221.12人いる
すいません、遅くなりました <(_ _)>
『マスターだいたい分かったのです。遅れてごめんなさいなのです』
飲み会のあった翌日。少しばかりカラサワに呑まされはしたものの午前様にならずに帰宅し、翌朝目が覚めた後日課をこなしてアパートに戻ると、ララが開口一番そう言って来た。
「おー。場所が分かったの?ララ」
シャワーを浴び汗を流してさっぱりした僕は、ララに聞き返す。
『いいえなのです。場所というより、そこに至るまでの道筋といった方がいいのです』
「あー………、なる程」
ララの言葉に僕は納得の声を上げる。いわゆるフラグを立てるってヤツだ。
ようは『お使いクエスト』ってので、様々な段階を踏んでいくもの。
今ならチェーンクエストっていうんだっけか。
となると次に向かうのは―――
「じゃあ、今回はカアントの街に向かうって事でいいのかな?」
『なのです。そこからエルフの街って感じなのです』
ほほう。そうなると、アレもやれちゃったりするのかな。
「もしかして種族クエストもやれたりしちゃう?」
『はいなのです。ついでと言ってはあれですけど、もちろん予定を組んでるのです』
「あとはサキちゃん達の都合かなぁ」
何となく無理だなと思っている僕がいたりする。
そもそも例の再開発の事ふったの僕だし、ゲームなんかやってる場合でもないだろう。
ララからの情報だとパッチワークさんもの凄いやり手みたいだし、居酒屋を諦めても他のとこから攻略を始めるだろうし。(よもや父さんまでもが参戦するとは思ってもみなかったけど………)
この後朝ゴハンを食べに来た姉がちょっと無理っぽいと言われたので、今回は僕一人で向かう事にする。(ソロっていっても人数はいっぱいいるけど)
ってな訳でまずはラビタンズ達に挨拶をして、それから東へと向かう事にする。
HMVRDを被り座椅子に腰を預けてライドシフト。VRル-ムからゲームへとログインする。そんでラビタンズネストへ。
「………え~……何?これ」
1日振りのラビタンズネストに入ると、なんともな光景というか見知らぬ着ぐるみの人達が広場をうろついていた。
ちびラビ達と戯れたり、ラビタンズ達と会話をしているのが僕の目に入って来る。
「マスター、全部で12人いるのです」
「12?まじっ!?」
着ぐるみといってもラバース-ツみたいにその身体にぴったりとフィットしている為、身体のラインが丸分かりでその豊満な肢体が見て取れていたりする。着ぐるみなのになんかエロい………。
「あの方たちエロエロなのです」
「グッ!」
「えろぅ」
「チャ!」
僕が感じた事をララが率先して言って来る。まぁねぇ………。
「あっ!ラギさんっ!」
そこに見知ってる着ぐるみの人が3人やって来た。
「あ。ディセリアさん」
「ちぃ~す」
「ども」
えーと、ノーべさんとオクトゥラさんが挨拶をしてくる。………気付かなかった。
あ~………もしかしなくてももしかするのかな?
「この度は私達姉妹の滞在許可をありがとうございました」
ディセリアさんがグァヴァって感じで90°上半身を下げてお礼を言って来る。
3人だけじゃなかったのか………。
でも多すぎない?12人って。まぁAIだから姉妹っていっても同型機って事なのかもだけど。
「いえいえ。気にしないでいーですよ。まぁ、ちょっとばかり驚きましたけど」
苦笑気味の僕の言葉にディセリアさんが首を傾げて、え?と口を開く。あんれ?通じてない。まぁいいや。
「それよりも、あの格好って何なんですか?」
バニースーツよりもちょっとヤバめですけど………。
「………あれはここに来る為の正式衣装。絶対厳守」
えっ………そうなの?あえ~ラビタンズネストってウサギの着ぐるみじゃないと入れない!?
「マスター、混乱しちゃダメなのです。ディセリアさんが言ってるだけなのです」
はっ!あ、そうか。さも当然のようにディセリアさんが言って来るので、一瞬そうなのかと思ってしまった。
「グゥ?」
「あら、こんにちは瓜坊さん。わたしフェブリラと言うの。よろしくね」
「グッグッグ!」
ウリスケを撫で撫でしながら、しゃがんたピンクのウサ着ぐるみの20才程の女性が挨拶をしている。
「チャチャチャッ!」
「………っ!んっ!セプティア………んんっ!!」
ルリがブルーのウサ着ぐるみの少女の胸にしがみつきぐりぐりと頭を擦りつけている。でかっ、………何がとは言わない。
2人ともコミュ力たかっ。
「ディセ」
「ディー」
僕とディセリアさんに気付いたウサ着ぐるみの人達がわらわらとやって来た。
………おおぅ。けっこークルものがありますな。
ちょっと想像してみてほしい。
ウサ着ぐるみの集団(それも女性)が、その身体のラインを露わにしながらこっちにやって来るのだから。揺れてるし。
「壮観なのです」
「え~ろ~」
言わんで下さいな。アトリさんよ。
それから12人に囲まれながら、自己紹介をされる。
ジャンヌさん、フェブリラさん、マーシュさん、この3人が大学生(2年)ほどで、アプレアさん、メインさん、ジュネさん、の3人は中学生(3年)ほど、ジューラさん、オガスティアさん、セプティアさん達が高校生(3年)って年の頃なんだけど、全員が揃ってプロポーションがいいと丸分かる着ぐるみを纏っている。(あくまでこれは僕の印象)
そんでオクトゥラさん、ノーべさん、ディセリアさん達だけは、もこもこの着ぐるみだったりする。
………この(ディセリアさん曰く)正式衣装をどうすれば変更させられるのだろうかと考えあぐねていると、ララが僕の思いをくみ取って12人へと聞いてくれる。
「あの~、その衣装は変更できないのです?」
ララのその問いに、全員が首を傾げる。
「え?これじゃないとダメって言われたんだけど………」
誰に?って分かるか。
「ディー?」「ディセ?」「ディセリアちゃん?」
なんとも剣呑な視線がディセリアさんへと向けられる。
当のディセリアさんはそれが何か?って感じで、首を傾げてる。ノーべさん、オクトゥラさんもだ。
あ゛ー………。どう言やいいのやら。
「こほん。ここはラビタンズネストというラビタンズ達の集落なのです。ですがここに入る者が同じ姿をする必要はないのです」
「………。ええっ!まじっっ!?」
オクトゥラさん、ノーべさん、ディセリアさんを除いた人達が、自身の着ぐるみを引っ張り驚いている。
とは言うものの女性物の衣服なんて持っていないし、どうすりゃいーのやら………。
「このゲームの衣服データを送信するのです。それを見てお好きな衣装に変更してなのです」
「「「え?」」」
「「「はぁ!?」」」
「「「んんっ?」」」
「「「………?」」」
似たような顔の3人が3組とも同じ言葉で声を上げる。(ここら辺はAIっぽいのかな?)
ってか、ララが用意周到しすぎる。
「はいなのです。送信完了なのです。こう指をパッチンしてメニューを開いてなのです」
ウサ着ぐるみの12人が戸惑いながらララがやって見せた様に指を鳴らすと、その眼前にホロウィンドウが現れる。
「わっ!」「ふえっ!?」「………ふぅん」
「へ~面白」「おおぅ」「あはは」
「ふむふむ」「なるなる」「これかな?」
「いらない」「う~ん………」「ありきたり」
ホロウィンドウを操作するその姿は12人12様だ。
そしてディセリアさん、オクトゥラさん、ノーべさん以外の9人はウサ着ぐるみを変更する。
少しだけ気になったので3人に聞いてみると、「これが正装で正義!」「慣れたから」「やっぱこれがいい」とのお返事。
まぁ本人が気に入ってるんならいーけどね。
そうして装備の変更が終わった9人は、そのウサ着ぐるみに隠されていたところが色々と現れ露わになっていた。
ジャンヌさん、フェブリラさん、マーシュさんは、銀髪にストレート、三つ編み、ショートのシャギーで瞳は紫紺。そしていかにもな町娘の衣服だ。(ブラウスにべストとロングスカート)
アプレアさん、メインさん、ジュネさんは明るい緑髪でロングストレ-ト、ミドルストレートに長めのライトサイドポニーで瞳は黄土色の瞳。こちらは初期の冒険者スタイル(ただしミニスカ)
最後にジューラさん、オガスティアさん、セプティアさんは、なんともな格好だ。
オレンジの髪に波打つロングソバージュ、ショートヘアーに肩までのツインテールで瞳は明るい碧色。
そしてその衣服?はチューブトップのブラの上にベストで下はショートパンツ。(色はそれぞれ違ってる)
それぞれ性格は違っているようなのに、髪色で同じ衣装を纏っているのは何とも不思議な感じがした。
そして24の瞳が僕の方へと集中する。
え?何?僕なんかやったんだろうか………。(確かにジロジロ見たてかな?)
いや、それぞれの瞳が向けてるその視線は、期待と熱望だと僕には感じられた。
ちびラビや他のラビタンズのみんなも、その様子に首を傾げている。
そして代表するようにディセリアさんが、前に進み出て話しかけて来た。
「ラギさんっ!いんやっラギ様っ!どうか私達姉妹に料理を恵んでやって下さいっ!もちろんお礼はさせていただきますぅっ!!」
「すとぉ~~~~~~っぷっ!」
ディセリアさんがそう言いながら屈伸して飛び上がろうとするのを、慌てて制止する。月面宙返り土下座はもう結構ですっ!
「了解しました。作らせてもらいます。えーと、何か希望はあります?」
「特にない。です。とにかく姉達に何か食べさせて下さい。です」
そして90°ガァバっと上半身を下げて懇願して来る。
な~んとなく背景が見えてきた気がする。
要はあれだ。料理を食べる→自慢する→皆に非難される→僕にお願いして来る。って形かな。
どうやら一番下の妹(もしくは当事者)故に、こんな役が回って来たのかもしれない。
「「「「「「「「「「「お願いしま~~~す!!」」」」」」」」」」」
後ろに控える他の11人がディセリアさん同様に頭をガバッと90°下げて言って来る。こわっ!………数は力だ。はぁ。
なんでもいいと言われると逆に困るのが料理ってヤツだけど、さてどうしたものやら。
「マスター!こういう時は焼肉なのですっ!」
相も変わらずのエスパーララが、鼻息荒くふんすと言って来た。
「焼肉かぁ。うん、いいね。焼肉バーティ―にしよっか」
「はいなのです!」「グッグッグ!」「にく~」「チャ!チャチャチャ!!」
僕がそう言うと、ララ、ウリスケ、アトリ、ルリがピョピョンと跳び上がりながら踊りを始める。く、くいしん坊共めっ!(誉め言葉)
焼肉なら切ってタレに漬けて焼くだけの、いたってシンプルなものだ。
それにラビタンズネストだと、醤油も味噌も使いたい放題だから美味しく食べられるだろう。それに―――
「皆さ~~~ん!これから焼肉パーティーをやりま~す!かまどと焼き網の設置をお願いしま~~す!!」
「にっくにく~」
「おうよ。りょうかいした!」
僕がラビタンズ達にお願いすると、ちびラビを先頭にラビタンズ達が喜色の声を上げて準備の為にわらわらと散って行く。
僕もメニューを出して、そこから食材やら調理器具やらを出していく。さて、やりますか。
「ララ」
「はいなのです。ウリスケさん、ルリさん。食器を取りに行くのです。あ、そちらの皆さんもお手伝いお願いなのです」
『はぁ~~い』
ララに言われ、その後ろを12人が付いて行く。
「おうさま~。あみぃ~~」
「おうよ。かまどに火をいれてよろしいか?」
「ありがと。うん、火入れちゃって」
僕はアトリと協力しながら肉と野菜を次々と切り分けて行った。そしてタレへと漬け込む。
「マスター、お待たせなのです」
集会所に置いてあった食器を、皆が抱えて戻って来た。
「ねぇねぇ、ラギさん。集会所の2階に泊まってもいいのかしら?一応ララさんからは許可を頂いたのだけど」
「ええ、いーですよ。ただ寝てる時にラビタンズが入って来る事があるので、それだけは気を付けて下さい」
大皿を渡してきたジャンヌさんがそんな事を聞いてきたので、頷きながら答える。
前に僕が横になっていたら、ちびラビたちが潜り込んできた事があったからだ。
こうして受け取った大皿に食材を盛っていき、さっそく焼いていく事にする。
大皿に一緒に添えているトング(木製)を使って、皆に(特に12人)に焼き方の説明をしていく。
ラビタンズ達が網に肉と野菜を載せ焼きは始めると、ディセリアさん達もそれに倣ってトングで肉を載せていく。
じゅわわ~と肉の焼ける音が響くと、「わぁあ」と言う歓声が上がる。
ララ達のレクチャーに従いながら、12人が肉や野菜を裏返していく。
次第に肉と野菜の焼ける匂いが辺りに漂ってくる。美味そ~。
「もう、食べれるのです」
「グッ!」
「お~らい」
「チャ!」
ララ達が肉と野菜の焼き上がりを伝えると、喉を鳴らしながらも恐る恐る肉と野菜を取り口へと入れる。
「うまっ!」「これが食事っ!」「ふわぁあ」「はぐはぐはぐぅ」なんていう声が食べ始めに聞こえたかと思うと、皆が黙々と肉と野菜を食べていく。
途中でパンとスープを渡すと、12人は「はふぅん」と艶めかしい声を漏らして後は無言になって口だけを動かす。
………とりあえず僕も頂きますか。
こうして12人を除いた皆でわいわい焼肉を堪能していると、ピロコリンというSEと共にホロウィンドウが12人の前に現れる。
「………料理スキルを取得した」
ディセリアさんがそう言うと、あたしも私もと他の姉妹達も声を揃えて言って来た。
………何でやねんっ!?
(-「-)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます
ブクマありがとうございます!感謝です!(T△T)ゞ
評価ptありがとうございます!ガンガリます!(きっと)(T人T)




