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46.円門を通ってマルオー村へ

あけましておめでとうございます(おそっ)

Pt&ブクマありがとうございます

前話に別エピ加えましたのでよかったら読んでもらえたら嬉しいです

 

 

 話が纏まったので、ラビタンズハウスを出て少しばかりラビタンズ達と戯れた後に、ラビタンズネストを出る。

 周囲の風景が草原のそれへと戻り、ぐるりと周りを見回す。現在地はちょうど南西の中間地点のあたりなのでそこから東に向かって進むことにする。

 その間に色々使っていないスキルを確認してみることにする。


 えーと確か【付与】と【身体能力+】【魔法耐性】だったかな。立ち止まりメニューを開いてステータスを見てみる。


 【名 前】 ヤマト

 【種 族】 人族

 【性 別】 男

 【キルドランク】 E

 【Level】 16

  [HP] 294/310

  [MP] 110/140

   EXP 12300

   GIN 32700


   STR 33

   VIT 33

   AGI 30

   DEX 31

   INT 32

   WIS 33

   LUK 16


[メインスキル 5/5] 斧 水魔法 火魔法 土魔法 風魔法

[サブスキル 8/10] 調薬 採取 付与 身体能力+ 魔法耐性 索敵 鑑識 従魔

[装 備] 鉄の斧 冒険者の服 皮のかぶと 皮のよろい+1 皮のくつ クリスタルアミュレット


{称 号] 円門1の通過者


 ………スキルはともかく装備はもう少し良い物を買ったほうがいいかもしれない。プロロアの森では苦戦しそうな気がする。

 メニューを閉じて再び歩き始めると、ララに少し聞いてみる事にする。


「ララ、今まで使ってないスキルについて何か判る?」


 僕のつかみ所のない質問に少しだけ考えてから答えてくれる。


『このゲームでは2種類のスキルがあるのです。ひとつは使うごとに修錬値が上がるグロウ−スキルと、もうひとつは一定の数値を上乗せするだけのアド−スキルなのです』


 右下の隅に少し小さめのワイプで顔を見せてララが教えてくれる。ちょうどプロロアの街の真南まで進んで聞いている。

 モンスターは索敵の範囲外みたいで何の反応もない。


『グロウ−スキルは言葉が示すように成長―――使うごとに修錬度が上がりレベルアップする武器や魔法などのスキルで、アド−スキルは設置するだけで一定数のパラメータが上昇する身体強化や魔法耐性などのスキルです。こちらはレベルが上がらない代わりに常時発動するのです』


 へぇー、スキルにも色々あったんだな。やっぱ色々確認しなきゃいけないかな。街に戻った時にでも見てみようと考えていると、ララが声を上げてきた。


『マスター!正面からモンスターが2体やって来るのです』


 立ち止まり戦闘態勢に入る。マップには東から赤の丸がやって来るのが分かる。丸がひとつしか無いように見える。


「ララ、1体じゃなくて2体なの?」

『はいなのです。気を付けてなのです!』


 ララの言葉に従い縦斬りを長押ししてアーツを発動させる。とウィンドウに2つのアーツが表示される。レベルが上がったので新しいアーツを覚えてたみたいだ。まずは“スラッシュ”を選んで待ち構える。

 現れたのはスピアボーア。ズドダダダと足音を立てながらこちらに突っ込んでくる。



「うおっ!」


 通常は戦闘に入ると互いに立ち止まって始まるはずが、そのまま突っ込んでくることに驚く。慌ててスラッシュを放つが、ロックオンしてなかったのであさっての方向へと飛んで行ってしまう。


 「くっ」


 右ダッシュで躱そうとすると、スピアボーアが右脚を蹴り込み方向転換してくる。


『グランディグ!』


 ヤマトにぶつかりそうな瞬間、ララの魔法がスピアボーアの足元を襲う。


『ブェオッ!』


 バランスを崩し倒れ込むスピアボーアの後ろからホーンラビットが飛び込んできた。スピアボーアの後ろに隠れてたのか。


『ギャオ!!』

『グゥッ―――――ッ!』


 またまたダメージを受ける寸前、横合いからウリスケが飛び蹴りでホーンラビットを退ける。え?飛び蹴りぃ?

 ウリスケはそのままストトトと4つ足で走りスピアボーアへと向かって行く。あれ?飛び蹴りだったよな。

 いや、今は戦闘中だ。こっちに集中しないと。


 あらためてホーンラビットにロックオンして近付き縦斬りで攻撃する。縦斬り3連そしてバックダッシュ、そこへララの水魔法が放たれホーンラビットが光となって消えて行く。よし。

 ロックオンを切り替えてスピアボーアへ向かう。

 ウリスケがスピアボーアを相手にかわしいなし戦っている。


「すご……」


 助走をつけて駆け出そうとすると横からドンとぶつかり、額の角で振り払おうとするとストトトと回避して後ろに回り込み体当たり。


『“ファイヤバレット”』

『ファイヤバレット』


 残りHPが減ったところへララと火魔法を放つ。2つの魔法は命中してスピアボーアも光の粒子となって消えて行った。

 モンスターが連携してくるとは、なかなかスリリングな戦闘だった。

 でも何か楽しくなってる自分がいる。


 こうして何度か戦闘を繰り返して先に進み、東街道に向かうため北東へと進路を変えて進んでいく。

 どうも以前に戦った時とは全然モンスターの強さが違っているみたいだ。強さというよりは賢さと言った方がしっくり来るかもしれない。


 メンテナンス時にアルゴリズムを変えたのだろうか。ただ突っ込むだけだったワイルボーアやスピアボーアが、フェイントをかけタイミングをずらす等攻撃に変化を見せて来る。

 レベルが上がって強くなったはずなのに、あまりそういう実感がわかない。

 1体に対する攻撃回数は減ってきてるから強くはなっていると思うけれど、僕的にはお主なかなかやるなという感じだ。


 その後も何度か戦闘を経てようやく東街道へと辿り着くことが出来た。周囲は平原や草原なのにそこだけ石畳が敷きつめられた道が東西へと伸びている。迷わずに済むような配慮なのだろうか。

 僕ははぁーと息をつきコントローラーから手を離してブラブラさせる。


『マスター、スキルを色々試してみてみるのです』


 僕がひと息入れているとララがそんな事を言ってきた。さっき僕がスキルのことを聞いてきたせいかもしれない。


「うん、わかった」

『といっても今出来るのは【付与】スキルだけなのです』

「え?他のは出来ないの?」

『はいなのです。武器や魔法は戦闘時にしか使用できないですし、索敵や採取は使用時のみに修錬値が貯まるのです』


 なる程、【身体能力+】や【魔法耐性】は常時発動型だし、【採取】【索敵】は作業をしないとダメだしな。


「うん、じゃやって見ようか」


 メニューを開いてスキルから【付与】を選ぶ。

 すると隣りにウィンドウが現れて攻撃力付与と防御力付与と出て来る。攻撃力付与を選ぶと次にキャラ名が出て来る。

 ヤマトとララとウリスケの順でヤマトとウリスケが白地で表示されている。ララは灰色だ。


『攻撃力付与は物理攻撃が出来るキャラクターにしか付与できないのです。魔法攻撃しか出来ない今のララは選べないのです』


 へぇー魔法に攻撃力付与しても意味がないってことなんだろうか。試しにウリスケを選ぶとピコンという音とともにウリスケの身体が緑の淡い光が灯りだす。そして光が収まるとウリスケの頭上に緑の淡い光で+2と数字が表示されている。何とも微妙な数字だ。ま、レベルが上がるごとに増えていくんだろうな。


 次に防御力付与を選ぶと、今度は全員が白地で表示される。

 ララを選ぶとピコンというSEとともにララの身体が黄色の淡い光に包まれて消えると、頭上に黄色の淡い光で+2という数字が表示される。

 緑が攻撃力で黄色が防御力ということか。うん、理解した。

 どうやらこのスキルもMPを消費するみたいなので、といっても消費MPは1なので戦闘前に使えば少ない数値でも有利にはなるだろう。今度から使っていくことにしよう。


 サブスキルにあった【付与】を【風魔法】と入れ替えてから東街道をさらに進んでいく。

 しばらく進んでいくと前方にやたらでかい輪っかが見えてきた。どんどん進んでいくと輪っかではなくΩの形をしたオブジェのようだ。何とも風景にそぐわないものだ。


『マスター、あの円門をくぐってなのです』


 ほう、あれは円門っていうんだ、ってか称号にも円門ってあったよな。

 見た目は白磁器のような白く滑らかな石のような感じがする。トンネルというには短すぎるそれをララの言う通りにくぐるとピロコリンという音とともにウィンドウが現れメッセージが表示される。


ジャジャーン

[円門1を通過しました]

[通過ボーナス]

[サブスキルスロット を 2スロット て に いれました]


 あーララが言ってたのはこのことかぁー。

 たぶんこういうイベントをクリアする毎にスキルのスロットが増えていくシステムってことなんだな。


『おめでとうなのですマスター』

「ありがと、じゃマルオー村まで行こうか」

『はいなのです』

『グッグーッ』


 円門を抜け東街道を更に進んでいく。


『マスター、南からモンスターが3体来るのです』


 右に向きを変えて待ち構える。その前に【付与】を3人にかけておくことにする。

 メニューを開き【付与】を選び攻撃力付与をヤマトとウリスケを選んで実行、次に防御力付与を3人を選んで実行。ララの頭上に黄色の+2が、ヤマトとウリスケの頭上に緑と黄色の+2が浮かんでくる。

 無いよりマシという程度だけど少しでも足しになればいいだろう。

 ダガダッダガダッと足音を響かせてやってきたのは黒い牛のモンスターだ。


『ワイルブモーなのです!』


 ブモーって、牛だったらてっきりカウとかオックスだと思ったのに鳴き声って………。


『ブッモォ―――――ッ!』


 Vの字編隊でやっぱり止まること無くこちらに突っ込んでくる。ロックオンして右端のワイルブモーに狙いをつける。

 縦斬り溜め押し“スラッシュ”を選び近づくのを待つ。


『グランディグ!』


 ララの土魔法が狙い過たず3体の足元に穴を掘り近づいてきたワイルブモーを転ばせる。


『“スラッシュ”』

『グゥ――――ッ』

『ファイヤバレット』


 ドカン。


『ブモッ!』『ブモフゥッ』『ブッフモッ』


 僕が右端、ララが中央そしてウリスケが左端のワイルブモーへ攻撃を浴びせる。声を上げるワイルブモー。

 この攻撃でHPが半分になり倒れてるワイルブモーの横に近づき横斬りを一閃。あと一撃と思った時、左右に身体を揺すったワイルブモーがこちらに向かって転がってきた。

 慌てて反対側に回り込むとゴロゴロと身体を回転させてその勢いで立ち上がろうとする。何げにリカバリー力が高い。

 魔法を選び詠唱を始める。星ひとつ星ふたつワイルブモーの立ち上がり様に詠唱が終わりすぐさま魔法を放つ。


『“ストンバレット”』


 石礫がワイルブモーに命中し、鳴き声を上げて倒れ込み消えていった。


『ブモーッッ』『ブモッッ』


 どうやら2人も倒し終わったようだ。ワイルボーアの時と比べても楽に倒せたけど、地味に【付与】が効いてたんだろうか。


『バッチグーなのですマスター』

『グッグーッ』


 いつの間にか付与の数字は消えていたので、戦闘前に掛けていくのがいいのかも知れない。

 その後ワイルブヒブ(豚!)の集団とかと戦闘をしながら東へと歩いて行く。

 ワイルブヒブは茶とか黒の中型犬ほどの豚そのもののモンスターで、5、6匹が周囲をグルグル回りながら1匹づつ攻撃して来るモンスターだった。


 ロックオンし辛く始めはて梃子摺ったのだが、ララが進行方向に大きめの穴を開けるとみんな雪崩れ込むように穴に落ちたり転げた倒れたので(玉突き事故を思い出した。)、それぞれ各個撃破していく。グランディグつよっ。

 戦闘をしつつ、てくてく道なりに進んでいくと周りの風景が少しづつ変化していった。

 緑の草原がやがて黄金色へと染まっていく。


『麦畑が綺麗なのですマスター』


 ララが感嘆の声を上げる。灰闇の中で灯り玉に照らされ麦畑がきらきら光っている。

 父さんの田舎に行った時、山から見たずっと向こうまで広がった田んぼで実った稲穂を思い出す。

 あれも見事だったけど、この風景もとても綺麗だ。

 麦畑に囲まれた道を進むと木枠に囲われた建物群が見えてきた。


『マルオー村なのです』

『グッ!』

「ようやく到着か、今日はここまでかな」


 マルオー村に入り登録を済ませる。バイトもあるので今日はここで終わらせることにする。

 村を見て回るのは次の機会にしよう。


「じゃあなララ、ウリスケ」

『はいなのです。待ってるのですマスター』

『グッグッグゥ――――ッ』


 ログアウトを選んでゲームを終わらせる。

 今日はここまで。




   *



 いきなり僕を呼び出すなんて、叔父さんは一体どうしたってゆうんだろう。せっかく今日こそ彼女を攻略出来るところだったのに。

 AIタクシーを降り、○○銀行△△支店へと向かう。玄関はすでにシャッターが閉じられており、何の問題もなければ入出金の数字が揃って皆家路を辿っていることだろう。

 裏口に行くと顔馴染みの警備員に軽く挨拶して中へと入る。あの手の人間は酒か女を宛てがうとすぐに腰を低くしてきて扱いやすい。

 通路を過ぎてエレベーターに乗り込み3階へのボタンを押す。到着すると歩き慣れた通路を歩き支店長室のドアをノックする。


「入れっ!」


 心なしか口調がきつい気がする。気のせいだろうか。

 中に入ると叔父である支店長が窓に向かいこちらに背を向けて立っていた。何か拙い気がする。僕は何かやってしまっただろうか………。

 確かに支店こっちで少しやらかしてしまったことは仕方ないが、出向先で地盤を築けと言われ着々と足場を築きつつあるところだったのだ。


 社長を籠絡し邪魔な人間を排除しつつあったのに、今更呼び出されこっちに戻ったとしたら今迄の苦労が水の泡になる。

 しかし叔父の話はもっと深刻なものだった。


「お前は私の息子に何を吹き込んだんだ!!」

「えっ!?」


 叔父さんの息子ってヒロシのことか?何を吹き込んだって………いや、そういやガキの頃色々教えこんだ気がする。

 女のこまし方や脅し方とか色々吹き込んだか………な。でもアイツが中坊の時だし、今頃その事で何か言われてもどうしようもないと思うが………何か良い言い訳はないだろうか。

 叔父がこちらを振り向き僕を睨みつけて声を荒らげる。


「ヒロシが逮捕された。お前が出向してる社外役員の家族を誘拐しようとしてだ。その上複数の女性達を暴行した疑いでも聴取されてる。弁護士を通しても実刑は免れない。貴様は何と言うことをしてくれたんだ!バカ者がっっ!!」


 怒りのあまりか手に掴んだガラス製の灰皿を床へと投げつける。ガッシャーンと砕け破片が辺りへ飛び散らばる。

 こんなの八つ当たりだ。僕が教えたとしてもその後のことは叔父に責任があるはずだ。一瞬そう思ったが、叔父の次の言葉に顔が青褪め冷や汗がだらだら背中を流れる。


「ここまで登り詰めたオレは解雇だ。同様にお前もな。全く恩を仇で返されるとはな」


 叔父は僕の方を押し退けて支店長室から出て行った。

 僕はただ立ち尽くすばかりだった。


 ええっ?何で急にこんな事になるんだ!?なんで!!




(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

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