183.キラくんの行動を観察する その32
姉回です(変たry)
つらたんです。
めっちゃつらたんです。
いい年こいて若者言葉無理に使って、ぷぷぷとか言われてもそうなのだから仕方ない。
アラサーだって言う時は言うものなのだ。いつでも心は17歳というじゃないか。
そうなのだ!女はいつだって乙女なのだ!!それはオバサンになってもお婆チャンになっても不変なものなのだ!
とは言っても、さすがに心と身体は別物で、肉体は年相応にそうなるものではあったりする。(おと◯えたとか言いたくはないのだ!)
なので、昔なら三徹四徹してもあっけらかんとしてたけど、今はそうもいかないのが現状だ。
何が言いたいのかといえば、最近ちょっとばかり早起きが出来なくなってしまったのだ。
キラくんが活動を始めるのが大体5時過ぎで、日課をこなして大体6時を半分過ぎた頃から朝ゴハンの用意をし、それを終えると7時前。
朝食を終えるとあとは買い物かガッコーか、今なら工房にこもったりするだろう。
そう最近のあたしは目が覚めると大体8時過ぎとなっていたのだ。
起きてすぐに愛車を飛ばしても8時半頃になる。確かにこの時間でもキラくんがいれば問題なく相手してくれくれるだろうけど、出掛けてしまっていては空振りになる。
かといって前もって連絡を入れるのはあたしのプライドがダメだと言っている。(キラくんにはいつでも驚いていて欲しいのだ!)
なので近頃は朝も行けず、昼も夜もいろいろ立て込んでしまいキラくんのアパートに行けない日々が続いていたりする。
つらたんである。
それなりに充実はしていても、やっぱりつらたんなのである。
それなら昼や夕方に行けばいいだろうと考えもするだろうが、そっちはそっちで他にやる事があっておいそれと抜けられない状態だったりする。
バンゲさんのとこでアヤメちゃんに指導したり、お得意さん廻りをしてプレゼンしたり、税理士さんのとこに言って申告の相談したりとてんてこ舞いなのだ。
よって帰りはいつも午前様と。忙しいのはありがたいけど、こう毎度毎度だと身体がしんどくなって来る。
なのでつらたん。
別に身体がしんどいのはきつくはあるが、辛くはない。
何よりつらいのはキラくんに会えないことだ。ギュウッとしたりくんくんしたり体温を感じたり出来ない事がないよりつらたんなのだ。(変態ゆうな)
それにキラくんとこから交換したシャツやなんかもストックが切れかけている。
近々ちょっと合間を見てキラくんとこに行く必要があるのだ。すぐにでも。
よし!とそんな風に心に決めると、不思議と気分と身体が軽くなった感じがする。
何とも現金な自分に苦笑しながら、側で作業をしているアヤメちゃんの様子を見る。
いやまぁ、一日会ってないだけなんだけどね。
昨日今日とちょっとばかり情緒不安定なのだ。
でも〇ブとか脳筋とかのせいで、どうやら思っていたよりかなり精神に悪影響を受けてしまっているみたいだ………。
普段はそんな事ないんだけどなぁ………。
ついでにミラの欲望丸出しの企画の為に午前様だった。
つーか箇条書きだったとは言え、あの短時間で書き上げるとかどうかしてる。
そして集められたスッタフまでもが興に乗って、あらゆるアイディアが出され、一気にまとめ上げられて行った。
本来企画ってこんな風に上げるもんじゃないのになーとは思うんだけど、あたしの感覚が古いのかな。
その後すぐにサンプル版を作り始めた事にも呆れたが、そこまで付き合いきれなかったのであたしはとっととお暇したのだ。さて、どうなった事やら。
「あわわ?はれっ?えっ、ええっ!?」
突然ホロウィンドウの画面に変化が起こり、表示されてる数字がドンドンと下がっていく。
暴落なんて滅多に起きるもんじゃないけど、起きる時は起きる。
実際こういう時は、様子見しかないんだけど人は変化に弱い。
この手で1番悪手なのが、下がったからと言ってすぐに売り払ってしまう事だ。
もちろん限界線はあるしそれは見極めなきゃだけど、現状はそれ程の喫緊のものではない。んだけど………。
「はれ?あっ、ああっ………」
しっかりアヤメちゃんもやっちゃってるねぇ。もちろんコレをわからせる為にやってたりするんだけど。
程なく下がり続けていたものが上昇へと転じ、元値を超えて行く。
本来こんな急激な動きはないのだけど、より実感させるには効果的ではある。
「はい。終了〜」
あたふたしてるアヤメちゃんへあたしが終わりを告げると、アヤメちゃんは肩を落として溜め息を吐く。
多分GBタウンで集めたお金もこんな感じで失くしちゃったんだろうなぁと、何となく想像できた。
注意してもいいんだけど下手にそんな事を教えたとしても、あんまり身に付かなかったりするのだ。
あたしが知ってるだけで、最低5人はそんな事を繰り返して人生を棒に振っていたりするからだ。
人間痛い思いをしないと身に付かないこともある。(アヤメちゃんは身に染みているとは思うけど、まぁやっちゃってるし)
それに今日は午後から講義あるというので、今からだとお昼を摂ってギリギリだろう。
「アヤメちゃん、行くよ」
「は、はいっ!サキさん」
昨日から名前の呼び方は下の方で呼んでねと言っている。
恐縮するアヤメちゃんを送り届け、今日も今日とてお得意様巡りだ。
決算書の提出と報告。年度末はどうしてもこの手の事に忙殺されてしまう。
特に企業系はともかく、個人系は年配の方が多く世間話を交えながらになるので時間が掛かってしまう。
「なんじゃ、今日は食いもんないんか」
「ありません」
「あら、あのお漬物ないの?」
「ないです」
あちらこちらに行くたびに、そんな会話が繰り返された。キラくん、恐るべし!
途中ミラから母さんを紹介してくれとメールが入って来たりした。
何でも例のVR料理ソフトにいろんな料理研究家のデータを入れたいという事で、あちこちに話をしてるみたいだ。
………一体何を目指してるのやら。
とは言え少しだけでも関わった身としてはそれなりにお手伝いという訳で、母さんへ連絡をしてから直接頼みなとミラへ返信しておく。
そしてコマネズミのように動き回って、ようやくマンションへと帰り着く。
リビングに入ると、テーブルの上にあるヘッドセットとコントローラーが目に入って来た。
はぁ、つらたんです。
思わず吸い寄せられる様に、ふらふらとコントローラーを手に取りじっとそれを見る。
次の行動に移ろうとした時、レリィから声を掛けられる。
『あるじ様、ララ様より連絡が入りました』
はっと我に返り、慌ててコントローラーをテーブルへと置く。
やっべ。頬擦りするとこだったわ。いかんいかん。これ絶対明日はキラくんとこに行かなくては!
あたしは改めてそう決意をして、レリィへと確認する。
「ララちゃん、何だって?」
あたしはリビングを出て、自室で着替えながら話を聞く事にする。
『ラギ様からレイの衣装についてズボンとスカートのどちらが良いかとの事です』
ほほぅ、そんな要望も聞いてくれるんだ。あたしは一瞬考え、すぐにレリィへと返事をする。
「スカートで!デザインはお任せしちゃう!」
『承知いたしました。後もう1つララ様から伝えてほしいと言われました』
「え?なに?」
レリィが少しばかり言い淀むものの、あたしが聞き返すと教えてくれる。
それを聞くと思わず眉を顰めながらも、ちょっとばかりなんだかなぁと思わずにはいられなかった。
どうにもキラくんもあたしと同様に変なのに絡まれる運命にあるみたいだった。ちっとも嬉しくない。
今回はキラくんがあっさり撃退してこっそりと退散したので、公的には何もない事になった(キラくん的に)という事なのであたしが騒ぐのは逆効果になる。
それでも対策も兼ねてちょいと調べておく事にする。
『あるじ様、私がやりましょうか?』
あたしが何をやるのかを察したレリィが提案してくる。
このあたりの機微はさすがにレリィだなぁとは思う。
キラくんの事に関してはあたしが率先してやるので、その辺を考慮して話してくるのだ。
「ありがと、でも腕が鈍るからあたしがやってみるね」
スゥエットに着替えデスクの前に陣取って指を鳴らしてキーボードを操作する。
まずは情報を集め関連するものを絞り込み突き詰めていく。
見付けたのはとある路地で倒れ伏す人間が、警察署《PS》へと連れていかれたというものだ。(これキラくんのバイト先の近くだ)
その人物を特定しさらにそいつ等の周辺を調べ上げていく。
「いやぁ………最近のファイヤウォールってすごいね!さすがだよっ!もう鍵師の気分だわ、ふっふー」
あー………この感覚は久しぶりだな。
軽く舌を舐めつつ立ち塞がる壁を乗り越え潜りすり抜けて行く。
まー違法っちゃ違法なんだけど、これもあたしの一面ではある。
そしてキラくんを襲ったバカの証言から、何とまぁな大物が出てきた。
「政治家か~………。まー関係ないけどー」
キラくんに害の為すと言うのなら、例え総理大臣にだってあたしは牙を剥くのだ。
典型的なバカ息子を甘やかすバカ親といった感じか。
もちろん立場を守るという名目もあるんだろうけど、訴えられる前に示談に持ち込む手腕はあたしでも感心する手際だったりする。
とはいえ、そんなものをあたしが許容できる訳もない。
くっくっく。秘密の暴露と拡散。
てってー的に曝して広めてやりましょう。
「レリィ、こっからは手伝って」
『!畏まりました、あるじ様』
レリィの嬉しそうな声を聞きながら、キラくんを襲ったバカどもの所業とボンの悪業をばら撒きしょうか。
作業を終えた後は、投げっぱジャーマンの様にほっといて明日早起きする為にとっとと寝る事にする。
「レリィ、おやすみ~」
『はい、あるじ様。お休みなさいませ』
少しばかり時間は遅くなったけど、なんか満足したのかすっきりした思いであたしはぐっすりと眠る事が出来たのだった。
朝、レリィに起こされる前にぱっちりと目が覚める。
おおぅ………あれは年のせいじゃなかったのか?
てな訳で軽く身支度を済ませるとさらっとメイクを施してから、キラくんのアパートへれっつらごー。
キラくんは日課ですでに出ているようでいなかった。
ララちゃんの許可を得て、室内へと進軍。
目標はもちろんあそこだ。
目的の物を入手し替えの物と交換、それをジッパー付きビニール袋へと収容しバッグへとしまう。(変態言うなっ!シャツだけだもんっ!)
ミッションコンプリートの後、居間に入ってこれからのスケジュールをミニPCで立てていると、キラくんが帰ってくる。
あたしは平静を装いながらキラくんを堪能してその日の朝ゴハンを頂く事にする。
例の衣装を受け取る為に、秘密基地に入ってログインを済ましラビタンズネストでキラくんを待つ。
ここでようやくひと息ついた。卵焼きがふんわりしててウマウマだった。はふぅ~………。
すぐにキラくんがやって来て、例のものを受け取ってさっさと装備する。
「ふおぉ………」
見るのと着るのでは全く違うその物に、あたしは思わず変な声を上げてしまう。
全体がサクラ色のその服の着心地に、あたしは一辺で気に入ったのだった。
ただ下部分がスカートなので、普段パンツばかりのあたしとしては生足がペロンと出ているのも正直心許ない。
そこでちょっと思い出したものがあったので、メニューを開いて目的のものを取り出し装備する。
これは前のPCの時に手に入れたもので、鎧じゃ装備できなかったものだ。
さっそくそれをつけると、肌色だった両足に滑らかな黒が彩りを与える。思わず小躍りしてしまう。くるりと。
ちびラビ達がそれを見て飛び上がりながら褒めそやす。ふっふー、ありがとっ。
キラくんを見ると、口をあんぐりと開けてポカーンとあたしを見ていた。ん?どうしたん?
おっと、いけない。今日も今日とてアヤメちゃんへレクチャーをするんでバンゲさんのとこに行かなきゃだ。
もう、ミッションはコンプリートしているので、今日はここでお暇しましょう。
あたしはキラくんにじゃあねと告げると、すぐログアウトをする。
HMVRDを片付けてあたしは秘密基地を出て愛車に乗り込みバンゲさんのとこへと向かう。
何気に付けたラジオからニュースが流れ、◯ブの退任を報じているのを耳にする。
ほほぅ。先代よりも会社を採ったか、あの御仁。
まぁ、なるべくしてなったという事だろう。(多分あたしが最後に送った情報で腹を決めたんだろうな。あれマジで酷かったし)
◯ブの脅威がなくなったのであれば、それはとてもいい事だ。もう会う事もないだろうし。くっくっく、すっきりしたっ!
バンゲさんのとこでアヤメちゃんのレクチャーとお得意様巡りで今日の一日を終える。何とも平和な日であった。
その間にキラくんからメールが来て、例の服のお礼でアテスピ団という3人組とプロロアからカアンセへ行く事になったという事でデヴィテス行きは、ちょっと待ってほしいとの事だった。
これは仕方ないだろうとあたしも思う。
それにあたしもミラも、しばらくは手が離せないだろうから渡りに船と言ったところかな。
了解の旨を返信し、ならばと作業をしながらキラくん観察システムを起動させる事にする。
「レリィ、あれ頼める?」
『お任せ下さい。あるじ様』
レリィにお願いするとすぐにホロウィンドウが幾つか現れ、チャプターとサムネイル画面が表示される。
レイちゃんに唆され譲り受けたキラくん観察システムだけど、様子を見る分となるとVRよりもモニター画面で見た方がいい時もあったりする。(特に体調の良し悪しで左右されるだろうし)
まずは未見のとこから見てみる事にしよう。
あの脳筋とキラくんのPvPのとこからだ。
まずはララちゃんとウリスちゃん、アトリちゃんがボコボコにしている。(キラくんは手を出していない)
次にキラくんが相手して、開始直後一撃で倒してしまった。ん?あれ?
判定どうなってんだっけ?これ………。
システム上は一撃なんて無理だと思ってたんだけど………。(特にPvPに関しては、そうじゃないとつまんないし)
「よもや、またレイちゃんが?………」
あたしはついポツリと呟くも、まぁこれは邪推かな。
その後あたしが登場し、キラくんへと戯れる姿を見てしまう。
「これは………。見なかったことにしよう」
そんで脳筋とのやり取りがあって、PvPが始まる。
やっぱ、こいつキモいな………うん。
キラくんが移動を始め集会所へと向かいララちゃん達へと料理を振る舞い、そこへあたしもやって来てご相伴に与っていた。この後は分かっているので、見なくていいや。
次のチャプターを選び見ていると、マッシュルームヘアーのPCと会って服を作って貰うキラくんの姿がある。
へぇ〜彼に作ってもらったんだ。
うんうん。あれはとてもいいものだ。色といいデザインといい、帯も素敵でお気に入りになった。
その後はアテスピ団との交流を見ながら、キラくんもゲームを楽しんでるんだなぁとあたしは口元を緩ませる。
しっかし、この脳筋おうさまおうさまって、めっちゃウザいなぁ。
(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます
ブクマありがとうございます!感謝ですっ! (T△T)ゞ




