20.魔法しばりで戦ってみる
20話まできました
読んで頂く皆様のおかげでございます
pt&ブクマありがとうございます
ララのお願いとは、できるだけ魔法で戦って欲しいというものだった。アテンダントスピリットは契約者の持つスキルを使うことが出来るらしい。
スキルを手に入れたとはいえ、レベル自体が1なので使える呪文も圧倒的に少ない、なのでレベル上げで使える呪文を増やして欲しいとのことだった。
ララの言うことももっともだったので、【斧】以外をサブスキルに入れてメインに残り3つの魔法を入れる。
こうなるとこの時点でもスキルスロットが全く足りなく感じる。何か増やすことが出来たりしないものだろうか。
そんな取り止めの無いことを考えていると目的地に到着する。ぐるりと周囲を見回すと平原というだけあって小さめの林と低い潅木が所々に生えている以外、地平線の向こうまで草原が広がっているようだ。
『まずは歩いてマップを埋めていくのです』
「南に向かって歩いていけばいいんだよな」
『そうなのです』
初級クエストでガンさんも言ってたが、このゲームはマップの踏破率によってイベントが起こるので、あちこち動き回りながらギルドのクエストをこなす必要がある。
スキルのレベルが低いので索敵の範囲はそれほど広くはない。のでモンスターを探して南へと歩き進む。
するとどこからともなくドドドドドと地響きのよな音が聞こえ、そこにララが注意を促す。
『マスター!左の林の方からラッシュボーアが2体やってくるのです。注意してなのです』
「了解」
見えた!砂煙を巻き上げながら1mぐらいの大きなキバを口に生やした猪みたいなのが、2体並んで僕等に向かって突っ込んでくる。
すかさずロックオンして魔法を選択、土魔法のストンビット。
星ひとつ、星ふたつ、星みっ――――――
『マスター!プレスが来るのです』
詠唱が終わる前に1体が突然ジャンプする。その身体を“ヤマト”を踏み潰そうと覆いかぶさろうとする。僕は回り込みをして何とか躱す。危なかった。突っ込んでくるのでロバ−ラットと同じと考えてたのはまずかった。
硬直しているラッシュボーアの後ろからストンビットを放つ。石の礫がラッシュボーアの尻に命中する。
『グヒィ―――ッ』
硬直が解けたラッシュボーアはダメージを気にすることもなくズダダダと走り過ぎUターン。又、こちらへと再び向かってくる。ダメージは2割ぐらい。さすがに一撃とかかは無理みたいだ。
ちまちま削って行けばいいだろう。このシチュエーションは、なんてーかマタドールと暴れ牛的な? (猪だけど)
もう1体の方はララが余裕でラッシュボーアを翻弄していた。アクアビットで眼を潰し、怯んだ所でストンビットで左前足に集中砲火。さらに左後足を攻撃、動けなくなった相手を袋叩きである。傍目で見ててもスッゲーと思った。
こっちの相手は、今度はジャンプをせずにそのまま突っ込んでくる。再度ストンビットを詠唱。躱しざまに攻撃。これを何度か繰り返して何とか倒せた。
予定としては土魔法のLvを上げて、水、火、風と上げていくみたいだ。
次の獲物を求めてさらに南下する。こうして何度かラッシュボーアをストンビットで倒していくとレベルアップがやって来た。
ビロコリン
[土魔法 が Lv2 に なりました]
[土魔法 の ストンバレット を 覚えました]
どうやらレベルアップで新しい呪文を覚えたようだ。
『やったのですマスター。この調子でどんどん土魔法をLvアップなのです』
まだまだ土魔法しばりみたいだ。まぁ………いーけど。
一旦街へ戻りギルドで精算する。またラッシュボーアの討伐依頼を請けて街から南東へ向かう。この手のレベル上げはRPGの宿命であろうと思う。だけどそれでも、その苦難?を乗り越えてこそのゲームであると思うのだ。
いや、この行程こそが楽しいって人もいるだろうから、人それぞれってことだと思う。僕はこの手の作業は黙々とやるタイプなのでとくに辛いとも苦しいとも思わない。ララもいるし。
ストンバレットはストンビットと比べてかなり威力が上がっていた。
今までちまちまやっていたのが、サクサク進むと楽しくなってくる。強くなったって感じがして気分も良くなる。現金なものだが、まさしくRPGの醍醐味の一つだろう。
次にやってきたラッシュボーアが1匹だけだったので、ララに任せて僕は新しいスキルを試してみることにする。
メニューを開き、スキル【鑑識】を選択。ラッシュボーアを見てみる。
ラッシュボーア Lv ?
[HP] ?/?
属性 ?
・ボーア種のモンスター
ひたすら突っ込むだけのモンスター
その突進力は馬鹿に出来ない
尻や腹部が弱い
はーこんな風に見れるのか、ついでに足元にあった草を【鑑識】してみる。
ニョロ草 あらゆる大地で自生している
とても逞しい草
食べると酸っぱい
「………」
あーこんな感じなんだ。【採取】スキルとはどう違うんだろう。戦い終わって『ふんがー』とか言ってるララに聞いてみることにする。
『たぶんなのですが【採取】は採ったものだけの鑑定で、【鑑識は】あらゆるものの鑑定識別がLvによって見ることが出来るのだと思うのです』
はぁーなるほどねぇー。ほんじゃララを【鑑識】っと。
小妖精
[HP] ?/?
[MP] ?/?
装備 ?
スキル ?
・ピクシータイプのアテンダントスピリット
2対の羽をつかい飛び回る愛らしい姿をしている
ふんふん【鑑識】には解説みたいのが表示されるみたいだな。ま、Lv帯での表示だからレベルアップすればまた詳しくなるんじゃなかろうか。
『マスター!勝手にララを調べちゃダメなのです。えっちなのです』
え!?だめなの?まずかった?
「え?あ?……ご、ごめん……」
プクーッとホッペをふくらませてプンプンするララにペコペコ画面に謝る僕。なにゆえ!?
姉が脇でぷくくと笑ってる。何気に顔が熱くなる。
『マスター。ララのことは【鑑識】じゃなくステータスから見ることが出来るので、そっちで見てなのです』
「はい………。分かりました」
両手を口におさえてジタバタジタバタする姉。くっ、どーしてくれよーか。などと言ってもどーしようもないが。しょせん姉にはかなわぬ僕なのだ。なので諦めてメニューを開いてステータスを見てみることにする。
【名前】 ヤマト
【種族】 人族
【性別】 男
【ギルドランク】 F
【Level】 9
[HP] 135/135
[MP] 70/70
EXP 2530
GIN 31800
STR 18
VIT 18
AGI 16
DEX 16
INT 17
WIS 18
LUK 9
[メインスキル 5/5] 斧 水魔法 火魔法 土魔法 風魔法
[サブスキル 7/10] 調薬 採取 付与 身体能力+ 鑑識 索敵 従魔
[装備] 鉄の斧 冒険者のふく 皮のかぶと 皮のよろい+1 皮のくつ クリスタルアミュレット
んー始めて2日目にしては上々な気がする。ララのおかげでレベルもかなり上がったし、資金もまだたんまりある。
地道にギルドランクとレベルを上げていけば、次の街へも行けることだろう。
次にララのステータスを見てみる。
【名前】 ララ
【種族】 小妖精族
【性別】 女
[HP] 100/100
[MP] 480/500
攻撃力 4 (☆120)
防御力 120 (+70)
[スキル] 契約者に準拠
[装備] 小妖精のよろい+2
・特記 アテンダントスピリット 《契約者:ヤマト》
はー、ステータスの方は解説みたいなのがなくて、別のパラメータが表示されるんだな。
「ララ。攻撃力の数値の星印の方の数値ってなんなの?」
『それは魔法使用時の数値なのです。ララの直接攻撃力はヘッポコピーなのです』
そんな言葉どこで覚えてくるんだか……。まぁララは何気に強いってことだな。うん。
「でも、プレイヤーには攻撃とか防御のパラメーターって無いんだな。何でだろ」
「そこらへんはマスクデータにして、プレイヤーの身体パラメーターを色々計算して算出してるのよ」
僕の呟きにララではなく姉が答えてくれた。
「どっちかというと表示されてた方がありがたいんだけど」
「そこらはゲームの仕様だから仕方ないわね。自分で調べていくのも面白いんじゃない?」
そんなもんか。確かに何かにつけ調べて解析するのが好きな奴っているよな。特にこんなゲームなら。
「というか、今の段階でそんなこと気にする人っていないと思うよ。【鑑定】や【識別】なんてスキルこの街じゃ手に入んないし」
「え?そうなの!?」
「そうよ。基本この街は戦い方を覚える的な場所だし、あの裏路地の露店商ってシークレットイベントって気付いてた?」
「ええぇ!?」
知らなかった。そーだったのか。ララのイベントと同じタイプのヤツだったのか………。そういや久しぶりのお客とか言ってたような。あの人は怪しさ満載だったけど。
なら、ララの防具とか良さげスキルを買えたのは運が良かったってことだな。リアルでも運が良いといいのにな。宝くじが当たるとか―――な〜んて。うんうんと訳知り顔で頷いてるとララが声をかけてくる。
『マスター。ラッシュボーアが現れたのです』
1匹のラッシュボーアがズドドドと突っ込んでくる。
「お、いかんいかん集中集中!」
ロックオンして呪文を詠唱。ストンバレット。ストンビットより威力が上がったので、魔法を放つと突進を止めることが出来る。
『ブギヒィ』
ズバンという音と共にラッシュボーアがひっくり返る。その機を逃さず、2度魔法を放つとあっさり倒すことが出来た。
クエスト依頼の数をこなしてギルドへ戻り精算するとギルド嬢がにこやかに相手をしてくれる。
『おめでとうございます。ギルドランクがFからEに昇格しました。これで下位のクエスト依頼は3つまで同時に請けることが出来るようになります。これからも頑張ってくださいね』
立ち上がって拳を握りながら激励してくれる。
え?この人に一体何があったんだ?
『マ、マスター。次のクエストを請けるのです』
何故かララが慌てるようにそう促してくる。どうしたんだ?
「そうそう。ほら頑張って!」
姉がそう言いながら僕の太股に頭をのせて寝転がる。
やはり見てるだけなので飽きて来たのだろう。放置しておくことにする。
『マスター。これにするのです』
ララが選んだクエストは、ワイルドッグの上位種、ホーンドッグ5匹討伐の依頼だ。あとワイルドッグの依頼も請けることにする。
『ガンガンいくのです!』
こっちも鼻息が荒い。何やら力がこもってる。
「どうしんたんだララ?。そんなに興奮して」
『もうすぐレベルアップなのです!』
シュッシュッと拳ををシャドーボクシングよろしく繰り出す。
「そうなんだ」
『そうなのです』
テンションが上がってるララを引き連れて、東門から北東へと向かう。
ワイルドッグを倒しながら、マップを埋めていきホーンドッグと対峙する。
ホーンドッグは灰茶色の身体に額に1本の角が生えた1m弱の大きな犬だ。ブルドッグぽかったワイルドッグと違いこっちはドーベルマンのようだ。見た目強そうで威圧感が半端ない。
体当たりや、噛み付き角を振り回すなどの多様な攻撃を繰り出してくる。
こちらも避け躱しながら、ストンバレットをおみまいする。さすがに魔法しばりだと、こっちもダメージを受ける。
「ララ。斧で攻撃しちゃダメか?」
『いいのです。魔法だけじゃなく武器も使ってなのです』
え?そうなの!?魔法しばりじゃなかったの?
『マスターはマジメなのです。でもそこがいーのです』
下からでプッとか聞こえる。また顔が熱くなってくる。羞恥心を振り払うように、ホーンドッグに攻撃する。
角を振り回してきたので、カウンター気味に横斬り。『ギャッン』と吹き飛んだので呪文の詠唱。星の溜まり方もすこし速くなった気がしてくる。
『『ストンバレット』』
ララと同時に放った魔法は狙い過たずホーンドッグに命中、そして光の粒子となって消えて行った。
ピロコリン
[ホーンドッグ を 倒しました]
[土魔法 が Lv3 に なりました]
[土魔法 グランディグ を 覚えました]
『やったのです!』
ララの嬉しそうな声が周囲に響き渡る。
(-「-)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます




