213.つながりました
遅くなりました m(_ _)m
この3日間ゲームに没頭したので、今日はゲームを脇に置いて実生活に腰を据える事にする。
いつもの日課をこなして朝食を摂ってから(姉はいない)工房へと向かう。
この3日間はさすがに厳しかった。
まぁこの辺りは、ララが調整してくれたんで、特に問題になる事もなかった。(さすがにしんどかったけど………)
今思えばそれなりにいー経験になったと思う。
それよりも喫緊の問題はGINの事だった。
そもそも意図せず大金を手にしてしまった訳で(もちろん現時点Lvでって話。先に進めば金額が跳ね上がるのはゲームじゃお約束だし)、それをおいそれと持ったまま移動したくないってのが、今のところの僕の心情だったする。
下手に死に戻りでもしたに日は、その心的ダメージはいかほどのものか想像するだに怖ろしい。
かといって引き籠もる訳にもいかず、とりあえず日常に逃避してるってのが実際だっりする。(たとえるなら、夏休み最終日の白紙の宿題を前にした気分というか)
今日はバイトとのシフトも入ってる事だし、実生活に少しは専念すべきだろう。(決して逃げてる訳ではない。よ?)
工房に入り(あのバスワードはどうにかならないんだろうか………)テーブルに並べられているウサロボを確認しつつ、作業用端末を起動させて、これまでのデータを見直していく。
「―――うん、大丈夫みたいだ。特に負荷がかかってる個体もないし、動作自体に問題はなさそう」
ズララと流れるデータを流し見しながら、その結果に満足して僕は呟く。
『マスター、個人動作のデータが来たのです』
ララがウサAIの動作に関するモーションデータの更新について知らせてくれる。
機体のないウサAI部分は、その都度でその動きや仕種のデータをこちらに伝えて送って来るので、僕はその度動きに関して変更を行っている。
そうすると、当然のようにウサロボの動きも日々変化していくのだ。
それはもちろんVR内にいるウサロボにも影響を与えてくるって話だ。
データを見る限りその個々性は際立っていた。
学長のウサAIは完全な執事タイプで、その物腰はとても丁寧かつ穏やかでまさに紳士といった感じ。
先生のは、メイドなのに秘書っぽい感じがする。
姉のもメイドで、こっちはこっちでなんでかドジっ子要素が満載だったりする。これってサポート目的じゃなかったのかな?
いや、癒しとしてはありといえばありとは思うけど………。
ササミさんは言うに及ばずだ。(ウルフレンド大佐かぁ〜………)
その再現率の高さに、思わず僕も目を見開く。
ササミさん一体何やってんのっ!?って感じだった。(著作権侵害がないことを祈る)
こんなロボの作り方はどっちかと言うと邪道っぽいと思うけど、個人工房ならではという事で納得してもらいたいかな。(ってか他知らないし)
ここまで来ると、あとは機体とAIを完全に統合させて、ある程度の調整を施せば完成となる………と思う。
これでササミさんが作る衣装を纏わせれば、皆にお届けする事が出来るだろう。
多分まだまだ出来るのは少し先の事かな。
もちろん僕がそう思っていたのは、自分で色々と作法をやって来ていた故の話だ。
採寸から型取りまで、それらはけっこー時間と労力を費やすものなのだ。
どの道こっちでやる作業の諸々はほとんど終わっていたりする。(あとは負荷実験とデータ取りぐらいかな)
「………となると、やっぱり行かざるを得ないって事かぁ………」
本当に夏休みの宿題だ………。
という事で、ウサロボを起動させてからディセリアさんに進捗を聞く為にも僕はログインするのだった。
午後からはバイトのシフトが入ってるので、時間的にそれ程いられないと思うけど。
僕はHMVRDをかぶり、ライドシフトからのVRルームでそれからログイン。
ログイン場所はラビタンズネスト。(ちなみにナチュアさんに貰ったとこは、デヴィテスコゥテジって表示されていた)
久々のラビタンズネストに変わりは―――あった。
現れたララとウリスケ、ルリとアトリと挨拶を交わして広場を見ると、左端っこの砲に2m程の高さの5本の石柱が輪を描いたオブジェが置かれていたのだ。
「何これ?」
「いつの間になのです」
「グッ?」
「チャッ?」
「げーと?」
僕の呟きにララが腕を組んで唸り、ウリスケとルリが首を傾げる。
アトリは少し訝しみながら、疑問形ながら予測を漏らす。
「ゲートって転移門の事?」
「ああ、なる程なのです」
何故かララは納得の声を上げるけど、でも僕にはあんまり分かっていなかった。
「おうさま〜」
「おうさま〜おか〜」
「おうさま〜おみや〜」
そこにちびラビ達がてててと走ってやって来る。そして―――
「「「いってきま〜〜す」」」
「はぁあっ!?」
ちびラビ達が手を振りながら石柱の輪の中へと入って行き、魔法陣が浮かび上がると共に光り輝いて消えてしまった。僕は思わず変な声を上げてしまう。
「ど、どど、どうしよっ!?ララぁ!!」
動揺のままに僕はララの方を見て更に声を上げララに訊ねる。
「マスター、落ち着いてなのです。多分これはレイさまがやられた事だと思うのです。なのでララ達も行ってみれば分かるのです」
ララは落ち着いた様子でそう説明をする。………そう言われてみると、確かにこんな事が出来るのはレイさんかミラさん位(あと姉?)しかいない。
そしてミラさんがこんなのを設置する理由はない。
という事は―――
「レイさん一択か………」
「なのです。では行ってみるのです!」
「グッ!」
「チャチャチャッ!」
「お〜」
「はぁ〜………仕方ないか」
僕はやむを得ず、ララ達はノリノリで石柱の輪の中に入る。すると地面に魔法陣が現れ僕達はその光に包まれる。
やがて光が収まると、通路の途中の小部屋のようなところに立っていた。
「ん?ここって………?」
どこかで見たようなそうでないようなって、ここどこでしょか?
通路の(僕の位置から見た)後側は、行き止まりと言うか扉が閉じられており、その反対側からは光が差し込んでいる。
「マスター、ここってあのコゥテジなのです」
「え?コゥテジって、デヴィテスの?え?なんで!?」
状況に理解が追いつかず、つい思い浮かんだ事を声に出してしまう。まぁそんな事ララが知る筈ないのだけど。(あるいはエスパーララならもしかして………)
「グッ!」
その時何かを察知したウリスケが声を上げると、スタタタと光の方へと走って行く。
「あ、ウリスケ?」
「あとを追うのです!」
「チャ!」
「おらい」
ララが後に続けとばかりに飛んで行き、さらにその後ろをルリとアトリが追いかけて行く。
………まぁ、行くしかないんだけど。
僕も渋々ながら通路を歩き始める。
「うわぁ………ラビタンズがいっぱいだぁ~………。そして何なんだろね、これってば………」
通路を抜け光の中へと入るとその先は幅5m程の桟橋が先に伸びていた。Tの字の形を成していて10m程進むと左右にそれぞれ15m程の桟橋が続いている。
その桟橋の上でラビタンズのみんなが一列に並んで釣竿を手に、釣り糸を湖に垂らしながら次々と魚を釣り上げていたのだった。
「どこのカツオ漁船なのやら………」
釣り糸を垂らすとすぐに魚がかかり、ひょいと釣り上げると器用に針を外してまた湖へと垂らしていく。
釣り上げられた魚は、その後方にあるバケツへとそのまま入って行く。
「皆さんやるのです!」
「グッグッグッ!」
「チャッチャ!」
「たいりょ」
ララ達は、釣り上げられた魚やラビタンズの姿を見ながらきゃっきゃと喜んだりしている。
………いやぁ、確かに凄いんだけど、なんでこうなったのか経緯がさっぱり分からない。
「はぁ~~~い!みんな~~ありがとぉ~~!それくらいでばっちりよっ!」
パパンと手を叩き後ろの方から女性の声ってか、レイさんの声が聞こえて来たので後ろを振り向く。
そこにはニコニコ笑顔のレイさんが立っていて、僕達に挨拶をしてくる。
「おっひさ〜!ラギくんっ!」
「え〜………どうも。ってか、どういう事ですかっ!?レイさんっ!」
僕も思わずつられて挨拶を交わすものの、この状況についてレイさんに問い質す。
「えっとぉー、ラギくん家を貰ったって聞いたんで、せっかくだから拠点同士を繋げたんだけど、何か?」
ドヤって顔をしながら腰に手を当ててレイさんが言い放つ。
何かと言われてしまうと、なんとも言い返しようがないのが実情だった。特に問題はない………のかな?
そりゃあ便利ちゃ便利だけど………。
「おうよ、よろしく」
「おうさま、たのみます!」
「これたべれるです?おうさま」
その脇を釣り終えたラビタンズ達が通り過ぎながら口々にそんな事を言っていく。つい僕はレイさんへとジト目を送る。
「えーいいじゃん、ね?」
「まぁ………いーですけどね」
僕のジト目にレイさんはパチコーンとウィンクをして軽く頭を下げてくる。
せめて事前に連絡とかして欲しいものなんだけど。
「マ、マ、マスターぁっ!た、大変なのですっ!!」
僕が諦め気味に溜め息を吐いてるると、ララが大慌てでこっちにやってくる。
「ん?どうしたのララ?」
「ちびラビさん達がしょくちゅ………あぅ」
その様子に僕が聞き返すと、身振り手振りをしながら噛んでしまう。相当慌ててしまっている。
「「「あ〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜」」」
あらためてララに聞き返そうとした時、桟橋の端の方からちびラビ達の悲鳴が聞こえてきた。
「えっ!?」
その声の方へ視線を向けると先端が球体の触手のようなものに、ちびラビ達が絡め取られていた。
「ほわっ!?えっ、なっ!ええ〜〜〜〜っっ!?」
「ありゃりゃ、ちょっと釣り過ぎたかしらん」
レイさんの呟きを耳にしながら、僕達はちびラビ達が捕まっている桟橋の右端へと駆けつける。
3人のちびラビがそれぞれ1本の触手に絡め取られ、身動きできない状態になっている。
「「「おうさま〜〜〜〜」」」
徐々に沖の方へ移動しているらしく、5m程の距離が出来ていた。
「くっ」
僕自身は弓と手甲なので、攻撃手段がない。
「ララ、アトリ。魔法であの触手を切って!ウリスケはその後3人を救出!」
「分かったのです!アトリさん、ウリスケさん!」
「おらい」
「グッグッグ!」
「チャ?」
僕の指示にララとアトリが飛んでいき、ウリスケが空を駆ける。ちなみにルリは僕の頭の上だったりする。
「ウィンドカッタ!ウィンドカッタ!」
「うぃんどかった」
風を纏った三日月の刃が球体付き触手を切り、3人のちびラビは湖へと落下する。
「グ」
そこにすとととと空を駆けるウリスケが、3人をひょひょいと回収していき桟橋へと戻ってくる。
「はぁ〜………皆無事?」
「「「だいじょぶ〜〜〜」」」
3人のちびラビ達は僕の問いになんともなさ気に答えてくる。ほっ。
「よかった。ありがと、ララ、アトリ、ウリスケ」
「任せてなのですっ!」
「グッ!」
「のぷろぶ」
ちびラビ達に絡まっていた触手を外してマジマジとそれを見やる。先に球体のついた触手。
「これって、もしかして?」
「マスター!あれを見てなのです!」
ララが声を上げてさっきの場所を指差す。
そこにはさっきとは比べるべくもない数の触手が湖から浮き上がり、僕達を取り囲んでいたのだった。
「ボンボンテンタクーだよね?、これぇ………」
触手ものはご勘弁願いたいんだけど………なぁ。
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