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2.姉宅へゲームをやりに

ブクマありがとうございます。

 

 

 入口のセキュリティを通りエレベーターに乗り込む。25階と告げるとAIがカシコマリマシタと返事をする。動き出したエレベーターは25階へと到着する。

 近頃はAI搭載の機械をけっこー見かける。このエレベーターだったり、車だったり電化製品とか。便利になったものだ。

 姉の部屋まで来ると、インタ-フォンを押す。インターフォンから無機質な男性の声が流れてくる。これもAIなのか。インターフォンについてるカメラがギュムギュムいってる。ピントでも合わせてんのかな?


『主人はただいま留守にしております。御用の方は出直して頂けると幸いです』


 いきなりの門前払い。仕方なく懐中時計型の端末を取り出し、音声ファイルを呼び出す。スマホも今現在でも現役であるがホロモニターが使えるようになって様々な端末が作られている。 (眼鏡しかり、腕時計しかり)

 端末から姉の声が朗々と流れ出す。


『八万三千八三六九三三四七一八二四五十三二四六百四億四六』


 和歌かなんかだろうか。おそらく姉の好きな日常ミステリーのなんかだと思うが、声が途絶えるとともに鍵がガチャンと外れる音がしてインターフォンから声が流れる。


『お帰りなさいませ。ご主人様』


 え?いいのかそれで?簡単に侵入出来んじゃね?これ。

 ま、僕が心配することじゃないか………。忠告はしとくけど。

 部屋に入るとオープンキッチンに、やたら広いリビング、そこにででんと鎮座している70インチTV。でっけぇー、稼いでんだなー。

 

 姉の性格を思えば汚部屋になってるんじゃと思っていたが、僕の予想は外れていた。とてもキレイに整理されている。

 ただ奥にある部屋に入っちゃいけないよと誰かが囁く。決して入るまい。

 だが今日の目的はリビングにででんと置いてあるテレビだ。テレビの前にはガラス製のテーブルと4人掛け位のソファーが置かれている。テーブルの上にはテレビのリモコンとコントローラーとマイクの付いたヘッドホン。

 ソファーにコンビニの袋を置いて、早速リモコンでテレビをつける。画面に“3時は武者小路”の番組が流れる。うん、りなりさんは相変わらず美人で麗しい。

 テレビをPCモードに切れ換えて、ソフトを選択する。ソフトは1つしかなく、それが件のMMORPG【アトラティース・ワンダラー】だ。

 

 姉の話を要約するとゲームのキャラを使って、とある実験をしたいのでそのキャラでゲームプレイして欲しい。プレイ時間1時間につき1000円のバイト代を出すという事だ。

 なんでも数年前から続いてるロングセラータイトルのMMORPGらしい。レトロゲー専門(フリーク)の僕としてはあまりやる気がしなかったのだが………。まぁバイト代も入るしいい機会なんでやってみるか。

 

 ゲームのアイコンを選んで決定する。すると画面がブラックアウトして、荘厳なBGMが鳴り響き、タイトルが出てくる。アトラディース・ワンダラーじゃじゃーん。なんか長そうなオープニングが流れそうなのでコントローラーのスタートボタンを押してショートカットする。

 そう、僕は取説読まない人間なんです。

 

 スタート画面でNEWを選ぶ。キャラセレクト画面。名前はヤマトでいいか。選べるのは、人族、魔族、エルフ、獣人、ドワーフの5種族。

 無難に人族を。次はスキル選択。武器、生産、魔法、補助とズラズラと出てくる。メインスキルは5つ選べるみたいだ。

 まずは武器スキルは【斧】でいいか。さっき迄遊んでたし、後は【水魔法】【採取】【調薬】【索敵】を選ぶ。後はお任せで設定する。 (体格、髪の色、顔形等など)出来上がったキャラクターとステータスが表示される。


【名前】 ヤマト

【種族】 人族

【性別】 男

【Level】 1

 [HP] 60/60

 [MP] 10/10

 EXP 0

 GIN 2500


 STR 8

 VIT 8

 AGI 6

 DEX 6

 INT 7

 WIS 8

 LUK 3


[メインスキル5/5] 斧 水魔法 採取 調薬 索敵

[サブスキル 0/0]

[etc] ポーション 10


[装備] 鉄の斧 旅人の服 皮のよろい 皮のくつ


 初期のパラメータならこんなものなのだろうか。まっ、やってみれば分かるだろう。これでよろしいですかの問いにYESを選ぶ。 (その間も音声で案内している)

 次の瞬間、画面が白く光りド派手なオーケストラの音楽と共に


【アトラティース・ワンダラーへようこそ】


とタイトルと女性の声が僕の耳と目に響き渡る。



   *


「先輩、VRへのコンバート完了しました。本当にこれでうまくいくんですかねぇ」


 白衣を着たヤサ男がPCを操作しながら後ろにいる女性に疑問を投げかける。白のブラウスと黒のパンツスーツ姿の女性は、ヤサ男をねめつける様に眉を顰める。


「キザワ、そう思うのなら私はすぐに辞めてもいいんだけど?君等が全然進展が無いので助けてくださいと泣きついてきたから手伝ってやってるだけなんだから。辞めていいよね!」


 その言葉にヤサ男は慌てて謝りまくる。まるでこめつきバッタだ。


「スミマセン。スミマセン。スミマセン!お願いです。このとおりです。助けてください。スミマセン」

「人にモノ頼みながら文句を言うのなら最初から自分でやればいいと思うのだけどもね。私のアイディアにケチ付けるんなら尚更だと思うわ」


 立ち上がった女性は腰に手を当ててヤサ男を見下ろす。


「AI研究は基礎理論はある程度出来上がっているのにこれ以上何を求めるか決めてない?」


 グサッ


「何がやりたいのかも分からないで研究って出来るもんなの?」


 グササッ


 ヤサ男の心を抉る言葉をグサグサ突き刺す。

 自分に牙を向けるものに対しては、情け容赦なく反撃し攻撃しまくる女。それが笹崎 咲緒である。


「先輩、申し訳ありません。もう2度と下らない事は言ったりしませんので御協力お願いします――――」


 ヤサ男はついに土下座して咲緒を拝みだす。

 その態度に少しだけ溜飲を下げた咲緒は、出入り口のドアを開けながらヤサ男に言い捨てる。


「次にこんな事があったら即座にキッパリ辞めさせて貰うからそのつもりで。私はこれからフォローに回るから」


 咲緒が消えた部屋では、ヤサ男が冷や汗を掻きながら立ち上がり椅子へと崩れ落ちる。大学院を出て丸くなったかと思えば、その荒ぶる魂は今なお健在であった。

 己の迂闊さを少しばかり呪いながら、やがてPCに向かい作業を再開する。ゲーム内のプレイキャラにAIを仕込んで一体なんになるのか、NPCなら判るのだが彼にはさっぱり理解できない話だった。


 ただ彼女の逆鱗に触れない為にも他の研究員にも下らない物言いを彼女にしないよう、徹底するべくメーラーを開きこの事を送信する。

 天才、奇才の事は凡才たる自分には理解出来ないものなのだ。ヤサ男はそう一人ごちて作業に戻る。




 


 

(-「-)ゝ読んでいただき嬉しゅうごさいます。

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