244.どこにでもいるって人間は、ここにもいる
大変遅くなってしまい申し訳ありません<(_ _)>
前回のお話
シロアリってゴ〇の仲間なんだって
そんな事を思い返していると
エラそうなエルフが突っかかって来た
おおぅ。
まさに凛という表現が相応しい、そんな声音に傲慢エルフはピクリと動きを止める。
その止めた状態でゴルフ野郎は声の主へと顔を向け不遜な態度で声を掛ける。
「エイル………巫女様っ!?なぜあなたがここにっ!」
言葉とは裏腹に慌てて剣を納めて膝をつき頭を垂れるゴルフ野郎。
「この様な事態であれば私が出向くのは当然の事。それより何故あなたは星霊様の加護を戴いた方に剣を振るうのです?」
年の頃は10代前半。中学生ぐらいで銀に輝く腰まで伸びた煌びやかな髪と、濃い新緑の様な碧の瞳。
着ているものは、白を基調とした平安時代にあった狩衣の様な出で立ち。
ただしその姿とは真逆に、こちらに見せる雰囲気は年経た人間が見せるそのモノの様に感じる。
「し、しかしこの者がこの戦いの主導を担っているのです!この様な劣等種がっ!!」
………うーん。どの道この手の輩は、考えを改める事って無いとは分かっているものの、それが僕達に関わって来るとなると、やはり眉間に皺を寄せてしまうものがあったりする。
言語は理解できるのに話が通じないって事は、現実においてもままある。
同じ人間であるのに、本当に言葉が通じないってやつ。
この手の人間に対してできる事は、相対する事なくすり抜ける事………何だけど。
時にはままならぬこともあったりするのだ。
こういう場合はてってー的に敵対するのみ!これは姉から教えられた事だ。
まさに姉らしい。そう、姉らしい教えだ。
ふん、こーなったらやったる。
そんな覚悟を決めて、ざっと一歩踏み出すと、巫女様と呼ばれた少女がゴルフ野郎を叱責した。
「お・だ・ま・り・な・さ・いっっ!!」
「っ………ひ」
カカっと目を見開きゴルフ野郎を威圧する巫女様。
………ほんと、女の人?って怖い人多いよね〜。(おっと失言)
パないです、巫女様。
「―――お待ちを、エイル様」
今まさにお説教の時間が始まろうとしたその時、戦闘中の群れの中から一人の男性がやって来て巫女様へと声を掛け止め立てる。
壮年という風体の、でもその身体は弛みも緩みもない均整のとれたもの。
うん、迫力ありますなぁ。背後からゴゴゴ………って効果文字が見えた気がした。(気がしただけだ)
「この戦闘の最中、何をやっておいでです」
「聞いて下さいっ近衛護長オ・ズワースっ!」
「何か、騎士オ・イゲン」
「実は――――」
膝付き頭を垂れていたゴルフ野郎が、これがチャンスとばかりにその壮年エルフへと嘘と虚言と妄言を吐き出した。
そしてその壮年エルフはそれを聞き、僕を見て口を開く。
「ふむ、我としては騎士オ・イゲンの言は正しきものと考慮するものだ。それとも―――」
………いやーん。壮年エルフもゴルフ野郎と同類かい。全くほんとにいや〜んな感じだ。
とは言え、こっちとしては戦闘の権利を譲りたくても譲る事が出来ない現在(もう譲る気もないが)、僕にはどうする事も出来ない状況ってだけの話なのだ。
さっき迄は。
だったら僕の答えは一つ。
売られた喧嘩はきっちり買う。
別に人を見下し人を蔑むなんてのは、よくある話だ。
こんな奴等を戦闘に加えてなるものか。
こんな奴等に主導権を握らせて堪るか。
僕がそんな覚悟を決め、さらに一歩踏み出そうとした時、頭上からウリスケとルリが降りて来て僕へと着地する。
「ぐぼっ」
「グッ!」
「チャ!」
引っ付いてきた勢いを何とか殺して倒れるのを防ぐ。………はー、しゃーないなぁ2人共。
「ウリスケさん達が921体、そちらは75体なのです。ウリスケさん達のあっとー的な勝利なのです。“主導権を寄こせ”なのです?馬鹿言うななのですっ!!」
空気を読まない(多分わざと)様子で、ララがそうドヤ顔で言いのける。
それでも近衛護長とやらの認識と態度は変わらなかった。
「それはそちらの従魔の力が優れているというだけで、その主が優れているとは限らない。であるならば――――」
どうやらこの壮年エルフは、僕達にケンカを売っているようだ。へー、ほー!
であるならば、こちらはいい値で買うだけだ。
けど僕がそんな思いに至った時、空間がピリピリと振動を始めた。
ええ………。まだなんかあるん?
ゴゴゴゴって言う微細なその振動に僕を含めた皆が、その表情を険しくして周囲を見回す。
やがてその地響きが収まり、しばらくするとメキメキという何かが砕ける音が遠くから聞こえて来る
「貴様―――――っ!今すぐ権利を俺に寄こせええッッッ!!」
「下郎っ!速やかに騎士オ・イゲンに権利を渡すがいい!」
周囲の変化に気が急いたのか焦る様に騒ぎ立てる2人の輩へどう応じるべきか少しばかり考えていると、少女の怜悧な声が響いた。
「“バウム・デア・バインド!”」
「なっ!?」
「はっ!?」
その巫女様の呪文に喧しかった2人が地面あら出てきた樹の蔦にグルグルと絡め巻き付かれバタリと倒れた。
「ぶっ」
「すまきさんなのです」
「グッ!」
「チャア?」
ララ達は相も変わらずで、じたばたと簀巻きにされた2人を眺めてその姿をそう評する。いや、いーんだけど。
そんで僕はと言えば、さっきの地響きの元を見ていた。
もうね。どうにもいや〜んな予感(確定)しかしないんですが。
そもそもの話、多人数で事に当たるものが、これだけで済ます訳がないって話だ。
「あなた達“オ”が一族がこうも愚かであろうとは、ほとほと呆れ返りました」
その呆れた口調とは真逆に、ゴルフ野郎を見やる視線は冷たく鋭い。
「そもそもこのような事態になるまで―――ズワース。近衛護長たるあなたが気付かなかったというのは極めて問題であると言えよう。この方々が気付かなければ星霊大樹様の御身が朽ちていた怖れもあったのだぞ」
「………っ!」
巫女様のその言葉に壮年エルフは言葉なく目を逸らす。
………穴をララ達が開けたのは不可抗力だったりするんだけど、………まぁここはらっきーって事で黙する事にしとこう。
「な、何故この様な大穴を開けた咎人を庇うのですか!何より“オ”が一族にこの様な事をしてタダで済むとお思いかっ!」
うわぁ………この状況をみずに簀巻きにされてるゴルフ野郎が、じたばた身体をよじりながら巫女さんを見上げて言い放つ。
「愚物が。ズワースよ、“オ”が一族はこれ程までに眼が濁り切ってしまったのか。これほどまでに血を重んじるようになったのか」
それは問い掛けというよりも、断罪の言葉の様に僕には聞こえた。
「…………」
「だまれっ!!我等のお陰で巫女に成り得た分際で!貴様こそ身のほ―――」「馬鹿も―――」
“にしゃらいらね”
ゴルフ野郎が巫女様の呟きに触発され、引き下がる事なくさらにじたばた芋虫のように激しく身体を蠢かせ巫女様を罵倒する。
それを嗜めようと壮年エルフが声を上げた時、またまた今度は2条の雷光が降り落ちた。
「があっ、〇X□φ|〜)&&$#)(’ぇっっ!!」
「づあっ、っっっっっっ――――………………」
簀巻きさん2人は黒焦げさんになっていた。
「じゃすとみーとなのです」
「グッ!」
「チャチャ!」
「………おぅふ」
さっきの雷光は脅しの意味かゴルフの手前に落ちたんだけど、今回のは思いっきり2人に直撃したのだ。
そしてステラちゃんの捨て台詞。
言葉の意味はさっぱりだけど、その冷たさが思いっきりこもったそれにはさすがにビビってしまった。
ステラちゃん、こわっ!
ただその威力は致命傷という程ではなく、白目を剥いて口から泡を吹くぐらいであった。………あれ、それってかなり酷くね?
「今のは星霊大樹様?何と仰ったのか」
右を見て左を見て上を見てと、忙しなく首を巡らせる巫女様。
「“お前達はいらない”と言ったのです」
ララがその呟きの様な問いにドヤ顔を見せて答える。
その答えにゴルフと壮年エルフを凝視して得心する巫女さん。
「………なる程、確かに。この二人からエルフの加護が無くなっている」
ん?おんやまぁ。この御仁鑑定スキルとかあるのか、2人を眇め見て言葉少なに溜め息を吐きそんな事を口から漏らす。(してしまう)
ってか、髪の色がイヤ〜ンな感じになってる。(白と黒のアバンギャルド的な?)
「な、馬鹿なっ!そんな訳があるかぁあっ!似非巫女がああっ!!」
あれ程の雷撃を食らって意識を取り戻すゴルフ野郎。でも言ってる事は最低だ。
………本っ当、この手の人間ってのは真に痛い目に合わないと理解できないんだなぁと、ゴルフ野郎を見下ろして息をひとつ吐く。
そして巫女様のゴルフ野郎への対応は、冷徹と言っていいものであった。
「オ………いや、イゲン。それとズワースよ。その髪を見るがいい。もうそなた達はエルフたる資格を失った」
「っ!?………な、な、な、なっ!?」
「………ありえぬ!オが一族たる私が、資格を失うなど!」
ようやく雷撃から目覚めた壮年エルフが、自身の髪を手に取り震えながら言葉を漏らす。
「事実だ。自覚せよ。己が傲慢さが招いた結果であると」
「………………」
「ふっざけるな!高邁なる私が、わたしがそんな筈がある訳が―――ぐぶぉっあがびばっ!」
「たつまきせんぷー………」
蔦に縛られたゴルフが事実を認めず喚き暴れ騒ぎだしたところへ、ウリスケがすっ飛んで行きその顎へとオーバーヘッドキックをかまして突き出たその顎にギュルルンと回転を掛けた蹴りを命中させ気絶させたのだ。そしてさらに追撃。
「グ―ッ!グッグッグッ!!」
シュタっと2本足で着地したウリスケは前脚を組んで鼻息あらく声を上げる。
「“ばーばーうるさいのだ。マスターへの罵詈雑言は万死に値するのだ!”とウリスケさんが言ってるのです」
………まぁ確かに喧しかったし、仕方ないとも考える。
「………何故なり損ねへ指示を出しただけで、私が加護を失わなければならぬのだ」
白と黒のまだらの髪へと変化してしまった壮年エルフが、誰に聞かせるわけでもなくボソリと言葉を漏らす。
その言葉を耳にした巫女様が、呆れたように言葉を返す。
「あなたほどの人間が分からないのですか。この方に星霊大樹様の加護が与えられている事を」
「え?あ、ああぁ…………」
巫女様の言葉に訝しむように僕を見た壮年エルフは、驚きの表情を一瞬うかべ納得した様に肩を落とし俯いた。
え?僕になんかあるん!?少しばかり慌てて僕は手や身体を見回すけど、特に何か変わったところは見受けられない。
そんな僕の姿を見た巫女さんは、微笑みを浮かべて僕へと話しかけて来た。
「あなた様には分からないかもしれませんが、私達星霊大樹に仕えるエルフ一族の者にはその加護の力を見る事が出来るのです」
えっ?かごっ?何したんっステラちゃんってばっ!!
僕がステラちゃんへ心の内で叫んでいると、耳元へやって来たララが衝撃の事実を伝えて来た。
「マスターの称号に【星霊大樹の加護】というのが増えてるのです」
「え、まじ?」
「マジなのです」
おそらくはステータスを見る迄もなく、そんな称号はあるんだろうって事は理解した。………うん、あるんだろうね。
ララの断言じみた言葉に肩を落としていると、巫女様が僕に跪き話しかけて来る。
「オが一族の者が大変無礼な振る舞い。まこと申し訳ありませんでした。あなた様のお陰で星霊大樹様に何事もなく済みましたこと感謝に堪えません」
「………え?」
巫女様がまるで事が終わった感じで話して来てるけど、この微震動に気付いてないんだろうか。
これって完全にボス戦あるって予兆だ。
さて、どうやって話をすればいいのやら………。
「まだなのです。戦いはこれからなのです!大っきいのが来るので注意してなのです!
「へっ!?」
ララがいきなり週刊漫画の10週打ち切りエンドの最後の台詞を言い出すと、巫女様が変な声を上げる。
………ララ狙ってたよね、これ。
えーと、じゃあ僕が言うべき事は、これだけかな。
「皆さんの参戦を認めます。奴等に対して最大限の力をもって対してください。指揮は巫女様、あなたにお願いします。僕達は遊撃として戦いますので」
そもそも僕に人を指揮して戦わせるなんて事できやしなのだ。
餅は餅屋に任せるのが得策って事である。
「えーと、まだ戦いは終わっていない―――という事ですか?」
立ち上がった巫女様が可愛く首を傾げて聞いて来る。
いやいや、ここからが本番だっていう事なんだけど、………本当に分かってないのか?
僕がそんな事を疑問に思っていると、さっき迄あった振動がピタリと鳴り止んだ。
「来るのです!」
「グッ!」
「チャッ!!」
「来る?」
ララ達の言葉の後に、地面が突然激しく揺れ地響きが巻き起こりバキャリと地下からそれらが地面を砕いて現れて来る。
「なっ!あれはッッ!?」
ドガドガガアァァン!!と土や岩をまき散らしながら、3体のアレが目の前に出現した。
「ひ……いやぁあぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!」
僕は思わず両手を頬に当て叫んでしまう。
だって目の前には、全長が大型バスを超える大きさのシロアリがその体躯をくゆらせながら現れたのだから。
誰だって声上げちゃうよねっ!ねっ!!
(-「-)ゝお読みいただき嬉しゅうございます
長い間空けたにもかかわらずブクマして下さる方に感謝を!<(_ _)>
評価Pt感謝です!(T△T)ゞ




