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187.ラビタンズネストの新住人?

 

 

 たかってくるモンスターを打倒しながら(主にウリスケが)僕達がラビタンズネストに戻ると、ルリと一緒にいる見知らぬ少女?が広場にいた。

 年の頃は13、4才くらいで、金髪が前と横からちらりと覗かせ眠そうな半眼でこちらを見ている。

 太っているのか痩せているのははちょっと分かり難い

 何故かといえばだぶだぶの真っ白なウサギの着ぐるみを着ていたからだ。

 その少女は僕達に気づくと、広場のベンチから立ち上がりペコリと一礼。頭のウサミミも一緒にひょろんと動く。

 

「おいっす。ササ―――こほん、ラギカサジアス様ですね。あたし――私、キザキAI研究所より派遣されてきたAI、ディセリアと申します。しばらくの間例の物のモーションモーメントの監督を担わせていただきます」

 

 一礼の後そう言ってビシッと敬礼をして挨拶をしてくるものの、着ぐるみなので微笑ましいというか和んでしまうというか、つい笑みが漏れてしまう。

 

「では、ララ達も!―――」

 

 あー、アレやるんだ………。

 僕が挨拶をするより早くララ達がしっかりかっちりやりました、はい。しかもアクション増えてるし、そんでルリまでが加わっていたりする。いつ教えられたのやら………。

 まぁ、本人たちが気に入ってるんなら構わない。(ただし僕はご遠慮いたす!)

 

「ふぅおおぉっっ!!」

 

 ディ、ディセリアさんが半眼を少しだけ見開き感嘆の声を上げる。

 そして目を閉じ眉間に皺を寄せて少しだけ悔しそうにする。何故に!?

 と思ったけど「こ、こんな挨拶があろうとはっ!くぅっ」と小さく呟くのを耳にして、ああと少しだけ納得する。

 多分そういうお年頃なのだろう。ちがつくヤツね。

 ん?待てよ。さっきAIって言った様な………まぁ気にすまい。

 

 要は会話と意志の疎通が成立すれば、出自は問題ないって話だ。僕にとってはだが。

 とは言え肝心のウサロボ用の身体はどうなってるのか、僕はディセリアさんの周囲を見回すも何もない。

 或いはこっちで用意するものだったのかと思い至りララに聞こうとすると、その前にディセリアさんが話を始める。

 

「そうでした。そちらの要請でこちらでここでの身体ボディを製作しています。ちょっとお待ち下さい」

 

 そう言ってディセリアさんがホロウィンドウを出して何やらちょいちょいと操作をすると、目の前に3つの光のシルエットが出現してその姿を現す。

 

「ウサロボさんなのです!」

「グッグッ!」

「お〜!」

「チャ?」 

 

 ララ達がそれを見て喜声を上げる。(ルリは首を傾げてるけど)

 まーそれは僕が現実リアルで作り上げたまんまのウサロボだった。おそらくデータが姉を通してあっちに行ってたんだろう。

 だけど、ここじゃちょっと雰囲気ぶち壊しになってるのは仕方ないかな。

 

「おうさま〜」

「おうさま〜」

「これな〜に?おーさま〜」

 

 そこへちびラビ達とラビタンズがやって来て静かに佇んでいるウサロボを見て聞いてくる。

 

「うん、これは僕が作った人形かな。動きに問題がないかどうか動かすために、そのお姉ちゃんにお願いしたんだ」

「「「お〜〜〜っ」」」

「ほほう。ゴーレムというものですかな。大したものだ」

 

 ちびラビ達がウサロボの前に立ってしげしげと見て感心し、この場にやって来たサギゥさんが訳知り顔でそんな事を呟いている。

 

「ゴーレム………ですか」

「さよう、石や木でこの様なものを作り使役すると聞いた事がありますのじゃ。よもや王がそのようなお方であったとは………」

 

 いいえ〜全然違いますぅ。かと言ってここで本当の事を言っても意味がないので、愛想笑いでやり過ごしとこう。

 全部で3体か。ササメさんのは後からの発注だったから話が行ってなかったんだろうな。

 あっちはあっちでテキトーに詰めていきゃいいか、と考えながらウサロボを回し見る。

 

「………やっぱここじゃこれ不自然ですねー。では、こうしてっと」

 

 ディセリアさんがウサロボを見て何やら呟いてまたちょちょいとホロウィンドウをいじると、ウサロボの足元からポリゴンが舞い上がり張り付いてラビタンズとはまた違った2本足で立つウサギさんへと変化する。

 

「おおー」

「「おー」」

「チャ?」

 

 茶色の毛皮に見を包んだその姿は、つぶらな瞳が何ともラブリーだ。

 ちびラビ達がそれぞれで感嘆の声を上げている。

 

「マスター、工房あっちのものと繋げ(リンクさせ)るのです」

「うん、ララお願い」

「はいなのです。むむぅ〜。………繋がったのです!」 

 

 ララが目を閉じ少し唸りながら両手をウサギさんにかざすと、すぐに反応が訪れる。

 まるで命が宿ったかの様に、3体が動き始めた。

 何故かそれぞれ別の方向へと歩き出す。

 だけど、ウサロボからの動きのフィードバックのせいか、その動きに滑らかさはなくぎこちなくもある。

 この辺りは現実での部品とシステム(僕が作るもの)の限界と言えなくもないかなと、ちょっとだけへこみつつ様子を見ていく。 

 

「お~!」

「「お、おお~~っ!!」」

 

 ちびラビ達が声を上げながら、それぞれのウサギさんの後ろについて行進している。ら、らぶりー。

 

「チャ、チャッ!」

 

 はいはい。ルリは充分かわいーからそんな事しなくていーよ。

 ウサギさんの後ろに続くちびラビに、ついて行こうとするルリをひよいと抱え上げて肩車をする。

 

「チャ!チャチャチャ!」

 

 なんかルリがめっちゃ大喜びで興奮してる。すまぬアトリ。しばらくはウリスケの頭にお願いです。 

 

「グ!」

「おけ」

 

 僕の考えを察した様にウリスケとその頭にのったアトリが、右手?を上げてサムズアップで応えて来た。

 何とも大人な対応だ。でも後でちゃんとフォローしとこう。

 そして、てんでバラバラな動きをするウサギさん(工房でも同様の動きをしている筈)にディセリアさんが手を叩いて動きを止めさせる。

 

「はいはい。注目、そして整列〜」

 

 ディセリアさんが声をかけると、ウサギさん達は動きを止めディセリアさんをくいっと見ると、いそいそとその前に整列を始める。おおぅ、何かすごいな。

 

「おお、ゴーレム使いはあの方か」

 

 サギゥさんがほうと呟く。まーそういう事で。

 

「それで、何をやらせればいいのでしょうか?」


 ディセリアさんが僕達に向き直り聞いてきたので、そうだと想い出してメニューを開いてメールフォームに予め書き込んでいたそれを送る?あれ、どうやって送ればいいんだ?


 

「マスターララが代わりに送るのです。てやっ!」

 

 ディセリアさんのアドレスも何も知らないのに、ララがあさっリと送ってしまった。てやっのひと言で。………ま、いっか。

 要はAIがVR空間での活動と、現実でウサロボに入った時の動きの齟齬を調整しようというだけの話なので、適当に動き回ってウサロボの動きのデータを取ってもらうのが目的なのだ。

 何事にもストレスフリーは大切です。それは人も機械も同じだろう。

 

「………ふむふむ、分かりました。しばらくこの通りにやらせてみます」

 

 送られたリストを目にしてディセリアさんが言ってくる。

 正直助かります。

 

「ありがとうございます。それでよろしくお願いします」

「グッグッグ〜ゥ」

 

 話が一段落したところで、ウリスケがお腹を押さえて声を出した訴えて来た。

 

「マスター!ウリスケさんがお腹が空いたと言ってるのです。ララも同じです!」

「いかど〜」

 

 確かにログインしてから、ひと騒動があったのせいで満腹度の補充はしてなかった。

 せっかくだし何か作ろうかな、であるならばせっかくだしディセリアさんが食べたいものを聞いてみようか。プチ歓迎会って事で。

 わざわざゲーム(こっち)に来て貰って申し訳ない部分もあるのだから。

 

「えー……ディセリアさんは何か食べたいものとかってあります?」 


 僕がそう聞くと、ディセリアさんはくわっと目を見開き喰い気味に寄って来て僕へと問い掛ける。

 

「ゲソ!ゲソはありますかっ!タコの足かイカの足です!!」

「げ、ゲソ………ですか?う〜ん……ゲソはさすがに無いかなぁ………。ララ知ってる?」


 ディセリアさんのどアップの顔に少し引き気味になりながら答えるものの、物知りララさんにちょっとお訊ね。


「この辺りは内陸部なのです。魚介類は残念ながら見かけないのです」

「そ、そうですか………」

「ご、ごめんね………」

 

 目に見えてあまりにもガッカリと肩を落とすディセリアさんについ謝ってしまう。そっかぁ、ゲソが好きなんだ。

 だが無いものは仕方ない。或いはもしかしたらデヴィテスに行けば案外あったりするかも知れない。

 でっかい湖か海みたいなのがあったし、ゲーム(ここ)なら淡水に棲んでるタコかイカのモンスターもいるかもだ。

 変に期待させていなかったら嫌なんで言わないけど。

 ならばと今日買ったものと元からあるものをホロウィンドウで見ながら、考えて作ってみる事にする。

 

「シチューかな………」

「いーのですっ!マスター。ばっちこいなのです!」

「グッグッグ!!」

「しちゅ〜っ!」

「チャ?」

「支柱?」

 

 僕の呟きにララ達が目を輝かせて喜びを表す。

 ルリとディセリアさんは首を傾げている。ん?シチューを知らないのか?ディセリアさんは。

 まぁいいや。とっとと作るとしましょうか。

 料理の在庫もあるにはあるけど、せっかくだから作った方がいいだろう。

 僕はテーブルとコンロ、大鍋を出して調理を始める。


 実はこの前【調理】スキルがLv30になってから上がらなくなったのだ。(横にMax!って表示が出てた)

 なので調理の上位スキルをスキルショップで買う必要があるらしいんだけど、さすがにプロロアの街にはない。

 まぁそれなりに作れてるので、特に必要と思っていないのが実情だ。

 

 だから【調理】スキルがカンスト?した今はこんな事が出来たりする。

 大鍋の上にジャガイモっぽい野菜を手に乗せて包丁をちょんと当てると、バラバラと乱切りにされて大鍋へと落ちていく。

 もはやも魔法ですね。便利便利。

 

 他の野菜も同様に切っていき、ワイルブヒブのバラ肉とワイルブモーのひと口大の塊肉を大鍋に入れてかくく炒めてから、さっき買った生乳を注いて粉チーズをドバっと放り込んで煮ていく。

 ある程度煮込んでから【時間短縮1/5】を掛けてさらに煮込んで出来上がりだ。

 

2種類の肉入野菜ごった煮の

      クリームスープ:ワイルブヒブ、ワイルブモ―と各種野菜を

              生乳と粉チーズで煮込んだひと品 Lv6 ☆☆

             

              技術の粋を持って適当に作り上げた逸品

              程よく煮えた野菜と2種類の肉が混ざり合った

              トロトロスープはほっこり身体を温めてくれる

              (HP+38 満腹度 24% 耐寒(微)1h)

 

 シチューじゃなくてクリームスープになった。

 確かに手を抜いたと言われればそうだけど、テキスト文が相変わらずなんだかなぁだ。

 まぁ僕としては美味しく食べられればいいのだ。まずはちょいと味見を行きましょう。

 

 よく煮えたシチューの入った大鍋に、木匙を浸してスープをすくいひと口食べる。

 とろりとした食感と乳とチーズの風味が口に広がる。

 うん、まぁまぁかな。

 後は買い置きのおパンを出して皆に配るとしよう。

 

「は〜い、出来たよ〜。皆ぁ〜並んで〜」

 

 ウリスケに集会所から持って来てもらった深皿へシチュー(でいいや)をよそって皆へと渡していく。

 もちろんディセリアさんにもだ。

 

「これは………?」

「えー……クリームスープですね。これで掬って食べてみて下さい。あとそのパンを浸してもいけると思いますよ」

「はぁ………」

 

 テーブルに山と積まれたパンは、パン屋のオバちゃんに頼んで作って貰ったふかふかのものだ。

 ディセリアさんはベンチに座り周囲の様子を窺いながら、恐る恐るシチューを木匙で掬って口へと運ぶ。

 木匙を咥えたまま目を見開いて、そのままシチューを凝視する。

 そこからは怒涛の勢いでスープをかき込み、次に野菜を口に入れしみじみと咀嚼し始める。

 その表情はめっちゃ蕩けるかの様に崩れている。

 そして最後に残っと肉をかじりもぐもぐと咀嚼すると、急に僕の方を見てふんすふんすと鼻息を荒くして首を縦にブンブン振って頷いている。


 旨いと主張してるのかな?と思い見てると、全てを平らげた皿を見て哀しそうな顔をする。何とも面白楽しい人である。

 案外食事をした事が無いかもだ。

 本来AIが食事という概念は知識はあっても必要性は皆無だろうから。

 

「お替りもあるから、欲しい人は並んで〜」

 

 僕がそう言うやいなや、ディセリアさんがしゅぱっとこっちにやって来て皿を差し出してくる。

 

「おいしい?お替りおねがいします」

 

 何故に疑問形なのかは分からないけど、皿を受け取りシチューを注いでディセリアさんへと渡す。


「よかったらパンも食べてみて」

 

 僕の言葉にウンウンと頷きを返して、ディセリアさんはパンを幾つか手に取ってベンチの戻りパンをひと口。

 咀嚼してこっちを見てフンフンと頷く。どうやら気に入ってくれたみたいだ。

 ララ達は相も変わらずの食いっぷりで、時をおかず大鍋は空っぽとなる。

 美味しく食べてくれるのを見ると、嬉しさと有り難さが胸の奥に湧き上がり思わず口元も緩んでくる。

 

「お―――っす!ラギ、久し振り〜って………なんか食ってたんか………」

 

 入口からやって来たラミィさんが、僕に挨拶をして空の大鍋を見てひざまずく。前にもこんなんあったような。

 仕方がないのでまだあったパンを、薄めに切ったワイルブヒブの肉を焼いて醤油とハチミツで味付けてそれをパンに挟んでラミィさんへと渡す。

 

「ありがてぇ〜、ありがてぇ〜」

 

 キャラ崩壊してるラミィさんの後ろに、ディセリアさんを始めに皆が並んでいた。まだ食うんかい君達は。

 とりあえず一巡するまで作り上げて僕がひと息つくと、ラミィさんがとんでもないひと言を放ってきた。

 

「なんかプロロアの街でラギ達を探しまくってるPC連中がいたけどなんかあったんか?」

 

 どうやらさっきの騒動で、プロロアにPC(プレイヤー)が大挙して押し寄せているらしい。

 ………こりゃあ、プロロアにはしばらく行けないみたいだ。はぁ………。

 

 

 


(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

 

ブクマありがとうございます!感謝です! (T△T)ゞ

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