来ないのです』


 ふんふん、謎がまたひとつ解けたわけだ。ということのものでもないか。

 簡易調理セットの他に調味料と香辛料と麦粉なんかを買って10000GIN。店を出て通りへ戻る。

 ゲームでもお金が減ると心許無くなる。性格なんだろうが次はウリスケの番かなと思ったら、まだララのターンらしい。


『噴水広場で【調理】をするのです』


 ララの後について行って広場へと戻る。調理セットと調味料は買ったけど材料は買ってない。どうするつもりなんだろう。


『マスター、【調理】スキルを使ってなのです』


 ベンチの前に立ちララの言うとおりにする前に、サブスキルに【調理】を登録してメインスキルの【水魔法】と入れ替える。

 そしてスキルから【調理】を選ぶとベンチの上に真四角の板のようなものに載せられたフライパンとまな板らしき木の板が目の前に現れる。端っことはいえ往来の中で料理をするのって気恥ずかしいものがあるのだが、ララは全く気にしていない。

 どうやら【調薬】の時と同じようにミニゲームのようになっているみたいだ。

 左上の方にコマンドが表示されていて“焼く”と“その他”しか無い。


「ララ、もしかして最初は焼くしか出来ないのかな?」

『そうなのです。レベルを上げないと焼くしか出来ないのです』


 ま、確かにゲームだしなぁ……。


「で、これからどうすんの?」

「“その他”を選らんで下拵えをしてなのです』


 “焼く”の下にある“その他”を選ぶと“切る”と“かける”“その他”と表示されたウィンドウが右側に出て来た。

 ようは下拵えのコマンドになるのかな。まぁ下手に煩雑になるよかマシではあるか。

 まず“切る”を選ぶとさらに横に素材のウィンドウが表示される。


[ワイルブモーの肉]

[ワイルブヒブの肉]

[ワイルボーアの肉]

[ワイルラビットの肉]

[スピアボーアの肉]


 肉だらけだ。なるほど今迄倒したモンスターの肉ってわけだ。焼くとなれば肉が1番簡単だし基本だものな。(魚もあるけどね)

 んーと……どれにしようかと選んでいるとウリスケが何か言いたそうに声を上げる。


『グッグッ――――ッ』

「え?お前が決めたいの?……いいよ、どれがいい?』


 僕がウリスケの要望にどれが良いか聞いて見ると、ウリスケは地面を2回バシバシ叩いてどれが良いのか知らせて来る。

 2番目と言うとワイルブヒブか……豚肉かな。………いいんだろうか。

 ウリスケの希望通りにワイルブヒブの肉を選ぶとまな板の上に肉塊がでんと現われた。ビックリした。

 そして包丁がクルクル回りながら肉塊の上へとピタリと停止する。


『マスター、左右で厚さを決めてAボタンを押しながら上下で切っていくのです』


 ふむ、何か昔似たようなゲームがあったような無かったような。まぁいっか、とりあえず肉を切ってみることにしよう。

 厚さは5mm位か、5kg位あるワイルブヒブの肉塊の左端に包丁が浮かんでるので、右に少しずらしてAボタンを押すと少しだけ肉にさくりと刃が通る。タイミングよく十字キーを上下に動かしていくと下まで刃が通っていってハラリと1枚肉が横に倒れていく。

 するとピコとSEがして赤色で+1と表示されてすぐ消えた。何だ今の?


『今の数字は評価であり、修錬値なのです。これがある程度溜まって行くとレベルが上がって出来る事が増えていくのです』


 てことは1番低い数値が出たというわけか、うぬぅ要修行だな。問題なのは厚さか、スピードかタイミングだろうか。

 試しに厚さを1cm位にして似たようなタイミングでやってみたけど+1だった。なのでスピードとタイミングに気をつけて肉をスライスしていく。

 肉の塊を半分近くスライスしていって(20枚ほど)、何とかコツらしきものが掴めて+3迄修錬値が上がって行った。レベルアップまではまだまだ先のようだ。

 切るのを止めて次の工程へ移ろうとするとウリスケが抗議の声を上げる。


『グッグッグッ!』

「え!もっと食べるの?」

『グッ!』


 ウリスケの抗議を受けてさらに肉を切ろうとすると、今度はララが声を掛けてきた。


『マスター!ララもやってみたいのです!』

 

 しゅびっと手を上げてお願いしてくるララに僕は頷き了承する。


「いいけど、どうやって、ってか出来るの?」

『大丈夫なのです。任せてなのです!』


 するとミニゲームの画面にララが入ってきて包丁を脇に抱えて肉塊を切り始めた。


『よっすぅ―――――っと、はっすぅ――――――っと、てっすぅ――――――っと。もっと切るのです』


 ララが抱えた包丁を斜めに傾け変な掛け声を上げて器用に肉を薄く切っていく。

 その度に+4、+4、+4と修錬値が表示されては消えていく。結局ワイルブヒブの肉を全部切り分けてしまった。


「ララ。すっごいなぁー」

『えっへんなのです』


 切られた肉はキレイに均等の厚さで分けられている。たいしたもんだ。


『次はお肉を焼くのです!』


 やる気バンバンのララに全部任せてもいいのだけど、最初だけはやらせて貰うとしよう。

 左上にあるコマンドから“焼く”を選ぶと左側にあった四角い板に載ったフライパンが中央にやってくる。

 と待った。味付けをしていない。いかんいかん、“焼く”をキャンセルして“その他”→“かける”を選ぶ。


『マスター焼かないのですか?』


 僕が焼くのを止めたのを見るとララが首を傾げて聞いてきた。


「うん。まずは味付けをしなきゃ焼いただけじゃ味気ないからさ」

『そうだったのです。うっかりなのです』


 おでこをパチンと叩いて“やっちまった”顔をするララ。何かおっさん臭いぞ。

 切り分けられた肉が中央に来たので、Aボタンで塩の小瓶を掴み下ボタンをちょんちょん押して少しづつ左から右へと動かし振り掛けていく。コショウも同じ様に振り掛ける。そのあと麦粉というのを小麦粉代わりに軽くパラパラとかけていく。これで下拵えは完了だ。


 今度こそ“焼く”を選んで肉を焼いていく。フライパンの脇にある油をカーソルを合わせてAボタンで掴みフライパンの中へたらーりと回し入れる。

 真四角の板にあるボタンみたいなのを押すと火力調節のパラメーターが表示される。中火より少し弱火にしてしばらく待つと、チリチリと音を立てる。そこへカーソルを動かして右側にある肉を掴み3枚ほどフライパンへと投入する。微かにじゅわっと音を立てる。

 周囲に肉の焼ける音と画面からは分からないがいい匂いがしているらしくララとウリスケがうっとりとした声を上げる。


『いい匂いなのです』

『グゥゥ~ッ』


 しばらく動かさず様子を見ていると肉が一瞬だけピカリと光る。すかさずカーソルを動かし肉を裏返す。じゅわわ~という音とパチパチ油が跳ねる音が聞こえてくる。めっちゃリアルな音だ。

 フライパンの取っ手をAボタンで掴み十字キーで上下左右に揺らし肉を躍らせる。もう少しで出来上がりそうなので皿に移そうと思ったが無いことに気付き少し焦る。


「ララ。お皿とか買って無かったよな」

『あっ!うっかりなのですマスター』


 これ途中で止めるわけにはいかないよな、どうしようかと考えあぐねていると『あの、よかったら』と女性のか細い声と共にお皿が左から現れてきた。


「あ?ありがとうございます?」


 渡りに船とばかりに礼を言って皿へ焼き上がった肉を移す。


『完成なのです!!』

『グゥゥッ!!』


 嬉しそうな声を上げる2人を尻目に一旦スキルを解除すると、ベンチの反対側にイーさんとウーさんの他に同じ顔をした女の人が2人しゃがんでいた。


「えーと、皆さんどうしたんですか?」


 それぞれお皿を持って待ち構えてる4人に聞いてみる。


『店番してたらいい匂いがしてきたので、来て見たらお肉焼いてたので、貰えないかと思って待ってたの』


 ニコーッとした顔でそう答えるイーさん。


『お皿あげるから私たちにも食べさせてくれない?』


 そんなイーさんの言葉に他の3人も頷くように首を縦にコクコク振る。


『ワイルブヒブ美味しいのです!』

『グッグッグ―――――ッ!』


 2人がこちらに構うことなく肉をはぐはぐ食っている。………ま、いっか。


「分かりました。お肉焼きますんでちょっと待っててください」

『今度はララが焼きたいのです!』

「うん、頼むね」

『はいなのです』


 今度はララに任せてみよう。【調理】スキルのコマンドを開き肉焼きを再開する。

 僕とララで交代しながら肉を焼いていく。切ってあった肉が無くなったので、他の肉をさらに切り分けて焼いていく。


『ワイルボーアの肉ってあたし好き』

『私はワイルラビットの方かな』

『…………はぐはぐはぐ』

『脂身焼いたとこがおいひい』

『グッグッ!』


 そんなこんなで肉を焼いていると【調理】スキルのレベルが5上がって“煮る”と“炒める”を覚えることが出来た。


 あ、出来た料理鑑定するの忘れてた。





(-「-)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

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