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190.南街道を移動中、ウマ肉確保に走ります

 

 

 ログアウトしてからお昼ゴハンとして厚切りベーコン入り炒飯と、ご当地カップ麺(しっかり隠したのにあっさりと姉に見つけられた)を食べてから改めてログインする。


 場所はあのオブジェから少しだけ離れた別の場所。

 ララ達に続いて姉もすぐにやって来た。

 なんだかあっちの方で人が集まってる感じがする。何かあったかな?

 うん、まぁいいや。


「マスター、冒険者ギルドまで先導するのです」

「よろしく、ララ」

「グッグ!」

「お~」

「チャ!」

 

 こうしてララを先頭に、最短距離で冒険者ギルドへと向かう。

 

「ま~あれ見ちゃったら後は分かっちゃうか~………。あとは時間の問題かにゃ~?」

 

 姉が何やらホロウィンドウを出して、それを見ながらぶつぶつと呟いている。

 う~ん………あれでヒントになるんだろうか?………いやっ!気にしない気にしない。

 

 ララは大通りを通らずに、小通りと路地を通り進んでいく。

 僕もそれなりに地図は読めるけど、これは迷うこと間違いなしだ。

 まぁ、いろいろ面白い物が見れたので、飽きはしなかったけど。(オブジェとかオブジェとか)

 そんな感じでショートカットしてほどなく冒険者ギルドへと到着する。(ってか脇に出だ)

 

「ほへ~………、こんなとこに出るんだ~。………ふ~ん、」

 

 姉が周囲を見回しながら興味深そうに呟く。

 確かに路地から出たそこは、何度か来たことがある場所だった。

 さてと、入り口前にラミィさん達はいないようだ。

 となると中に入って一応確認した方がいいんだろう………けど、う~ん、この手の苦手意識って、中々拭えないものがあるなぁ。

 

 昔ほどこういうのってなくなったと思ってんだけど、雀百まで踊り忘れずってヤツかな?(いや、違うか)

 

「マスター!まず食料調達なのです!チィズ小丸玉を買って欲しいのです!」

「グッグッグ!」

「おーっ」

「チャッ!」

 

 ララが腕をブンブン振りながらそんな主張をしてくる。

 それを聞いたウリスケとアトリも声を上げる。ルリはつられてかな。

 うーん、………仕方ないか。

 

「分かったよ。じゃ、中入ろうか」

「あっ、もちろんあたしが出すからね、ラギくん」

 

 僕の心情を察してか姉がそう言ってくる。

 まぁ、僕がいろいろ買ったのを見てたから分かるか、やっぱり。

 武器も防具もそれなりの値段がしたからなぁ。

 

 ショビッツさんに教えてもらった武器防具店“身の程知らず”は、それなりのラインナップの品々が並んでいてかつリーズナブルだったんだけど、そこで僕の悪い癖がでてしまった。

 Lv帯の適正武器を買えばいいものを、それよりちょっと良い物をチョイスしてしまった訳だ。

 それで買ったのがこれになる。

 

樹木トレンタツリーの弓:Lv 10 耐久値40/40

              Atk+35

              Def+3

 

軽鋼かるはがねの手甲 :Lv 9 耐久値 56/56

              Atk+22

              Def+14

 

甲殻の軽鎧        :Lv 13 耐久値60/60

              Def+13

 

軽跳のブーツ       :Lv 7 耐久値30/30

              Def+6

              Agi+4

 

 しめて150525GIN。一応まとめ買いってことで値引きして貰ったけど、それなりに浪費してしまった。へへー、はぁ………。

 

 冒険者ギルドの中に入ると、PCはそれ程いなくて静かなものだった。

 幸いというかなんというか、案内人さんはいないみたいだ。

 そして姉と共に食事処へと向かうと、そこではすでにララが注文をしていた。

 

「持ち帰りでチィズ小丸玉を5人前と、ふわトロ卵まんを10個、後アーンパンケイキを10個お願いなのです!あっ、ウリスケさんもです?じゃあ、今のを倍でお願いなのです。ルリ様はこれなのです?分かったのです。ではこれを5人前なのです!むふー」

 

 ララが始めに注文した分はどうやら自分用だったみたいだ。………どれだけ食べるのやら。

 食いしん坊キャラが完全に定着しちゃったな、こりゃあ。

 姉が代金を支払い料理を受け取っている。

 どうやらアトリは姉にお願いして希望の品を頼んだみたいだ。(姉の方に乗って、身振り手振りで説明している)

 

「お〜〜〜っす。皆来てたな」

「まったく、行かなくていいって言ってるのにぃ………。業務命令とか………」

 

 そこにラミィさんとアンリさんがやって来て声を掛けて来た。

 アンリさんは不満気に眉間に皺を寄せてないかぶつぶつ言ってる。

 うん、きっとラビタンズ達を愛でていたかったんだろうな。

 

「チャ!」

「っ!?」

「おっ!ルー元気か?いぇ〜いっ!」

「チャッチャ!」

 

 ルリがラミィさんのとこへ行って手を上げて挨拶をする。

 そしてラミィさんはルリと軽く言葉を交わしハイタッチをする。

 アンリさんはそれを見て―――いや、ルリを大きく目を見開き凝視がんみする。

 

「しゃ、ラミィさん。その方は?」

「んあ?ああ、ルリって言ってな、ラギの従魔だ。………まぁ色々あったらしいぞ、……うん」

 

 ラミィさんには色々事情を説明してるので、少しばかり遠い目をしながらアンリさんへ説明をする。

 

「従魔ですか………。はじめましてルリちゃん。私はアンリと言います。よろしくお願いしますね」

 

 アンリさんが苦々しげにちらと僕を見てから、しゃがんでルリへと挨拶をする。笑顔200%って感じだ。

 

「チャ!」

「っ!はうぅっ!!」

 

 ルリはそれに右手をしゅばっと上げて応え、そのままアンリさんの胸へと飛び込む。

 

「もふもふぅ〜〜〜〜〜………。すぅぅはぁあ………」

 

 ルリに抱き着かれたアンリさんの顔が、それまでのキリッとしたものから蕩ける様に崩れていった。

 変態モフリストがいます。

 ルリはルリで何かを確かめるように、くんくんと匂いを嗅いでいる。

 なんか近所で見かけるお散歩中の犬っぽい仕種だ。(マーキング?だっけ)

 

「チャ!」

 

 確認を終えたルリが僕に向かって手を上げて声を上げる。

 どうやら当分アンリさん(ここ)にいると言ってるみたいだ。

 たしかに後衛である魔法使いならルリがいても邪魔にならないだろうけど、分かっててやってるのかな?

 

「じゃあアンリさん。ルリを頼みますね」

「もふ………はっ!はいっ!わかりましたっ!任せて下さいっ!!」

 

 僕がアンリさんに声を掛けると、恍惚の表情となっていたアンリさんが我に返り、拳を握って返事をして来る。………まぁ、いいや。

 

「もど〜」

 

 そしてアトリが僕の頭の上に乗ってくる。心なしか嬉しそうな声に聞こえて来た。うんうん、アトリご苦労さん。

 

「ほいじゃあ、行くか」

「はいはい」

「行くのです!」

「グッグッグ!」

 

 今回は特に依頼クエストを受けるつもりはないようなので、ラミィさんの言葉を合図にそのまま冒険者ギルドを出て南門へと向かう。

 ちょうどゲーム(こっち)の時間帯は朝になってるので、朝焼けから空がだんだんと青く変わる様子を見る事が出来た。綺麗なものだ。

 南門を抜けると、多くのPCやNPCとともに南街道を移動するのが目に入ってくる。

 

「けっこー人の行き来があるんだなぁ、ここって」

「ん~?大体こんなもんじゃねーか?」

「そうですね。ルリちゃん、飴なめます?」

「チャ!」

 

 僕の呟きにラミィさんが答え、アンリさんも同意する。ってかマイペースだな、アンリさんは。

 でもこの前の時は全然いなかったんだけどなぁ、人。

 

「マスター、イベントが絡むと状況にも変化が出てくるのです」

 

 僕が首を傾げながら歩いていると、相変わらずのエスパーララが教えてくれる。

 

「そんなもんなの?」

「んん~………まぁ、無い事もないが、あったんかそんな事?」

 

 僕はナチュアさん達と行った時の事を簡単に説明する。

 それを聞いたラミィさんは、若干疲れた様な顔をして納得したように頷きを返す。

 

「あぁ~、あれな。ってやっ!」

 

 遠い目をしながらも街道に入って来たゴゴブリを鞭のひと振りで粉砕する。なんか八つ当たりっぽい。

 何度かモンスターを倒し進んで行くと、次第に周囲(街道の外)が腰程までの草原へと変化して行く。

 今回のパーティーの編成は、2パーティー形態になっている。

 

 ルリが従魔に加わったので、6人パーティーが組めなくなったのだ。(従魔もパーティー枠になるので、僕と従魔3人で今だと1人あぶれてしまうのだ)

 なので、現在は僕達と姉のパーティ―とラミィさんアンリさんのパーティーで行動をしている。

 

 僕も新しくした弓と手甲の感触を確かめながら進んで行く。うん、なかなかにと言うか、かなりいい感じで戦えてるので文句なしと言ったところだ。

 僕は【遠見】で西の方を見ながら、索敵で周囲を確認しつつ街道を進む。

 

 そろそろアイツが出現す(でてく)る場所となる。

 

「マスター!来たのです!ウマなのですっっ!!」

「グッグッグッ!!」

「っ!やんよ~」

 

 ララとウリスケが興奮気味に声を上げ、アトリも滾る様な声を頭の上で上げている。

 

「え?何々っ?」

「どっ、どしたんだ!?ラギッ?」

「ごめんサキちゃんラミィさん。ちょっとウマ狩ってくるんで時間ちょうだい!」

 

 姉とラミィさんがこちらを困惑の表情で見る中、僕等はやって来たサーバルゼブリアンへと攻撃を開始する。

 

『ベゼエェェエエエエ~~~~ッッ!??』

 

 鎧袖一触。僕達の攻撃にウマはあっさりとその身を光へと変えて消えて行った。

 

「よしっ!ウマ肉ゲットッ!!」

 

 ホロウィンドウに表示されるリザルト画面を見て、ウマ肉をドロップした事を確認して僕は拳を握り締める。やた。

 

「マスターっっ!群れなのです!あっちにウマの群れがいるのですっっ!!」

 

 ララが少し上空に上がって西の方を見て叫び声を上げる。

 

「行くのです~~~~~っっ!」

「グッグッグッグ~~~~~っっ!」

「おお~~~っ!!」

「ちょ、ララちゃんっ!?」

 

 ララ達が声を上げて飛び出して行く。姉が声を掛けるも止まらない。もちろん僕も止まる訳にはいかない。

 

「ごめんサキちゃん。ちょっと食料うまにく確保してくるから!じゃ!!」 

 

 ララとウリスケに続いて、僕も街道を外れて草原へ向けて走り始める。草がちょっと邪魔いけど気にしない。

 

「あ、ラギくん、待って~~~っっ!」

「ほら、アンリ。あたしらも行くぞっ!」

「えぇ~~~………。あ、ルリちゃん!」

 

 僕等の後に姉とラミィさんが続き、飛び出したルリの後をアンリさんが追い掛ける。 

 そして僕達は、サーバルゼブリアン(うまにく)とそれ以外を狩って狩って狩りまくって行った。

 

「ウマ肉祭りなのですっ!」

「グッグッグゥ~~~っっ!」

「う~~ま~~~っ」

 

 周囲にモンスターがいなくなった時点で、ララ達が勝鬨の雄叫びを上げる。

 いっや~~、狩った狩った。

 それなりにドロップ(うまにく)が手に入ったので、僕もホクホクだ。

 と周囲を見回すと街道を随分と外れてしまい、草原だらけの景色となっていた。

 

「ここ、どこだろう」

「南街道を大分西に行ったとこなのですマスター。やっちゃったのです」

 

 ララが僕の横に来て、てへっと舌を出す。うん、やっちゃったな、確かに。

 

「グッ!」

 

 でも悔いはなしと言った感じで、ウリスケがサムズアップする。

 

「なぁサキ、ここって………」

「そうね、以前なら侵入不可領域だけど………」

「普通に進めてるよな………これ――――」

 

 何やら深刻そうな表情で、姉とラミィさんが話をしながら一歩足を踏み出す。

 すると地面がグララと震え揺れ始める。

 

「うわっ?地震っ!?」

「ルリちゃん大丈夫ですよ~」

「ってか、何だあれっ!?」

 

 ラミィさんが指差した上空には、巨大なフードを深くかぶった紫のローブ姿の人物が浮かび上がり言葉を発してきた。

 

『我はぁ~~~~いにしえの隠者ぁ~~~タァ~~~~ジィ~~~マアアアァ~~~ファア~~~ルゥ~~~~~。我がぁ~~~領~~~~~域を~~~侵~~~~すぅ~~~ものはぁ~~~~。地の底へ落ちるがいい~~~~~~っっ!!』

 

 その声とともに地面に巨大な黒い穴がぽっかりと開き、僕達はその中へと吸い込まれる様に落下して行った。


「うわぁっ!」

「マスターっ!」

「グゥッ!?」

「ふぉ~る」

「チャッチャッチャ!」

「だいじょうぶですよ~。ルリちゃんは私が守りますからね~」

「やっぱ、こんなのつくんのアレよね~~」  

「タァ~~~ジィ~~~~マァアアア~~~~~っっ!ま~~た~~お前ェ~~~~かぁあ~~~~~っっ!!」

 

 ラミィさんの叫び声が、暗闇の中エコーを伴って響き渡った。

 

 


(-「-)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます


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