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175.ラピスラヴェルペキュラ・ディメーテレ・メイガオウロルディエス、って長っ!

 

 

 どう言った訳でこんな事態になったのかは理解できない(したくない)けど、とりあえずララとウリスケで従魔は間に合ってるので迷わず《No》を選ぶ。

 

「ニーチャ!ニーチャ!」

 

 ピロコリン!

 その子が叫ぶと、再度従魔スキルが~ってホロウィンドウが現れてきた。

 

「マスターどうしたのです?」

 

 突然の出来事に唖然としていたララが我に返り、側に来て訊ねて来る。

 

「いや、なんか従魔スキルが発動したとかメッセージ表示が出たんだけど、このコってモンスターじゃないよね?」

 

 僕の胸にしがみついてるコを指し示してララに聞いてみる。

 そのコの姿は、狐耳と尻尾はついてるものの3、4歳位の人の姿だったからだ。

 

「多分獣人族のコだと思うんだけど………」

 

 だけどララの答えは違ったものだった。

 

「いいえ、獣人族じゃないのですマスター。このコはモンスターに分類されるコなのです。ララと同じ精霊種のモンスターなのです」

 

 あっけらかんと割と重要な事をララが言って来た。

 

「元々ララはアテンダントスピリットという存在だったのです。でもサキさまミラさまのお情けで、こうしてモンスター扱いにしてもらってマスターの従魔になったのです。この時設定さ(つくら)れたのが精霊種モンスターなのです」

「まじでっ!?」

「まじなのです」

 

 意外なところでなんとも意外な話であった。ってかララが始まりでそんなモンスターが作らえてるとか、ビックリ仰天な話だ。

 

「ただあくまでも設定さ(つくら)れただけの話だったのです。精霊の里・妖精の里というハーミィテイジゾーンにいるモンスター(もの)という事だったのですが、でもそれが実装されていたのは知らなかったのです」

 

 ララのぶっちゃけ具合もどうかと思うけど、知らないよりは知っていた方がいい事だ。(僕としては)

 まぁこんな事やる人は1人しかいないよな。

 

「レイさんだな

 レイさんなのです」

 

 うぉ、………はからずもユニゾンしてしまった。

 そう、間違いなくGM(あのひと)の仕業に違いない。

 

「でもこんな場所に精霊種のモンスターがいるのは不思議なのです。しかも捕まっていたのです」

 

 とは言え、このまま引っ付かれたままというのも具合が悪い。(僕の体面上)

 夜色の髪(黒よりは紺と紫が混ざったような)に腰辺りまで覆われているもののスッポンポンなのだから。

 

「それにこの状態で外に出たら、間違いなく変質者はんざいしゃ扱いされると思うんだけど、………どうしよっか」

 

 僕は恐恐こわごわと言って感じで、胸に引っ付いているこのコを眺め見る。

 

「ニ〜チャ」

 

 そのコはそう呟いて頭をグリグリ胸に摺りつけてくる。ここまで懐かれる理由がさっぱり分からない。

 本当にどうしよう………。

 

「マスタ-、簡単なのです。ここを押せばいいだけなのです」

「………そうですか」

 

 ララが指差しているところは《Yes》である。これ以上目立つのヤなんだけどなー………。

 

「マスター!男は度胸なのです。毒を喰らわば皿までなのです!」

「いやいや!そこまでの度胸はないんだけどっ!?」

 

 このコを連れてたら、絶対ロリかペド扱いされるのが決まってるのだ。さすがに20代半ばでそれは厳しいものがある。

 

「きらめ、かじん」

「グゥ〜グッグ!」

 

 アトリとウリスケが追い打ちをかけて来る。どんどん外堀が埋められていく感じだ。やれやれ、仕方ないか。

 はぁ―と溜め息を吐いて覚悟を決める。

 そして《Yes》を押していく。

 

ピロコリン!

[ミスティニ―テイルフォクス〈幼体〉が 従魔 に なりました]

 

 ウリスケと違って特に変化することもなくそのまんまだ。そして次のメッセージが現れる。

 

[名前 を 付けて下さい]

 

「っっ!」

 

 そ、そうだった………!名付けがあるんだった――――っっ!!

 ええええーっと、どうする、どうするっ!?

 ウリスケの事があるんで、迂闊に名前を付けるのには少しだけ抵抗があるのだ。

 なまえ〜、名前〜、ナマエ〜………。

 はっ、そうだ!まずは男か女かを聞いてそれから考えればいいのか!よしっ、そうと決まればっ!

 

「ララっ!このコは男の子!女の子っ!?」

「マスター、落ち着いてなのです。初期設定デフォルトの名前が付いてるのです」

 

 ララがホロウィンドウを指差して入力欄を示してくる。

 

「………あ、ホントだ。ってか名前なっがっ!」

 

 名前入力欄には薄灰色で名前が表示してあった。

 えーと、ラピスラヴェルペキュラ・ディメーテレ・メイガオウロルディエス。

 入力限度文字数オーバーしちゃってるんですけど、いいのか?これ。

 とは言え、名前があるものをわざわざ変更するというのも、気が引けるものがあるのだ。


 僕がゲームをする場合、いつもデフォルトでやってるからだ。

 もちろん僕はそのまま変更する事なく《OK》を押して名前を決定する。

 

「ニーチャ!」

 

 そのコが声を上げると光り輝きそれに目を伏せて開けた時には、1体の紫紺色の仔狐が僕に引っ付いていた。

 

「クゥ〜クゥ〜」

 

 胸に張り付く仔狐へと恐る恐る手を触れると、その毛並みはしっとりと僕の手に絡む様に反応を返してきた。

 

「はふ〜ぅ………。これは………」

 

 しっとりふわふわのもふもふ……。は〜ああ、ここは天国か?

 もふもふもふ、もふもふもふ…………ふぅ。

 

「………マスター?大丈夫なのです?」

「は!………大丈夫。って一体何が起こったのこのコに?」

「推測なのですが、真名が登録された事によって本来の姿になったのではないかと思うのです」

「グゥ?」

 

 ララが推測なんて言葉を使うのも珍しい。ウリスケは訳が分からず腕組みをして小首を傾げる。(首がないとか言っちゃあダメだ)

 うんうん、とりあえず現在危急にして緊急であった状況が解決したという事で、諸々のよく分からない事は棚上げしとこう。(どうせ考えたって分かる訳ないのだ。GM(レイさん)の考えてる事なんて)

 でもあんな長い名前じゃ呼びにくいし、どうしよっかな。

 

「ラピス………んー……」

「クゥン?」

 

 僕の胸に引っ付いているラピスなんちゃらが、な〜に?という感じで首を傾げてくる。首周りにあるふわふわ襟巻きがふわりと揺れる。ぐふっ!何たる破壊力だ。

 今回はかわいいさんがいっぱいいる。なんとも潤い溢れる道行きであろうか。(一部乾き切ってるとこもあったけど)

 

「マスター、何を考えてるのです?ふほぉ〜……」

 

 ララも仔狐の身体に抱き付き(もふもふし)つつ、僕の呟きを聞いて訊ねて来る。

 

「うん。名前がけっこー長いからさ、なんかニックネームみたいなのがあればいーかなってね」

「なる程なのです。たしかにそれは必要なのです。ははふぅ〜………」

 

 ララもこのコの身体(もふもふ)を堪能しているようだ。うんうん、分かるよ!ララ!

 まぁそれはさておき、まずは名前だ。あんな長い名前は普通に言ったり僕は出来ない。どこのじゅげむだって話だ。(いや、それほど長いものじゃないけど)

 

 ラピスねぇ。確かラピスラズリだったけ。和名は―――ー

 

「ルリ?」

「クゥウ――――ッ!」

 

 僕がその名を口にすると、ラピスなんちゃらがひと声吠えてまた光り輝き人型になってしまった。

 

「ニーチャっ!」

 

 な、なんてこった。なにがどういうロジックで働いているのか、さっぱりだ。

 思わず床に手をついて倒れ伏しても無理はないと思う。

 

「はぁ………。マスターどうしますのです?」

 

 モフモフを堪能していたララが残念がりつつ僕に聞いてくる。何気に外が騒がしくなっている。どうしたのかな。

 さて、と僕は周囲を見回してそれを見つめる。

 はぁ………、これしかないか。少しだけ我慢してもらおう。

 

 そして僕はこのコが入っていたズダ袋を手に取って少し細工を施していく。

 まぁ細工と言っても切り込み入れるだけなんだけどね。

 

「ラギさん。ちょっといいですか?」 

 

 そこにペイくんが幌を開けて聞いて来た。

 

「ん?どうかした、ぺいくん?」

 

 僕がしれっと何でもない風を装って答える。けど、ペイくんの視線の先を確かめると無駄かと悟る。

 

「………その子、どうしたんですか?」

 

 うぐぐ………。視線が痛い。とは言え説明すると言っても何と言えばいいのやら………。いんや、ありのままを言うしかないんだけど。

 

「何でか分かんないんだけど、ここにいたコが従魔になっちゃんたんだ」

「……………」

 

 ペイくんが本当に珍しく、ジト目で僕を見てくる。でも他に言いようがないのだ。

 

「だから、このコが袋に入っていて―――ー」

「いいえっ!それよりも何故そんな物を着てるんですかっ?」

 

 僕が再度説明しようとすると、びしっと僕が抱っこしているルリを指差して問い質してくる。

 あれ?なんか方向性的なものが違っている気が………。

 

「そんなズダ袋に穴を開けてだけの様な物に………。可哀想じゃないですかっ!そんなに可愛いのにっ!!」

「ええっ!?そっちぃ?」

 

 どうやら僕が必死こいて着せたズダ袋に異議があった様だった。

 

「……うん、もちろん後で着替えを用意するつもりだよ。今はほらここには他に何もなかったからさ。いわゆる緊急避難ってやつだよ」 

 

 僕の言い訳めいた言葉に、ペイくんは顎を擦り目を細める。

 何気に迫力あるな―………。

 

「……そうですか、分かりました。あっ、それで街道巡警団という方々来て事情を聞きたいと言ってるんですが」

「?街道巡警団ってなんです?」

 

 あんまり聞きなれなかった名称だったので、僕は首を傾げて訊ねる。

 

「何でも街道を行き来しながらその治安維持を担ってるみたいです。盗賊の件について話を聞きたいそうです」

 

 と言っても襲って来たので倒しましたってだけの話だ。

 説明する分には特に問題もないかな。

 

「うん、分かった。それじゃ行こうか」

「はいなのです」

「グッ!」

「おー」

「チャ」

 

 ララ達の後に続いて、ルリも声を上げて来た。うむ、かわいいのぅ〜。

 その可愛さにすこーんとある事が抜け落ちていた。

 

「ルリ歩ける?」

「ニーチャ!」

 

 僕がルリを抱き持ちながら訊ねると、ルリはひと声上げると腕を使って飛び上がり僕の左肩に乗っかりそおまま腹這いの姿勢を取る。………いやまぁ、いいけどね。

 馬車を出ると、ハヤトくんとアスカちゃんが見知らぬ男性2人と話をしているのが目に入る。

 話というより説明といった方がいいのかな。

 

 2人とも同じ様なような鎧を身に着け腰ほどの長さの緑のマントを羽織っている。

 頭には擬宝珠の様に先が尖った兜を被っている。(某スライムの先っぽの方が分かり易いか)

 身長は僕と同じくらい、でも体格はとてもがっしりとしている。

 

 その人達は、僕らに気づくと1人1人を確かめる様に視線を移していく。そしてルリのところにもだ。

 やっぺ。従魔にしちゃったんで思わず連れて来ちゃったけど、本来ルリは盗賊達のところにいたのだ。

 下手をすれば没収されるかも知れない。

 戦々恐々としながら僕は彼らに近づく。

 

「話を聞きたいという事ですけど。あ、僕はプロロアの街から来ましたラギと言います。よろしくお願いします」

 

 内心ドキドキしつつ挨拶は大事だよってな訳で、僕は彼等の前に来ると名を名乗りペコリと一礼する。

 

「あ、ああ。私は街道巡警団エィオールテ・ガディーズの一員で、西街道担当のゼレストンと言う。なんでも盗賊と行き会ったとか」

 

 行き会うというより待ち伏せっぽかったけど。

 僕の挨拶に少しばかり気圧されながらも、相手も名を名乗ってくれる。

 

「はい。何とか倒す事が出来ましたので、彼等の馬車を確認してたんです。中には僕の見た事のないモンスターがケージに入れられてました」

「何?おい!」

「はっ」

 

 僕がそう告げると、ゼレストンさんは目を瞠り部下と思しき人に目と声で指示する。

 それに応じる様に部下の人が返事をして馬車へと向かう。途中他の団員に声をかけて馬車の中へと入って行った。

 

「話は彼等にも聞いたのだが、あなたにも伺いたい」

 

 ゼレストンさんは落ち着いた物腰で訊ねて来た。

 僕は頷いてから、これまで起こった事をかいつまんで説明していく。

 

「なる程。その人数でよく倒す事が出来たものだ」

 

 ゼレストンさんは僕とアテスピ団の3人を見て感心の声を上げる。

 確かに人数は倍以上だったけど、僕達には心強い味方がいるのだ。

 

「ええ、従魔達に助けてもらい何とか倒せました」

「……………」

「グッ」

「……………」

 

 ララとアトリは空気を読んで無言で、ウリスケは4つ足で立った状態でひと鳴きして僕の言葉に応じる。

 それを見たゼレストンさんは、顎に手を当ててふむと納得の声を漏らす。

 

「あの者等はどうやら珍しいモンスターを奪い売り払う事を行っていた様だ。あるいはあなたの従魔を狙ったのやも知れぬな」

「えっ、そうなんですか?」

 

 ゼレストンさんの言葉に僕は思わず声を出してしまう。

 でもあれってアテスピ団の襲撃イベントじゃなかったんだろうか?もしくはそれ込みでって事なのかな。

 僕はララとウリスケを見ながらそんな事を考えてしまう。

 

「とにかく事情は把握した。我々はこれで失礼する。それとこれは盗賊を捕らえた報奨用の木札となる。冒険者ギルドにこれを渡してくれれば賞金が貰える様になっている」

 

 ゼレストンさんは、何かをサラサラと書き付けた木札を僕達4人に渡してくる。

 

「では我等はこれで失礼する。道中これ無事に(ヴァイハブ・セィハヴ)!」

 

 ゼレストンさんはそう言って盗賊達の馬車と、自分達が乗ってきたであろう馬車と共に西へと街道を進み去って行った。

 

「乗せてくれなかったのです。残念なのです」

「グ〜………」

「おぅ………」

「チャ!」

 

 結局ルリの事について何も問われる事がなかったので、拍子抜けというかなんと言うか。まぁほっと安堵はしたのだけど………。

 これで一難は去ったという訳で僕はアテスピ団の皆に移動をしようかと声を掛けようとした時、ペイくんがずいと前に出て前髪をサパッと払って言って来た。

 

「ラギさん!出発する前にその子の服を仕立てさせて下さいっ!その姿はあまりにも忍びないのですっ!」

「あれ?その子どうしたんですか?ラギさん」

「おっ!ケモ耳か!獣人族だな!」

 

 ぺいくんの言葉にアスカちゃんとハヤトくんが、ルリの存在に気付いて近寄ってきた。

 

「ニーチャ!」

 

 近づいて来た2人ビックリしたルリは、僕の背中へと移動する。痛たた、爪を立てないで。甘噛み的な痛みでも急に来ると驚くのだ。

 

「マスターの新しい従魔さんなのです。名前はルリさんなのです」

 

 ララがえっへんと胸を反らせながら、アスカちゃんとハヤトくんへと説明をする。

 

「へっ?従魔なのっ!?

 はあ?従魔?マジ!?」

 

 アスカちゃんとハヤトくんが驚きで目を剥く中、ペイくんは手をワキワキさせて僕を見てくる。

 

「………うん、お願いするよ。ペイくん」

「ではっ、ラギさん!テーブルを出して下さい!」

「はい。………どうぞ」

「ありがとうございます!よしっ!!」

 

 僕が指示に従って簡易テーブルを出すと、ペイくんはさっそくと言わんばかりに作業を始める。

 

「あ、その前にちょっとルリちゃんの全身を見せて貰えますか?後ろ姿でいいので」

「うん、分かった。ルリ〜おいで〜」

「ニーチャ」

 

 ペイくんの要望に僕は背中に隠れるルリを呼んで脇の下を持って抱き上げてズダ袋を脱がせる。

 僕の目の前でルリの地肌がむき出しになる。

 

「あ、髪の毛を上げて貰っていいですか?」

「はいなのです」

 

 ペイくんの注文にララがルリの髪の毛を上げていく。ぺろんと見える白い背中と尻尾。

 

「か、かわいいっ!!」

「おっ、立派な尻尾だな!」

「ニーチャ?」

 

ルリはな〜に?と言った風に首を傾げて僕を見る。かわいいのぅ〜。

 

「なのこ」

 

 頭に載ってるアトリが、そんな事を言ってくる。………うん。女の子だね。

 

「いいですよ。ありがとうございました、ラギさん!」

 

 ペイくんが言って来たのを幸いにすぐにズダ袋を着せてルリを労う。

 

「ありがとなルリ〜。今あそこのお兄さんがお前の服を作ってくれるんだよ」

「チャ」

「はい!待ってて下さいね!」

 

 腕に抱き上げたルリに、ペイくんを指差して話し掛ける。分かってるのかいないのか、ルリがペイくんへと声と手を上げ、それに応える様にペイくんが返事をする。めっちゃテンションが高い。

 

 その後は早業というしか表現のしようがなかった。

 型紙を作り、それから取り出した布を裁断してパーツを幾つも作り上げてから縫い上げていく。(その時刃物で切りづらそうだったのを見たハヤトくんが、ハサミを渡して来てペイくんがびっくりしていたりした。どうやらこっちにハサミって無かったみたいだ)

 そして程なく上下一着の服が出来上がる。

 

 見た目僕の装備しているものに似ている。

 色はベージュで上は袖のない作務衣っぽい。下はズボンのようで裾が短く大きく広がっている。ズボンというよりキュロットみたいだ。

 もちろん尻尾部分も空いていて、左右から帯が出ていて交差させて前で結べる様になっている。

 何とも器用なものだ。

 

 「どうぞ、着替えさせてやって下さい」

 

 ペイくんはやり切った感を全面に出して、出来上がった服を渡して来る。

 あれ?こういった場合装備はどうするのかと思いを巡らせるものの、よくよく考えてみたらズダ袋に入ってたんだから問題ないかと、物は試しとやってみる事にする。

 というか普通に着替えて貰うんだけどね。

 

「は〜いルリ。これに着替えるよ〜」

「チャ!」

 

 ルリを地面に下ろすと、すぐ様ズダ袋をぱぱっと脱がせスッポンポンに。

 まずはズポンをルリの前に差し出して足を入れさせる。

 

「はい、ルリ。ここに足を入れて」

「チャ」

 

 ルリが両足をズボンに入れたのを確認してから、尻尾に注意しつつ帯を前に持って来て蝶結びをする。

 後は上着を着せて脇で紐を結んで出来上がりだ。

 

「うん!満足ですっ!

 はぉ!かわいーい!

 うん!いんじゃね!」

 

 アテスピ団の3人が三者三葉に批評をしている。うん、たしかにかわいいのぅ〜。

 

「チャ!チャ!」

 

 着替えたルリは、嬉しそうにその場でくるりと回転してからてててと走り出す。

 

「はー何とか着れたか。裸足はしょーがないかな」

 

 ルリの様子を見ながら僕は呟くけど、そこにペイくんがささっとそれを差し出して来た。

 

「とりあえずこれをどうぞ」

「これって布わらじ?」

「はい。以前に練習で作ってみたものです」

 

 布わらじとは布の端切れを細長く裂いて編んで作るものだ。VR(こっち)でもフワフワでモコモコだ。

 僕はペイくんからその布わらじを受け取りルリを呼ぶ。

 

「ルリ〜。ペイくんがこれ履いてだって〜」

「チャ!」

 

 片足づつ足を出させて布わらじを履かせていく。大きさはちょっと大きいくらいで、歩くのには支障は無さそうだ。何とも用意のいい事で………。

 ルリはしばらく布わらじの感触を味わってから、ペイくんの前に来て両手を上にあげてからはは〜って感じで頭をペコリと下げる。

 

「チャア〜〜〜」

 

 どうやらお礼のつもりらしい。

 

「っ!のは〜〜〜っ!!はっ、喜んで貰えたようで良かったです!」

 

 一瞬恍惚の表情を見せた後、我に返り前髪をパサアっと手で払ってドヤ顔でペイくんが笑う。

 

「ララなのです。よろしくなのですルリさん!」

「グッグッグ!」

「アトリ」

「チャ!チャ!」

 

 ララ達が互いに自己紹介を始め、イェ〜イとハイタッチ!をしている。

 さて、これで後はカアンセの街に行くだけだな。

 何事もないことを祈りつつ、僕達は改めて西へと移動を開始した。

 

 


(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

 

Pt有り難うございます!励みになります! Σ(T人T) (パンパン)

ブクマありがとうございます!ガンガリマス (T△T)ゞ

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