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229.キラくんの行動を観察する その40

遅くなりました<(_ _)>風邪で寝込んでおりました

姉回です

 

 

 目的地に隣接する空港に到着すると、そのまま高速水上バス乗り場へと急ぐ、

 そこから終着点まで高速水上バスで向かい、そこからはプレイベートボートに乗りその島へと向かう。

 あれからすぐに連絡を入れた所、平坦な声音の主は「すぐに来い」と告げると通話を切ってしまった。

 ……………、

 

 これで途中で一泊と言うあたしの目論見は潰えてしまった。

 終点に着いた時には、辺りはとっぷりと日が暮れ夜の帳がおりていた。

 だけどあたしのその足取りはやや重かった。ちぇ~………。

 

 途中アヤメちゃんから連絡が入りウサロボが完成したというので、受け取りに行くとの事だったのだ。

 はやっ!速いよキラくんっ!!確かに調整自体はあらかた済んであとは外注したパーツが来たらって話だったけど。

 ………こんなに速いとは、ちょっとばかり恨みたくもなる。ちぇ~ちぇえ~~。

 そんな感じ不貞腐れながら到着口を出て、そこから個人所有の船舶係留場へと足を進める。

 そこには待ち構える様に一隻のクルーザーと燕尾服姿の老人が立っていた。

 

「お待たせしました?ギマさん」

「いいえ、時間通りでございます。お待ちしておりましたササザキ様」

 

 慇懃を絵に描いたようなその老人は、その地の主である人物の家宰であるギマさんだ。

 老人とは思えない程の服の上からも分かる引き締まった肉体に、色香を漂わせるそのかんばせ

 相変わらずのロマンスグレーっぷりだ。その手の女子が見たなら入れ食い間違いなしだろう。(もちろんあたしには全く影響ない)


 軽く挨拶を交わしてから、ギマさんを先頭にグルーザーの中へと入る。

 階段を降り半地下になってる船内へと入ると、そこは相変わらずの豪華なものであった。

 本人は華美を厭う性格らしいが、周囲の意見もあり対外的にはこの様な仕様なのだとか。

 なんとも瀟洒なソファーに腰を掛ける。フワフワでムヌンと沈み込む感覚は何とも居心地が悪い。(所詮は庶民って事か)

 

「お飲み物は如何いたしますか?」

「………コーヒーをお願いします」

 

 ギマさんがすかさずそんな事を言って来る。しばし黙考の後、定番いつものものをお願いする。

 

「畏まりました」

 

 ギマさんがその場から立ち去ると、微かにふぅと溜息を漏らす。

 さてはて、いったい何の御用なのやら。

 船内が微かに振動した後、静かに移動を開始したのを感じる。

 

「今回はご覧になられませんので?」

「………ええ、さすがに3回目ともなると慣れましたので」

 

 戻って来てコーヒーを差し出すギマさんの目が弧を描きながらそんな事を言って来るのに、あたしは辞退を願いでる。

 そう初めてこのクルーザーに乗った時、あたしははっちゃけちゃったのだ。

 実はこのクルーザー、いわゆる特注品で通常のクルーザーのカテゴリーを逸脱したものだった。

 どちらかと言うと地面効果翼機(WiG)と言った方がいい船舶ものだったからだ。

 

 船底の前方に1つ、後方に3つ。翼の先にスキー板の様な板を付けた滑空板を備えているこの船舶クルーザーの種別としては水中翼船ハイドロフォイルというものだ。

 後部に左右2基の電磁プラズマ推進器を稼働させることにより船体を浮かせ、波の抵抗を減らす事により通常の船舶では出す事の出来ない速度を出すのだ。

 

 イメージ的に言えばホバークラフトがしっくりくるかな。

 波をかき分けるのではなく、その上を滑るように進む姿はあたしの乙女心を何とも刺激したものだった。だって船体が浮くんだよっ!しかも可変V字翼とかカッチョ良過ぎっ!

 ってな訳でギマさんにお願いして前回と前々回は上部甲板に出してもらって狂喜乱舞していたりしたのだ。(さすがに3度目ともなればあたしも大人なので遠慮するものなのだ………ほんとだよ)

 

 小1時間程で船はその島へと到着する。

 その間にギマさんと今期の収支等に関する話をしておく。

 会話の合間に今回の呼び出しについてそれとなく聞いてみるものの、「申し訳ございません」という言葉が返って来るばかりだった。

 ほんっと、一体何なのやら。

 

 クルーザーに着けられたタラップを降りると、すでにいかにもな高級車があたしを待ち構えていた。

 本島の執事の1人であるギマさんの息子さん?だったと思う壮年の男性が後部座席側のドアを開けてあたしを誘う。

 それに従い車に乗り込むと助手席にギマさんが乗って運転席に執事さんが席に着くと、車は音もなくスルスルと走り始める。

 どうやらこのまま屋敷に向かうみたいだ。

 

 以前はいくつかの門を通らなきゃ辿り着けなかったので、あたしも信用を得たという事かな。

 とりあえず資料を用意しとこうとバッグを漁ると、レリィから連絡が入って来る。

 あたしはそれにホロウィンドウを出さずに、アノ(・・)眼鏡をスチャッと掛けて網膜投射の映像でレリィを確認しながら小声で話をする。

 

「どうかした?レリィ」

『あるじ様。アヤメさまより例のものについて動画が送られてきました。確認いたしますか?』

 

 この後小1時間は車に揺られるので、これ幸いとあたしは首肯する。

 

 そして後悔する。

 

 キラくんが造った(うさ)ロボットが素敵な衣装を纏い、主たる人達と戯れていた。

 くっぅ!なんって!うらめやまひいぃっ!!

 キラくんの初めての注文って事であたしも便乗したんだけど、これは想像以上の出来ものだった。

 

 あたしとしては秘書サポート役はレリィがいるし本来必要ないんだけど、キラくんのロボならば理由などなくても欲しい。そう!欲するのだ。

 眼鏡グラスに投影されてるのは全部で4体、主たる人間も4人いる。

 もちろん1人はアヤメちゃん。どっピンクの派手々々でゴスロリな衣装のウサギロボットと和気藹々?と触れ合っている。くぅっ!

 

 あと2人は確かキラくんの学校とこの学長ちゃんと教授せんせいちゃんだったか。

 ベタな執事ウサギロボットとまさに正統派トラディショナルな黒の衣装のメイドなウサギロボット。

 しかもセンセイに説教してるし、このウサギロボット()

 学長ちゃんのはまさに本当のバトラーって様相で、王道を行く感じで主と相対している。

 

 最後の1人はおそらくキラくんんが衣装を頼んだ人なんだろう。………ってか、あれってヤバくね?著作権大丈夫なんっ!?

 ………まぁ、ウサ耳はやしてるし、デフォルメされてるし………うん、きっと大丈夫か………な?

 くっ、本当ならあたしもあの中に入ってキラくんとキャッキャウフフ出来ていたものをっ!

 ちょっとだけ呼び出したおばば(・・・)に怒りを覚える。

 ぬぁにむぉくぉんぬうなとぉきぃにぃぃいい~~~~~~ぃ…………。

 思わず感情に任せてシートを握り締めてしまう。

 

 そもそもこんな風にあたし(ひと)を呼び出す人間じゃない筈なのだ。

 4体のウサギロボットと4人の主が戯れるその姿を見ながら、あたしは腑に落ちない部分とこを改めて考える。

 この車中じょうたいではあたしは手が出せないので、あたしはレリィにここ(・・)の状況を調べてもらう事にする。

 

「レ『畏まりました。あるじ様』リィ………。うん、よろ」

 

 あたしがお願いする前にレリィが返事をして来る。

 あたしがするであろう思考を推測と推論を重ねた上での返答とは思うけど、つい言っちゃいたくなるよね。エスパーか!って。

 わちゃわちゃ戯れ映像を見終わった頃、レリィが報告をして来る。ホロウィンドウの中のレリィは、ちょっと納得できないって感じの表情をしていた。

 

「どしたの?レリィ」

『………いえ、少しばかり不自然さがあったのですが、………結論から言いますと、御館様と言う方の気紛れと言う話みたいです』

 

 気紛れねぇ………。まさかあの人が?

 

『あとはその御館様の孫と言う人物が屋敷に滞在していて大変だというぐらいです………』

 

 なんとも歯切れの悪い物言いをするレリィに、あたしはすんごくヤな予感がひしひしとしてくる。

 この手の事は枚挙に暇がないので、喰い破るだけなんだけど………。

 あの人がねぇ………。

 やがて程なく車は屋敷の門を通り抜け中へと入り駐車場へと停車する。

 

「こちらでございます」

 

 ギマさんがすぐさま車を降り、先んじて案内の為に先に進む。ササザキの家みたいに細かな玉砂利が敷き詰められた駐車場もかなりの広さで、車20台は余裕で止められる広さがある。

 いまは降りたものを含めて3台だけど。

 

 あたしは玉砂利を踏みしめながらギマさんの後へとついて行く。

 3度目ではあるけど、相変わらずのその威容にあたしは胸の内で思わず突っ込みを入れてしまう。

 どこの老舗旅館かと。

 

 玄関は言うに及ばず、先に続く廊下とか完全に一般家屋を凌駕しているものだ。

 玄関で上履きに履き替え、更にギマさんの後へとあたしは続く。

 ところどころにある空港の探査装置の様な枠をくぐりようやく目的の場所へと到着する。

 側に控える女中さん?が襖を開ける。ギマさんに促され中へと入ると、すでにの主はこちらを見て泰然自若と座っていた。

 …………おぅふ。

 相も変わらず威圧がパない。真夜中を過ぎてるというのに元気な事だ。

 

 年齢は80を過ぎたくらい。一流の職人が染めあげたであろう友禅を着こなし、白髪をきっちりと後ろでお団子にしてまとめ結い上げている。

 ちんまいなりなのに迫力というか圧力と言うか、そんな目に見えないもので大きく感じてしまう。

 それがこのキフタケ島の主であり、この家の当主でもあるトヨトミオカ アレ刀自である。

 

「遅かったの、おサキ坊」

「………すみません、色々立て込んでいましたので」

 

 ちらんと流して来るその視線に、あたしはしれっと答える。

 まずは呼び出した理由を聞いとかないといけないんだけど、どう切り出したものやら。

 まずストレートに訊ねると、なんじゃ呼び出したのが気に入らんのかと拗ねる。

 かと言って話題から外すと、なんで呼び出した理由を聞かんのじゃと拗ねる。

 とかく拗ねるのだ。このおばばは。

 

 沸点が低い分、冷めるのもやたらと速いんだけど。

 まぁ3年の付き合いで分かったのはそんなとこだ。

 いぐさの芳しい香りのする畳に置いてある〇点並の分厚い座布団に座して刀自おばばと相対する。

 

 そこに年若い女中が声を掛けてから入って来て、お茶とお茶菓子と目の前に音もなく置いていく。(ほほぅ、相当鍛えられてるなぁ~)

 刀自が茶器を手に取るのに合わせてあたしもお茶を頂く事にする。うん、高そーって事しか分かんない。

 あたしが分かるのは夜中にもかかわらずすっきりとした味わいで落ち着くぐらい。お菓子もあっさりとした甘さで生菓子なのにくどさを感じない。あたしはちまちまと刻みながらそれを口にする。

 しばらく菓子を食べお茶を啜るという無言の応酬の後、刀自が口を開く。

 

「おサキ坊、うちの孫と「お断りします」―――………」

 

 あたしは刀自おばばの言葉をぶった切りながら拒否の言葉と態度を示す。いきなり本題らしい。

 後に続く言葉が、結婚であれ見合いであれ御免被る。

 この刀自の孫はろくでもない輩と判明し(わかっ)ているからだ。

 ってか、そもそもあたしにとってはそれ以前の話なんだけど。


 



(-「-)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

ブクマありがとうございます!感謝です! (T△T)ゝ

次こそ早めにこ………

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