19.初めてのフレンド登録と新しいスキル
パパパーパパパ・パパパーン
《イベント S04
裏路地の露天商を探しだせ!
クリアしました EXP 2000 3000GIN を 手に入れました》
[レベルアップしました レベル 8 に なりました]
どうやらイベントをクリア出来たらしい。今回は何気に苦労した気がする。何かの制限があると難易度がやたらと上がる感じを受ける。何にせよヨカッタヨカッタ。
「やったな!ララ」
『やったのです。マスター』
イェ〜イとおたがいグッジョップポーズを交わす。
『おニィちゃん。誰と話してんのか分からんけど、オイラ寂しくて死んじゃうよ〜』
「あ、すみません。やっと、ここに来れたので、つい嬉しくて」
『え、そうかい?そんな事を言ってくれるなんて嬉しいねぇ〜』
「いえいえ。ところでコチラは何を扱ってるんですか?』
『これは失礼。(キリッ)では自己紹介をば。わたくし、ファントム・ベンダーの店主をしておりますバロン・ローバンと申します。この店で扱っている商品は、武器、防具、道具、スキルなどありとあらゆる物を取り揃えております。お客様のご入用はどのような物でしょうか』
馴れ馴れしい口調から急に慇懃な態度になるのには驚いたけど。スルースルー。
でも、ありとあらゆる物ってとこはなんかスゴイ気がする。ならば聞くだけ聞いてみようと思ってバロンさんに尋ねてみる。
「ご丁寧にありがとうございます。僕はキ、…“ヤマト”と言います。実は小妖精が装備できる防具か、それを作れるスキルが無いかと思いまして」
『ほう、成る程。先程どなたかと話をされていたのは小妖精でしたか、ほうほう。宜しかったらお姿を拝見してもよろしいでしょうか?』
うーん、マーカーもないし、プレイヤーかNPCかも分からないけどララを見て貰わなきゃどうしようもないか。
ララに頷くと、ララも『わかったのです』と言って不可視化を解く。
『はじめましてなのです。ララなのです』
突然現われるララに少しだけ驚くバロンさん。
『初めまして。バロン・ローバンと申します。ララ様』
『バロンさん。ララでいいのです』
『では、ララさんと呼ばせていただきます』
「僕も様は付けなくていいですよ」
僕も先回りして釘をさしておく。
『分かりました。ヤマトさんで宜しいでしょうか?』
「はい。それでお願いします」
『ではララさんの防具ですが、こちらの中から如何でしょうか』
ウィンドウが現われ、防具類がズララと並んでいる。ってかあるんだ防具……。しかし、お値段もなかなかお高い物ばかりだ。
「ララ。どれがいい?」
『マスター。けっこーお高いのです』
「お金は頑張って稼げばいいさ。安心にまさるもの無しだよ」
『わかったのです。ならばこれをお願いするのです』
ララは2番めに安い小妖精の革よろい+2を選ぶ。気遣いの出来るいい子だ。
「これでお願いします」
『かしこまりました。それでこちらが生産系のスキルになりますが、他のスキルもご覧になりますか?』
少し考えて、どんなものがあるのか興味があるのでお願いする。
「お願いします。出来れば生産系と別々に見せてもらえますか?」
『はい、かしこまりました。ではどうぞ』
ウィンドウが2つ同時に表示される。生産系とその他のスキルだ。
僕が持ってる【調薬】から【鍛冶】【木工】【栽培】【縫製】など生産系がたくさんある。【調理】を見つけ食指が動くが、ゲームで料理ってと思い諦める。
生産スキルってたくさんあるんだなぁーと思って見てみるが、よく考えたらララの防具はあったんだから、生産スキルは必要ないんじゃと思い立ち買うのをやめることにする。
次にその他のスキルを見てみる。武器スキルやら防御スキルとかこっちも多種多様で目移りしてしまう。
でもこんなにスキルがあってもスロットの数が足りなくなるんじゃ、どうしようもない気がする。せっかくスキルLvを上げても別のスキルに変えたら、今までの経験値が無駄になるんじゃなかろうか。
『だいじょ〜ぶだよ。冒険していくうちに色々解って来るからさ。おニィちゃん〜』
僕の考えを読んだかのようにバロンさんが話し出す。面倒臭くなったのだろうか、口調の変わったバロンさんに苦笑で返す。
「……ハハハ」
ウィンドウをズラズラ動かし見ていると、とあるスキルが見に入ってくる。
「【鑑識】?」
刑事ドラマに出て来るアレだろうか?
『ああ、それは鑑定と識別を一緒にしたお得スキルなんだよ〜。ちょっと値は張るが、オイラはお買い得だと思うよ〜』
なるほど、アイテムやモンスターの情報を得るにはけっこー良さ気なスキルっぽい。
でも、もう丁寧語使うのやめたんだろうか。2重人格者!?
「じゃあ、さっきの鎧とこの【鑑識】を下さい」
『はいよ〜。2つで50000Gだよ〜』
値段通りの金額を支払う。一気に減ったものだ。ま、頑張って稼ぎましょ。
『あと、サービスでこれつけちゃうよ〜。はい〜』
とウィンドウにメッセージが現れる。
[【従魔】スキル を 手に入れました]
【従魔】とはまた物騒というか怪しげなスキルを………。まぁ、くれるというのならありがたく頂こう。
「どうもありがとうございます」
『ん〜、かたいよ〜おニィちゃん。もっとフレンドリ〜に行こ〜よ〜。フレンドリ〜に。お、ならフレンド登録しとくぅ〜?』
「フレンド登録?」
『プレイヤー同士がメールやチャットを出来るようにする為の登録です。お互いが了承しないと登録できないので、知らない人とはメールやチャットが出来ないのです』
へーそんな機能があるんだ。そういえばララはいるけど、プレイヤーとは絡まれてばっかだったな。ゲームでボッチだったとは、全く気付かなかったのでガクリと肩を落とす。
『マスターにはララがいるのです』
『な〜おニィちゃん。フレ登録しよう〜ぜ〜』
いかん落ち込んでる場合じゃなかった。2人の言葉に気を取り直す。
「出来るのでしたらお願いします」
『まだかたいよ〜。んじゃおくるよ〜』
画面にメッセージが現れる。
[□ □ バロン と フレンド登録しますか?]
〈Yes〉 〈No〉
まぁ、Yesだよな。すぐにYesを選ぶ。
『オッケ〜。んじゃ店開く時は連絡するよ。アデュ〜』
するとバロンさんは透けて溶けるように消えて行った。
「なんなんだろうね。あの人」
『謎なのです』
ララの言うとおりだ。初めてのフレンド登録はこんな風に終わった。
イベントも何とかクリア出来たので大通りに戻ることにする。でも、ただ戻るのも面白くないのでマップを埋める為にも行ってない所を進むことにする。
その前にララの装備とスキルの確認だな。
「ララ。防具の装備はララに渡せば出来るのか?」
『いえ、マスターが許可してくれれば、そのまま装備できるのです』
ほう、便利機能ですな。
「そいじゃ、装備してみてララ」
『了解なのです』
その言葉とともにララの胸元が光輝き収まると、その胸部には革のが装備されていた。
「おーかっこいーぞララ。具合はどうだ?」
『ありがとなのです。問題ないのです』
ララがくいっくいっと腰を左右に振りながら、調子を確かめる。
Aラインのワンピースに革のよろいが妙にマッチしているのが不思議だ。くるくるダンスをするように回転する。ララのはしゃぐ姿はとてもかわいい。
「あ!ララの武器買うの忘れた!」
防具のことばかりに頭がいってて武器のことをスッカリ忘れていた。
『マスター。ララは魔法を主に使うので武器はいらないのです』
そっか、下手に攻撃して反撃食らったら大変だもんな。
そんな納得をして、次はスキルの有効化を行う。サブスキルに空きがあるので【鑑識】と【従魔】を有効化させる。
「よし出来た。んじゃ、ララ行こうか」
『はいなのです、マスター』
袋小路を出て広間から大通りへと抜け出るために南へと足を進める。
裏路地を進んでいくと、モンスターや宝箱に出会うこととなった。出てくるモンスターは、さっきのロバーラットやエッヂマウス、そしてダスクバット。どうやらイベントとは無関係に出てくるみたいだ。
ララと逃げた時は全くモンスターなど出てこなかったのに、こっちは宝箱もあるし、まるでダンジョンのようだ。
宝箱はポーションやGIN等が入ってることが多い、といっても10コは見つけてないので現状はそんな感じってだけど。
そう!ただ今絶賛迷走中なのである。来た道を戻ってたらこんな事にはならなかったと思うけど後の祭り。
マップを見ても南に向かっているはずなんだけど、プロロアの街って本当広すぎだよね。
『大丈夫なのですマスター。もうすぐ出れるのです』
安心させるようにララが声を掛けてくれる。モンスターのLvは上なのに、ララのおかげで何とか倒せてる。エッヂマウス5匹出て来た時は、どうしようかと思ったよ。魔法を複数匹に当てたりして、まさしくララ無双状態。(ってほどでもないか)
裏路地をそんな風にグルグル巡り曲がり角を左へと進むと、薄暗かった前方に光が見えてくる。
『出口なのですマスター』
ララに促され通路を進む。出て来たそこは西大通りのようだ。左を見ると時計台がそびえてるのが見て取れる。
「やっと出れた〜」
安堵の溜め息をはへ〜と吐き出す。
『おつかれさまなのです。マスター』
「ほんっと、疲れたよ〜。ララちょっと休憩な」
『はいなのです』
少しばかり休憩する事にする。コントローラーとヘッドセットを置いて、ペットボトルのお茶をクイッと一気に飲み干す。
姉が僕の太ももを枕にしてるので動けない。って姉を見ると目を開けてテレビを見ていた。
「サキちゃん。目ぇ覚めたなら起きてくれる?動けないんだけど」
「いや、この感触が……」とか言いながら、しぶしぶ起き上がる。疲れてるならベッドで寝ればいいと思うのだが、案外こういう場所でこそ寝慣れてるのだろうか、でもちょっと心配だ。
「サキちゃん疲れてる?調子よくない?」
僕は心配して左手を姉のおでこに押し当てる。熱は無いみたいだ。姉は気持ちよさそうに僕の左手に体を預けてくる。ちょっ、重いよ!
「ん〜だいじょぶだよ〜」
緩んだ表情でまた寝そうになる姉に、押し返しながらおでこをぺちぺちと叩いて覚醒を促す。「いったーい」と言って僕の左手を払いのける。
「はいはい。それより仕事はいいの?」
「うん、今日は特に何も無いから大丈夫だよ。だからキラくんの隣でゲーム見てていい?」
上目遣いで姉がお願いしてくる。別に構わないけど、ゲームやってるの見られるのって気恥ずかしいものがある。
「まぁ……,いーけど。人のプレイ見て面白いの?」
「ひとそれぞれね。自分のプレイネット配信したりするし、見るのも見られるのも人次第じゃない?キラくんのはあたし見ててたのしーし」
さいですか。名目上テストプレーだし、しょーがないか。
「ほんじゃ、再開しますか」
ヘッドセットを首にかけ、コントローラーを掴む。
『はいなのです。ギルドに行ってクエストを請けるのです』
ララが次の行動を指示してくれる。ありがたや。今が午後3時を過ぎたところ (裏路地ながっ)だから2時間弱はケームをやっていられる。
“ヤマト”を操作して時計台広場まで行くことにする。
時計台広場には、黄色のマーカーのNPCと、“ヤマト”と似たような格好のプレイヤーがちらほら見かける。みんな誰かと組んでるらしく、ソロプレイヤーは僕だけみたいだ。
本当にいなくなったんだなぁと、あの喧騒を思い出して安堵する。
それじゃ冒険者ギルドに行くとしよう。中に入るとやっぱり閑散としている。受付にはあのギルド嬢がポツンと座っていた。
そちらには向かわず依頼書の貼られてる掲示板へ行く。ランクが一番低いところは、似たようなクエストが結構ある。ウィンドウ表示されたものを見てつぶやく。
「ワイルドッグ10匹とか、ラッシュボーア5匹とか、あっ、薬草20コなんてのもあるな。ララ持ってる薬草でクエスト請けてもいいのかな?」
『問題無いのです。ギルドポイントも貰えるのでwin−winでみんなハッピーなのです。ただ買い取りより値段が安いのです』
メリットデメリットは何かにつけあるし、どっちを選ぶのかは僕等だから深く考えることもないだろう。
「よし!じゃ薬草とこのラッシュボーアの討伐を請けてみよう」
『はいなのですマスター』
受付まで依頼書を持って行き薬草のクエストは受理した後、現物を渡して終了させる。受付嬢は丁寧に応対してくれた。何があった?
ラッシュボーアの討伐の依頼を受理して、冒険者ギルドを出て東門へと向かう。ラッシュボーアが出るのは東南の草原らしい。屋台でいろいろ買い込んで食べ歩きながら歩いていると、ララが真剣な表情で話しかけてくる。クローズアップ画面のどアップだ。
『マスター!お願いがあるのです』
口元に食べ残しが付いててはシリアスになりきれてない。僕がそれを教えると、あわあわして握りこぶしでぐしぐしとそれを取る。何気に細かい描写だ。
まぁ、しまらないのも僕達らしくていいだろうと思った。
(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます