30.お家を建ててくれるって
一部読み難いかと思いますがご容赦を
pt&ブクマありがとうございます
宴は和やかに楽しく過ぎていった。シーンアクトをONにしたおかげで、”ヤマト”が食べたり飲んだりする姿を画面から眺めることが出来ている。(グラン〇ィアの食事風景見たいな感じだ。)
ウリスケが前足で器を持って器用に食べるのを見て感心したり、ララの通訳でラビタンズ達の話を聞いたり、色んな歌や踊りを見せてもらい僕自身も思わずほっこりしてしまった。はー。
個人的に羨ましかったのは、小さいラビタンズ達が“ヤマト”に懐いていっぱい集って来たことだ。(頭や肩、太股や手の中で丸まってスヤスヤ寝てたりした。)なんてモフモフ。
そして宴も終わって皆が家に帰って行った後、ララとウリスケ、そして“ヤマト”もHP・MPともに回復したのでプロロアの街に戻ろうとした時、ザギゥーさんがこちらに来て話しかけてきた。
ララがザギゥーさんから話を聞いて僕に確認してくる。
『マスター、ザギゥーさんが良かったらここに家を建ててみないかと言ってるのです』
「家?ここに?」
ザギゥーさんを見てみるとのそのそ歩き出し、ついて来いと言うようにこっちをちらり振り返り、そして先へと進んで行く。
仕方なく後についていくと、木々を抜けてポッカリと空間の空いた空き地へ到着する。
『モニュモ~ニュニュ、モミューニュモニュモ』
ザギゥーさんが周りの木々を手で示しながら話していく。
『この周りの木々を切ってくれれば、こちらで家を建てると言ってるのです』
【採取】スキルは持ってるけど、木は採取じゃなくて伐採だと思うからとても切るなんて出来ないと思うのだけど。
『マスター、そこの木をロックオンして横斬りで切ってみてなのです』
ララの言うとおりに高さ4m太さ30cm程の木の前に立ちロックオンする。すると“ヤマト”の横に棒グラフのようなものが現れ、中でオレンジの棒が上下に伸び縮みしている。
これはパワーゲージか何かだろうな。試しにオレンジが1番高くなったところで横斬りをすると、コーンと気持ちのいい音と共に木が少しだけ切られていく。
3度ほど繰り返すと、メキメキメキと木が倒れていった。ポーション作りの時と同じミニゲームみたいだ。こういうのはけっこー好きなので次々と切っていく事にする。
「何本位あればいいのかな?」
『最低でも30本で、あればあるほど良いといってるのです』
僕の質問にララがザギゥーさんに聞いて答えてくれる。とりあえず50本も切ればいいかな。どうやらこの辺の木は切っちゃって構わないみたいだし、せっかくだからやってみよー。
木の前に立ちロックオン。タイミングで横斬り×3。バキバキバッターン。
次の木の前に立ちロックオン。タイミングで横斬り×4。ありゃミスった。バキバキバッターン。
ふむ、けっこー夢中になるなこれ。癖になるというか何と言うか………。よし次、4本目。
『あの……マスター?』
「ん、なに?ララ」
10本目の木を倒したところでララが声を掛けてきた。いかんいかん、つい夢中になって集中してしまった。
『そろそろサキさまの様子を見てきた方がいいと思うのです』
「あ」
すっかり忘れてた。壁の時計を見ると10時23分となっている。2時間近くゲームに夢中になっていた。いやーいかんいかん。
「ありがとララ。教えてくれて。ちょっとサキちゃんの様子を見てくるから」
そう言ってソファーから立ち上がり姉の様子を見に行こうとすると、ララが引き止めてきた。
『マスター。木を切るのはウリスケさんと一緒にやるのでオートアクションプレイを設定してなのです』
んーそうだな。様子を見るだけだから問題ないと思うけど、ララがそう言うならその通りにしてみようか。え?ウリスケも木を切るのか……ま、いっか。
ロックオン、タイミングを見て横斬り×3,バキバキバッターン。設定終了。そいで起動っとボチ。
“ヤマト”が僕が設定した通りに動き、木を切る。よし、大丈夫みたいだ。
「じゃ、ちょっと見てくるね」
『はいなのです』
『グッグ―――ッ』
コントローラーとヘッドセットをテーブルに置いて姉の寝てる部屋へと向かう。コーン。コーン。コーン。バキバキバッターンと音が聞こえてくる。
さて、姉はまだ寝てるだろうか………。ドアをそっと開けて中へと入る。
*
モフモフはさいこーだ。ラビタンズのこどもたちがオレにまとわりついてスヤスヤとねむっている。
なぜかはわからないが、このかんしょくはオレをなんともいえないきもちにさせる。
オレのそうしゃもこちらをみながらぼそりと“なんてモフモフ”とつぶやいていたほどだ。
うたげもとてもたのしいものだった。
そうしゃのこうどうをただみてるだけだとおもっていたが、だされたりょうりのかずかずは、とてもおいしいものだった。
ワイルラビットのまるやきやホーンラビットのからあげは、あふれでるにくじるとかみごたえのいいにくとパリパリのかわが、くちのなかでおどりだし、ことばにいいあらわせないうまさだった。
ひょうめんがサクリとしてなかはほどよいやわらかさのにくと、なかのチーズのふうみがオレのきぶんをわきたたせていく。
そのほかのりょうりもおいしく、ラビタンズのよきょうはどれもたのしめて、しあわせなひとときであった。
そのあとすおさのあとについておくまでいくと、きぎにかこまれたあきちにとうちゃくする。
オレたちのいえをつくるから、きをきってくれといわれる。
オレはきのまえにたって、おのできをきりはじめる。
よこにたてながのパワーバーがあらわれてタイミングをはかりながらおのをふるう。
あーすこしはやい。こんどはおそい。うむ、バッチリだ。そうするときがバキバキバッターンとたおれていく。
そのきをすうにんのラビタンズがヒョイとかかえてあきちのほうへもっていく。けっこうちからもちだ。
10ぽんのきをたおすと、あいぼうがそうしゅになにやらはなしかける。そうしゅは「あ」とまのぬけたこえをあげて、どこかにいこうとするのをあいぼうがとめて、オートアクションプレイできをきることをていあんする。
そのとおりにそうしゃがせっていをしてオレはうごけるようになった。よし!
あきちのはんたいがわで、ドガーンバキバキドーンとおとがひびく。
おそらくあのウリスケというあかいのがきをたおしているのだろう。
オレもまけていられない。タイミングをあわせておのをふるう。
オレのしこうがかそくしていく。
*
部屋に入ると姉の微かな寝息が聞こえてくる。時折りくぺーと鼻が詰まった様な音と、苦しそうな呻き声がしているが、特に問題はなさそうだ。
額のジェルシートを取り替えてしばらく様子を見ていると、薄目を開けてこっちをボーと見てくる。
「……ギダくん」
「気分はどう?まだ辛い?」
「あ゛だ〜〜ぢょっど〜〜」
ぺふぺふ鼻を鳴らしながら答える姉。病気に罹ることは罹るのだが免疫というか抗体というか、1〜2日でケロリといつも治っているので、今日も多分そうなのだろうと思う。
それでも僕は姉を甘やかす。それが僕と姉の関係というかセオリーなのだ。
「お昼に何か食べたいものある?」
もう11時になるし、薬を飲む為にも食事は取らないといけない。リクエストを聞いて見るとほへーっと姉が答える。
「え〜ど、ろんべーのいつえうろんがい〜」
何といきなりインスタントものとは……。姉の日頃の食生活が垣間見えるセリフだ。
「……わかった。出来るまでもうちょっと寝ててねサキちゃん」
「ん゛~~~~~~~」
ガフ~と言いながら眠りに落ちる姉を見て、ふーと息をつく。うどんは買ってきたがど〇べーはさすがに予想していなかったので、結局買い出しに行かざるを得なくなった。
あのカツオと昆布の出汁の効いたスープの旨さは、僕のなんちゃって料理では敵わない。まんま食べさせる訳には行かないから、ひと工夫は必要だろう。
スーパーも開店してるだろうし、ちょいと行って来るか。
そっと部屋を出て、リビングへと向かう。画面ではコーンコーンとバキバキバッターンが音が重なって聞こえる。いったい何なんだ?
テレビ画面を見てみると、リズミカルに木を切り倒す“ヤマト”とその向こう側で木の根元に頭突きをして木を倒しているウリスケの姿があった。そして空き地には、山と積まれた木材がいくつも置かれラビタンズがそれを運搬している。
僕は慌ててヘッドセットを掴んでララに聞いてみる。
「ララ!一体どうしたんだ?拙くないの?これ」
すかさずバストアップ画面にララが出てくる。
『あ、マスター。大丈夫なのです。問題ないのです、むしろ大喜びされてるのです』
え、そうなの?
『ラビタンズの皆様は力持ちなのですが、木を切るのが苦手なのでこっちの開拓が出来てなかったのです』
あー、渡りに船ってとこか。まぁ拙い事にならなきゃいいかな。
「いったい何本の木を切ったんだ?」
『……えーと……120本、あ、今122本になりました』
「………」
30分間席を外してただけなのに、そんなに大量に木を切るとは言葉にならないとはこのことだ。
とりあえずオートアクションプレイを解除する。小市民な僕は事が大きくなるとビビってしまうのだ。そこに何故かサムズアップをする“ヤマト”と右前足をシュタッと上げるウリスケが目に入った。え?もう1度見直すが“ヤマト”は立っているだけだ。僕の見間違いか……。まぁ、いっか。
ララに余った木材はそっちで利用してくれるように通訳を頼む。
『日が昇るのと沈むのが5回繰り返された頃迄に家を建てておくとザギゥーさんが言ってるのです』
そんな言葉がララから返ってくる。日が昇って沈むを5回ってこ事は、リアルタイムで2日半後ってことか。周りの建物を見てもそれ程大きくはならないと思うけど、そんな短期間で出来るもんなのだろうか?ま〜ゲームだからと言われればそれまでなんだけども。
とりあえず買い物に行くので、いったんログアウトしなきゃいけない。ここもセーフティゾーンというなら出来るのかもと思ったのでララに聞いてみる。
「ララ、ここでログアウトって出来るんだよね?」
『はいなのです。ただ試してみたい事があるのでお手伝いをお願いなのです』
「手伝い?」
『はい、オートアクションプレイで街まで帰れるか試したいのです。幸いこの辺りのモンスターはララとウリスケさんで倒せるので問題ないのです』
んー、そんなことが出来るのかは分からんけど、姉と組んで何やらやってるみたいだから、これもテストプレーの一貫ということにしておこう。
『ザギゥーさん、皆さん、ありがとうなのです。また来るのです』
「お世話になりました」
『グッグ――――ッ』
『モニューモニュニュ』
門の前で挨拶を交わして、僕らはラビタンズ達に見送られながらこの地を後にした。
(ー『ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます




