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234/244

234.エルフの街へ出発します

遅く………なりましたOrz

 

 

 

「ってい」

「ヴベラッ!?」

 

 僕がマルシアさんへお断りしようとする前に、センセーのチョップがその後頭部へと振るわれ女性らしくもない声を上げる。

 

「とぅりゃ!」

「グヴェハッ!!」

 

 更にやって来た学長さんがその喉元へと抜き手を突き入れる。あれ?歌姫とか言ってたような………大丈夫なのか、あれは………。

 

「ナ、ナニヲスル!オマエラ〜〜〜ッッ!!」

 

 ゲホゲホと咳をしながら加害者達へと文句を言うマルシアさん。あ、大丈夫そうだ。(なんとなく)

 

「だまりゃい!ゼミ(うち)もんにちょっかい出すなやっ!」

「そのとーりだっ!我が校(うち)もんに何を言うんかっ!バカ者がっ!!」

 

 きゃんきゃんと子犬が吠えるように、センセーと学長さんが言い放つ。

 うちの“もん”にそこはかとなく別の意味合いがみえた気がするけど………うん、きっと気のせいだ。

 

「ン゛ン゛ッ!………タシカニブッサホーデシタ。デェスゥ〜〜〜ガ、カレェーハアナタタチノモノジャナイィ〜〜デスネッ!」

「「いんやっ!うちのもんだっっ!!」」

「……………」

 

 マルシアさんの至極当然な反駁に、2人は互いに背を預けながら手の平を前に突き出し見得を切る様にポーズをとる。

 うわぁ………息合ってやがる。

 その姿にさしものゼミ生もドン引き………してないな。

 全員がちらと見てから、やれやれって感じで作業を続けていた。あれ?僕だけなの?引いてんの。


「シ、シッカーシ、キチョウナ料理人コックマンヲコンナトコロデクスブラセルノハ、オオマチガイデッスッ!!」

 

 いや、間違ってるのはあなたですよ、とつい口に出そうになるもののその前にセンセーが高笑いをしてそれを否定した。

 本人を前にしながら、何ともな置いてきぼりだ。

 

「はっはっは〜〜〜〜っ!残念だったなシアよ!こいつは料理人じゃない。ロボ製作者クラフティアなのだっ!」

「なのだっ!」

 

 センセーが言いのけるのに追随して学長さんが便乗する。互いにビシッとポーズをとる。

 ………いつまでこの小芝居に付き合ってればいいんだろうか。

 そんでまだ小芝居はまだ続いていたりする。

 

「ナ、ナニィッ………料理人コックマンジャ、ナイッ!?」

 

 本当、誰かこれ止めてくんないかなぁ〜………。

 と、周囲まわりを見渡しても反応がない。まぁ仕方ないっちゃ仕方ないんだけど………。

 

「ハッ!?マサカ、ソノヴェリィヴェリィプリチ〜ラビッツヲツクッタノハ―――」

 

 ビシシィッ!っとマルシアさんが2体のウサロボを指差しながら、僕の方を見やる。誰か助けて………。

 

「「ふっふっふぅ〜〜〜〜っ!そのとおりっ!!」」

 

 無駄だと分かっていても、思ってしまうのが人情ってもんさ。

 

「ナラバッ!ヘイッ、ユー!ワタシニモッ―――」

「すみません。無理です」

「オゥマイゴォ〜〜〜〜〜〜〜ズッ!!」

 

 別に突っ込み体質じゃない僕だったが、マルシアさんのその言葉につい返してしまった。(いやほんと、無理だからっ)

 正直姉からの面白楽しー依頼が先にあるので、これ以上の注文は僕としては余りあるって話だ。

 

「ホッワ〜イィ!?ナンデッ?ドゥ〜シテッ?」

 

 いやいや、この状態みてみれば分かりそうなもんなんだけど、住む世界が全く全然違う御人おひとから見れば大した問題じゃないのかもしれないけど―――

 

「色々とやらなきゃいけない事がありますんで、今は注文を受け付けていないんです。申し訳ありません」

「………ッグムゥ」

 

 僕が真摯(笑)に告げて頭を下げる。

 マルシアさんは僕の言葉に押し黙った。

 どの世界でも頭を下げる行為ってのは、有無を言わせぬものがあったりする訳だ。(まぁたまにそれをいい事に要求を重ねて来るっておバカさんもいるけどね)

 どうやらマルシアさんは、そういうお方では無かったみたいだった。

 

「ナ、ナラバ、ナゼソンナジンブツガ、リョーリヲシテルノデスッ!?」

 

 諦めきれないのかマルシアさんがそんな疑問を言って来るのに対し、それに応じる様にセンセーと学長さん(ふたり)が、クルリとアンシンメトリカルに回転してずばばーんと両手を広げて答える。

 

「「わたしが頼んだからだ〜〜〜っ!はっは〜〜っっ!!」」


 

 ええぇ〜………あれぇ〜……。何なんでしょう、これぇ………。

 助けは来ず、如何ともしがたい空気の中で僕が出来る事と言えば――――

 うん、料理を作る事だけだ。

 ってな訳でゼミ生に倣うように、とりあえず3人をスルーして僕は調理場で作業する事に集中する。

 とは言ってもあとはしばらく弱火でコトコト煮つめてからカレールーを入れるだけなんだけど。あ、その前に買い出ししとこうかな。

 はっはっは〜とか、オノレ〜とか言ってるのを後ろで耳にしながら一旦ゼミ室を後にした。

 

 

 色々と惣菜トッピングを買って来てから、それ等を傍らに置いて作業を再開する。

 件の3人はいつの間にかいなくなっていて、作業場ではゼミ生達がなんやかんやとロボを前にやっているのが目に入る。

 

「さてと、やりますか」

 

 程よく煮えている寸胴鍋の具材を見ながら、鍋の分量分のカレールーをどばばっと入れていく。ここら辺は好みが別れるんだけど、今回は僕の好みって事で。

 そこからしばらくかき混ぜてルーが馴染んできたところで、母さん謹製のスパイスを入れてさらにかき混ぜていく。

 

 そうすると鍋から強烈と言うか爆発的な香りが作業場内へと漂い始める。(僕としてはそんなつもりはなかったんだけど、少しばかり認識が甘かったかもしれない)

 これから後はしばらく煮込んで時々かき混ぜていくだけなんだけど、実際問題カレーってのは香りに支配される分意識がそこに奪われてしまったりする訳だ。

 ってな訳で、作業をしていたゼミ生(にんげん)全員が、口元を緩ませて調理場こっちをガン見していたのだった。

 

「…………しまったか?」

 

 んん〜やっぱりこの匂いってのは凶悪だったりするか〜、こっちをお昼にしときゃあ良かったかもだな………。

 なので、いつの間にかやって来たこの3人も言わずもがなだ。

 

「ササザキぃ〜まだか?」

「ササザキくん。もういいんじゃないか?」

「サッキ―。オッケーデスヨネ!」

 

 誰がサッキ―だ、誰が。いるよなー、こういうなんのてらいもなく他人ひと領域テリトリーにあっさり踏み込めちゃえる人って。しかもそれが何の違和感も受けたりしないでっての。

 まぁ、と言っても羨ましくはないんだけど。

 

 チラリと炊飯器をみると、もう少々かかりそうではある。

 であれば僕が言う言葉はこれだけだったりだ。

 

「もー少々お待ちください」

「「「「「………………っ!!」」」」」

 

 いや、全員でそんな涙目で睨まれても無理ってものがあるのだ。

 なんだけど………次の材料を入れると、もっと匂いがクルんだけどなぁ………まぁいっか。

 

「……………」

 

 と思おうとしたけど、なんとも居た堪れない。あちらこちらから視線がこっちへとグサグサリと突き刺さって来る。

 ちょっとばかり背筋に汗が滴って来る。なんでがしょ?この重圧プレッシャーってば。

 いや、カレーだよ?ただのカレーだよっ!?僕がいつも作ってるのより少しだけ、いやかなり凝って(・・・)ないものだ。

 てきとーとは言わないまでも、そんなに神経を注ぎ向ける物じゃない筈なのだ。 

 

「『ふぅ〜………』」

 

 そんな中で、僕とララの溜め息がシンクロする。

 あんれ?

 僕はともかく、ララが溜め息を吐くってそんな理由ことがあるんかな?

 

「ララ、どうかしたん?」

『………いえ、マスターご自身の評価に少しばかり呆れてしまったのです』

 

 おぅふ………。どうやらララの溜め息は、この状況でなく僕に対するものだったみたいだ。

 ララの贔屓目であったとしても、僕なんてそれ程のもんじゃ無いと思うんだけど………ねぇ。

 はぁあ………人の評価ってのは、なんとも如何しがたいものだ。


 誰かがこうと決めてしまった評価ものを、勝手にそれに追随するのだ。そうに違いないと。

 それに置き去りにされた本人を無視スルーするように。

 互いが互いのその内面や外面を、乖離して判断してしまうのだ。

 結局どちらに天秤を重く見るってかの話なのだ。

 

 僕自身は他者がどうこう言おうと、自分に重きを置くという話なだけだ。

 たとえララが僕を高評価しているとしてもだ。

 きっと誰かが僕をあの目(・・・)で見る限り。

 

 そんな事を思いつつ首を振り振りしながら、それを振り切って僕は最後の仕上げに取り掛かる。

 来た時に冷蔵庫に入れておいたタッパーを取り出して、パカリとフタを開けて寸胴鍋へと全てぶっこむ。

 そして馴染むようにゴリゴリと掻き混ぜていく。

 やがて冷やされていたモノが熱を持つにつれ、その本性においを周囲へとまき散らす。

 

「「「「「「「………………っっっっ!!!!!!」」」」」」」

「What’s!?happen!!」

「くっこれはっ………!」

「な、なんと言う攻撃ちはらっ!?」

 

 ゼミ生達はともかく、この3人なんで調理場ここに陣取ってるのか。

 1人はともかく残り2人は仕事して欲しいと思うのは、僕だけなんだろか………。

 

「ササザキぃ〜〜………、これは酷いと思うぞ」

「ミートゥー!!」

「ササザキくん!これは、これはっっ!!」

 

 ………ちょ〜っと強烈すぎたかな?普段入れたりしないんだけど、こういう時ならと思って出がけにフードプロセッサで作って来たのだ。(あとで奇麗にするのが大変だけど………匂いとか)

 年配の方には少々きつくても、若人には活力をもたらすもの。

 ニンニクのすり下ろし(ペースト)だ。みんな若いしね。

 

 煮詰まってきたところで軽く味見をする。ん、いっかな。

 振り向かずでも、その視線がグサグサ僕の背中に突き刺さって来る。(いたた)

 そんな威圧に何とか堪えてると、炊飯器が出来上がりを知らせるチャイムを鳴らしてくれる。ぐっ、たいみん!

 

 寸胴鍋のコンロを弱火にしてから炊飯器のフタを開けると、ぶわわん沸き上がる湯気を躱しつつしゃもじでツヤツヤのゴハンを8等分してから掻き混ぜていく。

 うんうん、うんまいこと出来てる。しゃもじに付いたゴハンをちょいと口に入れながら自画自賛する。

 

 さてと、と視線を後ろへと向けると、全員がこちらへと注目しているのが分かってしまう。

 でも僕としてはちょっとばかりの意趣返しがあってもいーと思うのだ。

 この3人(・・)に対しては。

 

「はい、夕ゴハンが出来たんですけど、ちょっとした余興をしませんか?

「「「「「「?」」」」」」

 

 センセー達3人を筆頭に、全員が首を傾げる。

 何を今さら言ってんじゃ、お前って感じだ。

 だけどイニシアチブはこっちにあるのは、皆の表情を見れば丸分かりだったりする。

 

「ヨッキョートイウノハ、ナンデスカ?」

 

 マルシアさんがなんぞやって感じで聞いてきた。

 よしっ!食い付いてきた。くっくっくぅ、本来だったら有無を言わせずカレーを食べる事がセンセーなら出来る。

 でもマルシアさんがまっさきに声を上げた事で、その状況が確定したのだ。

 

「フーちゃん3号とジャンケンをして貰って、勝った人から食べれるって事です。さて、誰からやります?」

 

 分かっててやってる部分はある。僕としてはララにお願いしようと思ってたんだけど、ガッコ―の皆に馴染みのあるフーちゃんにお願いした方が不満が出ないと思ったからだ。(とララにそう言われた)

 という訳で―――

 

『デは、じゃんけんデガス!』

 

 急遽(出がけにお願いした)呼び出されたフーちゃん3号が、ホロウィンドウに現れる。そして不遜な態度で胸を反らしながらそう言った。

 

「フーちゃん!分かってるよなっ!!」

『もちろんデガス、センセー』

 

 互いにニヤリと笑う2人。うん、真逆ってのは、何となく僕には分かった。

 

「『最初はグー!じゃんけんポ―――ン!』」

「っ!?」

 

 ホロウィンドウに表示されたチョキと、パーを手に唖然とするセンセーをよそに勝負が続く。

 

「なっ、なななっ!?」

「はい、負けですね。次の人〜」

「私だっ!」

 

 僕が負けたセンセーを置き去りにしながら次の人へと促すと、学長さんが鼻息をふんすとさせて手を上げて来る。

 この辺りは世渡りというか如才ないっていうか、空気を読んだゼミ生(みんな)がもの言わず様子を見ている。

 もちろん学長さんの行動を前もって把握してるフーちゃんの敵ではなかった。

 

「ツッッギハ、ワッタシデェ〜〜〜スッ!!」

 

 当然のようにマルシアさんが、ゼミ生を押しのけて出て来る。

 マルシアさんに関しては不確定要素はあるものの、さすがのフーちゃんでありあっさりと勝利をものにする。

 手の平を見やりながら愕然とする3人をよそに勝負じゃんけんが続いて行った。

 

 結果、センセー達を除いて全員がフーちゃんに勝利して、センセー達に先んじて夕ゴハン(カレー)へとありついたのであった。

 

 

 

 

 

「ササザキぃ〜〜〜…………」

「センセー。日頃の行いって、大事ですよね?」

「ぐっ…………」

「おかわりをっ!」

「オカワリオネガイシマスッ!!」

 

 日頃ウサロボちゃんからのお説教(おしおき)にやられてるセンセーを余所に、やっぱり我が道を行く2人は周囲を顧みる事なく主張してきたのだった。

 

「すいませ〜〜ん。もうおわりで〜〜す」

 

 僕は空になった寸胴鍋の中を見せて、マルシアさんへと告げる。

 

「オウゥゥッ!ノォオオウゥゥッッ!!」

 

 それを見て両手で頭を抱えてのけぞるマルシアさん。

 ゼミ生達(こいつら)もけっこう強かで、よそう時にトッピングのトンカツをのせてからゴハンとカレ−を超大盛に盛って行ったのだ。(食えるんか?とも思ったけど、しっかり完食してた)

 

 この後は、後片付けと整理整頓を済ませてからアパートへと帰る事にする。

 ただマルシアさんの視線が何ともねばつく感じがあったんだけど、しょせん世界の違う人の事を考えてみてもしょーがないって話だ。

 ともあれ、今日のお仕事はこれで終了だ。

 よもや、このあと1週間の間、毎日やって来るなんて思わなかったけど………。


 アパートに帰り着き雑事などを色々と終わらせてから、座椅子に腰を掛けてHMVRDをてにする。

 今日の予定としては、カアントの街を出て従魔の杜ってのを探すんだったかな。

 ララとウリスケのLvを上げれるようにするには、そっちを優先すべきなんだろうな。(ってか他にやる事もなさ気だしなぁ………)

 ってな訳で、さっそくHMVRDを被りライドシフトする。

 

 最近気付いたんだけど、このライドシフトの時間って前より短くなってる気がする。まぁだからなんだという話なんだけど。

 ライドシフトを終えると、現実リアルとおんなじ姿勢と室内が目に入って来る。

 ………ライドシフトでVRルームに来る度に色々と小物インテリアをつけ足していくうちに、アパートのレイアウトと似たようなものにとなっていた。

 

 なのでこうなって来ると現実とVRの境界が分からなくなってきそうなので、ちょっとは変えた方がいいかもしれないと知れないかなと室内を見ならそんな事を思ったりした。

 何がいーかなーと考えてると、ララがポポンと目の前に現れる。

 

「マスター!お疲れ様だったのです!今日は大変だったのです」

 

 うん、大変だった。マルシアさんとか、マルシアさんとか、学長さんとか。(センセーは言うに及ばず)

 料理を作るのは好きだし、別に負担なんてことはない。が、やってる最中に周りでガヤガヤやられるのはさすがにちょっとばかり神経にビリリって来たりするのだ。

 それ程レパートリーもないものなので、はてさてなんて思ったりする。

 

「とりあえずマスター、ゲームにログイン(いく)前に提案があるのです」

 

 おや?ララがこんな事言いだすなんて珍しや。

 

「ん、なんかな?」

 

VRルーム(このへや)におっきな達磨さんを置くのがいーと思うのです!」

「は?」

 

 何ゆえダルマ?それもいきなり?


「はやり少しは現実リアルとの違いを現さないと、脳内が勘違いする恐れがあるのです」

 

 はへ?そうなの?どうやら現実と同じにしたのは拙かったみたいだ。全くしょーがないな僕のあたまは………。

 

「いえなのです。これはいまだ脳科学では判明できない部分なので、仕方ないところがあったりするのです」

 

 あー………僕だけじゃなくて人全般の話って訳か。ふむ、さよか。

 ん〜さすがにダルマさんはなぁ………どうなんだろ。

 ん?まてよ。いや、もうララがここにいる時点で現実との違いが出てんじゃねの?

 

「ララ。ここにララがいるって時点ことで、VRだって分かるんじゃないかな?」

 

 かな?

 それだったら、あるいはウリスケとかルリとかもVRルーム(ここ)に来てもらえればいんじゃね?おお、ナイスアイディア!か?

 

「………分かったのです。ルリさんは無理なのです。けどウリスケさんならばっちぐーなのです」

 

 はい、バッチグー出ました。ララさんや、あなた昭和の人ですか?

 というか僕の心の言葉なかを読まんで欲しいんですけど………。

 

「グッ?」

 

 ってな事を思ってると、ララがさっそくウリスケをVRルームへと帯び出した。

 

「グッグッグ――――ッ!」

「ぐふぉ!」

 

 ウリスケが僕の姿を見やると、そのままストトトっと突進。僕のお中へとぶち当たって来た。思わず僕は声を漏らす。(痛みはないけどノックバックはあったりする)

 

「グ?」

 

 僕の様子に見上げながら、ウリスケが首を傾げてる。あるいはVR(ラギ)の姿ではなく、現実キラの姿なのでって話なのかもしれない。

 そんなウリスケの姿に僕は口元を緩め、その頭をわしわしと撫でまくる。(タワシっぽくて気持ちい―)

 

「グッ!グッグッグ♪」

 

 ウリスケはそれに(>w<)って顔で喜びを表して来る。ふふ〜う、愛い奴めぇ。

 

「………マスター」

「っ…………」

 

 おっと、いけね。

 ララの突き刺すようLな視線と言葉に我に返り、ウリスケを床に置いて誤魔化す様にララへと告げる。

 

「じゃ、ログインするね」

「はいなのです。行ってらっしゃいなのです」

「グッグッグ!」


 僕はゲームパッケージを本棚から出して、それをタップしてログインする。

 

「………ふう〜」

 

 カアントの街の路地の奥でログインした僕は、人がいないことに安堵の息を吐く。

 

「マスター!」

「グッ!」

「チャ?」

「おか〜」

 

 そこにすぐ様ララ達が僕のログインに喜びの声上げる。(ララとウリスケはまぁ〜って事で)

 という訳で、とりあえず北門からエルフの目地へと向かう事にする。

 というか途中にある従魔の杜を探すのが目的なんだけど。

 

「それじゃ、行こうか」

「あ、待ってなのですマスター」

 

 アトリとルリが定位置についたところで僕が声を掛けると、ララがそれに待ったをかける。

 ん?何かあったかな。

 

「なに?ララ」

 

 僕はララに向き合い話を聞く事にする。

 

「今回マスターはレイさまの言葉によって、ララ達のレベル限定解除イベントの為のクエストをやるつもりなのです。が、その前にマスタ−の種族クエストをクリアするのが先だと思うのです」

 

 ん?種族クエスト………。ああ、そんなのがあったっけ。

 となると―――

 

「なので、先にエルフの街へ行くのです!」

「グッグッグ!」

「チャチャチャッ!」

「おらい」

 

 ララの言葉に倣うようにウリスケ達が声を上げる。

 ふむ、どの道今のところ従魔の杜の手掛かりは全くもってない今の状況だから、とりあえずやれる事をやるってのは悪くないかな。

 

「だね。それじゃあ、そういう方向で行こっか!」

「なのです!」

「グッグッグ」

「チャチャチャ!」

「れりごー」

 

 本来だったらカアントの街(ここ)で色々情報を仕入れるってとこなんだけど、どうにも注目を浴びてる今の状況をみるとあまりよろしくないと僕は感じたのだ。

 エルフの街(あっち)に行けば、エルフである僕ならばそれほど目立たずに済むだろうから、あちらで調べてればいいなないかと思ったのだ。

 

「では、出発なのです!」

「グッ!」

「チャ!」

「おらい」

 

 こうして僕達は路地を出て、“こそこそ”を駆使してカアントの街を出たのだった。

 カアントの街の北門を抜けるとそのまままっすぐ北へと街道が伸びている。

 その周囲は膝下程に伸びてる草原が向こうまで広がっている。

 

「おお〜………」

 

 相変わらずのファンタジーな光景に、思わず声を上げてしまう。

 薄くたなびく空の蒼に、地上の緑が対を為す様に彩をあたえている。

 さすがに現実では度にでも出ないとお目にかかる事が出来ない景色だ。

 街道自体は特に整備はされてないものの、剥き出しの地面は平坦で歩き易い。

 

 こうして和気あいあいと街道を進んで行くと、目の前に広葉樹や針葉樹がごちゃ混ぜになった様な森が見えて来た。(生態系どうなってんのやら)

 

「これは、すごいな………」

「グッ!」

「なのです」

「ま〜べら」

「?チャ」

 

 そう街道を真ん中に左右を見渡しても、切れ目なく森が広がっているのだ。

 僕が漏らした言葉に、ウリスケが左右を見回しながら声を上げ、ララがそれに頷く様に声を上げる。

 アトリは頭の上でパタパタと羽ばたきながら感嘆の声を上げる。

 ルリは分かってないかな。首傾げてるし。(あるいは見慣れてる、とか?)

 

「………まるで森の海だ」

 

 なんとも陳腐ではあるものの、そう表現する以外の言葉が僕にはなかったのだった。

 

「なのです。だから別名森海(もりうみ)街道とも呼ばれてるのです。さすがのだのです!マスター!」

 

 へー………樹海じゃないんだ。そーですか〜………。

 ちょっとばかりの気恥ずかしさを感じつつ、僕達はその森の中へと入って行く。

 そして入った途端、さっそく森海からの洗礼を受ける事になる。

 

 木々の間から3体のモンスターが街道へと突如飛び出してきた。

 

「ん?………これって何のモンスター?」

『『『キャロロロッロォオオッ!』』』

 

 その“し”の字に体躯を反らしたオレンジ色の細長い三角錐の、その下に4本の足が付いてる昔よくお盆の時に飾るナスとかキュウリとかの動物のオブジェ。

 目はなく、先端にある葉っぱをわっさわっさと揺らしながら、葉の下にあるギザギザの口を開きながらこちらを威嚇して来る。

 ………見た目、どう見てもこれは―――

 

「ニンジン?」

「なのです!ここ森海街道の出て来るのは食材型モンスターなのです!」

 

 野菜って………ここはネタ枠ですか?

 

 


(-「-)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

 

ブクマ感謝です!ありがとうござます! (T△T)ゞ

評価Pt感謝です!ガンガリマス! Σ(T人T) (パンパン)

(知らない間に評価方法変わってました)

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