241.やっとゴール………じゃないだと!?
ほんっとうに、遅くなりました <(_ _)>
とにかくまぁ、いきなりとは言え始まったクエストではあったんだけど、なんとも面倒極まりないものだった。
アトリの指示に従いながら枝や幹をあちらこちらへ駆け巡り飛び回りながら、舞い降りて来る葉っぱを手に入れさらに落ちて来る雫を必死になってキャッチして集め、そして苦しみ悶える欠片さんを助けていく。
それぞれ、1pt、10pt、30pt、100ptの星霊の欠片さんがいたのだったりした。
ptで欠片さんの大きさが小さくなるとか、正直バカかと思った。(他に300ptとかあったけど、葉っぱ裏で親指大の欠片さんが悶えてるとか見つけられないですがな!アトリのおかげで見つけられたは僥倖と言うしかないと思う)
まぁお約束っちゃお約束ですな。
そしてそれだけで済まないってのが、ゲームって事だったりする。
ええ、ええっ!襲って来るんよっ!モンスターが!!
『ギギィッ!カ――――――ッ!!』
ひぃい〜〜〜………っ!
虫ってのは現実ではいくら大きくても、手の平の大きさだから問題なく対処できるんだけど、1mを越えてしまうとさすがにビビってしまったりするのもだ。
まさしくゲームらしいと言えるけど………ねぇ。
少しだけ遠い目をしつつ、上空からやって来るモンスターへ弓を構えすぐさま矢を放つ。
『………カッ!?カカ〜〜〜〜〜〜ッ』
眉間というか大っきな目の間に屋が深々と突き刺さったトンボのモンスターは、僕達の足元へ落ちて来る事なく幹の根元へと流れて行ってしまった。(これも落ちるっていうんだろうか?)
どうやら重力に関しては、この幹の範囲だけで上空の方は影響されないのかもしれない。
そんなこんなで飛んで来るモンスターや枝葉に隠れて襲って来るモンスターを倒しながら、アトリのナビで幹を行ったり来たり跳んだり跳ねたりしながら、欠片さんを助けつつ天辺へと進んで行ったのだった。
しばらく進んでいると、幹の先で鎧をを装備した2人のエルフが立っているのが見えてきた。
「マスタ。ごーる」
「………だね。はぁ………結局フルコンプできなかったかぁ〜……」
アトリのサポートのおかげで、どうにかこうにかここまで集めたもののどうやら取りこぼしがあったみたいで、残り3Ptを集める事が出来なかったのだ。
「むねん」
アトリが悔し気に頭の上で言葉を漏らす。
さすがに初手からフルコンプってのは難しいんだと思う。
ましてやモニター越しでないVRでなら、なおさらである。
「仕方ないよ。アトリのおかげでここまで集められたんだから、そっちの方がありがたいんだからさ」
そう。本来ならばこんなイベントなんて見つけられなかったんだから、どちらかと言えばそっちの方がラッキーって言っていいものなのだ。
などとその時までは思っていましたよ。ええ………。
「はんっ!ようやく最後の1人が来たか。遅いってーの。クソがっ!」
僕達の姿を見たエルフ兵士が、吐き捨てるように言い放つ。
うっわ〜………口汚いなぁ。
「まぁ落ち着け、仕方ないだろう。しょせん彼は変異種なのだ。我々純血種と違ってあまりにも劣る存在なのだ。少しばかりは寛容になってもいいだろうさ」
「………はっ、そうだなっ!その通りだっ!!」
僕の存在を無視して2人で話している。………なんだかな〜。
相方に同意しながら、蔑んだ眼をこちらへと向けて来る。
「貴様で最後だ。さっさと中へと入るがいい。すでに試練を終えた者達が歓迎の宴に出ているだろうよ」
「……………では、失礼します」
そんな言葉を聞きながら、僕達はその場を立ち去る。
………まぁあっ、ねぇっ!確かにあちらこちらへと行きながら移動してきたせいで遅くなったのの事実だ。
けどこうもあからさまに吐き捨てるような言葉を耳にすると、憤るよりも凹みますがな。
「ち、○×▽◇※□っ!□■っあ!!」
アトリさんや、言葉が汚いです。………でもまぁ、僕も寸前に思った事だけどね。
「ありがと、アトリ。でも、こんな奴の戯言なんか聞き流せばいーんだよ。僕達のとってはただそーいう人間って事でさ」
僕は振りむきながらエルフの兵士の顔を眇め見て、アトリへと伝える。
そう。こんなNPCの言葉なんか心に響く事はない。
現実と同じだ。頑迷でひたすら自身が正しいと勘違いする人間は、どこにでもいたりするのだ。
なればこそ、そんな存在に対して、いちいち心を乱されるなんて馬鹿らしいって話である。
“けっ!”とか心の中で思いながら表面上は笑顔でエルフ兵士へと応じて、その場を過ぎ去る。
僕達が自分等の言葉に反応しなかった事に訝しみながら、首を傾げるのを横目に進む。(うん。どこにでもいるんだよね、自分の行為に何がしかの反発を期待してる輩ってのはね。正直バカじゃね?とも思うけどね)
まぁ、そんな僕達に対しこの後関わる事のない人間の事なんて、実際ほんとうに!ほんっと〜にどうでもいい話なのだ。
だって人間生きてれば、必ず何がしかで傷付く事があるものだ。
それは物理でも、精神―――いや精心かな。でもきっと同じ事なのだ。
人を傷つけ悦び、人を貶めてさらに悦に入る。
本っ当!人ってのはしょーもない存在なのだと思う。
なのに親しく仲睦むモノに対しては情を注ぐ。(この場合“情”であって“情愛”ではないのだ)
だからこそ、ある意味それ以外の他者に対して排他的な行動を来たしてしまう。(と僕はいつも思っていたりするのだ)
人によってはそれが正義だったり義憤だったり、或いは何となくもしくは面白いからという理由なのだ。
ほんっと〜にしょーもない人間ってのは。(もちろんも僕自身も含めてだ)
「なんじゃ、こりゃ……」
エルフ兵士達が立っていた所は確かに星霊大樹の幹の上だった。
でも、通り過ぎた後に植物の蔦で出来た囲いを通り抜けると、試練のクリアとSEと共に周囲が白に包まれた後別の場所へと移動していたのだった。
思わず声を上げたとしても仕方ないと思う。
「なんじゃ、こりゃ………」
はい。この辺はお約束って事ですな。(2回言うのって)
そう。目の前に広がっていたのは、どこぞのお城か思うような大広間であったのだ。
その大広間には数多のテーブルが置かれていて、そこにはありとあらゆる料理や飲み物が並べられており、それぞれ試練を終えたPC達が思い思いに料理や飲み物を手に談笑していた。
僕達もご相伴にあずかろうと、テーブルへと進み料理を手に取る。
アトリはご機嫌でテーブルへと飛び乗ると、料理を堪能し始める。
そのテーブルには数人にPCがいて、言葉を交わしていた。
彼等のその会話を聞いていると、思わずあんれぇ?と首を傾げてしまった。
『ったくよー。負けたかよ。つーかぁ、あそこでトラップとかありえなくなくね?』
『はっはっは。俺、事前にダチから聞いてたんよ。あっこはそのまま進むと時間かかっちゃうぜ!ってよ』
『ええっ?マジかよ!………言〜え〜よ〜、はぁ………』
『あっはっはぁ〜〜っ!いう訳ね―じゃん。つーか情弱かよ、おめ〜』
『っせ!………まぁ、報奨はけっこー良かったからな。んで?おめーは何手にしんたん?』
『へっへっへ〜〜。じっ、つっ、はぁ〜〜〜〜』
『もったいぶん………。えっ!?それ、まじかよっ!』
眉を顰めた相手に耳打ちすると、その相手は目を剥き驚きを現す。
つい耳をそば立ててしまったけど、よく考えてみれば僕的にはどーでもいいって話だった。
「僕達も食べ………食べてるか。ん、アトリ?」
「………っ!ますた、あっち!!」
「ほぇ、えっ!?なに?アトリっ!?」
PCの会話を聞いていた僕はアトリに声を掛けるものの、すでに料理を堪能してたアトリがいきなり僕に声を掛けて飛び立った。
その姿に僕は慌ててアトリを追いかける。
体育館の様な広さの大広間から飛び出し、艶めいた白亜の廊下をひたすら真っ直ぐに進む。
キラン。キララン!
すると目の前になんともファンタジーっぽい光の珠が現れる。それは僕達に気付くと光を増して流れ星の様に尾を引きながら飛んで行く。
「は?」
「ますた、はりぃあ!」
いつの間にか僕の頭に飛び乗ったアトリが急かすように頭を突いてくる。
僕はアトリに言われるまま、光の粒子を追いかける。
んー………ほんと、僕だけ別のゲームやってるような気がして来た。
いやいや待て待て。この手のイベント?はこちらの都合も考えず進んだりするんだけど………僕はこの状況に戸惑ってしまう。
よく考えてみれば確かに何かおかしいのだ。
ゲーム的な試練クリアの知らせもないし、PC達が話していたクリア報酬もない。
或いは試練が終わってない?って事はさすがにないよね?
とは言えアトリの指示に従い、光の尾をたなびかせるそれを走って追いかける事にする。
「………え〜、これは………」
まるでこちらの動きを見透かす様に、全力で白亜の廊下を走りながら光の珠を追いかける。
そして到着したそこは、星霊大樹の天辺だった。(と思う)
「まじか………」
「ますた、まじ」
「ですよねぇ」
白亜の廊下だったところはいつの間にか星霊大樹の幹へといつの間にか変わっていて、光の粒子はでっかい星の上で回転しながら漂っていた。
はぁ、と息を吐きながら僕がそのでっかい星へと近づくと周囲全体がぱぱぁっと光を放った。まぶしっ!
「うわっ!?」
と同時に足元に魔法陣が現れ広がると、僕達は下へと落っことされたのだった。(またかー………)
その瞬間あの時の事を思い出して思わず身体を強張らせ目を瞑ってしまったものの、闇は感じずに瞼には光が差していた。
恐る恐る目を開けると、周囲には光が満ち溢れていた。
「ほわっ!?」
まるで超高層ビルのエレベーターの様に降りる感覚はある。
眼の前に見えているのは、数多のパイプが上下へと伸び光の粒子が血液の様に上へと移動している様子だった。
「なんじゃっ!こりゃあ〜〜〜〜〜〜っ!?」
「きのなか」
思わず叫んだ僕に、アトリが何とも冷静に答えて来る。
「樹の中?」
ん?えっ!?それって星霊大樹の中って事ですかっ!?
思わずつい周りをキョロキョロと右に左に上に下へと見てしまう。
いや、おそらく中と言っても実際の中とかではなく、別のステージに移動したってとこなのかな。
とは言え、足もと不如意で(地面がないから)なんとも落ち着かない面持ちでいると、いきなり後ろから声を掛けられる。
「よっすっ!」
「よ!」
幼いと思われる少女の声に、すぐさまアトリが応じる。
僕が首だけで振り向くと、そこには僕の想像通りの幼女がいたのだった。
「へっ?ええっ!?」
この状況の中で、こんな事が起きれば多少は同様で変な声を出してもしょーがないと思う。(うん、思う!………)
「よっす!わ、スデぇラ!よろしこっ!」
「よ!アトリ、よろ!」
わ?わって我かな?
その幼女―――姿かたちは5歳児ぐらいの女の子?で、腰まで届く薄紫にキラランと輝く髪に、クルクルと色が変化する瞳で僕達へと声を掛けて来た。
それに応じる様にアトリが挨拶をする。
ん?え?あ、っと次は僕の番ですか………。そーですか。
「えー………僕はラギカサジアスっていーます。長いんでラギって呼んで下さい」
「うっす!」
「うす」
「うぅっす!」
「うす」
しゅびっと僕と言葉に右手を上げて応じる幼女。それにアトリが返すと更に幼女が返す。なんじゃこれ。
でもこの子一体何なんだろうか。
僕がこの事に首を傾げてる間も、落下は続いていたりする。
一体どうせよと言うのだろう。
などと現実逃避してると、アトリとの挨拶の応酬を終えたステラちゃん?が声を掛けて来る。
「わ、ねげさあんだせ!きでけんつぇ!」
「は?」
イッタイナニイッテルンデショー………。外国語かな?
つい視線を遠くへと向けると、アトリが翻訳をしてくれた。どうやら日本語みたいだ。え?日本語ぉ!?
「わたくしおねがいがあるのです。きいてくだしゃんせ」
微妙に歪曲させつつも、訳して来るアトリ。さすがに“しゃんせ”はないと思う。
「えっと、何かな?」
僕が話を聞く姿勢を示すと、ぱあっと表情を花開かせてまくし立てて来た。
「いんま、わさ。めっさぶねんださ!んだで、すけてくんつぇ!のんだで、ねげしま!」
………いま、私、滅茶は、何となくニュアンスで分かったけど、何が滅茶なのかはさっぱり込んだった。
「まかせ」
「だがっ!?ほだ、たのませっ!!」
僕が返答する間もなく何故かアトリが返事をすると、幼女が破顔して右手を上へと掲げてくるくる回し始める。
すると僕の身体に光がまとわり付き出して、さらに光が激しく強くなってくる。
「え?なんなの!?これっえ!!」
僕が慌てふためいている間に、ステラちゃんが笑顔で告げる。
「んだば、さきさすけでくれんのいっがら、しょですけでくんつぇ!」
「ぐはっ!」
ようやくこの子が何を言っているのか理解した。
言葉が理解できたという訳でなく、どういう類のモノかが分かったって話だ。
たぶん東北地方の方言の類なんだろう。
と思った瞬間、落下速度が上がり僕は思わず変な声を上げてしまう。
「はぇ?」
落下が収まったあと光が激しく輝きそれに目を伏せると、次の瞬間景色が一転していた。
そこは広大なフィールド。前後左右に天井に地面と全てが岩盤に覆われていた。
………ここどこですか?
「チャ!」
「!マスター!?」
「グッ!?」
「えっララ?え?ええぇっ!?」
なんでララ達がいるん!?
(-「-)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます
Orz




