214.ラビタンズVSボンボンテンタクーってなんじゃこりゃっ!?
遅くなりました
いろいろ家でありまして………orz
僕達が警戒しつつ触手の様子を窺ってると、やがてクネクネと身体?を左右にくゆらせ始める。
「な、何?」
周囲の全部の触手がみんな同じ動きを始めたので、僕は思わずうろたえてしまう。だって、周りを触手に囲まれる経験なんてないのだ。
そしてその動きはまるで拍子を取るように、リズミカルに踊るように僕には見えた。それから先端の球体を隣同士で打ち合わせる。
ボォン、ボォン、ボンボンボォオン。
水面が波紋を描く様に音が重なり広がっていく。
文字通り、ボォオオンと。
やがて空気が波打つように震え、身体に振動が響いてくる。
音の波は重なり連なり波紋がうねり周囲を振るわせていく。
ボォン!ボォオン!「レッツゴー」ボォン!ボボォオン!「レッツゴーゴー」ボンボンボンボボボォオオン!!「YEAH!YEAH!YEAHHHHH!!」
音の奏でに僕達は、クラスプクラップクラスプクラップパンチアップ(右)パンチアップ(左)ハンズオンヒップからのハイブイを繰り出していた。え?あれ?
え?チア?いやいや、そんなの知らないってば!
なのに僕、ララ、ウリスケ、アトリが手を振り上げ交差させ叩きジャンプを披露しながら桟橋の端っこへと向かっていく。
自分の意志とは関係なしに動いてしまっている。ええっ!?
これって、なんですのん!?
「てやっ!」
「ぼはっ!」「へぶっ!」「グブッ!」「かは」
スパパパパ――――ンと誰かに頭を叩かれて、僕は我に返った。
は?今まで何をやってた?気づくといつの間にか桟橋の端へと移動していた。え?何これっ!?
ララとウリスケ、アトリもあれ?って感じで周囲を見回している。
「だいじょぶ?みんな。状態異常【催眠】にかかってたよ〜」
レイさんが事も無げに事も無げに平然とそんな事を言いのける。
うっ、………そっか、アレ状態異常だったのか………。
おそらくあのボンテク(以下略)の攻撃の一種なんだろう。
何とも油断も好きもない。あのボンボンはただのボンボンではなかった言う事なのだろう。(ナンノコッチャ)
「後でさっきの見せたげるね」とニンマリ笑顔でレイさんに言われる。え?なに?もしかして録ってたん?今のぉ!?
レイさんの言葉に僕は膝落ち崩れる。何この年で黒歴史とかやめて欲しいんですけどっ!?やめてっ!
ララを見るとなんか疲れた〜って感じで肩を落とし、ウリスケは大の字で俯せている。
「あんびりば」
アトリも同じくウリスケの上で俯せだ。
「チャチャ」
ルリは僕の頭の上で慰めるかのように、僕の頭をポンポンと叩いてくる。………何とも居た堪れない気分だ。
よもやこの歳で黒歴史が作られるとか………。はぁ。
で、いま現在は動きを止めた触手の様子見の再開という訳だったりする。
そー言ってもまたボンボンを打ち付けられれば、黒歴史再発の恐れがある。ボンボンやだぁ………。
僕はちらとレイさんの方を見る。
「ちら」
「あー、これには私ノータッチね。このモンス相手は手出せないのん。てへ」
ちえっ、だめかぁ~………。
あとは耳塞いでって、………無理だな。
こういう時は戦略的撤退っていうありがたき言葉もある事だし、これ一択かな。
桟橋の端っこからじりじりと後ろへ下がろうとした時、また触手がうねうねと揺れ始める。
くっ、またチアやるの?やっちゃうの!?
「マスターっ!?」
「グッ!?」
「ますた」
ララ達も半分恐慌状態に陥っている。
やっぺぇ………。
そして球体が打ち合わさ――――
「「「「「はぁああっっ!!」」」」」
サク!サクサクサクサクッ!!
その球体に何本もの銛がサクンと突き刺さり、動きを止める球体。
「「「ほえっっ!?」」」「グゥッ!?」
それを見た僕達は思わず変な声を上げてしまった。
うへぇ?銛ぃ?どこから飛んできたのぉっ!?
「おうよ!ご無事ですか?」
「おうさま!我等におまかせを!」
「やるぞっ!みなの者!」
「「「「おお―――――――ーっっ!!」」」」
一本釣りを終えていたラビタンズの皆が、戻って来て僕達の窮地を救ってくれた。
おや?なんか皆の雰囲気がガラリと変化してる。
ってか身体からなんか光が溢れ上って来ている。
「ふぉお………オーラが凄いのです」
「オーラ?」
確かに北◯の拳とか格闘ゲームなんかでよく見る効果にも見える。
「へ?どゆ事?」
あれ?なんかラビタンズがいつもと違ってる?
「マスター、ラビタンズの皆さんは進化してるのです」
「クラスアップ?ってなんだっけ?」
たしかどっかで聞いた記憶が、あっ波◯拳撃ってるよ。
「え、波◯拳って、はへぇえっっ!?」
魔法とも違う。手の平を前にして腰溜めの位置から、ラビタンズ達が収束した光の塊をに放っていた。
ドドドドンと触手ではなく水面へと攻撃をして、いくつもの水柱を吹き上げ本体を空中へと放おっていく。………やっぱ、ボンボンテンタクーでした。
2m程のボンボンテンタクーが、身体をくゆらせて宙で舞い踊る。
「ウリスケさん!やるのですっ!」
「グッグッグ!」
ララとウリスケがその機を逃さず、攻勢へと移る。
ララの言葉を合図にウリスケが桟橋を飛び出し、注を駆けてボンボンテンタクーへと飛び掛かり体当たり。
そのまま自分の体長ほどに伸ばした角で、次々とボンボンテンタクーを串刺しにしていった。その数6体。
桟橋に戻ると、頭をブルルと振って突き刺したボンボンテンタクーを桟橋の上へとドササと落とす。
落とされたボンボンテンタクーはそのままピクリとも動かなくなる。
「チャチャチャ!」「すご………」
「ま〜べら」
僕が唖然と呟き、ルリとアトリが感嘆の声を上げる。
「“ストンバレットっ”!」
反対側に回り込んだララも土魔法を唱えて、いくつも現出させた岩礫をマシンガンのごとく放ち撃っていく。
空中に打ち上げられたボンボンテンタクーは、岩礫を受けて為す術もなく桟橋に落とされていく。
してそれ等はしばらく触手をうごめかせた後、、息絶える。触手がパタンと倒れ落ちる。まるで何かの比喩のように。その数5。
「くぅ!惜しかったのです」
「グッグ」
ウリスケがドンマイって感じでサムズアップする。
なんなの?この熱血アニメのようなノリって………。
だがそれよりも凄まじかったのは、ラビタンズ達だった。
波〇拳を放つと水面を駆け走り、そのまま昇〇拳を放ちさらに竜巻〇風脚で桟橋へと蹴り飛ばす。
うん。何なんでしょ、これ………。
CD‐ROM時代に、敢えてROMカードで発売したという“通りの格闘者2´”を思い起こさせてくる。
確かに面白いし楽しんだけど、6BPでやると左親指がちょっと大変な事になるゲームだ。
でも技が確実に決まると、めっちゃ楽しいのは言うまでもない。(ちなみに僕はダル〇ムを使ったりする。◯ガをヨガ◯レイムで焼き尽くす快感は何とも言えぬ喜びを感じていたりする)
うぐっ、つい話が脱線した。
結局ラビタンズの皆が桟橋に打ち上げたのは、全部で25。うんうん、すごいわ〜………。
「ラビタンズって、………ラビタンズよね?」
何でかレイさんが、あれ?ってな表情で呟きつつ首を傾げる。
そういやララがラビタンズが進化したとか言ってた気がする。
アレって僕が、VRで始めてララ達と会った時の姿と関係してるヤツなんだろうか。
うん、ウリスケもめっちゃ大っきかったし。
多分アレがクラスアップってヤツなんだろと思う。けど、う〜んどうなのかな?いや、ゲームなんだからLvが上がれば、モンスターも人も変化するのは自明の理なんだろうけどそれでも割り切れないものがあるのは、まぁ仕方がないって部分はあるのかなぁ。
それは執着か、愛着なのか。
これって、どうにも難しくあるよなぁ………。(あくまで僕自身の事だけど)
うん、もし進化する事になったら、本人達の希望に沿うだけかな。
試しにラビタンズの一人を識別するとこんな感じに表示される。
ラビタンズ・グラップラー:貫きのアレインサデル Lv3
HP [425/450]
SP [105/120]
過酷なる修行の末に新たな道へと
たどる事となった者達の1人
その拳に宿るのは修羅への道往き
「………これ、誰のせいなんだろ………」
「きっと、あのバカのせいなのです」
バカってきっとゴォトの事だよね?………まぁ確かに教導はしてたけど、だからと言っておいそれとそうだとも言い難いかなぁ。
うん、多分ではあるけど、馬鹿の行動はきっかけに過ぎないんだと思う。
これはラビタンズの皆が高みへと登る事により得たものだと考える。(きっかけでも気に入らないけど)
ってかラビタンズ・グラップラーとかなんかすんごいな。
ちなみにここにいるほとんどのラビタンズは、この名称だったりする。やっぺぇ………こいつ等マジやっぺぇ………。
十数人のラビタンズはボンボンテンタクーを狩って狩って狩りまくって行った。
桟橋には山となってボンボンテンタクーの亡骸が積まれていく。
「………くっ、負けたのです」
「グッグッグ!」
「ま〜べら!えくせれんっ!」
「チャッ!」
ララとウリスケはともかく、アトリが興奮気味に声を上げている。(珍し)
というかこの山積みのボンボンテンタクーどうするんだろう。と、そんな事に思いを馳せているとララが警告を発してくる。
「マスター!大っきいのがこっちにやって来るのです!気をつけてなのです!」
そのいつにない声音に、僕は警戒してララの指差す方向を見やる。
「げげっ………、何あれ?」
水面が泡立ち5つの球体をつけた触手が現れる。
「おっきいのです!」
「うん、でっかい………」
その球体の大きさは僕の頭より大きい。それを見ただけで、このボンボンテンタクーがどれだけの大きさなのかを察することが出来る。
「やれやれ………、やりますか」
「はい!やるのです!」
「グッグッグ!」
「お〜」
「チャチャッ!」
僕の意志のこもった言葉に、ララ達の呼応する。
ラビタンズが最初にやって見せてくれた事。
ボンボンが打ち鳴らされる前に、バランスを崩す。
もうチアはゴメンです。
僕は弓を手にして矢を番え狙いを定める。
球体の効果を少しでも阻害できるのならば、僅かでも貢献したいと思うのだ。
だってあんな大っきいのが打ち合わせられたら、どんなチアをやらせれるのか分かったもんじゃない。
もう黒歴史は正直願い下げでござんす。
「いくぞっ!みなのものっ!!」
「「「「「おおおおぉ――――――っっ!!」」」」」
ラビタンズ・グラップラー―――蹴撃のアンダリオさんの掛け声を合図に、皆が唱和して巨大な触手へと湖面を蹴りその根元へと蹴りや拳を繰り出し始める。
「うっわ〜………」
その巨大と言うべきボンボンテンタクーの触手を十数人のラビタンズが蹂躙(とは言い過ぎ?)していた。
というか〜、どこで覚えたんだろ?バー◯ナックルとか真◯飛び◯蹴りとか。
「ウリスケさんっ!負けてられないのです!行くのですっ!!」
「グッグッグゥ――――――ッ!!」
ラビタンズの皆に触発されたララが、ウリスケに檄を飛ばしてボンボンテンタクー(大)へと襲いかかる。
今日はいつになく好戦的だなぁ〜、ララ達ってば。
僕なんかはそこまでの気概はないので、とりあえず邪魔にならない程度に矢を放っていく。
触手は打ち据えられる度に徐々に上へと追いやられていき、その身体が露わになってくる。
ボンボンテンタクー(大)は為すすべもなく翻弄される。
百◯脚に◯烈拳、虎と龍そして炎の乱舞。
「みなっ!逝くぞっ!」
「「「「「はぁあああ〜〜〜〜〜〜〜っ!ちょうひっさつ、てんじょうてんげゆいがどくそ〜〜〜〜〜んっっ!!」」」」」
「はぁぇああっ!?」
ほんと今日の僕は変な声ばっか上げてる気がする。
しっかしどこでそんな言葉を覚えたのやらって、やっぱアレかぁ………ったく。
だらりと球体が垂れ下がって来た触手に向けて、湖面を駆けながら囲み込みタイミングを合わせた蹴り上げの一撃を放つ。
上へと向けられた衝撃波はそのまま触手へと至り、その威力で水中からその身体を引き剥がしていった。
「うっわ!でっかっ!!」
大量の水飛沫と共に現れたボンボンテンタクーは全長5mを超える大きなものだった。
ゆっくりとではあるけど、その体躯が5m程の高さまで打ち上げられる。
「よしっ!とどめだっ!!」
「「おうっ!!」」
リーダーに指示された2人のラビタンズ・クラップラーが上空へと他のラビタンズを土台に段々と飛び移りながら大ジャンプし、そして――――
「「うぉおおおおおっっ!ちょういかづちしゅうげききゃく―――――――っっ!!」」
「……………」
超雷蹴撃脚?えー………。スーパー◯妻キックって事かな?
大丈夫なんだろか?これってば………。(うん、気にしない。気にしない)
2人のラビタンズ達は、大ジャンプから稲妻のごときジグザクの軌跡を描いてその胴体へとその鋭い蹴りを突き刺し、ボンボンテンタクー(大)はくの字の形で桟橋へと激突する。
ドズズンと桟橋と蹴りの衝撃とのダブルダメージを受けて、ボンボンテンタクー(大)はその胴体をプルプルリと震わせた後、ぱたりとその身を伏せて沈黙する。
「………………」
うっわ~………60cm弱のラビタンズが5m強のボンボンテンタクーを倒しちゃったよ………。
「グッ」
「やったのです」
あ、ララ。それフラグ!
僕がそう思ったその直後に、ラビタンズの1人が胴体に飛び乗って目と口のある部分にドドスンと掌底を浴びせる。
桟橋にビリリと衝撃が走り(頑丈だなこの桟橋)その身体が波打ち震えると、ボンボンテンタクー(大)は完全に沈黙したのだった。
そして怒涛のLvアップ。
その最後にはララとウリスケのLvアップの通知と共に、【Lvが上限に達しました。進化しますか?】の告知がホロウィンドウに表示される。
あー、来ましたか。
「あ、クラスアップだって。ララ、どうする?」
クラスアップの先はララがシルフで、ウリスケはスピアボーア変異種:赤の成体みたいだ。
「マスター!待ってなのです!!」
「グッグッグ!!」
ララとウリスケが必死の形相で慌てながら制止してきた。
「え?」
「ララ達はクラスアップしたくないのですっ!!」
「グッグッグ――――――――ッッ!!」
いや、そこまで慌てなくても、もちろんちゃんと話は聞くし。
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